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第381話 今、J2が熱い

やはり俺のスカウト人生は間違っている。 — www.pixiv.net · All chapters

第381話 今、J2が熱い

深夜。

全国ネットで放送されている人気サッカー番組。

その名も――。

**『神林SC』。**

日本サッカー応援宣言を掲げ、Jリーグ、日本代表、海外でプレーする日本人選手まで幅広く取り上げる番組である。

普段はJ1や日本代表の特集が中心になることも多い。

だが。

今夜。

スタジオ中央の大型モニターに映し出されていたのは。

**『今、J2が熱い!』**

その文字だった。

「さあ! 今夜はJ2をたっぷり見ていきます!」

中央。

番組MCを務めるのは。

人気お笑い芸人。

**神林康孝。**

45歳。

芸能界でも有名なサッカー好きであり、この番組では笑いを交えながら国内サッカーを紹介している。

その右隣には25歳の局アナウンサー。

そして左隣には。

元サッカー日本代表MF。

**原口敦。**

41歳。

現役時代は中盤の複数ポジションでプレーし、日本代表経験も持つ。

「原口さん」

「はい」

「今年のJ2、面白すぎません?」

神林が笑う。

「かなり面白いですね」

原口も頷いた。

「特に上位争い。ここ数節で状況がかなり動いています」

「そうなんですよ!」

神林が大型モニターへ身体を向ける。

「まずは第29節終了時点の順位! こちらです!」

◇

画面いっぱいに順位表が表示された。

## J2 第29節終了時点

**1位 北海道フェニックスFC**

勝ち点63 19勝6分4敗 **勝ち**

**2位 エストレヤ千葉**

勝ち点60 18勝6分5敗 **勝ち・3連勝**

**3位 富山ベイウインズ**

勝ち点55 16勝7分6敗 **負け・2連敗**

**4位 岡山セルフィオFC**

勝ち点54 16勝6分7敗 **勝ち**

**5位 仙台アステルFC**

勝ち点50 13勝11分5敗 **勝ち**

**6位 熊本アスフィーダ**

勝ち点42 12勝6分11敗 **勝ち**

**7位 青森ブランシェFC**

勝ち点40 12勝4分13敗 **負け**

**8位 相模原マンスリーFC**

勝ち点38 10勝8分11敗 **負け**

**9位 愛媛サザンクロスFC**

勝ち点37 9勝10分10敗 **勝ち**

**10位 福岡レガーロ**

勝ち点36 10勝6分13敗 **負け**

**11位 横浜マンゲールFC**

勝ち点35 9勝8分12敗 **負け**

**12位 鹿児島レヴァンテFC**

勝ち点34 10勝4分15敗 **負け**

**13位 CS栃木**

勝ち点33 8勝9分12敗 **負け**

**14位 山形ブリッツFC**

勝ち点33 9勝6分14敗 **勝ち**

**15位 伊勢シーガルズ**

勝ち点30 6勝12分11敗 **引き分け**

**16位 秋田ノルディアFC**

勝ち点30 7勝9分11敗 **勝ち**

**17位 信州アルプスFC**

勝ち点28 7勝7分14敗 **負け**

**18位 駿河ユナイテッドFC**

勝ち点27 7勝6分15敗 **引き分け**

◇

「まず首位!」

神林が指を上へ向ける。

「北海道フェニックスFC!」

「勝ち点63です」

局アナウンサーが続ける。

「今節も勝利。首位を守りました」

「強い!」

神林が言う。

だが。

原口は少し違う角度から順位表を見ていた。

「ただ、今の北海道って、かなり難しい状態で首位を維持しているんですよ」

「難しい状態?」

「はい」

画面が切り替わる。

まず映ったのは。

北海道フェニックスFCの攻撃を引っ張ってきた一人。

**神谷直人。**

「神谷選手」

原口が言う。

「第20節から負傷で離脱しています」

「もう結構長いですよね?」

「長いですね」

神谷が離脱してから。

