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イニシエーション

異世界迷宮で奴隷ハーレムを — ncode.syosetu.com · All chapters

イニシエーション

その後、皇帝と護衛の入会式も行われた。

推薦人が公爵から伯爵に替わっただけで、台詞などは全部一緒だ。

決まり文句なんだろう。

「ミチオの入会儀礼だが、余は遠慮した方がよいか?」

護衛の入会式の後で公爵が尋ねてくる。

恥ずかしい秘密の暴露は推薦人には聞かせなくてもいいのだ。

もちろん聞く人は一人でも少ない方がいい。

「そう願えるか」

「分かった。席をはずしていよう」

公爵はあっさりと隣の部屋に出て行った。

簡単に引き下がったな。

これも決まりごとだからなんだろうか。

「では、まずミチオから自らの性的な恥ずかしい秘密を暴露するように。我を含めて他の者は、茶化したりせず、誠意をもって拝聴すること。ただし、秘密が十分に秘密でないと判断されるときには厳しく叱咤すること。ミチオはここへ」

公爵が外に出て再び薄暗くなった室内でエステルが宣言する。

「はい」

エステルに呼ばれてテーブルの向こうに回った。

暗い中、蝋燭の明かりが照らしているのはテーブルの周辺だけだ。

聴衆の四人の姿はぼんやりとしか分からない。

懺悔するにはいい環境なのだろう。

「始めよ」

聞く側に回ったエステルが催促する。

さて何の話をするか。

「昔、近所の店に可愛い女の子の店員がいて、おつりを返すときには必ず俺の手を握って優しく渡してくれた。俺は、この女は俺に気があるに違いないと、ものを買うときはなるべくその店で購入し、その娘の前に並び、細かいお金があってもおつりがもらえるように大きなお金を出していた。店員の中にはおつりを落とさないようにそういう渡し方をする人もいる、という話を聞いたのはいつのことだったか」

あれは恥ずかしい勘違いだった。

「くだらん」

「よく分からん。どういうことだ?」

「その程度ならよくある話ですよね」

男爵、皇帝、護衛が評定する。

あまり評判はよくないようだ。

皇帝にはおつりと言っても通じないらしい。

「なん……だと? まさか、あの娘が手を握ってきてくれるのは……」

一人変なところにどストライクだった人がいるみたいだとはいえ。

「その娘の前に並んだというのが分からんが、当然、勘違いしたまま結婚を申し込んだんだろうな」

エステルが突っ込んできた。

レジに並んだと言っても分からないだろうに。

結婚を申し込むというのも、感覚が異なる。

「いや。そこまでは」

「駄目だな。勘違いしたまま告白して、きもいので帰ってください、と断られるまでが一連の流れだろう。そこまでなければ恥ずかしい秘密とはいえん」

「では。初めて行った町で子どもに道を尋ねたら、その後、変質者が女の子に声をかける事案が発生したという注意の出回ったことが」

エステルに拒否されたので次の話を出す。

「たいした話ではないな」

「注意を促すことも人民の安寧のために必要だ」

「よく分からないです」

これも三人に否定された。

「大丈夫だ。町に出るときには必ずエンブレムをつけた騎士団員と一緒にいるようにしているから、問題ない」

一人は大丈夫なんだろうか。

「町の中で女の人が俺の後ろにいる人に手を振ったのを見て、俺に手を振っているのかと心臓がばくばくした」

「まだまだ」

「ちょっといいなと思っている女性に世話になったので、ここぞとばかりに八方手を尽くして貴重な食べ物を手に入れプレゼントしたら、これ他の男からもらったことがある、と言われた」

