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第13話 それぞれの夜2

やはり俺のスカウト人生は間違っている。 — www.pixiv.net · All chapters

第13話 それぞれの夜2

###  エミリオ・アルバレス家

午後八時。

千葉県内。

エミリオ・アルバレスの自宅。

玄関のドアが開く。

「ただいま。」

スペイン語混じりの声が響く。

リビングから、相模南が笑顔で顔を出した。

「おかえり、エミリオ。」

エミリオは微笑みながら靴を脱ぐ。

「南。」

「体調はどう?」

真っ先に聞いたのは、それだった。

南はお腹にそっと手を添え、優しく笑う。

「大丈夫。」

「今日は赤ちゃんも元気だったよ。」

その言葉を聞き、エミリオは安心したように息をつく。

「良かった……。」

南はそんな様子を見て小さく笑う。

「心配しすぎ。」

「当たり前だ。」

「俺たちの子どもだから。」

そう言って、お腹にそっと手を当てる。

「Hola(こんにちは)。」

「パパだ。」

南は照れくさそうに笑った。

「まだ聞こえないよ。」

「いや。」

エミリオは真顔だった。

「きっと聞こえてる。」

その姿に南は思わず吹き出す。

「ふふっ。」

「本当に子ども好きなんだね。」

「もちろん。」

「早く会いたい。」

---

二人で夕食を囲む。

エミリオは日本の箸にもすっかり慣れていた。

「今日の練習は?」

南が聞く。

「ダニエルが来た。」

「もう馴染んでた?」

「ああ。」

「チームのみんなも歓迎してくれた。」

「良かった。」

エミリオは味噌汁を一口飲みながら続ける。

「やっぱり。」

「ハチマンはすごい。」

南は静かに頷く。

「そう思う。」

「俺、日本へ来た時。」

「言葉も分からなかった。」

「文化も違った。」

「でも。」

エミリオは少し笑った。

「全部、ハチマンが助けてくれた。」

---

あの日を思い出す。

空港へ迎えに来た青年。

役所の手続き。

銀行口座。

携帯電話。

住む家。

練習後には日本語まで教えてくれた。

サッカーだけではない。

生活そのものを支えてくれた。

「俺は外国人じゃない。」

エミリオはぽつりと言う。

「ハチマンのおかげで。」

「家族になれた。」

南は微笑んだ。

「だから私とも出会えた。」

「ああ。」

「全部。」

「ハチマンのおかげだ。」

---

食事を終え、二人でソファに座る。

テレビではスポーツニュースが流れていた。

『開幕五連敗と苦しむエストレヤ千葉。』

『得点力不足が深刻です。』

『11番・材木座義輝には厳しい声も——』

エミリオはリモコンでテレビを消した。

「見なくていいの?」

「いい。」

「どうせ外からは分からない。」

「材木座は。」

一拍置く。

「俺たちに必要な選手だ。」

「うん。」

南も頷く。

「八幡さんも同じこと言いそう。」

「絶対言う。」

二人は顔を見合わせて笑った。

---

その時。

エミリオのスマートフォンが鳴る。

画面には、

**ソフィア**

「妹?」

「ああ。」

電話に出る。

『お兄ちゃん!』

「どうした?」

『ハチマンがまた分析室に残ってる!』

「まだ帰ってないのか?」

『もうすぐ帰るって言ってるけど、またコーヒー飲みすぎ!』

電話越しに少し怒った声が聞こえる。

エミリオは苦笑した。

「昔から変わらないな。」

『お兄ちゃんからも言って!』

「分かった。」

電話を切ると、南が笑っていた。

「八幡さんらしい。」

「ああ。」

「仕事になると周りが見えなくなる。」

エミリオは窓の外を見上げる。

「だから俺たちが支えないとな。」

「うん。」

南は静かに頷いた。

「家族だもんね。」

エミリオは微笑む。

「そうだ。」

「ハチマンは。」

「もう俺たちの家族だから。」

夜の街に静かな明かりが灯る。

エストレヤ千葉の司令塔と、その家族。

そして彼らを支えるもう一つの家族。

異国で始まった縁は、今では何よりも大切な絆へと変わっていた。

---

###  材木座家

午後八時四十分。

千葉県内。

材木座義輝の自宅。

玄関の扉が静かに開く。

「……ただいま。」

いつもの大きな声ではない。

