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第402話 やっぱりやってきた

やはり俺のスカウト人生は間違っている。 — www.pixiv.net · All chapters

第402話 やっぱりやってきた

前半二十五分。

スコアは、まだ0対0。

だが。

仙台アステルFCの背番号10。

安西清勝の胸の内には、すでにかなりの苛立ちが溜まっていた。

「……くそ」

右サイド。

ボールが来ない。

正確には。

来るところまで、なかなか進まない。

後方を振り返る。

センターバック。

ボランチ。

またセンターバック。

横。

戻す。

前へ入れようとすれば。

千葉の背番号23。

宍道務が走ってくる。

仙台の選手が、そのプレスを外して中盤へ差し込めば。

今度は。

背番号25。

小林庄雅。

パスが届くより先に。

そこにいる。

「……やっぱりやってきたか」

安西は、小さく吐き捨てた。

◇

試合前。

千葉のスターティングメンバーを見た時。

嫌な予感はしていた。

小林庄雅。

DMF。

宍道務。

プロ初出場でCF。

ダニエルは右。

塩川が左。

普段とは違う。

何をするのか分からない。

ただ。

一つだけ。

安西には分かっていた。

**意味もなくこんなことをするチームではない。**

前回。

第16節。

それを。

嫌というほど思い知らされている。

あの時も。

最初は変だった。

鈴木へ何度も入れる。

囲まれているのに。

また入れる。

奪った。

そう思った瞬間。

戸塚。

エミリオ。

また千葉。

そして。

中央へ人数を寄せれば。

森川。

ダニエル。

高山。

外。

気づいた時には。

完全に。

こちらが動かされていた。

結果。

7対0。

だから。

今日の先発を見た時。

安西は。

笑えなかった。

何かある。

そう思った。

そして。

二十五分。

答えが見え始めている。

◇

「右、使え!」

安西が声を張る。

仙台のボランチが顔を上げる。

安西は。

タッチライン際から少し中へ。

受けられる位置へ動く。

だが。

その瞬間。

塩川康文がついてくる。

さらに。

後ろ。

高山俊樹。

深くは出てこない。

安西が受けても。

二人が簡単に食いつかない。

「……またこれかよ」

前回も。

散々。

やられた。

ただし。

あの時とは。

少し違う。

前回。

千葉は左から。

何度も。

安西を走らせた。

今日は。

まず。

安西へ。

簡単に良い状態でボールを渡さない。

◇

仙台ボランチ。

中央。

縦。

出そうとする。

安西は。

一瞬。

嫌な予感。

「そこじゃない!」

声。

遅い。

パス。

フォーレン。

その前。

小林。

スッ。

また。

入った。

パスカット。

「……っ!」

安西は。

思わず歯を食いしばる。

小林は。

奪った後。

何もしない。

派手なドリブル。

ない。

ロングパス。

ない。

強烈な縦パスも。

ない。

すぐ。

近く。

戸塚。

そこから。

千葉。

前へ。

それが。

余計に腹立たしい。

◇

「何なんだよ、あいつ……」

安西は戻りながら。

小林を見る。

身体をぶつけてくるわけではない。

強烈なタックル。

ない。

球際。

激しく来ない。

なのに。

中央へのパスだけ。

異常なほど。

引っかかる。

少し前。

フォーレンへ。

その前。

CFへ。

その前。

ボランチからの縦。

全部。

小林。

「……そこにいるだけじゃねえか」

だが。

その。

「そこ」。

それが。

毎回。

一番嫌な場所だった。

◇

前半二十七分。

仙台。

ようやく。

後方から右へ。

安西。

足元。

ボールが入る。

「来た!」

仙台サポーターの声。

安西。

身体を入れる。

塩川。

寄せる。

安西は。

背中でボールを守った。

ここは。

自分の得意な場所。

相手が一人なら。

簡単には取られない。

「来いよ」

心の中。

挑発。

塩川。

飛び込まない。

一定の距離。

安西。

振り向く。

その先。

高山。

いる。

中央。

フォーレン。

そこへ。

エミリオ。

さらに。

後ろ。

小林。

「……」

一瞬。

止まる。

出すところが。

ない。

◇

安西。

右SBへ戻す。

すぐ。

もう一度。

動く。

ワンツー。

右SBから。

安西。

今度は前を向く。

「よし!」

縦。

少し。

運ぶ。

塩川。

追う。

高山。

下がる。

安西。

中央へ入る。

エミリオ。

寄せる。

フォーレン。

近い。

パス。

出したい。

