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蝸牛

異世界迷宮で奴隷ハーレムを — ncode.syosetu.com · All chapters

蝸牛

光る魔法の方ならそのうちなんとかなるからとルティナを納得させた。

「これが魔法使い用の武器な。迷宮ではこっちを持て」

「はい」

ダマスカスステッキも押しつける。

さらに、ロクサーヌに頼んでさっさと次の魔物を探してもらった。

こういうときは実際にやらせてみるに限る。

次の魔物は、グミスライムが二匹にクラムシェルとケトルマーメイドの団体だ。

ちょうどいい。

風魔法が最適となる組み合わせだ。

「よし。いってみろ」

「はい。香り捕らえて行く風に、 仇 《 かたき 》 はらえる武威を乗せ、噴流、ブリーズストーム」

四人が走り出し、ルティナは魔法を詠唱する。

こんな呪文だったのか。

俺は使ったことないから知らなかった。

ルティナはブラヒム語の方も問題ないらしい。

伯爵令嬢だけに言葉はきっちりしているのだろう。

貴族同士の会話はブラヒム語になるようだし。

ルティナの魔法に合わせて、俺も雷魔法二発を放つ。

詠唱共鳴とかは問題にならなかった。

俺の方は詠唱を省略しているから大丈夫なんだろう。

多分いけるだろうとは思っていたが、実際に使用できてひと安心だ。

「体調は大丈夫か?」

「問題ありません」

聞いてみるが、さすがに初級魔法一発でMPが枯渇することはないか。

俺も魔法使いLv1のとき普通に使えたし。

MPが足りないようならマウストゥーマウスで回復薬を与える覚悟はできていたのだが。

「魔法を使いすぎると気分が悪くなるので、注意するように」

「そういえば聞いたことがあります」

「その辺の感覚は第三者には分からないから、自分で加減するようにな。緊急時のために使いすぎないで取っておく必要もあるが、そこまでは今はいい。回復薬もある」

「分かりました」

むしろ使いすぎてくれてもいい。

使いすぎて回復薬にすがってきてくれていい。

すがってきていいのよ。

準備はできている。

追加で雷魔法二発を念じてから、先行する四人を追いかけた。

ルティナは撃たないようだ。

魔法をどのくらいの頻度で使っていくかは、打ち合わせる必要があるかもしれない。

俺が使う魔法の回数の減らないところでルティナが魔法を撃っても無駄になる。

MPの制限があるから、ルティナは毎回毎回魔法を使うことはできないだろう。

基本的には魔物の数の多い団体に使ってもらうとして、一つの団体に対して一回撃つのか、二回撃つのか。

あるいは一つおきの団体に対して三回攻撃するとか。

俺の魔法の回数と合わせて、確認が必要だ。

これは二十九階層へ到達してからとなるな。

今はいい。

しかし、打ち合わせたとしてそれですむかどうか。

今はどんどん上の階層に進んでいるから、そのたびに合わせなければならない。

ルティナの魔法使いもなったばかりでレベルアップのスピードが速いだろうから、これも回数を狂わせる原因となる。

俺の勇者のレベルアップもある。

属性魔法だから魔物の組み合わせによっては違いが出てくることもあるだろう。

結論として、当面打ち合わせる必要はないな。

レベルが上がるたびに狂うとしたら、なんで狂うのかという話になり、なんでそんなに頻繁に狂うのかということになりかねない。

特にセリーあたりに考察されると厄介だ。

考えるのはもっと先に進んでからでいいだろう。

もっとぎりぎりの戦闘になり、魔法一発分でも早く倒したいということになってからで十分だ。

当面はそこまでこだわることでもない。

「サンダーストーム」

ロクサーヌがケトルマーメイドを眠らせていたので、立ち止まり警告を発してから追撃する。

ルティナが振り返って、首をかしげた。

警告を発したのは初めてではないはずだが。

俺には詠唱が必要ないと認識したので、改めて不思議に思ったということだろうか。

「……」

ルティナはしかし、何も聞かずに先に進んでいってしまった。

いやいや。

聞いてくれていいから。

誰も怒らないから。

ちゃんと理由あるから。

被告人に釈明の機会を。

何人も裁判を受ける権利を奪われない。

ルティナを追いかける。

この団体は結局、ルティナが一回しか魔法を撃つことなく倒れた。