「恥ずかしくもなんともないな」

エステルにはまったく通用しない。

約一名、「それはつらい」とか言っているが。

「娼館の前で入ろうかどうしようか悩み、長時間うろついたことがある」

「足りんな」

「その気持ちは分かる」

気持ちが分かってもらえたのは、もちろん伯爵だ。

「わざわざブロッケンを外に出したのだから、とてもブロッケンには聞かせられないような話があるだろう」

エステルがアドバイスをくれた。

公爵に聞かせられない話か。

あれを話すのだろうか。

あれかぁ。

「ブロッケンの奥さんのカシアはかなり美人だ。実はほれている」

「それだ。そういう話が聞きたかった」

「朕も見たことがある。エルフの中でもひときわ美しい。相当な美形だったな」

「見たことはないな。だが、見ない方が幸せか」

「私も見たことはないです。そんなに美人なんでしょうか」

今回は好評らしい。

これか。

「もちろん、ものにしたんだろうな」

エステルが確認してくる。

「いや。そこまでは」

「今すぐ行って押し倒してくるなら、入会を認めよう」

「朕も、公爵には黙っておいてやるぞ」

「大丈夫。貴族の夫婦関係など表面上だけの空しいものだ。所詮政略結婚だからな。別の男になびくのも早いだろう」

こんなアドバイスをよこしてくる伯爵のことが心配だ。

実体験に基づいているのだろうか。

「さすがにちょっと」

「この程度の告白では秘密の暴露とは言えん」

「認めてやってもいいのではないかという気もするが」

伯爵は認める方に傾いてくれたらしい。

エステルは全然だ。

他の話にするか。

「俺のパーティーメンバーには四人の女奴隷をそろえている。四人には手をつけた」

「あの四人か。確かに美人ぞろいではあったな。だが、パーティーメンバーに手を出すくらいは珍しくもないだろう」

「め、珍しくない……」

エステルのダメ出しに、若干一名が驚いていた。

手を出そうとして断られたのだろうか。

「その程度のことならブロッケンに秘密にしておくことでもないだろう。ブロッケンも中に入れて全員でつるし上げるか。おい、カルロス」

「もちろん四人全員を毎日平等に可愛がっている」

「ドアを開け……待て」

公爵を中に入れるなどと不穏なことを言い始めたエステルが止まった。

「四人を、毎日、なのか?」

皇帝が御自ら確認してくる。

「そうですが、何か?」

「こ、これが若さというものか」

「しかし若いからといって毎日は」

「朕とて十七のころには」

「毎日……四回……」

「今となっては一日一回も難しいが」

「できるかできないかではない。やりたいかどうかだ」

判定員がひそひそと会話した。

「反対だ。ミチオの入会に反対する」

伯爵が声を荒げる。

反対派に回ってしまったらしい。

「さっきは認めてもいいと言っていたではないか」

「気が変わった」

「しかしここまでの話を突きつけられたら」

「これはやむをえないか」

「確かに」

判定員が引き続き協議した。

議論はいい方向に進んでいるようだ。

約一名を除いて。

「てめえの血は何色だ」

不利を悟ったのか、伯爵が俺に向かって叫ぶ。

「さすがに四人全員に二回戦は大変なので、たまにしかやってない」

「た、たまにだと」

「たまにしか」

「たまにはやっているということか」

「爆発しろ」

聞こえんなぁ

もちろん、最後の発言は伯爵だ。

やるというなら受けてたつぞ。

貴様の髪の毛一本もこの世には残さん。

なに、簡単なことだ。

もともと少ないのだし。

貴様には地獄すら生ぬるい。

「落ち着け」

「ぐぬぬ」

「落ち着かせるためにもう終わらせたらどうだ」

「よかろう。ミチオの入会は認められた。これでミチオも立派な会員だ。生まれ変わった気持ちで励むように」

最後に意見を取りまとめてエステルが宣言した。

取りまとめたというか打ち切らせたというか。

毎日四回は色魔のおかげだけどね。

「終わったのか」

皇帝の護衛が扉を開け、公爵が入ってくる。

「朕はすさまじいものを見た」

「そこまでの秘密が?」

「秘密というより、末恐ろしい」

皇帝と公爵が会話した。

別に末恐ろしくはないだろう。

「次はガイウスの入会儀礼だ。ブルーノはどうするんだ?」

「かまわぬ。朕には聞かれて困ることなどない」

続いて皇帝の入会儀礼が始まる。

強気の皇帝は推薦人の伯爵を外には出さないようだ。

外に出すと、伯爵に聞かれたら困る秘密の自白を強要されたりするからな。

推薦人をはずすのもよしわるしだ。

「では、始めよ」

「朕は女の人の胸は大きすぎないのがいいと思う。小ぶりで可愛らしい胸こそが至高だ。何を隠そう、朕の 御父様 《 おもうさま 》 は胸の大きい女性が好きでな。朕が子どものころは、乳母から侍女までみな胸の大きい人が集められていた。おそらくその反動が出たのだろう。朕は胸だけの女には食傷気味だ」