だが。

また。

小林が。

その線上。

「……邪魔だ!」

安西。

無理に出さず。

外。

右SB。

右SB。

クロス。

宇津木。

頭。

弾く。

セカンド。

戸塚。

回収。

また。

千葉。

◇

「くそっ!」

安西は。

拳を握る。

自分は。

突破されているわけではない。

ボールを失ってもいない。

それでも。

攻撃が。

前へ進まない。

そこが。

何より。

苛立つ。

自分が持てば。

時間を作れる。

それが。

安西の武器。

味方が上がる。

フォーレンが動く。

SBが追い越す。

ボランチも前へ出る。

そのための。

数秒。

作れる。

だが。

今日は。

その数秒を作っても。

次がない。

中央。

小林。

その前。

戸塚。

エミリオ。

左。

塩川。

後ろ。

高山。

仙台が。

一つ。

パスを出すたび。

出口が。

少しずつ。

消えていく。

◇

「キャプテン!」

右SB。

呼ぶ。

安西。

また。

戻る。

受ける。

今度は。

一気に。

縦。

塩川の外。

スピード。

塩川。

ついてくる。

安西。

身体を当て。

ボールを守る。

そこは。

勝つ。

だが。

高山。

出てこない。

少し。

下がりながら。

コース。

限定。

「来ないのかよ」

安西。

焦れる。

相手が来れば。

かわす。

身体を使う。

ファウルを取る。

それができる。

だが。

高山は。

来ない。

待つ。

塩川も。

後ろから。

無理に奪いに来ない。

安西。

自分で。

仕掛ける。

中。

一歩。

そこ。

高山。

閉じる。

安西。

止まる。

後ろ。

また。

戻す。

◇

ホームスタンドから。

声。

「前行け!」

「安西!」

「仕掛けろ!」

聞こえる。

分かっている。

自分でも。

行きたい。

だが。

無理に行って。

取られれば。

その瞬間。

千葉。

左。

塩川。

中央。

戸塚。

エミリオ。

そして。

右。

ダニエル。

カウンター。

ある。

「分かってんだよ……」

安西は。

誰に言うでもなく呟く。

◇

前半二十九分。

仙台。

ボール保持。

だが。

また。

後ろ。

CB。

宍道。

走る。

CB。

横。

もう一枚。

宍道。

方向変える。

また。

走る。

「おい!」

安西。

声。

「一回蹴っていい!」

CB。

顔を上げる。

前。

安西。

ロング。

出る。

安西。

胸。

トラップ。

塩川。

すぐ。

寄せる。

安西。

身体。

入れる。

ボール。

守る。

ここは。

負けない。

だが。

次。

どこ。

フォーレン。

中央。

小林。

その間。

立っている。

「またかよ」

安西。

舌打ち。

◇

安西には。

小林の意図までは分からない。

なぜ。

あれほど。

パスコースを読めるのか。

何を見ているのか。

知らない。

ただ。

一つだけ。

感覚として。

分かってきた。

**あいつ、人を見てない。**

ボールだけ。

という意味でもない。

受け手。

出し手。

その間。

「次にどこへ通るか」。

そこを。

見ている。

だから。

小林自身へ。

ボールを持って仕掛けても。

おそらく。

強く奪いに来ない。

だが。

そこへ行くまでのパスが。

通らない。

◇

「ダニー!」

安西が叫ぶ。

フォーレンが。

振り向く。

安西。

指。

少し。

外。

フォーレン。

意図。

理解。

次。

仙台。

後方。

今度は。

中央を使わない。

一度。

左。

そこから。

大きく。

右。

安西。

ボール。

来る。

塩川。

横。

高山。

後ろ。

安西。

ワンタッチ。

右SB。

また。

安西。

中。

フォーレン。

今度は。

フォーレン。

外へ流れる。

小林の正面から。

離れる。

「そうだ!」

安西。

パス。

フォーレン。

受ける。

小林。

来ない。

身体も。

当てない。

エミリオ。

寄る。

フォーレン。

ワンタッチ。

安西。

もう一度。

前。

ようやく。

中央から。

小林を外した。

◇

「行け!」

仙台サポーター。

歓声。

安西。

中央。

運ぶ。

ペナルティーエリア。

手前。

塩川。

戻る。

高山。

構える。

フォーレン。

外。

右SB。

追い越す。

安西。

自分で。

行く。

高山の前。

右足。

クロス。

中央。

CF。

橋本。

198センチ。

頭。

競り勝つ。

クリア。

「くそっ!」

安西。

その場で。

天を仰ぐ。

ようやく。

前へ出た。

ようやく。