「魔物が睡眠状態になっているときは、魔法を使うと起こしてしまうので、詠唱は前衛陣にもはっきりと聞こえるようにな」

「分かりました」

まず真っ先にルティナに弁明してしまう。

もし何か言ってくれる人がいるとすればセリーだが、考察に忙しいようだし。

「詠唱共鳴というのは本当に詠唱が共鳴しているわけですか」

セリーはなにやらつぶやいていた。

「それで、魔法を使ってみてどうだ?」

「はい。これでわたくしも微力ながらお役に立てます」

「期待している」

「ありがとうございます」

ルティナが頭を下げる。

特に釈明はいらなかったか。

下手に弁解するとかえって必死だと思われかねない。

さじ加減が難しい。

「一発しか撃たなかったが、魔法を何回も使うのは厳しそうか?」

「いいえ。ただ徐々に慣らしていこうかと思いまして」

いろいろ考えているようだ。

徐々に慣らしていくとその前に魔法使いがレベルアップしかねないが。

別にそれはいいか。

実際、次の団体に対してルティナは魔法を二回使った。

さっき撃った分のMPはまだ完全には回復してないだろう。

「どうだ?」

「少し厳しいですが、まだいけます」

生まれてきたことを後悔するくらいではないから、まだまだだ。

MPが減っていたとしてもそれなりか。

「あまり無理はするな。十分に休息をはさめ」

別に無理をしてくれてもいい。

むしろ限界まで無理をしてほしい。

「あまりお役に立てなくてすみません」

謝ってきたのは、多少気分が落ち込み気味なんだろうか。

もっとも、初級攻撃魔法では回復薬にしゃぶりつきたくなるほどMPを浪費することは難しいか。

かといって無理やり使わせるわけにもいかず。

「最初はこんなものだろう。少しずつ慣れていけばいいから」

「ありがとうございます」

その後、ルティナは魔法を使わなかったり使ったりになった。

使わないことの方が多いのが、MPの制限だろう。

本当に無理はしていない。

たまには二回撃ったりもしている。

「ルティナが二回魔法を使っても戦闘時間が短くなることはないようです」

その二回撃ってきたときに、セリーがアイテムを拾ってきながら進言した。

げ。

しっかり数えているのか。

詠唱共鳴の考察でもしていればいいのに。

「あー。まあどうせすぐに上へ行くことになるからな。今は考えなくていいだろう」

「すみません。回数までは確認していませんでした」

「今は慣れることが第一だ。他のことは気にするな」

ルティナが謝ってきたのでフォローを入れておく。

数えられるとすごい勢いでレベルが上がっていることがばれてしまうかもしれない。

魔法使いのレベルが一つや二つ上がったところでそうそう魔物を倒すのに必要な魔法の回数が減ることはないだろうが。

ただ、どこかのタイミングで減ることは確実で、それがいつになるかは分からない。

レベルが上がるたびに上の階層へ逃げるという手はあるが、それだけでは足りないし。

「ですが、わたくしが二回を使ってもミチオ様の魔法一回に及ばないと……」

ルティナが妙なところに気づいて落ち込んだ。

MPの使いすぎか。

「あー。まあ俺の魔法の使い方はちょっと特殊だからな。大丈夫だ」

実際には俺は魔法を二連打して使っている。

二十三階層では現状戦闘時間を短縮させるために雷魔法二回分のダメージを与えなければならない。

それをレベルの低いルティナの初級攻撃魔法一発でカバーされたら俺の立つ瀬がない。

セリーはそのことを知っている。

ちゃんと説明したことはないが。

ルティナだって憶測できなくはないはずだ。

そのうち気づくだろう。

「そうなのですか? そのやり方をわたくしに教えてもらうわけには?」

「使えないだろうな」

「そうですか」

ルティナが落ち込むが、使えないものはしょうがない。

「魔法の回数のことは、もっと上の階層に行ってから考えればいい。今は俺たち自体がかなりのスピードで上を目指している段階だから、だいぶ先になる」

回数のことを考えるのは先でいい。

レベルが十分に上がってからで。

「分かりました」

「セリーもありがとうな」

「いえ」

セリーには礼を言って、狩を続ける。

なんで考察したと文句をつけるわけにはいかないし。

戦いぶりを見ている間に、ルティナは魔法使いLv4になった。

かなりの速度でレベルアップしている。

