第261話〜第280話
第261話〜第280話
## 第261話 最も与えてはいけないもの
後半四十五分。
戸部翔がピッチへ入る。
トップ下。
いつものポジションへ静かに立つ。
その姿を見た瞬間だった。
愛媛ベンチの空気が変わる。
監督が思わず顔をしかめた。
「……戸部か。」
隣のヘッドコーチも小さく息を吐く。
「この時間で投入しますか。」
監督は静かに頷いた。
「ああ。」
「比企谷らしい。」
---
監督は腕を組みながらピッチを見る。
「ダニエルとはタイプが違う。」
「運動量は落ちる。」
「守備も狙える。」
「だが。」
「一番怖いものを持っている。」
ヘッドコーチも苦笑した。
「フリーキックですね。」
監督は即答する。
「ああ。」
「絶対に。」
「ゴール前で倒すな。」
---
コーチが選手へ大声で指示を飛ばす。
「ファウルするな!」
「特にゴール前!」
「不用意に足を出すな!」
愛媛イレブンが一斉に頷く。
---
実況がその様子に気付く。
「愛媛ベンチ。」
「かなり警戒していますね。」
解説も苦笑した。
「当然です。」
「戸部翔選手のフリーキックは。」
「J2でも屈指です。」
「昨シーズンも。」
「直接フリーキックで何度も試合を決めています。」
「そして。」
「今シーズンも同じです。」
「セットプレー一つで。」
「勝点を引き寄せてきた選手です。」
実況も資料を見ながら続ける。
「相手からすると。」
「ゴール前のファウルは。」
「PKを与えるくらい嫌でしょうね。」
「そのくらいの存在です。」
---
愛媛監督は選手たちへ最後の指示を送る。
「聞け!」
「戸部は。」
「三十メートル以内なら射程だと思え!」
「絶対に中央で倒すな!」
「サイドでも不用意に当たるな!」
「身体を寄せろ!」
「足を出すな!」
「はい!」
選手たちの返事が響く。
---
ピッチでは。
戸部がゆっくり周囲を見渡していた。
渡辺。
天野。
桐生。
轟。
相手の立ち位置を一つひとつ確認する。
走り回ることはない。
ただ。
頭の中では、次の一手を組み立てていた。
八幡はベンチからその姿を見つめ、小さく呟く。
「お前なら。」
「一本で試合を変えられる。」
後半も終盤。
勝負は、セットプレー一つさえ許されない緊張感の中へ入っていった。
## 第262話 決戦の位置
後半アディショナルタイム。
**4分。**
第四審判がボードを掲げる。
スタジアムがどよめく。
実況が伝えた。
「後半のアディショナルタイムは4分!」
「残された時間はあとわずかです!」
---
後半47分。
千葉ボール。
宇津木から戸塚。
戸塚はエミリオへ預ける。
エミリオはワンタッチで中央へ。
「戸部!」
戸部翔が前を向く。
渡辺が寄せる。
戸部は慌てない。
ゆっくりと右足を振る。
マティアスへ。
しかし、そのパスは強くない。
あえて速度を落としたボールだった。
実況が首をかしげる。
「遅いパスです!」
マティアスは理解していた。
ワンタッチで左へ流す。
塩川康文。
塩川もダイレクト。
再び中央。
戸部へ戻る。
愛媛守備陣が中央へ圧縮する。
その瞬間。
戸部が右足を振り抜く。
大きなサイドチェンジ。
右サイド。
川崎大志へ一直線。
実況が声を張り上げる。
「見えていた!」
「戸部翔!」
「見事な展開です!」
---
川崎が胸トラップ。
縦へ勝負。
相手SBが対応する。
川崎は一度止まり。
鋭く中へ切れ込む。
右足へ持ち替える。
抜けた。
「危ない!」
愛媛DFが慌てて追う。
もう間に合わない。
咄嗟に。
ユニフォームを掴んだ。
グイッ。
川崎が倒れる。
「ピーーーッ!」
主審の笛。
ファウル。
実況が立ち上がる。
「ファウルです!」
「千葉!」
「最高の位置でフリーキックを獲得しました!」
---
実況が位置を確認する。
「ゴールまで約23メートル。」
「やや右寄り。」
解説もすぐに口を開く。
「この位置。」
「実は右利きにとっては簡単ではありません。」
実況が頷く。
「ゴールへ曲げようとしても。」
「右利きでは外へ逃げやすい角度ですね。」
「そうです。」
「壁を越えながら内側へ巻くのが難しい。」
「そのため、この位置はクロスを選ぶ選手も少なくありません。」
実況が続ける。
「ですが。」
「戸部翔選手だけは別です。」
解説は力強く頷いた。
「昨シーズンも。」
「今シーズンも。」
「この角度から直接決めています。」
「本来は難しい右側のフリーキックを。」
「何本もゴールへ変えてきた実績があります。」
「だから愛媛は。」
「直接シュートを捨て切れない。」
---
愛媛ベンチ。
監督が苦い表情を浮かべる。
「最悪だ……。」
ヘッドコーチも息を吐いた。
「右利きには難しい位置。」
「普通なら。」
「直接はそこまで警戒しません。」
「でも。」
「相手は戸部です。」
監督は頷く。
「あいつだけは別だ。」
「この角度でも。」
「ゴールを狙ってくる。」
---
アウェーゴール裏。
「戸部ーーー!!」
「決めろーーー!!」
「頼む!!」
千葉サポーターの声援が響き渡る。
ホームゴール裏も負けない。
「壁!」
「絶対止めろ!」
「GK!」
「頼むぞ!」
両サポーターの大声援がスタジアム全体を包み込んだ。
---
戸部はゆっくりとボールをセットする。
芝を軽く踏み固める。
ボールの向きを微調整する。
そして。
三歩後ろへ下がった。
ゴールを見る。
壁を見る。
GKの立ち位置を見る。
再びゴールを見る。
表情は変わらない。
この独特な角度。
普通の右利きならクロスを選ぶ。
しかし。
戸部翔には、この位置からでもゴールを決めてきた実績があった。
スタジアム全体が息を呑む中。
戸部は静かに、キックの瞬間を待っていた。
## 第263話 最後の作戦
後半アディショナルタイム三分。
フリーキック。
ゴールまで約23メートル。
やや右寄り。
戸部翔がボールの前に立つ。
スタジアム全体が静まり返る。
愛媛は五枚の壁を作る。
GKも何度もポジションを修正する。
実況が口を開く。
「愛媛。」
「完全に戸部選手の直接シュートを警戒しています。」
解説も頷く。
「当然でしょう。」
「この角度は本来、右利きには難しい位置です。」
「ですが。」
「戸部選手は、この位置から何本も決めてきました。」
「だから。」
「直接を捨てることができません。」
---
戸部は壁を見つめる。
GKを見る。
そして小さく息を吐いた。
「……。」
そこへ。
エミリオ・アルバレスが歩いてくる。
反対側からは塩川康文。
三人がボールの前に集まった。
実況が声を潜める。
「何か話しています。」
「作戦会議でしょうか。」
解説も頷く。
「十分あり得ます。」
「ここまで警戒されると。」
「戸部選手でも直接決める確率は下がります。」
「となれば。」
「別の選択肢も考えているはずです。」
---
エミリオが小声で言う。
「どうする。」
戸部は壁を見つめたまま答える。
「……直接は。」
「読まれてる。」
塩川も頷く。
「GKも最初から動く気がない。」
「壁も完全にシュート対応。」
戸部は静かに笑った。
「なら。」
「逆を突こう。」
エミリオも笑みを浮かべる。
「やっぱりそれか。」
---
エミリオはすぐに振り返る。
「川崎!」
右サイドの川崎大志が駆け寄る。
「マティアス!」
マティアス・ベニテスも走ってきた。
五人が小さな円を作る。
愛媛の選手たちは警戒を強める。
「何かあるぞ!」
天野が声を飛ばす。
渡辺も壁の外から様子をうかがう。
---
エミリオが素早く説明する。
「戸部の合図で始める。」
「タイミングだけ間違えるな。」
川崎が真剣な表情で頷く。
「了解。」
マティアスも短く答えた。
「任せろ。」
塩川は全員の顔を見渡す。
「一回しかない。」
「決めよう。」
最後に。
戸部が静かに口を開く。
「大丈夫。」
「相手は。」
「俺の右足しか見ていない。」
五人は頷き合い、それぞれのポジションへ散っていく。
実況が興奮気味に話す。
「何か仕掛けます!」
「千葉。」
「間違いなくトリックプレーを用意しています!」
スタジアム全体の視線が、ボールの前に立つ戸部翔へ集まる。
勝点3を懸けた、最後の一手が始まろうとしていた。
## 第264話 静寂の中で
後半アディショナルタイム3分。
主審が腕時計を見る。
これが、おそらく最後のチャンス。
スタジアム全体が静まり返った。
---
戸部翔がボールの後ろに立つ。
深く息を吸う。
ゴールを見る。
