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オイル

異世界迷宮で奴隷ハーレムを — ncode.syosetu.com · All chapters

オイル

前回のあらすじ:やっぱりミリアは魚好きでゴスラーは苦労人だった

「了解」

鏡の購入を引き継ぐ人をペルマスクまで案内してほしいというゴスラーの要望には、一も二もなくうなづいておく。

断る理由もない。

そのくらいのアフターサービスは必要だろう。

いや。

俺はペルマスクの市街地に入ったことはない。

冒険者ではなかったから入れなかった。

俺に案内しろと言われても無理だ。

「ありがたい」

「ああっと。ただ、買い付けはパーティーメンバーに任せているので」

「もちろん、こちら側の人員全部を連れて行けとは言いませんので大丈夫です」

一人二人連れて行くだけなら、こっちもセリーか誰かと一緒に行けばいいのか。

俺自身ペルマスクには入ったことがないからちょうどいい。

一度前もって全員で行っておく手もあるが。

ただ、ペルマスクは入るときに税金がかかるんだよな。

「ペルマスクに入るには税金もかかるし、確かに案内で全員行く必要はないか」

「入市税があることは存じております。もちろんミチオ殿とパーティーメンバーの入市税は経費としてこちらで負担させていただきます」

「別に催促したわけでは」

「大丈夫です。すぐにとはまいりませんが、用意できたら連絡させていただきます。その節はよろしくお願いします」

いろいろと至れり尽くせりだ。

この件は苦労人のゴスラーに任せておけばいいだろう。

公爵側の人間を連れて行くならこっちも全員は行けないので、ルティナとかはまた次回連れて行けばいい。

ペルマスクに行ったら俺がおのぼりさんになってしまう可能性もあるわけだし。

渋谷のスクランブル交差点とかを知っている身としては人の多さにびびることはないだろうが、珍しい建物とかあったら見上げてしまうかもしれない。

観光客であることは間違いないのだし。

おのぼりさんと観光客に絶対的な違いなんかあるはずもなく、単に地元の人が観光客を見下しておのぼりさんと解釈しているにすぎないのだろう。

地元の人やルティナから見たとき観光客の俺がおのぼりさんに見えるということは十分にありうる。

ペルマスクへは最初にハルツ公騎士団の冒険者を連れて行き、ルティナは俺がペルマスクに慣れてから連れて行くのがいい。

つまり、俺としてもゴスラーの依頼は渡りに船だ。

どうせ観光客ではあるのだからおのぼりさんに見えたところでどうでもいいといえばどうでもいいが。

ただ貴族出身のルティナはそういうことを気にしそうではある。

ゴスラーとは話だけをして、すぐに家に帰った。

今日は待たせると怒るかもしれない人がいる。

早く食べたいのにと。

早々に家に帰ると、さすがにまだ怒ってはいなかったが、皿一杯にフィッシュフライが積み上げられていた。

見事に山積みになっている。

大漁だ。

なんでこんなことに。

いや。もちろん分かっていたけどね。

白身を多めに渡したのはそもそも俺だ。

公爵のところで時間を食ってもいいように。

渡した全量をミリアが使うことも想定はしていた。

ただ、ゴスラーとの話はあっさり終わって割と早く帰れたのに、短時間で全部揚げきっていたというのが驚きなわけで。

キッチンの中はまだ熱気が充満している。

ミリアはきっと鬼気迫る勢いで揚げたのだろう。

逃げ出して正解だ。

「お帰りなせいませ」

「ああ。ただいま」

「あ、おかえり、です」

ロクサーヌと挨拶を交わしていると、ミリアも俺の帰宅に気づいた。

早く揚げてしまって俺が帰ってこなったら食事まで待たされることになる、というのに気づいていたのかどうか。

少なくとも料理の最中には考えなかっただろう。

今は羽毛布団作りの作業もあるので、やることはあるとはいえ。

「うまそうだな」

「はい、です」

味見と称して一切れ二切れ減っていそうだが、それは不問にふそう。

「すぐに朝食でいいかな」

「そうですね」

ロクサーヌもやや苦笑気味だ。

朝食を作っているだけだから文句もいえないし。

暑かったろうに。

食卓へと移動する。

フィッシュフライはベスタが運んだ。

ミリアでは持てないほど作ったらしい。

ミリアは、いち早くテーブルに陣取り、フィッシュフライと俺を期待のこもった目で交互に見る。

俺がスープを配るまで待っていないとロクサーヌがうるさいぞ。

「よし。では食べようか」

急いでスープを配り終えさっさと朝食の開始を宣言して、フィッシュフライを取った。

カメリアオイルを使っているといっても、見た目は、まあ別に普通のフィッシュフライだ。

色や香りにそれほど違いがあるのでもない。

あったら怖い。

そもそも色は油の色じゃなくてパン粉のこげた色だしな。

紫や水色のフィッシュフライとかあっても気色悪いだけかもしれない。

ナスのてんぷらと区別つかん。

匂いは、ほのかにいい香りがするような気もするが、特段どうということもない。

ロクサーヌ、セリーに続いてミリアがフィッシュフライに手を伸ばすのを横目に見ながらかぶりついた。

お。

悪くはない。

こういう感じなのか。

しかしどうなんだろう。

特別にうまいとまでいうほどだろうか。

うーん。

いや。まずくはない。まずくはないが。

美味しいか美味しくないかでいえばおいしいが、そこまでうまいかというと、微妙。

基本、油で揚げれば美味しくなるものだろうし。

衣はさくっとした感じがしないではなく、その歯ごたえの下にじゅわっとした甘くとろける味わいがあるような気がなんとなくしないでもないものの、単なる思い込みである可能性もなきにしもあらず、ということをはっきりと否定できるだけの根拠は明確でない、と判断するにやぶさかではない。