北海道の攻撃は。

それ以前と比べて。

明らかに迫力を落としていた。

単純に。

神谷一人分の得点やアシストが消えた。

それだけではない。

相手守備を引きつける。

狭い場所で違いを作る。

前線へボールを運ぶ。

周囲の選手を楽にする。

そうした部分まで。

同時に失われた。

「神谷選手がいる時は」

原口が続ける。

「一人で局面を変えられるんですよ」

「はい」

「相手からすれば、神谷選手へ一人では行けない」

「二人行けば?」

「今度は別の選手が空く」

「なるほど」

「それが今はない」

神林が頷いた。

「じゃあ、その影響が前の選手にも出てる?」

「かなりあると思います」

◇

画面。

北海道の前線三枚。

CF。

**佐々木俊郎。**

RWG。

**林達也。**

LWG。

**林卓也。**

「この三人」

原口が指す。

「今、揃って調子を落としています」

「神谷がいない上に、前の三人まで?」

「そうなんです」

佐々木。

達也。

卓也。

北海道の得点を担う三人。

だが。

ここ最近は。

決定機で決め切れない。

連係が噛み合わない。

シュートまで持ち込んでも。

最後の精度が上がらない。

「これ北海道、攻撃かなり苦しいじゃないですか」

「苦しいですね」

「じゃあ何で勝ててるんです?」

神林の問い。

原口が。

少し笑った。

「そこが今の北海道の強さです」

画面。

今度は後方へ。

GK。

**石原一成。**

CB。

**カストロ。**

そして。

DMF。

**カサーツノ。**

「後ろが崩れていない」

「おお」

「石原選手」

映像。

至近距離のシュート。

石原が止める。

「最後に止める」

「はい」

次。

カストロ。

相手FWとの競り合い。

身体を入れ。

ボールを奪う。

「カストロ選手」

「強いなあ」

「センターバックとして非常に安定しています」

さらに。

カサーツノ。

中央。

相手の縦パスへ先に反応。

ボールを刈り取る。

「そしてカサーツノ選手」

「中盤の底」

「はい」

「相手が危険な場所まで入る前に潰している」

神林がモニターを見る。

「神谷が負傷」

「はい」

「佐々木、林達也、林卓也も不調」

「そうです」

「それでも首位」

「守れているからです」

原口がはっきり言った。

「今の北海道は、攻撃で相手を圧倒して勝っているわけではないんですよ」

「なるほど」

「点が取れなくても」

一拍。

「まず失点しない」

「それで一点取れば?」

「勝てる」

「うわ、強いチームのやつだ!」

神林が笑う。

「そうですね」

原口も笑った。

「しかも、こういうチームは終盤戦では非常に強いです」

「内容より勝ち点」

「そういう試合も必要になりますから」

◇

「ただ!」

神林の声が再び大きくなる。

「その北海道を追っているクラブがある!」

画面。

2位。

エストレヤ千葉。

「勝ち点60!」

「北海道との差は3ポイントです」

局アナウンサーが説明する。

「しかも千葉は」

神林が指を三本立てる。

「3連勝!」

大型モニター。

第29節。

エストレヤ千葉対富山ベイウインズ。

その映像へ切り替わった。

◇

後半6分。

エミリオから縦。

ダニエル・ロドリゲス。

背後。

チョウ・ウンソウ。

ダニエルがボールを受ける。

チョウがすぐに寄せる。

「ここですよ」

原口が前のめりになる。

ダニエル。

トラップから身体を回す。

チョウが足を出す。

右足のアウト。

僅かにずらす。

突破。

「うまっ!」

神林が思わず声を上げる。

「これチョウですよね?」

「チョウ選手です」

「富山の守備の中心じゃないですか!」

「そうなんですよ」

さらに。

二人目。

右へ行くと見せ。

内側へ。

突破。

「二人行った!」

ダニエルが中央へ運ぶ。

前。

マティアス。

右。

川崎。

左。

森川。

パスコースもある。

それでも。

最後は。

自分で。

右足。

バンッ!!