壁を見る。
GKを見る。
そして、もう一度ゴールを見る。
愛媛GKは微動だにしない。
「直接だ。」
そう信じている。
壁の選手たちも、戸部の右足だけを見つめていた。
---
実況が小さな声で話す。
「戸部選手。」
「まだ動きません。」
解説も静かに答える。
「相手も動きません。」
「どちらが先に動くか。」
「完全な心理戦です。」
---
ゴール前。
マティアス・ベニテスが最終ラインぎりぎりに立つ。
天野竜二がぴったりと付く。
「来るぞ。」
「分かってる。」
二人とも視線は戸部へ向けたまま。
一歩も動かない。
---
その少し後方。
川崎大志が右サイド寄りに立つ。
相手SBが距離を取る。
塩川康文は壁の外側。
誰にも気付かれないように、少しずつ立ち位置を変えていた。
エミリオはペナルティーエリア手前。
セカンドボールを狙う位置へ入る。
---
千葉ベンチ。
マルコ監督は腕を組んだまま見守る。
「八幡。」
「成功すると思うか。」
八幡は視線を外さず答える。
「直接なら。」
「ここまで警戒されれば五分五分です。」
「ですが。」
「相手は。」
「戸部の右足しか見ていません。」
「そこに隙があります。」
マルコは小さく笑った。
「だからトリックか。」
「はい。」
「戸部だからこそ。」
「直接を警戒させられる。」
「それを利用します。」
---
主審が笛を口へ運ぶ。
スタジアム全体が立ち上がる。
千葉サポーター。
「戸部ぇぇぇーーー!!」
「決めろーーー!!」
愛媛サポーター。
「止めろーーー!!」
「ここ守れーーー!!」
両チームの声援がぶつかり合う。
---
「ピーーーッ!」
主審の笛が鳴る。
戸部がゆっくりと助走を始める。
壁が一斉に飛び出す。
マティアスも動く。
川崎も走る。
塩川も一気に加速する。
スタジアム中の視線が、戸部の右足へ集まった――。
## 第265話 神がかった一撃
「来るぞ!」
愛媛守備陣が一斉に動く。
戸部がボールへ近付く。
誰もが右足を振り抜く瞬間を待った。
しかし。
**蹴らない。**
実況が思わず叫ぶ。
「またいだ!!」
戸部はボールをまたぐと、そのまま中央へ二歩移動した。
壁もGKも、一瞬動きが止まる。
「何だ!?」
---
その瞬間。
エミリオ・アルバレスが動いた。
ボールへ近付き、軽く右へ転がす。
川崎大志。
ダイレクト。
戸部へ鋭いパス。
「来た!」
戸部はペナルティーエリア手前。
ゴールまで約21メートル。
今度は真正面。
実況が興奮する。
「位置が変わった!」
「中央です!」
---
戸部はボールを受ける。
右足を引く。
マティアスがニアへ飛び出す。
塩川も逆サイドへ走る。
戸部の視線も二人へ向く。
天野が叫ぶ。
「パスだ!」
DFが一斉に二人へ反応する。
GKも横への展開を警戒して重心を動かした。
その瞬間だった。
戸部の右足が振り抜かれる。
「打ったぁ!!」
強烈な無回転気味のシュート。
壁はいない。
真正面。
GKは反応する。
だが、一歩遅れた。
ボールは鋭く伸びながらゴール右上へ突き刺さる。
**ゴール!!!**
実況が絶叫する。
「決まったぁぁぁぁぁ!!」
「戸部翔ーーー!!!」
「トリックフリーキック成功!!」
「エストレヤ千葉!!」
「土壇場で勝ち越しーーー!!!」
---
アウェーゴール裏は大爆発。
「うおおおおおおお!!」
「戸部ーーー!!!」
「天才だぁぁぁ!!」
「それだーーー!!」
千葉イレブンが一斉に戸部へ駆け寄る。
エミリオが飛び付き。
川崎が抱きつく。
塩川も笑顔で拳を突き上げた。
マティアスは戸部の頭を叩きながら笑う。
「最高だ!」
戸部は珍しく感情を爆発させた。
「よっしゃあ!!」
---
実況は興奮が収まらない。
「戸部選手!」
「誰もがクロスを予想しました!」
「マティアス選手と塩川選手へ出すように見せて!」
「最後は自ら21メートルの中央から右足一閃!!」
解説も立ち上がっていた。
「見事です!」
「これは完全に心理戦で勝ちました。」
「戸部選手の直接フリーキックを警戒させたからこそ。」
「一度ボールを動かして中央へ持ち出す。」
「そして。」
「最後はパスと見せ掛けてシュート。」
「愛媛守備陣もGKも完全に意表を突かれました。」
---
千葉ベンチ。
八幡は静かに拳を握る。
「決まった。」
マルコ監督も笑みを浮かべる。
「戸部だから成立するトリックだった。」
八幡は頷く。
「相手は。」
「最後まで戸部の右足を恐れていました。」
「だから。」
「最後の一瞬。」
「視線が塩川とマティアスへ向いた。」
「その隙を。」
「戸部は見逃しませんでした。」
---
電光掲示板が書き換わる。
**後半48分**
**愛媛サザンクロスFC 1-2 エストレヤ千葉**
エストレヤ千葉。
勝利へ限りなく近づく、劇的な勝ち越しゴールだった。
## 第266話 完全にしてやられた
戸部翔の右足から放たれたシュートがネットを揺らした瞬間。
愛媛ベンチは静まり返った。
誰一人、すぐには言葉が出ない。
---
数秒後。
愛媛監督は額に手を当てた。
「……やられた。」
ヘッドコーチも苦笑するしかなかった。
「あれは……。」
「止められません。」
監督はリプレー映像を見つめたまま、小さく息を吐く。
大型ビジョンには、先ほどのトリックプレーがスローで映し出されていた。
戸部がボールをまたぐ。
エミリオ。
川崎。
戸部へリターン。
塩川とマティアスを見る。
守備陣が反応する。
そして。
右足一閃。
「完璧だ。」
監督は静かに呟いた。
「完全に騙された。」
---
ヘッドコーチも映像から目を離せない。
「戸部の直接フリーキック。」
「それだけでも十分脅威。」
「だから全員が最初の一撃を警戒する。」
「それを逆手に取られました。」
監督は頷く。
「あの一回またぐ動作で。」
「こちらの守備は一度リセットされた。」
「そこから中央へ移動されれば。」
「もう守備の基準が狂う。」
---
GKコーチも口を開く。
「GKも責められません。」
「最初は直接フリーキック。」
「次はクロス。」
「最後はシュート。」
「三つの選択肢を一瞬で判断しなければいけません。」
監督も苦笑した。
「しかも。」
「戸部は塩川とマティアスを見る。」
「あれを見たら。」
「GKはそちらへのパスを警戒する。」
「一歩でも重心が動けば終わりだ。」
GKコーチも静かに頷く。
「正直。」
「あれはGKの責任ではありません。」
「完全に。」
「攻撃側の勝ちです。」
---
大型ビジョンでは再びリプレー。
実況の声がスタジアムへ流れる。
『戸部選手が最後まで相手を見ていました!』
『見事なトリックフリーキックです!』
愛媛監督は腕を組んだ。
「比企谷八幡。」
「最後まで。」
「こちらの心理を読んできたか。」
ヘッドコーチも頷く。
「戸部を投入した時点で。」
「この形まで考えていたんでしょう。」
「いや。」
監督は首を横に振る。
「戸部を投入した時点ではない。」
「川崎が倒された瞬間。」
「戸部。」
「エミリオ。」
「塩川。」
「あの三人が集まって。」
「その場で組み立てた可能性もある。」
「どちらにしても。」
「見事だった。」
---
監督はゆっくり立ち上がる。
悔しさはある。
しかし。
その表情には相手への敬意も浮かんでいた。
「認めよう。」
「今のプレーは。」
「完全にしてやられた。」
ベンチ全員が黙って頷く。
戸部翔。
そして比企谷八幡。
エストレヤ千葉が繰り出した最後の一手は、愛媛ベンチさえも唸らせる一撃だった。
## 第267話 想定外だったのは
一方、その頃。
エストレヤ千葉ベンチ。
ゴールが決まった瞬間。
「よっしゃあ!!」
「戸部!!」
ベンチメンバー全員が立ち上がる。
マルコ監督も思わず拳を握る。
「素晴らしい!」
スタッフ同士もハイタッチを交わしていた。
しかし。
その中で一人だけ。
八幡は別の意味で固まっていた。
「…………。」
マルコ監督が笑顔で振り返る。
「八幡!」
「今のはすごいな!」
「さすがだ!」
八幡は引きつった笑みを浮かべる。
「は……はは。」
「ありがとうございます。」
心の中では。
(いやいや。)
(待て待て待て。)
(俺はあんなトリックプレー知らないぞ。)
八幡はリプレーを見ながら焦り始める。
(戸部がまたいで。)
(エミリオ。)
(川崎。)
(戸部へ戻して。)
(塩川とマティアスを囮にして。)
(最後にシュート。)
(……。)
(誰が考えたんだ?)