力のない声だった。

リビングから、小さな足音が聞こえてくる。

「ぱぱー!」

三歳になる息子が笑顔で駆け寄ってきた。

材木座は無理に笑顔を作る。

「おお、ただいま。」

息子を抱き上げる。

「今日は保育園どうだった?」

「おともだちと、いっぱいあそんだ!」

「そうか。」

頭を優しく撫でる。

その様子をキッチンから見ていた三浦優美子が、静かに微笑んだ。

「おかえり。」

「ああ。」

「ご飯できてるよ。」

「ありがとう。」

---

三人で食卓を囲む。

息子は今日あった出来事を楽しそうに話している。

「ぱぱ!」

「きょうね!」

「せんせいにほめられた!」

「そうか!」

「すごいじゃないか!」

材木座は笑って返す。

その笑顔だけを見ると、いつもの材木座だった。

しかし。

優美子には分かる。

長年一緒にいるからこそ分かる。

**無理をしている。**

---

食事を終え、

息子を寝かしつける。

「ぱぱ。」

「ん?」

「こんど、しあいみにいく!」

材木座は優しく笑った。

「待ってるぞ。」

「やくそく!」

「ああ。」

小さく指切りをして、息子は眠りについた。

---

リビング。

静かな夜。

優美子がお茶を二人分淹れてきた。

「はい。」

「ありがとう。」

材木座は湯呑みを受け取る。

しかし、そのまま黙ってしまう。

優美子は何も急かさない。

ゆっくり隣へ座った。

「今日は。」

「……。」

「また見たの?」

材木座は苦笑した。

「分かるか。」

「分かる。」

優美子は即答した。

「SNS。」

「うん。」

「記者の記事も。」

「……。」

材木座はスマートフォンを取り出す。

画面には、

> 『11番失格』

> 『点を取れないFW』

> 『夏に補強すべき』

> 『材木座を外せ』

そんな言葉が並んでいた。

「見なきゃいいのに。」

「分かってる。」

「でも。」

材木座はスマートフォンを伏せた。

「気になるんだ。」

「俺が本当にチームの足を引っ張ってるんじゃないかって。」

部屋が静かになる。

---

優美子はゆっくり口を開いた。

「今日ね。」

「ん?」

「試合、もう一回見返した。」

材木座は少し驚いた。

「見たのか?」

「うん。」

「素人だから難しいことは分からない。」

「でも。」

優美子は真っ直ぐ材木座を見る。

「何回も二人に囲まれてた。」

「……。」

「それでもボールを失わなかった。」

「落として。」

「味方がシュート打ってた。」

材木座は何も言えない。

「私。」

「それ見て思った。」

一拍置く。

「みんな点を取った人しか見てない。」

「でも。」

「あなたが始めてる攻撃が、たくさんあった。」

材木座は目を伏せた。

「八幡も。」

その名前に反応する。

「同じこと言ってた。」

「……。」

「今日。」

「データまで見せてくれた。」

材木座は少し笑う。

「俺が出てる方が。」

「チームは点取ってるんだって。」

優美子も笑った。

「やっぱり。」

「え?」

「比企谷君らしい。」

「数字で証明するんだ。」

「そうなんだよ。」

材木座は肩の力を抜いた。

「俺、あいつとは高校からの付き合いだけど。」

「滅多に褒められない。」

「だから。」

「今日は少し嬉しかった。」

---

優美子はそっと材木座の手に自分の手を重ねた。

「義輝。」

「ん?」

「私はね。」

「あなたが点を取るから好きになったんじゃない。」

「……。」

「誰よりも仲間のために走って。」

「誰よりも苦しんで。」

「それでも前を向こうとする。」

「そんなあなただから結婚したの。」

材木座の目が少し潤む。

「だから。」

「外の声より。」

優美子は優しく笑う。

「私の言葉を信じて。」

材木座は静かに頷いた。

「ああ。」

「ありがとう。」

---

その夜。

材木座は久しぶりにSNSを閉じた。

代わりに開いたのは、試合映像だった。

自分のプレーを見返す。

八幡の言葉。

優美子の言葉。

二つが胸の中で重なる。

「まだ終われない。」

そう呟くと、材木座義輝はもう一度前を向いた。

# 南・アルバレス(みなみ・アルバレス)

**旧姓:相模 南**

**24歳 9月10日生まれ**

エストレヤ千葉所属の**エミリオ・アルバレスの妻**。

