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異世界コンビニ☆ワンオペレーション — novelup.plus · All chapters

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「前言撤回!」 毛布を跳ね上げ、寝ていた姿勢から上半身を起こすと、私は狭いバックルームで高らかに宣言しました。 寝言ではありません。ちゃんと覚醒しています。 カウンターへ行き、まだ在庫があるコーヒー豆をエスプレッソマシンに補充し、紙コップを置き、ホットSを選択。 ガガガガと豆が挽かれる音が朝の静かな店内に響きます。挽かれた豆の、深みのある独特な芳香が心地いいです。 出来上がったホットコーヒーにミルクを一つ、スティックシュガーを一本入れ、専用のプラチックのマドラーでかき回します。「ぷはぁ」 一口くちにして、カウンター裏のタバコの棚を眺めました。 私はタバコは嗜みませんので関係ないのですけど、この大量のタバコはどうしましょう。 異世界の人に売れるのでしょうか。 いえ、そんな事より……。 ふつふつと怒りのようなものが込み上がってきます。「前言撤回よ!」 朝から何でこんなにも、気持ちが昂ぶっているのでしょう。 はい。忘れたくても忘れられない、昨夜の出来事のせいです。「なにが恋に国境はないですか、誰ですかそんな乙女な事を言う恥ずかしい人は。少女マンガですか!?」 私は怖さとか寂しさとか悲しさとか、全部ごっちゃになって混乱していたのです。 その気持ちを何とかしてくれるのが、目の前の人だと勘違いしたのです。 だからと言って、その人に恋しちゃったりなんかしませんよ? 男の人に甘えて慰めてもらおうだなんて、思ったりしてませんよ? バックルームに連れ込んで、固い床に毛布を重ねて敷いて、布団代りにして……なんてそんな事もしませんし、騎士の着用する鎧が、脱ぐのが結構面倒でそれを私も手伝ったりなんか絶対にしません! 挙句の果てに、いざその時になって……大きすぎて……、断念したとかそんな冗談みたいな話、私は存じません。聞いた事もありません。「あーもう! 異世界サイズめ!」 私は欲求不満なのでしょうか。 とりあえず私は昨夜の事を、全部無かった事にしたいようです。「あれも……これも……全部、ぜんぶ……恥ずかしすぎる……」 いい歳していったい何をしているのでしょうか。 男の人の背中にしがみ付いて、「帰っちゃやだ」なんて言っていい歳なのでしょうか。 世間様は許してくれるのでしょうか。逮捕されないでしょうか。 私をこの世界に連れてきた神様だか仏様だか知りませんけど、どうせなら私を十七歳に戻してくれないでしょうか。 神様ならそれくらいの事、出来るのではないでしょうか。 このお店に、……異世界に来てまで電気を通すような気の利いた事が出来るのなら、何故私を十七歳にしなかったのかと問いたい。小一時間、問い詰めたい。「まいどー!」 配達人のフーゴさんがやってきました。「おはようございます、フーゴさん」 木箱を二つカウンターの前に置いてから――「えっと、マスター?」 ――と訊ねてきますが、マスターと呼ばれる者はコンビニには存在しません。「私はオーナーでも店長でもありません。サオリと呼んでください」「じゃあサオリ、この荷物を持ってきたヤツを見たぞ。初めて荷物を持ってきた時に気にしてたろ?」「え?」「十二歳くらいの女の子だった。透き通るような金髪のすげえ美少女だ。そいつはなんと転移魔法でうちの配送センターに来たんだ」「転移魔法?」「ああ。そんな魔法、Sランクだって滅多に使えるもんじゃねえ。それをまだ小さい女の子が使ってたんだ。タダもんじゃないねありゃ」「そう……なの」「俺の勘だけど、アレに関わらない方が身のためだぜ。嫌な予感しかしねえ」「……」「ありあっしたー!」 フーゴさんは颯爽と馬車に乗って去って行きました。 「十二歳くらいの……女の子」 貴重な情報だとは思いますが、私がそれを知った所で、いったい何が出来ると言うのでしょう。 私は木箱をカウンター内へ運び、中を確かめました。 マナ・ポーション ヒール・ポーション シースナイフ 教授の鞭 発注したものがすべて入っていました。 鞭を手に取るとどう見ても新品になっています。 エリオットが持っていたものを、回収した物ではないのでしょうか。 ナイフを見ても一度も使った事のないような、刃の輝きをしています。「考えても分からないわね」 これらを持って来た者が十二歳くらいの女の子と聞いて、私は一つだけ連想したものがあります。 エリオットが洞窟で出会ったという天使です。 何故それに直結したのかは分かりませんが、そう想像してしまったのです。 神の使い。エリオットを追い詰めるべく魔物さえ使役した者。洞窟から外へエリオットを転送したのもこの天使でした。その転送とは転移と言うのではないのでしょうか。 私に繋がるものは……天使? ほぼそうなんじゃないかという気持ちになっています。 そして天使の背後には、神様という存在も見え隠れします。 その洞窟へ行けば、私は元の世界に戻れるのでしょうか。 私はバックルームへ戻り、エリオットが残した羽根ペンを手に取ります。 彼はこのペンの能力がまだ分からないと言っていました。 Sランクの彼が分からない事を、私が分かるとも思えませんが、それでも調べる必要がありそうです。 羽根ペンはインクがなければペンとして使う事が出来ません。 ランドルフが来た時にでも、お願いしてみましょう。 コンビニエンスストアには、残念ながらインクは置いていないのです。 真っ白で綺麗な羽根を透かして見ながら、何かと繋がったかもしれない一本の細い糸が、このペンから伸びているような、そんな気がしました。