「これは美味しいですね。ご主人様と一緒にいるとこのようなものまで食べさせていただけて幸せです」

「カメリアオイルとはここまでのものだったのですね」

「おいしい、です」

「すごいと思います」

「諸侯会議の休息中に出てきてもおかしくない味です」

あら。

ロクサーヌたちには好評のようだ。

うーん。

うまいのか。

確かに、少し甘い感じはするよな。

別に甘くはないんだけども。

甘くはないが、甘い。

な、何を言っているのか分からねえと思うが、俺もこの味をどう表現していいか分からなかった。

やっぱりカメリアオイルを使うとうまいんだろうか。

ロクサーヌたちにはカメリアオイルは美味しいものだという先入観があるように思えるけどね。

しかし別にそのくらいはどうでもいい。

みんなが喜んでいるならそれでいいだろう。

食事をしながらほかのことも聞いてみる。

「今までの油はセリーがキャンドルにしてくれるんだよな?」

「はい」

「蜜蝋のほかに必要なものはあるか?」

「キャンドルではありませんが、板が必要かと思います」

「板?」

板というのは、ラブシュラブのドロップアイテムである板のことだろう。

キャンドルに混ぜるのだろうか。

まあ燃えることは燃えるか。

「板を原料に警策を作ります。ビープシープ対策です」

あ。燃やすわけじゃないのか。

キャンドルは関係ないらしい。

そういえばセリーがそう言っていた。

「警策?」

「先を平たくした木の棒です。一応は武器ですが、ダメージはまったくといっていいほど与えません。寝入ったとき目を覚まさせるのに使います」

座禅中居眠りしたときなんかに使うやつだ。

確かそんな名前だったような気がする。

この世界に座禅はないだろうが、似たようなものなんだろう。

ビープシープは、変な音を出してこっちを眠らせてくる魔物だ。

クーラタル四階層のボスだから、次の三十七階層では普通に出てくることになる。

「なるほど。眠ったときにそれで起こすのか」

「全員分は必要ないかもしれませんが、少なくとも二、三本、できれば四、五本はほしいですね」

それはもうほとんど全員分ではないだろうか。

パーティーメンバーは六人だから全員分としても六本だ。

まあ作るセリーが必要だというのだから、全員分作ってもらえばいい。

夕方、セリーに警策を作ってもらった。

平たい木の棒だ。

そこまで危険でもないだろうが、ちょっとは痛そうだ。

ハリセンが作れればよかったのに。

セリーは、今まで使っていた廃油も夕方キャンドルにした。

キャンドルというか、廃油と蜜蝋を溶かして混ぜ合わせ壷に入れて紐をたらしただけ、だよな。

見た限り。

いたってシンプルだ。

これなら今後キャンドルは自作させてもいいか。

と思ったが、買っている蝋燭もそう高いわけでもないか。

いや。高いことは高いが、このキャンドルだってオイルも蜜蝋も魔物が残すアイテムを使っているのだから、その分の手間と原価を考えれば、ぼったくられているのではない。

蝋燭だろうがキャンドルだろうが蛍光灯とは比べ物にならないくらい暗いしな。

しかし、その蝋燭の灯りの中風呂場で行われたオイルマッサージは格別のものだった。

物憂げに薄暗く、不安定に揺れ動く妖しい光。

その光を反射して魅惑的に輝くオイル。

そのオイルをしたたらせながら滑らかにすべる肌。