ゴール左隅。

ネットが揺れた。

「いやあああ、これは凄い!」

神林。

拍手。

「これ一人で決めちゃった!」

「最後は完全に個の力ですね」

原口も頷く。

映像が止まる。

「富山も後半は修正してるんですよ」

「はい」

「特にダニエル選手を前向きにさせないように、チョウ選手がかなり近くについている」

「それでも?」

「外された」

「これは守る側キツいなあ!」

「戦術的には正しい対応をしていても、最後は個人技でひっくり返されることがあります」

◇

映像。

終盤へ。

富山の猛攻。

郡司。

万条。

ライアック。

次々と千葉ゴールへ迫る。

それを。

坂本。

宇津木。

戸塚。

そして。

玉縄。

最後まで防ぎ続ける。

「玉縄選手、かなり止めましたね」

局アナウンサー。

「素晴らしかったです」

原口が即答する。

「富山はチャンスを作れているんですよ。でも最後に玉縄選手がいる」

郡司のシュート。

玉縄。

左手。

弾く。

「うわ!」

神林。

「これ入ったと思った!」

「非常に大きなセーブです」

そして。

試合終了。

1対0。

「千葉、勝利!」

神林が声を上げる。

「直接対決を取った!」

「これで千葉60、富山55」

「5ポイント差!」

「はい」

「そして北海道とは3!」

神林が笑う。

「優勝争い、面白くなってきた!」

◇

「それにしても」

神林が過去の順位を見て。

首を傾げる。

「千葉って、最初こんなところにいませんでしたよね?」

「いません」

局アナウンサーが笑う。

画面。

シーズン序盤。

5試合終了。

エストレヤ千葉。

**0勝2分3敗。**

**勝ち点2。**

**最下位。**

「これ!」

神林が画面を指す。

「最下位ですよ!?」

「そうですね」

原口も苦笑する。

「それが29節終わって2位」

「勝ち点60!」

「すごい巻き返しです」

「何が変わったんでしょう?」

原口は少し考えた。

「一つじゃないですね」

画面。

ダニエル。

エミリオ。

戸塚。

森川。

川崎。

マティアス。

さらに。

橋本。

坂本。

玉縄。

選手たちが次々と映る。

「補強」

「選手の成長」

「戦術の浸透」

「選手層」

「それらが全部噛み合ってきた印象です」

「選手層?」

「富山戦なんか分かりやすいですよ」

映像。

後半41分。

橋本がピッチを離れる。

代わる。

宇津木。

「19歳の橋本選手に代えて、30歳の宇津木選手」

「そのままセンターバック」

「はい」

さらに。

川崎。

交代。

佐久間。

「川崎選手に代えて37歳の佐久間選手」

「こちらも?」

「そのまま右サイドハーフです」

「形変えてない!」

「そうなんです」

原口が頷く。

「4-2-3-1のまま」

「守備固めで5バックにしたわけじゃない」

「していません」

「経験ある選手へ入れ替えて、そのまま試合を締めた」

「そこが今の千葉の強みの一つです」

◇

そして。

3位。

富山ベイウインズ。

勝ち点55。

「富山は二連敗」

神林が言う。

「北海道に負けて、千葉にも負けた」

「はい」

「5連勝から二連敗」

「ただ」

原口はすぐ続けた。

「内容だけを見ると、富山が急に弱くなったわけではありません」

「千葉戦もチャンスありましたよね」

「かなりありました」

画面。

万条。

ライアック。

郡司。

風祭。

高井。

チョウ。

「むしろ、攻撃の形は作れている」

「でも入らなかった」

「そうですね」

「玉縄にも止められた」

「はい」

「だから二連敗だからといって」

神林。

「チームとして完全に崩れたとは言えない?」

「サッカーだけなら、そうですね」

◇

そこで。

局アナウンサーが少し表情を変えた。

「ただ、富山については」

「はい」

「サッカー以外でも大きなニュースが出ています」

画面。

試合中の万条富隆。

「万条選手の私生活を巡る報道です」

神林も。

先ほどより落ち着いた口調になる。

「かなり大きく報じられてますね」

「はい」

「ただし」

原口。

すぐに口を開いた。

「我々が確認できていない話までここで広げるべきではないでしょうね」

「そうですね」

神林も頷く。

「この番組はサッカー番組ですから」

「クラブ側の対応を待つべきだと思います」