数秒考えた。
そして結論が出る。
(あいつらだ。)
(戸部、エミリオ、塩川、川崎、マティアス。)
(あの五人がその場で考えた。)
(俺は本当に知らない。)
八幡は思わず頭を抱えそうになった。
(いやいや、多分聞かれる。)
(試合後、絶対聞かれる。)
『あのトリックプレーは比企谷さんの指示ですか?』
(……違う。)
(俺じゃない。)
(本当に知らない。)
マルコ監督は隣で満足そうに笑っている。
「やっぱり。」
「お前は面白いことを考えるな。」
八幡は心の中で叫ぶ。
(だから違うって!)
(俺じゃない!)
(俺も今初めて見たんだ!)
その時。
ゴールを決めた戸部がベンチへ向かって親指を立てる。
八幡も反射的に親指を立て返した。
しかし内心は。
(後で絶対聞こう。)
(誰が考えたんだ、あれ。)
(練習でも一回もやってないぞ。)
八幡は苦笑するしかなかった。
まさか相手だけではなく自分まで驚かされるとは思ってもいなかったのである。
## 第268話 犯人探し
戸部のゴールで勝ち越した千葉。
残された時間は、あとわずか。
---
「集中!」
八幡の声がベンチから飛ぶ。
黒崎は最後まで轟を離さない。
轟が下りる。
黒崎も付く。
右へ。
左へ。
最後までマンマークを続けた。
渡辺も最後のパスを狙う。
しかし。
戸塚とエミリオがコースを限定。
愛媛は決定機を作れない。
---
「ピーーーーーッ!」
主審の長い笛がスタジアムへ響いた。
**試合終了。**
**愛媛サザンクロスFC 1-2 エストレヤ千葉**
アウェーゴール裏が歓喜に包まれる。
「うおおおおお!!」
「勝ったぁーー!!」
「リベンジ成功!」
選手たちは互いに抱き合い、勝利を喜んだ。
マティアスは戸部の肩を叩く。
「最高だった!」
戸部も笑顔で応える。
「お前らのおかげだ。」
---
千葉ベンチ。
マルコ監督が八幡へ手を差し出す。
「ナイスゲーム。」
八幡も握手を返した。
「ありがとうございました。」
しかし。
八幡の頭の中は別のことでいっぱいだった。
(……いや。)
(それより。)
(あれだ。)
---
選手たちがベンチへ戻ってくる。
汗だくのまま笑顔を見せる戸部。
エミリオ。
塩川。
川崎。
マティアス。
八幡は五人を呼び止めた。
「ちょっといいか。」
「はい?」
戸部たちが集まる。
八幡は真顔だった。
「一つ聞く。」
五人が顔を見合わせる。
「あの二点目。」
「誰のアイデアだ?」
一瞬。
全員が固まった。
「え?」
戸部が思わず聞き返す。
「いや。」
「最後のトリックプレー。」
「誰が考えた?」
エミリオが笑い始める。
「ああ、そのことですか。」
八幡は真剣だった。
「試合後。」
「絶対俺が考えたことにされる。」
「でも。」
「俺、本当に知らない。」
「だから。」
「誰が考えたのか教えてくれ。」
その一言で。
五人は顔を見合わせると、一斉に吹き出した。
「はははは!」
「八幡さん!」
「そこ気にしてたんですか!」
八幡は腕を組む。
「気にする。」
「めちゃくちゃ気にする。」
「本当に俺じゃないからな。」
戸部は笑いをこらえながら答えた。
「実は……。」
五人は互いの顔を見ながら、小さく笑った。
その"犯人"が、ようやく明らかになろうとしていた。
## 第269話 首謀者
試合終了後。
ロッカールームへ戻る通路。
勝利の余韻が漂う中、選手たちは笑顔で互いを称え合っていた。
「ナイスゲーム!」
「マティアス、決定力さすが!」
「黒崎、轟を完璧に消してたな!」
「戸部、あれは反則だろ!」
笑い声があちこちで上がる。
しかし。
八幡だけは妙に真剣な表情だった。
腕を組み、何かを考え込んでいる。
その姿に戸部が気付く。
「八幡さん?」
「どうしました?」
八幡は五人を見渡した。
戸部。
エミリオ。
塩川。
川崎。
マティアス。
「悪い。」
「ちょっと集まってくれ。」
五人は顔を見合わせる。
「何だろ。」
「反省会?」
「いや、違うな。」
輪になって集まる。
八幡は一度深呼吸した。
そして真顔で聞く。
「二点目。」
「誰が最初に考えた。」
一瞬。
五人ともきょとんとした。
「え?」
戸部が聞き返す。
「トリックプレーのことですか?」
「ああ。」
「最初に言い出したのは誰だ。」
「知りたい。」
川崎が遠慮がちに手を挙げた。
「あ……。」
「最初に言ったのは、多分俺です。」
八幡は視線を向ける。
「詳しく。」
川崎は少し照れながら話し始めた。
「戸部さんが蹴るって聞いた時に。」
「相手、絶対直接警戒するじゃないですか。」
「だから。」
「一回動かした方が面白いんじゃないですかって。」
「戸部さんなら一回またいでも、相手止まるかなって思って。」
八幡は静かに頷く。
「なるほど。」
「そこから?」
戸部が笑った。
「そこから俺です。」
「またいだらGKも壁も一回止まるだろうなって。」
「だったら中央へ入れば、もっと角度いいなって思って。」
エミリオも笑いながら続ける。
「俺は。」
「だったら最初に俺が触ろうって。」
「ボールを一回動かせばセットプレーじゃなくなるし。」
「壁も崩れる。」
「中央も空く。」
「そう考えました。」
塩川も手を挙げる。
「俺は囮役ですね。」
「俺とマティアスへ出すように見せれば。」
「DFもGKも絶対そっちを見る。」
「その一瞬あれば。」
「戸部さんなら打てると思いました。」
マティアスは笑顔で親指を立てる。
「俺は走るだけ。」
「ニアへ全力で入れば。」
「天野さんも絶対付いてくる。」
「それで中央が空くかなって。」
戸部が笑いながら締めた。
「結局。」
「川崎が最初。」
「そこへ俺。」
「エミリオ。」
「塩川。」
「マティアス。」
「全員で少しずつ足して。」
「あの形になりました。」
五人は自然と笑い合う。
「その場で三十秒くらいでしたね。」
「練習なんて一回もしてません。」
「ぶっつけ本番です。」
「成功してよかったですよ。」
「失敗したら怒られてましたね。」
全員が笑った。
---
八幡は静かに頷く。
「そうか。」
「よくあそこまで考えた。」
「ナイスプレーだった。」
表情はいつも通り。
冷静だった。
しかし。
心の中では。
(終わった……。)
(完全に終わった。)
頭の中で嫌な未来が再生される。
『比企谷さん。』
『あのトリックプレーはいつから練習していたんですか?』
(してない。)
『あの発想は比企谷さんならではですね。』
(違う。)
『あそこまで読んでいたとは。』
(読んでない。)
八幡は内心で頭を抱えた。
(俺、本当に知らなかったんだ。)
(練習でもやってない。)
(試合中に初めて見た。)
(なのに。)
(絶対また俺のアイディアになる。)
最近は特にそうだった。
黒崎へのマンマーク。
新加入選手の起用。
試合中の修正。
何か新しいことをやれば。
『比企谷八幡の采配』
『比企谷八幡の発想』
そう報じられる。
(いや。)
(もちろん俺が考えたものもある。)
(黒崎を轟に付けたのは俺。)
(戸部を投入したのも俺。)
(でも。)
(最後のトリックだけは違う。)
(完全にあいつら五人のアイディアだ。)
八幡は五人を見る。
嬉しそうに笑い合っている。
(これでいい。)
(選手が自分たちで考えて。)
(自分たちで答えを出せる。)
(それが一番強いチームだ。)
そう思う一方で。
別の感情もあった。
(頼む……。)
(記者会見で。)
(俺だけの手柄にはしないでくれ……。)
その時だった。
マルコ監督が笑顔で近付いてくる。
「八幡!」
「いやぁ、さすがだ。」
「最後のアイディアは見事だった!」
八幡は一瞬固まる。
「……。」
「ありがとうございます。」
そう答えるしかなかった。
心の中では。
(だから。)
(違うんです。)
(俺じゃなくて。)
(戸部たち五人なんです……。)
誰にも聞こえない小さな心の叫びだけが、静かに胸の中へ消えていった。
## 第270話 勘違いは広がる
試合終了後。
ピッチ中央。
両チームの選手たちが健闘を称え合い、ユニフォームを交換し、握手を交わしていく。
その少し後ろでは、両クラブのスタッフ同士も挨拶を始めていた。
マルコ監督が愛媛監督のもとへ歩み寄る。
「ありがとうございました。」
「こちらこそ。」
二人は固く握手を交わす。
「非常にいい試合でした。」
