LNCrawler

第28話 波紋を呼ぶ記事

やはり俺のスカウト人生は間違っている。 — www.pixiv.net · All chapters

第28話 波紋を呼ぶ記事

試合二日前。

午前7時。

スポーツニュースサイトのトップページに一本のコラムが掲載された。

執筆者は、エストレヤ千葉担当記者――**上村俊(32)**。

---

# **「エストレヤ千葉は本当に変わったのか。連勝の先にある課題」**

福岡レガーロ戦。

エストレヤ千葉は2-0で勝利し、今シーズン初勝利を手にした。

内容も申し分なかった。

前半は我慢強く耐え、後半に森川佑とダニエル・ロドリゲスがゴール。

試合運びも落ち着いており、監督マルコ・ベッルーニの狙いがよく表れた90分だった。

試合後、多くのサポーターは歓喜した。

「今年は昇格できる。」

「八幡体制になって別のチームになった。」

そんな声がSNSを埋め尽くしている。

しかし、一人の記者として言わせてもらえば、まだ判断するには早い。

---

昨年から補強担当を務める八幡比企谷。

彼がクラブにもたらした功績は非常に大きい。

昨シーズンの補強は次々と成功。

さらに今シーズン途中加入のダニエル・ロドリゲスも、加入直後から結果を残している。

分析能力も高く、監督マルコ・ベッルーニとの意思疎通も抜群。

強化部長・佐藤智成、GM竹内正樹から全幅の信頼を得ている。

補強担当として見れば、J2でも屈指の存在と言っていいだろう。

それは私も認める。

---

では、現在のスターティングメンバーはどうだろうか。

GKには元日本代表・郷田京。

最後尾からチームを支える絶対的守護神だ。

センターバックは長谷川智樹と宇津木健太。

高さ、対人、統率力。

J2トップクラスのコンビと言っていい。

両サイドバックは葉山隼人と毛利良一。

葉山は豊富な運動量で左サイドを上下動し続け、守備でも献身的に戦う。

毛利は二十歳ながら右サイドを任される期待の若手であり、将来性は非常に高い。

中盤には戸塚彩加とエミリオ・アルバレス。

危険なエリアを潰し続ける戸塚。

ゲームを組み立てるエミリオ。

攻守のバランスはリーグでも屈指である。

左には経験豊富な森川佑。

右にはフィジカルを武器とする川崎大志。

そしてトップ下には途中加入のダニエル・ロドリゲス。

最前線には材木座義輝。

得点数だけを見ると批判されがちだが、ポストプレーとアシスト能力はリーグ最高クラスであり、周囲の選手を生かす能力は代えが利かない。

この十一人だけを見れば、現時点でメンバーに異論を唱える人は少ないだろう。

---

一方で、気になる点もある。

福岡レガーロ戦。

万条富隆を中心とする、いわゆる「万条グループ」。

彼らは全員がメンバー外だった。

ベンチ入りすら果たせなかったのである。

もちろん、現状の実力だけを見れば納得できる部分はある。

万条富隆をはじめ、多くは前任スカウト時代に獲得された選手たちだ。

現在のレギュラー陣との差は決して小さくない。

それでも、長いリーグ戦を考えれば、試合に絡めない選手が増え続けることは、チーム運営として決してプラスとは言い切れない。

怪我。

累積警告。

過密日程。

そうした時に、試合勘のない選手を送り出さなければならない可能性もある。

---

私は比企谷を否定したいわけではない。

むしろ昨年からの仕事ぶりは高く評価している。

だが、補強の成功と、チームマネジメントの成功は同じではない。

勝っている今だからこそ、見えない問題を見逃してはいけない。

---

次節の相手は横浜マンゲールFC。

元日本代表で海外挑戦も経験したDMF・谷口修吾を擁する難敵である。

谷口は今シーズン絶不調とはいえ、一度調子を取り戻せば試合を支配できる選手だ。

この試合で連勝できれば、エストレヤ千葉は本物だという評価はさらに強まるだろう。

しかし敗れた時。

その瞬間、今は見えないチーム内部の課題が、一気に表面化するかもしれない。

私はこれからも、勝敗だけではなく、その裏側にある現実を伝え続けたい。