皇帝が女性の趣味を披露する。

なにげに先帝の趣味まで。

皇帝の父親だから多分先帝だと思う。

「それは個人の趣味だな」

「秘密の暴露としては弱い。恥ずかしい趣味ではあるかもしれないが」

男爵と公爵が斬って捨てた。

公爵は先帝と同様巨乳好きのようだ。

カシアも小さいというわけではないだろうしな。

さらにいえば着やせするタイプなのかもしれない。

「おまえは何を言っているんだ。胸の小さい女性が素晴らしいのは当然のことだろう。まったく、小さい女の子は最高だぜ」

おまわりさんこいつです。

「子どものころといえば、朕が小さいころに部屋の隅に隠れていて、侍女が知らずに踏みつけたことがあったな。朕が初めて性的に興奮したのはあのときだ」

「それは興味深い」

「あの痛みは、あれでなかなかよかったものだ。朕はあれ以来、女の人の足を見ると少し興奮を覚える。できればまた踏んでほしい」

完全なM気質じゃねえか。

しかも貧乳好き。

セリーには会わせられない。

いや。セリーの胸もそこまで小さいわけではないが。

「侍女がいるなら頼んでみれば」

「それがなかなか気軽にはやってくれんのだ」

尋ねると答えが返ってくる。

頼んだのかよ。

まあ恐れ多いのだろう。

皇帝だからな。

「ガイウスの立場では難しかろう」

「仕方がないので、今度、侍女が歩く通路に穴を掘らせ、そこに隠れようかと思う」

変態か。

「ここまで暴露すればいいのではないか」

「そうだな」

「認めよう」

判定員には好評のようだ。

完全に変質者の域に達しているが。

思わぬところで帝国の秘密を知ってしまった。

父帝が乳帝だったために貧乳好きになってしまったMな皇帝。

帝国の恥部に触れた感じだ。

「ただそこまでこだわるなら靴がな」

「ミチオは認めないのか?」

「いや。認めないのではないが、それを楽しむならハイヒールでも履かせないと」

この世界の女性にハイヒールというのは一般的でないようだ。

履いているのを見たことがない。

しかし女性に踏んでほしいならハイヒールだろう。

眼鏡をかけ、タイトなスーツを身に着けた年上の女性。

口から漏れる甘い吐息と目から突き刺さる冷たい視線。

官能的なフェロモンと怜悧な理性とのハーモニー。

そこが足りない。

「なるほど、ハイヒールか」

「魔法使いの女性用の高級装備品だな」

「一度見たことがある。魔法の威力を高めてくれるという話だが、確かにあれで踏まれたら威力が高そうだ」

貴族三人が話し合う。

ハイヒールがこの世界にあったのか。

男性用で魔法の威力が高まる靴はないのだろうか。

高下駄とか。

天狗が履いたら魔法に威力が出そうだ。

「ハイヒール。確かに。あれなら」

皇帝がつぶやいた。

ハイヒールのよさが分かってもらえたらしい。

「分かってもらえたか」

分かってよかったかどうかは別にして。

「朕が間違っておった。だがどうやってハイヒールを履かせるか。迷宮にでも隠れるか」

そこまでは面倒見切れまへん。

「危険なことは止めてください」

護衛に止められている。

危険だし迷宮に隠れるのはやめた方がいいだろう。

かといって面と向かって頼んでも、皇帝を踏むなど恐れ多いと断られてしまう。

前途多難だな。

「方法については後々模索するとして、さすがはミチオだ。朕が師兄として敬するだけのことはある」

妙な尊敬を受けてしまった。

そんなことで敬われたくはないものだ。

「その方向で今後も努めるとすれば、ミチオも師として満足であろう。どうだ?」

エステルが俺に確認してくる。

変な道の師ではないというに。

元々不満があったわけでもないし。

「ま、まあ」

「よかろう。ガイウスの入会は認められた。生まれ変わった気持ちで精進するように」

だから精進させるなっての。

「よろしく頼む」

「では最後はカルロスだ。推薦人のブルーノをはずさせることができるが、どうする?」

「大丈夫です」

おまわりさんこいつですの伯爵に聞かれて困ることなど、もはや何もない。

と思ったが、カルロスの告白には頭がバーコード伯爵も引いていた。

俺もドン引きだ。

護衛の秘密については、俺から暴露することはできない。

帝国解放会の規定だしな。

たとえルールがなかったとしても、触れないのが武士の情けというものだろう。

皇帝といいその護衛といい伯爵といい、帝国は大丈夫なんだろうか。

腐ってやがる。