つややかな肌ときらめくオイルが織り成すページェント。

柔らかな肌とぬめりのあるオイルとが繰り広げるタペストリー。

さすがは侍女の嗜みと呼ばれるだけのことはある。

これを知らずして何の楽しみか。

これを知らずして何の人生か。

これを知らずして男の夢は語れない。

柔肌の 熱き血潮に 触れもみで

※

翌朝、元気百倍、迷宮を快進撃した。

元気百倍といってもオイルマッサージで元気百倍になった部分が元気百倍ではない。

な、何を言っているのか分からねえがそれくらい元気百倍だ。

スパイクスパイダーだろうがブサイクスパイダーだろうがコザイクスパイダーだろうがひとひねりよ。

クーラタルの迷宮三十六階層のボスはスパイクスパイダーという。

馬鹿でっかいクモの魔物だ。

高さは優にセリーの背丈を超える。

さらには、その前足を大きく持ち上げ、振り下ろしてきた。

迷宮の床に突き刺さって穴が開くのではないかと思われるほどだ。

恐ろしい。

あんな打撃を食らったのではひとたまりもない。

その攻撃を、避ける、避ける、ひたすらに避ける。

ロクサーヌが。

さすがはロクサーヌだ。

とはいえ三十四階層からはボスが二匹。

もう一匹のスパイクスパイダーはどうしているかというと、こちらはベスタがきっちりと抑えていた。

スパイクスパイダーがいくら大きく、前足を高く持ち上げるといっても、背の高いベスタにとって脅威となるほどではない。

ベスタが腕を伸ばせば振り下ろす前の前足に十分届いてしまう。

そこに、片手に一本ずつ持っている両手剣を持っていけばどうなるか。

スパイクスパイダーが足を上げ、振り下ろしてスパイクを突き立てようとしても、ベスタの剣が待ちかまえている。

それでも相手は魔物だ。

なんとか隙を見つけては、無理やりにでも攻撃を行う。

そして、大柄なベスタに、前足が十分な速度に乗る前に受け止められてしまっていた。

さすがベスタだ、なんともないぜ。

逆に、スピードが乗っていないため、こちらが剣で受けても向こうにダメージは少ないというのが難点か。

まあそのくらいはどうでもいい。

攻撃を封じることさえできれば、後はミリアの出番だ。

ベスタの横に回ったミリアが小さい攻撃をいくどとなく叩き込み、硬直のエストックでボス一匹を石化させる。

一匹動きを止めてしまえば、残りの一匹はロクサーヌが相手をしているので安心だ。

ロクサーヌがボスの攻撃を回避し続けている隙に横からミリアが石化させてもいいし、俺の魔法で倒れるまで粘られてもいい。

ロクサーヌならそれくらい軽い。

ボス部屋は追加で魔物が湧くことがないから、どれだけ時間をかけても大丈夫だ。

結局、ミリアがもう一匹も石化させ、スパイクスパイダー戦は終わった。

「この分なら三十六階層のボス戦も大丈夫そうかな」

スパイクスパイダーだろうがモザイクスパイダーだろうがオイルマッサージの前では敵ではないのだ。

柔肌はモザイク越しよりオイル越し。

どうして威力の劣ることがあろうか。

「ご主人様と私たちならば、このくらい何の問題もありません」

「特に問題はないと考えます」

「だいじょうぶ、です」

「大丈夫だと思います」

「このくらいで負けていては諸侯会議への道は遠いといえましょう」

ロクサーヌについては心配していないし、もう一人魔物の相手をするベスタが大丈夫だというのなら大丈夫だろう。