局アナウンサー。

「ただ、富山にとっては非常に難しい時期での報道になりました」

3位。

二連敗。

残り5試合。

そこへ。

主力選手を巡る大きなニュース。

「チームがどう集中を保つか」

原口が言う。

「そこも重要になりますね」

◇

「しかも!」

神林。

4位へ視線を向ける。

「富山、後ろから来てるんですよ!」

**岡山セルフィオFC。**

勝ち点54。

「1ポイント差です」

「富山55、岡山54!」

「はい」

「これ富山」

神林が言う。

「北海道と千葉だけ見てられなくなりましたね」

「そうですね」

「岡山は今節勝っています」

「富山は二連敗」

「一気に差が縮まった」

「その通りです」

◇

5位。

仙台アステルFC。

勝ち点50。

「仙台も勝利!」

神林。

「13勝11分5敗」

「11分けです」

局アナウンサー。

「負けが少ない!」

原口が頷く。

「そうですね。5敗しかしていない」

「ただ引き分けが多い」

「もし何試合か勝ち切れていたら」

「もっと上にいた?」

「そうでしょうね」

◇

さらに。

6位。

熊本アスフィーダ。

42。

7位。

青森ブランシェFC。

40。

8位。

相模原マンスリーFC。

38。

9位。

愛媛サザンクロスFC。

37。

10位。

福岡レガーロ。

36。

「この辺も詰まってるなあ!」

神林が順位表を見渡す。

「6位から10位まで6ポイント!」

「一試合でかなり動きます」

「愛媛は勝った!」

「相模原と福岡は負けました」

「だから順位がまた詰まる!」

神林。

楽しそうに笑う。

「順位表だけで番組終われるんじゃない?」

「終われません」

25歳の局アナウンサーが即答した。

「厳しい!」

「進行がありますので」

「原口さん、この子俺に厳しくないですか?」

「早く次へ行ってください」

「原口さんまで!」

スタジオ。

笑い。

◇

そして。

最後。

再び上位。

**1位 北海道フェニックスFC 63**

**2位 エストレヤ千葉 60**

**3位 富山ベイウインズ 55**

**4位 岡山セルフィオFC 54**

**5位 仙台アステルFC 50**

「残り5試合」

神林が順位表を見る。

「北海道は首位」

「はい」

「ただし、第20節から神谷直人が負傷離脱」

「そうですね」

「その影響もあって、佐々木俊郎、林達也、林卓也の前線も今ひとつ調子が上がっていない」

「はい」

「それでも」

神林。

今度は後方の映像を見る。

「石原一成!」

「カストロ!」

「カサーツノ!」

「この三人を中心に守備が崩れていない!」

「そこが大きいですね」

原口が頷く。

「神谷選手が戻らない中でも首位を維持できているのは、間違いなく後ろの安定感があります」

「つまり」

神林。

「北海道は苦しみながら首位!」

「そうですね」

「そしてその北海道へ」

指を下へ。

「千葉が3ポイント差!」

「3連勝中です」

「富山は55」

「二連敗」

「そこへ岡山が1差!」

「はい」

「仙台もまだいる!」

神林が両手を広げた。

「いやー!」

「今年のJ2!」

「最後まで分からない!」

原口も頷く。

「一試合で流れが変わりますからね」

「北海道も」

「千葉も」

「富山も」

「岡山も」

「まだ何も決まっていません」

◇

神林が。

正面のカメラを見る。

「ということで!」

大きく声を張った。

「今年のJ2!」

「めちゃくちゃ熱いです!」

背後。

巨大な順位表。

北海道。

63。

千葉。

60。

富山。

55。

岡山。

54。

「J1だけじゃありません!」

「残り5試合!」

「J2も!」

「最後まで目を離さないでください!」

シーズン終盤。

北海道は。

第20節から神谷直人が負傷離脱。

その影響もあり。

佐々木俊郎。

林達也。

林卓也。

前線三人も不調。

それでも。

GK石原一成。

CBカストロ。

DMFカサーツノ。

守備の中心が踏ん張る。

そして。

その北海道を。

3連勝の千葉が。

3ポイント差で追う。

富山は二連敗。

その背後。

岡山が1ポイント差。

まだ何も決まっていない。

J2。

残り5試合。

一つの勝利。

一つの敗戦。

そのたびに優勝争いは大きく揺れ動こうとしていた。