ルティナがグミスライムに風魔法二発使うと、俺の雷魔法が一回減らせるようだ。

大体穏当なところか。

弱点となる風属性を使わせているのだから風魔法一回で俺の雷魔法一回をカバーするくらいでもいいと思うが、そこはレベル差なのだろう。

むちゃくちゃな違いはないようでよかった。

この分だと、回数が狂うのは風魔法一発が俺の雷魔法一発に相当するようになったときだけか。

さすがに、風魔法一発で俺の雷魔法二回分になることはないだろう。

最初が風魔法三回で俺の雷魔法一発だと狂う回数が増える。

風魔法四回で俺の雷魔法五回分とか、風魔法五回で俺の雷魔法六回分とか、地味に調査すればいろいろと違ってくるポイントはあるのだろうが。

そこまではなるようにしかならん。

これなら上に進んでも大丈夫か。

「この階層ではあまり全体攻撃魔法も来ないし、一つ上の階層に行ってみるか?」

ルティナに訊いてみた。

グミスライムの全体攻撃魔法はまだ喰らっていない。

それほど戦ってもいないし。

後はルティナのレベルも上がっていく一方だから、階層も上げていけばいいだろう。

「上の階層ですか」

「ルティナなら大丈夫です。早く上の階層に行って、早く慣れた方がいいでしょう」

「分かりました。ロクサーヌ姉様」

ルティナがためらうようなら行かなくてもよかったのだが、ロクサーヌが強引に決めてしまった。

あまりイケイケでもよろしくないが。

このまま二十三階層にいてもいつ全体攻撃魔法が飛んでくるか分からないし、まあ上に行けばいいだろう。

二十四階層に移動する。

階層を移動するついでに、遊び人の効果も変更した。

英雄の知力中上昇から勇者の知力大上昇に切り替える。

ジョブが持つ効果の大きさはレベル依存だ。

遊び人のスキルに探索者のアイテムボックス操作を設定したとき、アイテムボックスの容量は探索者のレベルではなく遊び人のレベルになったから、遊び人に設定する効果もそれを持っている元のジョブのレベルでなく遊び人のレベルに従うだろう。

勇者Lv1の知力大上昇にそこまでの影響はないが、遊び人Lv48の効果が知力中上昇から知力大上昇に変わったらどうなるだろうか。

あまり戦っている最中には変えない方がいい。

階層が上がるときなら、問題ないだろう。

「クーラタル二十四階層の魔物は、タルタートルだ。土属性が弱点なので、こいつが多いときにはブリーズストームではなくサンドストームを使う」

「分かりました」

「では、ロクサーヌ。最初から数の多いところでいい」

ルティナに説明した後、ロクサーヌに先導を依頼した。

説明自体は、完全にセリーの受け売りだ。

他に付け加えることもないし、しょうがない。

「こっちが、タルタートルの数が多そうですね」

ロクサーヌについて進んでいく。

現れた魔物は、タルタートルが三匹だ。

四人が走り出した。

ルティナは、走っていないので魔法を使うらしい。

俺もサンダーストームを二回念じる。

二十四階層に上がったしそろそろ全体攻撃魔法も使ってきてほしいが、三匹なら雷魔法でいいだろう。

遊び人のスキルは雷魔法のままだし。

雷光がきらめいた後、土ぼこりが舞った。

詠唱がある分、ルティナの魔法は発動が少し遅れる。

麻痺した亀は一匹か。

魔物の数が少ないと麻痺して脱落する魔物の数も減るというジレンマはある。

本当は魔物の数が多い団体にこそ雷魔法を使いたい。

全体攻撃魔法を使ってきやすいように、とか考えている時点で、どうでもいいが。

残りのタルタートル二匹は、次の二発で麻痺した。

「やった、です」

直後にミリアが一匹を石化させる。

ただし、今回石化したのは一匹だけで、全部を魔法で片づけた。

「土ぼこりがキラキラと光を反射したのは見たことがあります」

戦闘が終了するとルティナが言ってくる。

二十二階層でクラムシェルたちを相手にしたとき、土魔法と雷魔法の組み合わせを使った。

今回と同じ組み合わせだ。

それのことだろう。

「あー。そうだったな」

「あれはこういう風にしてやっているのでしょうか」

意外に鋭いというべきか、今まで分からなかったのかよというべきか。

突っ込まれると面倒だ。

「えー。原理としてはそうだな」

「わたくしにもできるのでしょうか?」

もっと厄介な質問を。

「うー。無理かもな」

こんな総理が昔いたという話を聞いたことがある。