「最後までどちらに転ぶか分かりませんでした。」
「またよろしくお願いします。」
「ええ。」
互いに笑顔で別れる。
---
その横。
八幡も愛媛監督の前へ歩いた。
「本日はありがとうございました。」
軽く頭を下げる。
愛媛監督はすぐに右手を差し出した。
「比企谷さん。」
「ありがとうございました。」
二人は握手を交わす。
監督は笑みを浮かべながら話し始めた。
「最後のフリーキック。」
「あれは見事でした。」
八幡は一瞬だけ言葉に詰まる。
「……ありがとうございます。」
監督は続ける。
「正直。」
「戸部選手の直接フリーキックは最初から警戒していました。」
「右利きであの位置。」
「普通なら直接狙うには難しい角度です。」
「ですが。」
「戸部選手は、その角度から何本も決めてきた実績があります。」
「だから。」
「直接も。」
「クロスも。」
「どちらも捨て切れませんでした。」
八幡は静かに頷く。
「はい。」
「そして。」
監督は苦笑した。
「まさか。」
「一度またいで中央へ持ち出すとは。」
「しかも。」
「塩川選手とマティアス選手を囮に使う。」
「完全にこちらの心理を突かれました。」
「お見事でした。」
八幡は営業用の笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます。」
しかし。
心の中では。
(違います。)
(俺じゃありません。)
---
そこへ愛媛のヘッドコーチもやって来た。
「比企谷さん。」
「本当に勉強になりました。」
「最後のセットプレー。」
「完全にやられました。」
「試合が終わったら、スタッフ全員で映像を見返そうと思います。」
「素晴らしいアイディアでした。」
八幡は笑顔を崩さない。
「ありがとうございます。」
(違う。)
(だから俺じゃない。)
(考えたのは戸部たち五人だ。)
---
さらにGKコーチも握手を求める。
「最後のプレー。」
「GKは責められません。」
「一度またがれた時点で。」
「直接か。」
「クロスか。」
「全部考え直さなければいけませんでした。」
「そして。」
「戸部選手が塩川選手とマティアス選手を見る。」
「あの瞬間。」
「完全にそちらへ意識が向きました。」
「心理戦で負けました。」
八幡は頭を下げる。
「ありがとうございます。」
(いや。)
(本当に違うんだって……。)
---
愛媛監督は最後にもう一度握手を交わした。
「比企谷さん。」
「分析も。」
「試合中の修正も。」
「いつも感心しています。」
「今日も。」
「黒崎選手を轟へ付けた修正は見事でした。」
「そして。」
「最後のセットプレー。」
「やはり素晴らしかった。」
八幡は苦笑いを浮かべる。
「ありがとうございます。」
(黒崎の修正は俺。)
(でも。)
(セットプレーだけは違うんです。)
---
愛媛スタッフが去っていく。
その背中を見送りながら。
八幡は静かにため息をついた。
(まただ……。)
(また全部俺のアイディアになってる。)
隣へマルコ監督が歩いてきた。
「随分褒められていたな。」
八幡は苦笑する。
「そうですね。」
「でも。」
「最後のセットプレーだけは、本当に俺じゃないんですよ。」
マルコは笑った。
「そうなのか?」
「はい。」
「試合中に初めて見ました。」
「俺も驚きました。」
マルコは少し目を丸くしたあと、笑みを浮かべた。
「それはそれでいいことだ。」
「選手たちが。」
「自分たちで考え。」
「自分たちで答えを出せるようになってきた証拠だ。」
八幡も小さく頷く。
「それは本当にそう思います。」
心の中では。
(選手が考えてくれるのは嬉しい。)
(でも。)
(頼むから。)
(俺だけの手柄にはしないでくれ……。)
勝利の喜びとは別に。
八幡は、試合後のインタビューで何を聞かれるのかを考え、少しだけ頭が痛くなっていた。
## 第271話 勝利監督インタビュー
試合終了から約十分後。
スタジアム内のインタビュースペース。
勝利チームの監督として、マルコ・ベッルーニが姿を現した。
フラッシュが一斉に光る。
「本日は勝利、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
マルコは穏やかな笑みを浮かべた。
---
最初の質問。
「まず、試合全体を振り返ってください。」
マルコは少し考えてから答える。
「非常に難しい試合でした。」
「愛媛さんは開幕戦でも対戦しましたが、その時と同様に組織力が高く、簡単に崩せる相手ではありません。」
「特に。」
「渡辺選手を中心とした攻撃は、本当に質が高かった。」
「こちらも何度も苦しめられました。」
「だからこそ。」
「最後まで集中力を切らさなかった選手たちを褒めたいですね。」
---
記者が続ける。
「前半は理想的な展開でした。」
「ハーフタイムではどのような指示を?」
「特別なことはありません。」
マルコは首を横に振る。
「前半の戦い方を続けよう。」
「それだけです。」
「焦って前へ出る必要もありませんでした。」
「自分たちのサッカーを続ければ、必ずチャンスは来ると伝えました。」
---
別の記者が手を挙げる。
「後半。」
「轟七海選手が投入されてから流れが変わりました。」
「あの対応について教えてください。」
マルコは笑みを浮かべる。
「あれは非常に難しかったですね。」
「正直。」
「我々も予想していたタイプのFWではありませんでした。」
「189センチというサイズがありながら、あれだけ動く。」
「非常に優秀な選手です。」
「公式戦デビューとは思えませんでした。」
---
「そこから黒崎選手を投入しました。」
「理由は?」
「彼は轟選手とユース年代で対戦経験がありました。」
「プレースタイルを知っていた。」
「そして。」
「最近の黒崎は非常に成長しています。」
「思い切って任せようと判断しました。」
「結果として。」
「彼は期待以上の仕事をしてくれました。」
---
さらに質問が飛ぶ。
「夏加入選手の評価をお願いします。」
マルコは笑顔になる。
「全員が非常に良かったです。」
「安原は攻守に存在感を見せました。」
「坂本は落ち着いた守備とビルドアップ。」
「塩川は決勝点につながるアシスト。」
「マティアスは来日初ゴール。」
「それぞれが役割を果たしてくれました。」
---
記者が最後の質問を口にする。
「決勝点となった。」
「戸部選手のトリックフリーキックです。」
「あのプレーは事前に準備していたものなのでしょうか。」
会場が静かになる。
全員がマルコの答えを待った。
マルコは少し笑う。
「その質問は。」
「私ではなく。」
「選手たちに聞いてあげてください。」
記者たちが少し驚く。
マルコは続けた。
「あのプレーは。」
「ピッチの中で選手たちが判断したものです。」
「私はベンチで見ていましたが。」
「私自身も驚きました。」
会場が少しざわつく。
「つまり。」
「監督の指示では?」
「違います。」
マルコははっきりと言い切った。
「もちろん。」
「戸部を投入した判断。」
「試合の流れを見た交代。」
「それは私たち首脳陣の仕事です。」
「ですが。」
「最後のあの形は。」
「選手たちがピッチ上で話し合い。」
「自分たちで考え。」
「実行したプレーです。」
「私は。」
「それを成功させた彼らを誇りに思います。」
記者たちは一斉にメモを取る。
「つまり。」
「選手のアドリブだったと。」
「そうです。」
マルコは笑顔で頷いた。
「サッカーは。」
「監督だけが作るものではありません。」
「ピッチの中には十一人の判断があります。」
「今日の決勝点は。」
「選手たちの勇気と発想が生んだゴールでした。」
インタビュールームは拍手に包まれる。
その様子を少し離れた場所で見ていた八幡は、小さく胸をなで下ろした。
(助かった……。)
(ちゃんと選手たちのプレーだって言ってくれた。)
ほんの少しだけ、肩の力が抜けるのだった。
## 第272話 試合後のネット掲示板
**【J2第18節】エストレヤ千葉 2-1 愛媛サザンクロスFC【開幕戦のリベンジ成功】**
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**1 名無しさん**
勝ったあああああ!!