クロス。

それでも。

最後。

橋本。

◇

安西は。

走って自陣へ戻る。

肺。

まだ。

問題ない。

体力。

ある。

走れる。

それが。

自分の強み。

だが。

精神的には。

かなり。

削られていた。

前回。

第16節。

何度も。

左へ。

中央へ。

また左へ。

走らされた。

今日。

違う。

だが。

同じ。

**相手のやりたいことに付き合わされている感覚。**

それが。

ある。

◇

「やっぱり」

安西は。

戻りながら。

千葉ベンチを見る。

監督。

マルコ・ベッルーニ。

その近く。

比企谷八幡。

腕を組んでいる。

「やってきやがった」

安西。

目を細める。

前回とは。

違う。

鈴木はいない。

森川はベンチ。

ベニテスもベンチ。

それなのに。

今度は。

宍道。

小林。

別の駒。

別の形。

同じ相手へ。

同じことをするのではない。

**今の仙台に合わせて変えてきた。**

◇

安西は。

そこが。

何より。

腹立たしかった。

自分たちは。

前回から。

変わった。

4-4-2。

やめた。

守備。

変えた。

ビルドアップ。

変えた。

フォーレン。

加入。

4位。

勝ち点56。

あの日とは。

違う。

それを。

見せるつもりだった。

なのに。

千葉は。

その変化まで。

最初から。

分かった上で。

来ている。

「舐めやがって……」

小さく。

口に出る。

だが。

すぐ。

自分で。

否定する。

違う。

舐めているんじゃない。

むしろ。

逆。

徹底的に。

見られている。

だから。

腹が立つ。

◇

前半三十二分。

仙台。

スローイン。

安西。

ボール。

受ける。

今度は。

塩川を。

背負う。

身体。

入れる。

キープ。

仙台サポーター。

声。

安西。

一度。

後ろ。

右SB。

自分。

動く。

再び。

受ける。

そこから。

中央。

フォーレン。

小林。

コース。

立つ。

「分かってるよ!」

安西。

出さない。

自分で。

縦。

高山。

安西。

一対一。

右。

見せる。

左。

中。

高山。

ついてくる。

安西。

さらに。

一歩。

身体。

入れる。

高山。

倒れない。

安西。

クロス。

足。

当てられる。

ボール。

ゴールライン。

外。

CK。

「よし!」

仙台ゴール裏。

大歓声。

安西は。

拳を握る。

たった。

CK。

それでも。

今は。

一つ。

前へ進んだことが。

嬉しい。

それくらい。

この試合。

仙台は。

詰まっていた。

◇

コーナーフラッグへ向かいながら。

安西は。

ゆっくり息を吐く。

苛立っている。

かなり。

だが。

キャプテン。

自分が。

先に。

乱れるわけにはいかない。

前回。

それを。

やった。

焦った。

人数をかけた。

追った。

崩れた。

七失点。

同じこと。

できない。

「……落ち着け」

自分へ。

言う。

「まだ0対0だ」

そう。

まだ。

0対0。

千葉が。

思った通りに。

仙台を止めている。

それでも。

点は。

入っていない。

なら。

まだ。

壊せる。

◇

安西は。

ペナルティーエリア内。

味方へ。

指示。

「ニア!」

「こぼれ見ろ!」

声。

出す。

キャプテンとして。

仙台の10番として。

自分が。

止まるわけにはいかない。

ただ。

心の奥。

消えない。

嫌な感覚。

前回。

感じたもの。

千葉が。

一つ先に。

いる。

そんな。

感覚。

◇

安西清勝は。

コーナーフラッグのそばから。

一瞬だけ。

千葉の中盤を見た。

背番号25。

小林庄雅。

こちらを。

見ている。

何を考えているのか。

分からない。

フィジカルで来ない。

タックルにも来ない。

ただ。

パスだけ。

消していく。

「……むかつくな」

安西は。

小さく笑った。

苛立ち。

フラストレーション。

かなり。

溜まっている。

でも。

それ以上に。

やはり。

思っていた。

**やっぱり、千葉はやってきた。**

前回とは違う。

けれど。

また。

仙台が嫌がることを。

わざわざ。

準備して。

持ってきた。

安西は。

ボールをセットする。

「だったら」

一度。

ゴール前を見る。

「こっちも、壊すしかねえだろ」

まだ。

前半。

三十分を少し過ぎたところ。

試合は。

終わっていない。

仙台のキャプテンは。

積もり始めた苛立ちを押し込みながら。

千葉が用意した流れを。

何とか。

自分たちの手で。

ひっくり返そうとしていた。