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第5話 異世界の村 2025年12月10日 公開

異世界の牧場を相続しました~スタァストリームファーム~ — kakuyomu.jp · All chapters

第5話 異世界の村 2025年12月10日 公開

うん……なんて言うか中世ヨーロッパ風の石造りの家でいいんだろうか?

こう、ヨーロッパと言っても田舎風と言うのか?

ゲームやマンガで見る、ファンタジーの農村にある建物って感じ。

どう見ても日本じゃない。

まあ、俺は日本から出たことがないし、特別世界史に詳しい訳でもないので、本当に中世なのか、あるいはローマなのか、ギリシャ風なのかすらわからないが……ともかく、そんな感じ。

改めて、自分の教養のなさにビックリだ。

そんなこんなで道中ステータスの確認とか色々と説明してもらった。

概ね爺さんが書いたと思わしきノートと内容が一致していたので、嘘は言っていないと思う。

とりあえずルークさんの家……というか教会の個室に案内してもらい、椅子に腰かける。

あの場所は爺さんは俺へのプレゼントと書いていたし、ルークさんも聖地とか言っている。

今はできることをしていくべきだろう。

なんて思っていると腹が鳴った。

そんな俺の状態を察したのかルークさんが食事とパンとスープを披露してくれた。

堅そうなパンと肉が多めのスープだ。

パンに齧りつこうとしたら、ルークさんがスープに浸した方が良いと助言してくれた。

言われてスープにパンを浸して食べ始めたのだが、その通りだと頷かざるを得ない。

パンの繊維がビッシリしていて岩みたいだった。

スープが染みこんで来たらやっと食べられる感じだ。

味は悪くないかな。

こう、異国な雰囲気が出ていて良いと思う。

あれだ。ライ麦のパンがこんな感じだったとか聞いたことがある。

放牧的で趣がある。正直、嫌いじゃない味だ。

昔、爺さんがこういう料理を作ってくれた覚えがある様な……気がする。

「落ちつきましたか?」

「ええ」

食事を終えた俺は頷いて考える。

「それでですね。シズルさんはこれから何をする予定なのでしょうか?」

状況が状況なので戸惑っていた俺の心情をルークさんはある程度察してくれていた。

何か経典とやらに異界から来た者への対処方法みたいな物が書かれているらしい。

相当、稀な状況らしく、その相手の経歴を風聞はしない様にと教えられているそうだ。

「帰る方法の模索?」

俺、帰りたいのか?

電車に突っ込むかどうかを考えていた癖に?

う、う~ん……でも、ここも超田舎って感じで不便そうなんだよな。

いや、放牧的で楽しそうだとは思うけど……あれだよ。田舎って排他的だしさ。

親戚連中が典型的な地方のプライドが高い田舎根性丸出しだったから、よくわかっている。

しかし、仮に排他されてしまったとしても、帰る方法がわからない訳で。

それとも俺は男だー! とか言いながら男に戻る方法を模索する、なんて流れも王道と言えば王道だ。まあ、元の世界に戻れば男に戻れるって爺さんの手紙には書かれてるけどね。

とはいえ、現在の身体……女の子の身体に違和感がない。

身体が変わったことを忘れてしまいそうな位、自然だ。

これってもしかしてLvとやらも関係しているんだろうか?

ほら、一応Lv7らしいし、身体が馴染んでいる、みたいな。

これが中高生の頃だったなら思春期特有の性的な物に対して抱く、異常な拒絶反応でも出たかもしれない。

しかし、大人になった身としては拒絶反応よりも不安の方が大きい。

生物的に女性の方が男性よりも弱いからな。

魔物とやらが存在する世界……そうでなくても、体力は無いよりはあった方が良い。

そういう意味では女になってしまって不安だ。

だが、Lvとやらが存在するらしいし、ゲーム的に考えるなら必ずしも女性が男性に劣るわけではない……と思いたい。

で、差し迫って今すぐ帰らなきゃ! と思える程、今の俺にはあの世界が魅力的には思えない。

爺さんの遺産を食い物にした親戚と顔を合わせるのは嫌だし会社も酷いし……居場所はない。

何より……。

「どちらにしてもお金とか、この世界でどうやって生きて行くのかがわからないです」

「その件に関してこちらから提案してもよろしいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「経典には、異界から迷い込んでしまった人物への対応として仕事を紹介したり様々なギルドへと斡旋するなどが書かれてあります。ただ、シズルさんの場合、まずは聖地を調べた方が良いのではないかと」

何をするにしても他の人が入れない場所で……と言うのはわかる。

現状、俺しか入れない。

もしかしたら聖地とやらに良い物や仕事の足掛かりになりそうな物があるかもしれない。

爺さんの遺産だし寝泊まりは出来そうではある。

「何分、辺境の何もないのが取り柄の冒険者もあまり立ち寄らない地でしてね……シズルさんのような方が都会に行くにしても魔物を相手に戦うのは難しいでしょうし、腕に覚えのある冒険者もあまりおらず護衛もなかなか……」

冒険者に護衛を頼んで町とかに行くのが主流らしい。

「平和と言いましても魔物の生息する地に安易に踏み入れたら危険なのは変わりません、森や山には足を踏み入れてはいけませんよ。奥地となるとかなり強力な魔物が出現します。特にこの地方は境を越えると途端に強い魔物が出るので」

「あ、はい……」

「こちらも混乱しています。食料の配達は致しますので、しばらくは聖地内で生活なさってはいかがでしょうか?」

「それは俺としてもありがたいです。そう言ってくださるのでしたら……」

確かに村の人達は俺を見るなり奇妙な視線を向けていた。

田舎は噂が広まるのがインターネットよりも早い。

話題が少ないから、何かあったらあっちこっちで広まるんだよな。

だから、村長と神父……村のまとめ役であるルークさんが、俺に色々と調べてほしいという考えも理解できた。

何だかんだ言ってまだ眠いし疲れている。

正直、ゆっくり休みたい。

古い家屋としか言いようがないけど、寝泊まりする分には困らなそうだし一度休むのもいいだろう。

「では……毛布と食料です」

「何から何までありがとうございます」

ルークさんが生活に必要そうな代物をくれたので受け取り、爺さんの牧場らしき家屋の方に戻る。

火種なんかもらったよ。マッチやライターじゃなくて、火種だぜ?

まあ……これで最悪、焚き火を起こせる。

建物の裏手に薪が積まれていたし、いけるだろう。

「では明日、また来ます」

「はい」