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**2 名無しさん**
開幕戦の借り返したな。
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**3 名無しさん**
普通に熱い試合だった。
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**4 名無しさん**
愛媛も強かった。
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**5 名無しさん**
轟七海何者だよ。
---
**6 名無しさん**
デビュー戦とは思えん。
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**7 名無しさん**
189センチであの動きは反則。
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**8 名無しさん**
轟投入から流れ完全に変わった。
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**9 名無しさん**
でも黒崎投入でまた流れ戻した。
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**10 名無しさん**
黒崎のマンマーク最高だった。
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**11 名無しさん**
去年までユースだった選手とは思えない。
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**12 名無しさん**
プロ一年目であれだけ落ち着いて守れるのすごい。
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**13 名無しさん**
轟とユース時代に対戦経験あったらしい。
---
**14 名無しさん**
だからあんなに対応できたのか。
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**15 名無しさん**
坂本も責められない。
轟が特殊すぎた。
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**16 名無しさん**
坂本も十分良かった。
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**17 名無しさん**
安原どうだった?
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**18 名無しさん**
攻撃はかなり良かった。
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**19 名無しさん**
桐生相手に守備は苦労してたけど、攻撃で押し返してた。
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**20 名無しさん**
塩川やっぱりうまい。
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**21 名無しさん**
影消してからのアシストえぐい。
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**22 名無しさん**
マティアス来日初ゴールおめでとう。
---
**23 名無しさん**
完全に当たり助っ人。
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**24 名無しさん**
で。
最後のFK。
---
**25 名無しさん**
意味分からんwww
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**26 名無しさん**
戸部またぐ。
↓
エミリオ。
↓
川崎。
↓
戸部。
↓
塩川とマティアスを見る。
↓
そのままシュート。
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**27 名無しさん**
GK責めるのは酷。
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**28 名無しさん**
あれ絶対クロス来ると思う。
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**29 名無しさん**
完全に騙された。
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**30 名無しさん**
あれ考えた人天才。
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**31 名無しさん**
また比企谷?
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**32 名無しさん**
監督インタビュー見た?
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**33 名無しさん**
マルコ監督。
「あれは選手たちがピッチ上で判断したプレー」
って言ってた。
---
**34 名無しさん**
つまりアドリブ?
---
**35 名無しさん**
戸部たちが考えたらしい。
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**36 名無しさん**
マジですごいな。
---
**37 名無しさん**
でも比企谷がそういう判断できる環境作ってるんだろ。
---
**38 名無しさん**
いや。
比企谷は監督じゃない。
分析官兼スカウト。
監督はマルコ。
---
**39 名無しさん**
でも途中修正は比企谷の仕事って感じだよな。
---
**40 名無しさん**
黒崎投入とか完全に当たった。
---
**41 名無しさん**
夏補強全部いいな。
---
**42 名無しさん**
安原。
坂本。
塩川。
マティアス。
村上。
全員期待できる。
---
**43 名無しさん**
村上は今日は出てないけど、将来楽しみ。
---
**44 名無しさん**
夏の補強成功じゃね?
---
**45 名無しさん**
ダニエルも忘れるな。
---
**46 名無しさん**
ダニエルは4月加入だから夏補強じゃないぞ。
---
**47 名無しさん**
そうだった。
でもダニエル来てからチーム変わったよな。
---
**48 名無しさん**
攻撃の組み立てが全然違う。
---
**49 名無しさん**
今日も交代まで効いてた。
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**50 名無しさん**
黒崎も評価上がったな。
---
**51 名無しさん**
去年ユース。
今年プロ一年目。
轟止めたのは自信になる。
---
**52 名無しさん**
今日のMVP誰?
---
**53 名無しさん**
戸部。
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**54 名無しさん**
黒崎。
---
**55 名無しさん**
塩川。
---
**56 名無しさん**
マティアス。
---
**57 名無しさん**
候補多すぎるな。
---
**58 名無しさん**
結論。
エストレヤ千葉。
本気で優勝争いできるチームになってきた。
## 第273話 アウェーに響く歓声
試合終了後。
愛媛のスタジアム。
アウェーゴール裏から続々とエストレヤ千葉サポーターが出てくる。
青と金のユニフォーム。
首にはタオルマフラー。
誰もが笑顔だった。
---
「よっしゃあああ!」
「リベンジ成功!」
「開幕戦の借り返したぞ!」
拍手があちこちで起こる。
「ナイスゲーム!」
「最高!」
「遠征来てよかった!」
---
二十代くらいの男性二人。
「いやー。」
「最後まで分からなかったな。」
「轟入った時。」
「正直逆転されると思った。」
「俺も。」
「完全に流れ持っていかれてた。」
---
その横。
年配の男性が話に入る。
「でも。」
「黒崎入ってから変わった。」
「轟を自由にさせなかった。」
「プロ一年目とは思えん。」
隣の女性も頷く。
「去年までユースだったんだよね?」
「そう。」
「だから今日の試合は大きいよ。」
「自信になる。」
---
別のグループ。
「夏加入組すごくない?」
「全員仕事した。」
「安原。」
「坂本。」
「塩川。」
「マティアス。」
「みんな当たり。」
「村上は今日は出番なかったけど、期待しかない。」
「今年の補強、本当にいい。」
---
「マティアス。」
「初ゴールおめでとう。」
「決めるべきところで決める。」
「やっぱCFは点取ってなんぼ。」
「頼もしい。」
---
「塩川も最高。」
「派手じゃないけど。」
「一番嫌なところに顔出す。」
「守備もサボらない。」
「チームのために走れる選手。」
「こういう選手好きだわ。」
---
少し離れた場所。
戸部の話題で盛り上がるグループ。
「あのFK。」
「意味分からん。」
「何回見ても騙される。」
「俺。」
「またいだ時点でクロス確信した。」
「塩川とマティアス見たもんな。」
「完全にやられた。」
「GK責められない。」
全員が苦笑する。
---
三十代くらいの男性がスマホを見せる。
「監督インタビュー。」
「見た?」
「見た。」
「最後のプレー。」
「選手が試合中に考えたらしい。」
「それが一番驚いた。」
「戸部。」
「エミリオ。」
「塩川。」
「川崎。」
「マティアス。」
「この五人で考えたとか。」
「判断力すごいな。」
---
「でも。」
別の男性が笑う。
「最近ネット見てると。」
「何でも比企谷のアイディア扱いされるよな。」
周りが笑う。
「分かる。」
「補強も。」
「試合中の修正も。」
「全部比企谷。」
「まあ補強は実際そうだけど。」
「でも今日のFKは選手だったらしい。」
「マルコ監督が言ってたな。」
---
駅へ向かうサポーターたち。
自然と順位の話になる。
「これで首位との差どうなる?」
「まだ分からん。」
「でも。」
「2位は守れそうだな。」
「今日負けてたら嫌な流れだった。」
「開幕戦で負けた相手だったし。」
「だから今日の勝ちは本当に大きい。」
「勝点3以上の価値ある。」
全員が頷いた。
---
年配のサポーターがゆっくり口を開く。
「今年の千葉は。」
「首位を追い掛ける立場だけど。」
「ちゃんと優勝争いしてる。」
「去年までとは違う。」
「勝って当たり前じゃない。」
「でも。」
「勝負どころで勝ち切れるようになってきた。」
隣の男性も笑う。
「今日も。」
「追い付かれて嫌な流れだった。」
「それでも。」
「最後に勝ち切った。」
「こういう試合を拾えるチームは強い。」
---
最後尾を歩く親子。
小学生くらいの男の子が父親に聞く。
「パパ。」
「今年優勝できるかな?」
父親は少し考えてから笑顔で答えた。
「簡単じゃないよ。」
「まだ試合はいっぱいある。」
「でも。」
「今年の千葉は。」
「最後まで優勝を争えるチームだ。」
男の子は大きく頷いた。
「次も応援行こう!」
「もちろん。」
アウェーで掴んだ勝点3。
それは首位を追い続けるエストレヤ千葉にとって、優勝争いを続けるための大きな、大きな一勝となった。
### 第274話 ネット掲示板「比企谷八幡アンチスレ」
**【J2で騒がれすぎ】比企谷八幡はJ1で通用するのか? Part12**
---
**1 名無しさん**
最近また名前聞くようになったから立てた。
J2では結果出してるけど、正直J1でも通用すると思う?
---
**2 名無しさん**
俺は無理派。
---
**3 名無しさん**
補強は当たってる。
それは認める。
---
**4 名無しさん**
でもJ2だからじゃね?
---
**5 名無しさん**
J1はもっと情報量もプレッシャーも違う。
---
**6 名無しさん**
今持ち上げすぎなんだよ。
---
**7 名無しさん**
選手もいいだけじゃない?
