第18話 キックオフ
第18話 キックオフ
両チームの選手がピッチ中央へ集まる。
エストレヤ千葉。
福岡レガーロ。
ホームスタジアムを埋め尽くしたサポーターの歓声が鳴り響く。
「エストレヤ!」
「エストレヤ!」
チャントは途切れることなく続いていた。
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スタンド上段。
分析席。
比企谷八幡はノートパソコンを開き、試合開始を待っていた。
隣にはソフィア。
八幡の視線は福岡の左サイドへ向いている。
風間琢磨。
そして中央には笹倉友三。
昨日まで何度も映像で確認した二人。
試合でどう動くのか。
八幡は静かに見つめていた。
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ピッチでは主将同士のコイントスが行われる。
郷田京。
そして福岡レガーロの主将・笹倉友三。
主審がコインを弾く。
郷田がエンドを選択し、両チームの選手が自陣へ散っていく。
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材木座はセンターサークル付近で軽くジャンプした。
隣にはダニエル・ロドリゲス。
「いよいよだな。」
材木座が笑う。
ダニエルも頷く。
「楽しみだ。」
「最初から飛ばすなよ。」
「八幡にも言われただろ。」
「焦るなって。」
「ああ。」
「分かってる。」
二人は前を向いた。
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エミリオは中盤で周囲を見渡す。
川崎は左サイドで風間と向かい合う。
風間も川崎を見据えていた。
互いに言葉はない。
試合が始まれば、すべてプレーで語るだけだった。
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主審が腕時計を見る。
静寂が訪れる。
次の瞬間。
ピーッ――。
開始のホイッスルが鳴り響いた。
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材木座がボールをダニエルへ落とす。
ダニエルはすぐ後方のエミリオへ。
エミリオは無理に縦へ入れず、センターバックへボールを戻した。
スタンドからどよめきが起こる。
焦って前へ運ばない。
昨日確認した戦い方、そのままだった。
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福岡レガーロは素早く守備ブロックを形成する。
前線から無理には追わない。
中央を閉じる。
笹倉が味方へ短く指示を飛ばす。
「中を切れ。」
その声と同時に、福岡の守備網が完成した。
八幡は分析席からその様子を見つめる。
「予定どおり。」
小さく呟く。
ソフィアも頷いた。
「本当に映像のままなんだね。」
「ああ。」
「ここまでは。」
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エストレヤはボールを左右へ動かす。
福岡は飛び込まない。
じっと待つ。
中央には笹倉。
左には風間。
狙いは変わらない。
エストレヤに中央突破を選ばせることだった。
開始から二分。
両チームとも決定機はまだない。
だが、静かな駆け引きは、すでに始まっていた。
笹倉 友三(ささくら ともぞう)
**所属**:福岡レガーロ
**ポジション**:DMF(守備的ミッドフィールダー)
**背番号**:8
**生年月日**:12月29日
**年齢**:33歳
**利き足**:右
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福岡レガーロの中盤を支える絶対的なアンカー。
派手なプレーで観客を沸かせるタイプではないが、彼がいるだけで試合の流れは大きく変わる。
若い頃から高い戦術理解度を武器に頭角を現し、日本代表にも選出。さらに海外クラブでもプレーし、強度の高いリーグで数多くの経験を積み重ねてきた実力者である。
しかし、その実力がありながら、**FIFAワールドカップの舞台には一度も立てなかった。**
代表入りが期待された大会では大会直前に負傷。
別の大会では復帰直後でコンディションが整わず、メンバーから外れた。
またある大会では代表争いの最中に長期離脱を余儀なくされるなど、不運が幾度も重なった。
「日本代表には欠かせない存在。」
そう評価されながらも、あと一歩のところで夢の舞台に届かなかった選手として、多くのサッカーファンの記憶に残っている。
それでも笹倉は下を向かなかった。
海外で培った経験を日本へ持ち帰り、福岡レガーロの中心選手としてチームを支え続けている。
最大の武器は、**スペースを消す能力**。
相手が使いたいコースを先回りして埋め、自然と危険なエリアへ誘導する。
そして、その誘導された先には福岡レガーロの守備網が待ち構えている。
相手からすれば、自分で判断してプレーしているつもりでも、気付けば笹倉が用意した"罠"へ入り込んでいる。
読みの鋭さ、立ち位置、身体の向き、味方へのコーチング。
そのすべてを駆使し、中盤を完全にコントロールする。
派手なインターセプトを狙うのではなく、「奪える状況」を作り出して味方に奪わせる。
まさに守備をデザインするボランチである。
また、攻撃でも慌てることはない。
ボールを受ければ一度周囲を見渡し、最も効果的な選択肢を選び続ける。
無理な縦パスはほとんど出さず、テンポを変えながら試合全体を落ち着かせるゲームメーカーとしての役割も担っている。
一方で、年齢とこれまで積み重ねてきた激しいプレーの影響もあり、**スタミナには課題**を抱えている。
試合終盤になると運動量が落ちることがあり、九十分間フルスロットルでプレーし続けるのは難しい。
それでも、豊富な経験と優れたポジショニングで無駄な走りを減らし、最後まで試合を読む力でチームを支える。
普段は冷静沈着で感情を表に出すことは少ない。
若手には厳しくも的確な助言を送り、自らの経験を惜しみなく伝える頼れるベテランでもある。
福岡レガーロには得点王も、華やかなドリブラーもいる。
しかし、チーム全体を陰から操り、試合の流れを支配しているのは笹倉友三である。
**見えない仕事で勝利を引き寄せる。**
それが、元日本代表・笹倉友三という選手である。