第7話 サポーターの声
第7話 サポーターの声
その日の夜。
午後十時三十分。
エストレヤ千葉トレーニングセンター。
分析室。
当然のように明かりは点いていた。
八幡はダニエルのプレー映像を止めると、一息つく。
コーヒーを口に運び、何気なくブラウザを開いた。
開いたのは、エストレヤ千葉サポーターが集まるネット掲示板だった。
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【エストレヤ千葉 Part427】
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「補強まだ?」
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「もうフロント動いてるって話あるぞ。」
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「スペイン人獲るって噂。」
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「また飛ばし記事だろ。」
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「J2に23歳のスペイン人なんか来るか?」
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「エミリオも最初はそう言われてたな。」
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「そういえばエミリオ当てたの比企谷だった。」
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「比企谷案件なら少し期待してる。」
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「でも今は最下位だぞ。」
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「補強一人で変わるほど甘くない。」
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「材木座を外せ。」
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「いや外した試合の方が点取れてない。」
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「数字見ろ。」
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「材木座いる時の方が攻撃は機能してる。」
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「でもFWなんだから点取ってくれ。」
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「戸部はもっと走れ。」
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「エミリオだけJ1レベル。」
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「戸塚はようやっとる。」
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「森川も悪くない。」
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「問題は決定力。」
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「今年も残留争いかな……。」
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「いや。」
「まだ五試合。」
「ここからだ。」
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八幡は静かにスクロールを止めた。
批判だけではない。
期待する声もある。
信じようとしているサポーターもいる。
「……。」
画面を閉じようとした時、新しい書き込みが表示された。
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「比企谷って、海外担当になってから外れ補強ほとんどなくね?」
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「エミリオ。」
「郷田。」
「あとは若手も結構当ててる。」
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「だったら今回も信じる。」
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「正式発表だけ早くしてくれ。」
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八幡は小さく息を吐いた。
「期待されるのも仕事か。」
その時だった。
コンコン。
「失礼します。」
分析室へ入ってきたのは、強化部長の佐藤だった。
「まだ仕事してたのか。」
「はい。」
佐藤はコーヒーを片手に笑う。
「掲示板か?」
「少しだけ。」
「どうだった?」
八幡はパソコンを閉じる。
「思っていたより冷静でした。」
「批判もあります。」
「でも、それ以上に期待している人もいました。」
佐藤は頷く。
「サポーターは勝ちたいだけだからな。」
「はい。」
「勝てば全部ひっくり返る。」
八幡は静かに答えた。
「その一勝を持ってくるために、ダニエルを獲ります。」
佐藤は少し笑う。
「やっぱり言い切るな。」
「言い切ります。」
「彼は、このクラブを変えられます。」
分析室には再び静寂が戻る。
モニターには、スペインでプレーするダニエル・ロドリゲスの映像が映し出されていた。
その来日まで、あと二日。
エストレヤ千葉の未来は、静かに動き始めていた。