---
**8 名無しさん**
マルコ監督も忘れるな。
監督の力もある。
---
**9 名無しさん**
最近何でも比企谷比企谷って記事になるのが嫌なんだよ。
---
**10 名無しさん**
今日も最後のFK。
結局監督が「選手が考えた」って言ってたじゃん。
---
**11 名無しさん**
あれを全部比企谷の手柄にするのは違う。
---
**12 名無しさん**
黒崎の交代とかは普通に良かったと思う。
でも全部比企谷は違う。
---
**13 名無しさん**
J2だから研究されても何とかなる。
J1は毎週もっと徹底的に研究されるぞ。
---
**14 名無しさん**
そこで結果出してから評価したい。
---
**15 名無しさん**
俺もそんな感じ。
---
**16 名無しさん**
アンチだけど。
結果は認める。
---
**17 名無しさん**
補強成功率高いのは事実。
---
**18 名無しさん**
ただJ1で同じことできるかは別。
---
**19 名無しさん**
そこなんだよ。
---
**20 名無しさん**
まだ証明してない。
---
**21 名無しさん**
「天才」とか言われてるけど早すぎる。
---
**22 名無しさん**
昇格してから判断したい。
---
**23 名無しさん**
ここで一応言っとく。
プライベートの話は禁止な。
---
**24 名無しさん**
当然。
---
**25 名無しさん**
本人の私生活とか興味ない。
---
**26 名無しさん**
家族とか恋愛とかもなし。
---
**27 名無しさん**
試合だけ語れ。
---
**28 名無しさん**
写真貼るのもやめろ。
---
**29 名無しさん**
スタジアムで勝手に撮った写真とか貼るやついたら通報でいい。
---
**30 名無しさん**
アンチだからって何してもいいわけじゃない。
---
**31 名無しさん**
そこは守ろう。
---
**32 名無しさん**
人として当たり前。
---
**33 名無しさん**
選手やスタッフの盗撮は論外。
---
**34 名無しさん**
SNSの切り抜きならともかく。
現地で勝手に撮った写真貼るのは違う。
---
**35 名無しさん**
本人に迷惑掛けるのはアンチじゃなくてただの迷惑行為。
---
**36 名無しさん**
そこは一線引こう。
---
**37 名無しさん**
このスレはサッカーだけ。
---
**38 名無しさん**
仕事だけ批判する。
人格攻撃はなし。
---
**39 名無しさん**
誹謗中傷もしない。
---
**40 名無しさん**
結果について議論するだけ。
---
**41 名無しさん**
今日の試合どうだった?
---
**42 名無しさん**
黒崎投入は良かった。
---
**43 名無しさん**
あれは認める。
---
**44 名無しさん**
轟へのマンマークは効いてた。
---
**45 名無しさん**
逆に最後のFKは本人じゃないって監督言ってたな。
---
**46 名無しさん**
だからそこまで全部比企谷扱いするのは違う。
---
**47 名無しさん**
最近メディアも持ち上げすぎ。
---
**48 名無しさん**
J2で成功。
↓
すぐ「名将」。
これは違う。
---
**49 名無しさん**
昇格。
↓
J1で上位。
↓
そこまで行ったら認める。
---
**50 名無しさん**
今はまだ保留。
---
**51 名無しさん**
アンチだけど。
補強の見る目はあると思う。
---
**52 名無しさん**
そこは否定できん。
---
**53 名無しさん**
でもJ1クラブ相手でも同じ補強ができるか。
そこが本番。
---
**54 名無しさん**
結局。
「J2で結果を出している有能な分析官・スカウト」
ここまでは認める。
---
**55 名無しさん**
その先。
「J1でも通用するか。」
それはまだ分からない。
---
**56 名無しさん**
だから今後を見よう。
それだけ。
## 第275話 アンチスレの続き
**【J2で騒がれすぎ】比企谷八幡はJ1で通用するのか? Part12**
---
**57 名無しさん**
結局。
俺らが言いたいのはこれだけ。
「まだ早い。」
---
**58 名無しさん**
最近の記事。
比企谷すごい。
比企谷天才。
比企谷革命。
そんな見出しばっか。
---
**59 名無しさん**
メディアが持ち上げすぎなんだよ。
---
**60 名無しさん**
本人というより。
周りが騒ぎすぎ。
---
**61 名無しさん**
本人は意外と淡々としてる印象だけどな。
インタビューも普通だし。
---
**62 名無しさん**
そう。
俺もそこは思う。
本人が「俺すごい」って言ってるわけじゃない。
---
**63 名無しさん**
だから本人は嫌いじゃない。
評価が早すぎるだけ。
---
**64 名無しさん**
J2で成功した。
↓
すごい。
ここまでは分かる。
---
**65 名無しさん**
でも。
J1成功前から名将扱い。
これは違う。
---
**66 名無しさん**
比企谷信者が過剰なんだよ。
---
**67 名無しさん**
いや。
信者というよりメディア。
---
**68 名無しさん**
最近記事全部比企谷じゃん。
---
**69 名無しさん**
監督はマルコなのに。
---
**70 名無しさん**
そこは可哀想。
マルコも普通に有能。
---
**71 名無しさん**
補強成功。
↓
全部比企谷。
試合勝利。
↓
全部比企谷。
選手活躍。
↓
全部比企谷。
これは違う。
---
**72 名無しさん**
現場はもっといろんな人が動いてる。
---
**73 名無しさん**
スタッフ。
監督。
コーチ。
選手。
全員のおかげ。
---
**74 名無しさん**
今日なんて最後。
監督が選手発案って言ってたし。
---
**75 名無しさん**
あれ聞いて少し安心した。
ちゃんと選手評価してくれて。
---
**76 名無しさん**
比企谷本人も。
全部自分の手柄にしたいタイプじゃなさそう。
---
**77 名無しさん**
インタビュー見てても。
他人褒めること多い。
---
**78 名無しさん**
だから俺は。
比企谷アンチというより。
「過剰評価アンチ」
かな。
---
**79 名無しさん**
それ分かる。
---
**80 名無しさん**
本人より。
周りに対するアンチ。
---
**81 名無しさん**
あと。
このスレもう一回確認。
プライベート禁止。
---
**82 名無しさん**
当然。
---
**83 名無しさん**
本人の家。
家族。
恋人。
友達。
全部関係ない。
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**84 名無しさん**
スタジアム外の目撃情報もいらん。
---
**85 名無しさん**
盗撮。
待ち伏せ。
後付け。
そういう話は禁止。
---
**86 名無しさん**
サッカーだけ語ればいい。
---
**87 名無しさん**
アンチだからって。
人としてダメなことしたら終わり。
---
**88 名無しさん**
そこは全員同意。
---
**89 名無しさん**
そういう奴いたら。
このスレでも追い出す。
---
**90 名無しさん**
マナー守れない奴はアンチじゃなくて迷惑行為だからな。
---
**91 名無しさん**
ところで。
次の試合どう思う?