現在妊娠中で、**出産予定日は8月**。

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## プロフィール

高校卒業後、**飲食店の正社員**として勤務。

接客を中心に働きながら、社会人として経験を積んできた。

学生時代からスペイン語に興味を持ち、継続して勉強していたため、日常会話には困らないレベルでスペイン語を話すことができる。

そのため、スペイン人であるエミリオとの間にも大きな言葉の壁はない。

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## エミリオとの出会い

二人が出会うきっかけを作ったのは、エストレヤ千葉強化部の**比企谷八幡**。

八幡の紹介によってエミリオと知り合った。

スペイン語を話せる南と、日本で生活するエミリオは自然と親しくなり、やがて交際へ発展。

その後、**昨年結婚**した。

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## 結婚生活

国籍の違う国際結婚ではあるものの、南自身がスペイン語を話せることもあり、夫婦間のコミュニケーションは非常に円滑。

日本でプレーするエミリオにとって、南は私生活を支えてくれる大きな存在となっている。

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## 現在

結婚後も飲食店で働いていたが、**妊娠を機に退職**。

現在は仕事を離れ、出産に向けて生活している。

**出産予定日は8月。**

エミリオとの間に生まれる第一子を迎える日が近づいている。

# 材木座優美子(旧姓:三浦優美子)

**24歳 11月11日生まれ**

材木座義輝の妻。

現在は専業主婦として、夫と2歳になる息子を支えながら家庭を守っている。

高校時代はモデル活動も行っており、華やかな容姿から学校でも有名な存在だった。

当時は**葉山隼人**に想いを寄せており、高校の卒業式の日に告白。

しかし、その想いは叶わず、葉山から振られてしまう。

高校卒業後は千葉を離れ、別の県で生活していた。

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## 材木座との再会

20歳の時。

成人式のため、久しぶりに千葉へ戻ってくる。

そして**成人式後に開かれた高校の同窓会**へ参加。

そこで高校時代の同級生だった**材木座義輝**と再会した。

高校時代にはほとんど接点のなかった二人だったが、その日の夜、酒に酔った勢いもあり一夜を共にする。

それをきっかけに二人の距離は急速に縮まっていった。

ただし、すぐに恋人同士になったわけではない。

互いに明確な関係を決めないまま頻繁に会うようになり、自然と体の関係も続いていた。

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## 妊娠と結婚

優美子が**21歳の時**、妊娠が判明。

それまで曖昧な関係を続けていた二人にとって、大きな転機となった。

優美子から妊娠を告げられた材木座は、迷うことなく結婚を決意する。

父親になる覚悟と、これからは優美子と家族として人生を歩んでいきたいという想いを伝え、真剣にプロポーズ。

優美子はその言葉を聞いて涙を流しながら受け入れた。

こうして二人は夫婦となった。

現在は夫と息子を支える**良き妻、良き母**として家庭を守っている。

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## 家族

### 夫

**材木座義輝**

プロサッカー選手。

成人式後の高校の同窓会で優美子と再会。

その夜をきっかけに関係が始まり、優美子の妊娠を知った際には迷わず結婚を決意した。

現在は妻と息子を何よりも大切にしている。

### 長男

**2歳**

元気いっぱいで活発な男の子。

材木座にとって何よりも大切な存在。

材木座は試合前になると、優美子と息子が写った家族写真を見ることをルーティンにしている。

**「家族を笑顔にするために勝つ。」**

それが今の材木座義輝にとって、最大のモチベーションとなっている。