---
**92 名無しさん**
そろそろ夏補強組も研究される。
---
**93 名無しさん**
特にマティアス。
もう裏抜け警戒されるぞ。
---
**94 名無しさん**
安原も。
攻撃参加かなり見られるだろうな。
---
**95 名無しさん**
塩川も。
影消す動き研究されそう。
---
**96 名無しさん**
だから次が本当の勝負。
---
**97 名無しさん**
ここから対応されて。
さらに勝てたら認める。
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**98 名無しさん**
俺も。
手のひら返す準備はしてる。
---
**99 名無しさん**
J1で結果出したら普通に謝る。
---
**100 名無しさん**
今はまだ。
「様子見。」
それだけだ。
### 第276話 第18節終了 J2順位表
第18節の全日程が終了した。
前節、第17節で首位・北海道フェニックスFCとの直接対決を**2-1**で制したエストレヤ千葉は、その勢いを維持したままアウェーで愛媛サザンクロスFCにも勝利。
一方、北海道はホームで伊勢シーガルズに引き分け。首位は守ったものの、勝点を積み上げることはできなかった。
---
# J2順位表(第18節終了)
| 順位 | クラブ | 勝点 | 成績 |
| :-----: | ----------- | :----: | :---------- |
| **1位** | 北海道フェニックスFC | **45** | **14勝3分1敗** |
| **2位** | エストレヤ千葉 | **35** | **10勝5分3敗** |
| **3位** | 富山ベイウインズ | **33** | **9勝6分3敗** |
| **4位** | 岡山セルフィオFC | **31** | **9勝4分5敗** |
| **5位** | 相模原マンスリーFC | **29** | **8勝5分5敗** |
| **6位** | 福岡レガーロ | **28** | **8勝4分6敗** |
| **7位** | 仙台アステルFC | **27** | **7勝6分5敗** |
| **8位** | 愛媛サザンクロスFC | **26** | **7勝5分6敗** |
| **9位** | 横浜マンゲールFC | **26** | **7勝5分6敗** |
| **10位** | 青森ブランシェFC | **24** | **7勝3分8敗** |
| **11位** | 熊本アスフィーダ | **24** | **6勝6分6敗** |
| **12位** | CS栃木 | **24** | **6勝6分6敗** |
| **13位** | 山形ブリッツFC | **24** | **7勝3分8敗** |
| **14位** | 鹿児島レヴァンテFC | **20** | **6勝2分10敗** |
| **15位** | 駿河ユナイテッドFC | **17** | **5勝2分11敗** |
| **16位** | 伊勢シーガルズ | **16** | **3勝8分7敗** |
| **17位** | 秋田ノルディアFC | **15** | **3勝6分9敗** |
| **18位** | 信州アルプスFC | **12** | **2勝6分10敗** |
---
## 第18節 試合結果
* 北海道フェニックスFC **1-1** 伊勢シーガルズ
* 愛媛サザンクロスFC **1-2** エストレヤ千葉
* 富山ベイウインズ **3-0** 岡山セルフィオFC
* 信州アルプスFC **0-5** 相模原マンスリーFC
* 福岡レガーロ **2-1** 熊本アスフィーダ
* 仙台アステルFC **1-1** CS栃木
* 秋田ノルディアFC **1-0** 横浜マンゲールFC
* 青森ブランシェFC **1-3** 鹿児島レヴァンテFC
* 駿河ユナイテッドFC **1-0** 山形ブリッツFC
---
## 第18節総括
前節最大の話題となったのは、首位・北海道フェニックスFCと2位・エストレヤ千葉の直接対決だった。
エストレヤ千葉は敵地で北海道を**2-1**で破り、北海道に今季初黒星をつける大金星を挙げた。
そして迎えた今節。
その勢いが本物かどうかが問われる一戦となった愛媛サザンクロスFC戦でも、千葉は苦しみながら勝利を掴み取る。
前半にマティアス・ベニテスの来日初ゴールで先制。
後半、途中出場の轟七海に同点弾を許したものの、試合終了間際に戸部翔がトリックフリーキックから決勝ゴール。
**2-1**で競り勝ち、勝点を**35**まで積み上げた。
一方、北海道フェニックスFCはホームで伊勢シーガルズと1-1のドロー。
前節の千葉戦敗戦に続き、2試合連続で勝点3を逃す結果となった。
とはいえ、依然として勝点45で首位をキープしている。
3位・富山ベイウインズは4位・岡山セルフィオFCとの直接対決を3-0で快勝。
勝点33とし、2位千葉との差を2ポイントまで縮めた。
また、5位・相模原マンスリーFCは信州アルプスFC相手に5-0と今節最多得点で圧勝。
6位・福岡レガーロも勝利を収め、昇格プレーオフ圏争いはさらに激しさを増している。
下位では鹿児島レヴァンテFCが敵地で青森ブランシェFCを撃破。
秋田ノルディアFCも横浜マンゲールFCを下し、残留争いも混戦となった。
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### 上位争い
首位・北海道フェニックスFC **勝点45**
2位・エストレヤ千葉 **勝点35**
3位・富山ベイウインズ **勝点33**
首位と2位の勝点差は**10**。
数字だけを見れば北海道が優位に立っている。
しかし、北海道は前節・今節と2試合連続で勝点3を逃し、対する千葉は首位との直接対決勝利から2連勝。
勢いという点では、エストレヤ千葉がリーグで最も注目を集める存在となりつつあった。
### 第277話 エストレヤ千葉応援掲示板
**【第18節終了】エストレヤ千葉応援スレ Part148**
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**1 名無しさん**
勝ったあああああ!!
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**2 名無しさん**
リベンジ成功!
最高!!
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**3 名無しさん**
戸部最高!
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**4 名無しさん**
黒崎もよく止めた。
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**5 名無しさん**
補強組みんな仕事してるな。
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**6 名無しさん**
ちょっと待て。
今順位見て気付いた。
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**7 名無しさん**
?
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**8 名無しさん**
どうした?
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**9 名無しさん**
千葉。
最後に負けたの。
第5節じゃね?
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**10 名無しさん**
え?
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**11 名無しさん**
嘘だろ。
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**12 名無しさん**
確認してきた。
マジだった。
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**13 名無しさん**
第6節から。
負けてない。
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**14 名無しさん**
え?
そんな続いてた?
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**15 名無しさん**
俺も今気付いた。
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**16 名無しさん**
普通に怖い。
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**17 名無しさん**
しかも。
負けそうな試合結構あったよな。
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**18 名無しさん**
それ全部最低引き分け。
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**19 名無しさん**
北海道戦勝ち。
愛媛戦勝ち。
で2連勝。
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**20 名無しさん**
つまり。
13試合負けなし?
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**21 名無しさん**
第6節から第18節まで。
そうなる。
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**22 名無しさん**
普通にすごくね?
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**23 名無しさん**
連勝より。
負けないって大事なんだよ。
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**24 名無しさん**
去年なら。
同点にされた時点で負けてた。
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**25 名無しさん**
今年は。
追い付かれても崩れない。
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**26 名無しさん**
最低でも勝点1。
取って帰る。
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**27 名無しさん**
これが強いチーム。
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**28 名無しさん**
負けないって優勝争いには一番大事。
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**29 名無しさん**
北海道はまだ強い。
でも。
千葉もかなり安定してる。
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**30 名無しさん**
去年だったら。
引き分けで終わってた試合。
今年は勝ち切る。
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**31 名無しさん**
逆に。
負けそうな試合は引き分け。
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**32 名無しさん**
勝負強くなった。
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**33 名無しさん**
第5節以降。
全部勝ちか引き分け。
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**34 名無しさん**
ようやく気付いた。
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**35 名無しさん**
マジで安定感ある。
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**36 名無しさん**
守備固くなったよな。
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**37 名無しさん**
それもある。
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**38 名無しさん**
でも。
一番変わったのは。
試合中の修正力。
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**39 名無しさん**
前半ダメでも。
後半立て直す。
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**40 名無しさん**
今日も。
轟で流れ変わった。
↓
黒崎投入。
↓
流れ戻る。
↓
最後勝つ。
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**41 名無しさん**
あれ大きかった。
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**42 名無しさん**
黒崎一気に好きになった。
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**43 名無しさん**
プロ一年目とは思えん。
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**44 名無しさん**
補強も当たり。
若手も育ってる。
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**45 名無しさん**
去年までなら。
こんな試合落としてた。
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**46 名無しさん**
今年は。
勝点を拾える。
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**47 名無しさん**
それが上位にいる理由。
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**48 名無しさん**
首位と10差。
まだ遠いけど。
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**49 名無しさん**
直接対決勝ってるからな。
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**50 名無しさん**
北海道も最近2試合勝ってない。
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**51 名無しさん**
一気には縮まらない。
でも。
プレッシャーは掛けられる。
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**52 名無しさん**
まずは。
富山に抜かれないこと。
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**53 名無しさん**
そこ大事。
勝点差2しかない。
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**54 名無しさん**
一試合ずつだな。
---
**55 名無しさん**
でも。
第5節から負けなしって知ったら。
なんかワクワクしてきた。
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**56 名無しさん**
このまま。
どこまで伸びるかな。
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**57 名無しさん**
次も最低勝点1。
それだけでも十分。
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**58 名無しさん**
いや。
今年の千葉なら。
勝ちに行こう。
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**59 名無しさん**
13試合負けなし。
この記録。
もっと伸ばそうぜ。
---
**60 名無しさん**
今年のエストレヤ千葉。
本当に応援していて面白いチームになったな。
### 第278話 もう次へ
愛媛からの帰路。
エストレヤ千葉のチームバスがクラブハウスへ到着した。
時刻は夜。
選手たちは疲れた表情を見せながらも、勝利の余韻に浸っていた。
「お疲れ!」
「また次な!」
「ゆっくり休めよ!」
あちこちで声が飛び交う。
マティアスはエミリオと笑いながらクラブハウスへ入っていく。
塩川はスタッフへ一礼。
黒崎は宇津木から肩を叩かれていた。
「今日良かったぞ。」
「ありがとうございます!」
初めて味わったヒーローのような一日だった。
---
その一方で。
八幡はクラブハウスへ入ると、荷物を置いただけで自分のデスクへ向かった。
パソコンの電源を入れる。
モニターが光る。
マルコ監督が苦笑する。
「八幡。」
「今日はもう休め。」
八幡は画面から目を離さない。
「少しだけです。」
「今日のうちに整理しておきたいので。」
マルコは肩をすくめた。
「相変わらずだな。」
「明日でもいいだろ。」
八幡は首を横に振る。
「試合の熱が残っているうちの方が。」
「気付けることがあります。」
「なるほど。」
マルコはそれ以上何も言わなかった。
---
八幡はリーグ日程を開く。
次節。
**第19節**
対戦相手。
**山形ブリッツFC**
現在13位。
勝点24。
画面を見つめながら、小さく呟く。
「山形か。」
すぐに前回対戦の映像を開く。
**第2節**
アウェー。
結果。
**山形ブリッツFC 2-2 エストレヤ千葉**
「……。」
試合終了直後のスコアが映る。
八幡は映像を止めた。
「勝てた試合だった。」
あの試合。
千葉はリードしながら追い付かれた。
勝点2を落とした試合でもあった。
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試合映像を再生する。
前半。
山形の攻撃。
後半。
千葉のチャンス。
一つひとつ確認していく。
メモ帳を開く。
『前回との違い』
そう打ち込む。
そして箇条書きで書き始めた。
・前回対戦時はダニエル不在。
・安原不在。
・坂本不在。
・塩川不在。
・マティアス不在。
・村上加入前。
・黒崎の成長。
・小林DMF案も現在は選択肢。
八幡はキーボードを打つ手を止めた。
「前回とは。」
「別チームだな。」
---
さらに山形の最新試合を開く。
第18節。
**駿河ユナイテッドFC 1-0 山形ブリッツFC**
敗戦。
だが。
八幡は結果だけでは判断しない。
「内容だ。」
「結果じゃない。」
映像を再生する。
「負けた理由。」
「変わった部分。」
「変わってない部分。」
「全部見る。」
画面には山形の攻撃が流れ始める。
八幡は椅子にもたれず、少し前へ身体を乗り出した。
愛媛戦の勝利に浸る時間は、もう終わり。
スカウト兼分析官・比企谷八幡の頭の中では、すでに次の90分が始まっていた。
### 第279話 メディカルチーム報告
山形ブリッツFCの映像を見始めて十分ほど。
コンコン。
分析室の扉がノックされた。
「失礼します。」
入ってきたのはチームドクターの**鳥山右京**だった。
56歳。
6月22日生まれ。
エストレヤ千葉で**20年間チームドクター**を務める大ベテラン。
普段は千葉市内で病院長として診療を行いながら、クラブのメディカル部門を支えている。
その後ろには四人のスタッフ。
アスレティックトレーナーの**近藤めぐみ**。
今年から加入した31歳。
若いながらも現場での評価は高く、処置の速さと判断力を買われている。
続いて。
15年間チームへ帯同するベテラントレーナー。
**本庄麻衣**。
選手からの信頼は厚く、歴代の主力選手も彼女のケアを受けてきた。
理学療法士。
**光山左京**。
51歳。
鳥山と同じく20年間クラブを支える存在。
市内で自身のクリニックを経営しながら、クラブではリハビリや身体機能の改善を担当している。
最後は。
光山のクリニックで働く理学療法士。
**安西なつめ**。
28歳。
今年からクラブへ加わった若手であり、光山の弟子でもある。
五人はエストレヤ千葉のメディカルチームとして、選手たちの**疲労管理、コンディション調整、怪我の治療・予防、リハビリ**を担当している。
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鳥山が資料を机へ置いた。
「試合後のメディカルチェック、終わりました。」
八幡は映像を止める。
「お願いします。」
鳥山が資料を開く。
「まず結論から。」
「大きな負傷者はいません。」
八幡は少し肩の力を抜いた。
「良かった。」
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近藤が続ける。
「筋疲労は全員あります。」
「特に。」
「安原。」
「塩川。」
「戸塚。」
「エミリオ。」
「この四人は運動量が非常に多かったため、疲労度は高めです。」
本庄も資料を見ながら話す。
「マティアスも問題ありません。」
「初めて90分近くプレーしましたので疲労はありますが、筋損傷などの所見はありません。」
---
光山が口を開く。
「黒崎ですが。」
「途中出場だったこともあり、疲労はそこまで残っていません。」
「身体の状態も良好です。」
「問題なく次節へ向かえます。」
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安西も補足する。
「郷田選手も順調です。」
「復帰後の経過は非常に良く、強度を上げても反応は出ていません。」
「コンディションはさらに上がってくると思います。」
---
鳥山が最後の一枚を取り出す。
「現時点で。」
「新たな離脱者はゼロ。」
「これが一番の収穫でしょう。」
八幡は静かに頷いた。
「ありがとうございます。」
「この時期に離脱者が増えないのは、本当に助かります。」
---
鳥山は笑う。
「助かるのはこちらですよ。」
「選手もスタッフも、コンディション管理に協力してくれていますから。」
近藤も笑顔で頷く。
「今年は選手がセルフケアを積極的にやってくれるので。」
「こちらも非常に仕事がしやすいです。」
本庄も笑った。
「疲れていてもストレッチだけは誰もサボりませんね。」
---
八幡は五人を見渡した。
「選手ばかり注目されますけど。」
「皆さんのおかげです。」
「一年通して戦えるのは。」
「メディカルチームが支えてくれているからです。」
鳥山は少し照れくさそうに笑う。
「我々は裏方ですから。」
「選手が元気に試合へ出てくれれば、それで十分ですよ。」
分析室には穏やかな空気が流れた。
勝利の裏側には、二十年にわたりクラブを支え続けるベテランと、新たな力を加えたメディカルチームの存在があった。
### 第280話 首脳陣の決断
夜のクラブハウス。
メディカルチームとの報告を終えた八幡は、再び山形ブリッツFCの映像へ視線を戻していた。
すると、マルコ監督がコーヒーを片手に隣へ座る。
「まだ帰らないのか。」
「もう少しだけです。」
マルコは苦笑した。
「本当に仕事好きだな。」
八幡は画面を見たまま答える。
「好きというより、次の試合が来るだけです。」
しばらく二人は無言で映像を見続けた。
やがてマルコが静かに口を開く。
「……少し落ち着いたな。」
八幡も何の話かすぐに分かった。
「はい。」
「天皇杯とナビスコカップですか。」
マルコは頷いた。
---
今シーズン。
エストレヤ千葉は**天皇杯**、そして**ナビスコカップ**の両大会で早々に姿を消していた。
その理由は明確だった。
リーグ戦を最優先した首脳陣は、両大会で思い切ったターンオーバーを実施。
若手主体。
さらにユース所属選手まで積極的に起用した。
結果として経験不足が露呈し、どちらの大会も早い段階で敗退となった。
---
もちろん。
その決断には批判も集まった。
「カップ戦を捨てた。」
「クラブの歴史を軽視している。」
「サポーターに失礼だ。」
「勝つ気が感じられない。」
SNSや掲示板では、試合後にそうした声が数多く並んだ。
マルコはコーヒーを一口飲む。
「今でも。」
「批判はある。」
八幡も静かに頷く。
「ありますね。」
「試合に負ければ、なおさら言われます。」
---
マルコは窓の外を見る。
「だが。」
「私は後悔していない。」
八幡も即答した。
「俺もです。」
その返答に迷いはなかった。
---
あの時。
首脳陣全員で何時間も話し合った。
マルコ。
八幡。
中村ヘッドコーチ。
田島GKコーチ。
ルイス・マルティネス。
そしてフロント。
議論は深夜まで続いた。
「全部勝ちに行くか。」
「リーグ戦へ集中するか。」
簡単な答えではなかった。
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最終的に全員が出した結論。
**『今年の最優先はJ1昇格。』**
その一点だった。
「リーグ戦を落としてまで。」
「カップ戦を取りに行くべきではない。」
「今のクラブには。」
「まずJ1へ戻ることが必要だ。」
誰か一人の意見ではない。
首脳陣全員が納得したうえでの決断だった。
---
八幡が静かに言う。
「若手に経験も積ませられました。」
「ユースの選手たちも。」
「トップレベルの公式戦を経験できた。」
マルコも頷く。
「あの経験は。」
「数年後、必ず生きる。」
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もちろん。
敗退した事実は変わらない。
悔しくないわけではない。
タイトルを逃したことも事実だった。
しかし。
後悔だけはしていなかった。
---
マルコは立ち上がる。
「もし。」
「今年J1に昇格できたら。」
「また違う戦い方を考えよう。」
「はい。」
八幡も頷く。
「そのためにも。」
「まずはリーグ戦ですね。」
「そうだ。」
マルコは笑う。
「目標は変わらない。」
「J1昇格。」
「そのために。」
「一試合ずつ勝っていこう。」
そう言い残し、マルコは部屋を後にした。
一人残った八幡は、再びモニターへ向き直る。
画面には、次節の相手・山形ブリッツFCの試合映像が映し出されていた。
過去を振り返る時間は終わった。
首脳陣が選んだ道が正しかったかどうか。
その答えは、シーズン終了時に順位表が示してくれるはずだった。