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ティゼルの野望 その四

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ティゼルの野望 その四

俺はケイルランド地域の統一王。

統一王である。

統一王が誕生したからと、ケイルランド地域がすぐに大きく変わったりはしない。

ただ、戦いはなくなった。

そして、統一王を決める戦いを通じ、各地の王とも仲よくなった。

やはり、戦い、一緒に飲み食いすれば仲も深まる。

その飲み食いする酒や食料も、商取引で 潤沢 ( じゅんたく ) にある。

安心だ。

この安心を民にも配る。

それが統一王である俺の仕事なのだろう。

統一王となってから五十日。

新たな王都へ移動となった。

ティゼル嬢が話していたとおり、王都ができあがっていた。

どこの領王の城よりも立派な、統一王の城。

その城を中心に、各領王の屋敷に貴族の屋敷……

平民たちの商店や家が連なる。

誰に言っても大丈夫な立派な王都だ。

この王都を建てたのは、ティゼル嬢の知り合いであるクロクロ殿。

姿を見せてくれなかったけど、挨拶しなくてよかったのかな?

あと、報酬とか?

余裕はないが、ちゃんと支払うぞ。

まあ、可能なら分割でお願いしたいし……その、百年ぐらいの規模で。

自由にやれたから、それで満足?

む、無欲な人なんだな。

それで食べていけるのだろうか?

まあ、安くすんだのはありがたい。

各地の領王が集まった。

いろいろと話し合わないといけないことがあるしな。

急ぎなのが爵位。

これまで、別の王国だったが、統一したので各領に所属する貴族の爵位の差が問題になる。

同じ爵位でも、領によって力が違いすぎたりするからな。

ティゼル嬢は、これまでの爵位は維持しつつ、統一王が新しく爵位を与える方法を推奨している。

たとえばジドエン領の伯爵は、今後は統一男爵兼ジドエン領伯爵となるわけだ。

もちろん、王が変わるたびに爵位の授与が行なわれることが予想されるので、統一王配下の文官たちの審査を入れる予定だ。

そうそう、国名もちゃんと考えないといけない。

いまのところ、国名が定まらず、ふわふわしてるからな。

あとは……周辺国との国境付近では、その領地しか知らない決めごととか、揉めごとがあるだろうから、そういったことの調整も必要だ。

まあ、文官たちに任せるけど。

俺は、王都への着任の宴を取り仕切る。

かんぱーい。

おお、ゴズラン王国の王よ。

俺が留守のあいだ、ジドエン領を頼んだぞ。

「お任せを。

と言っても、やることは治安維持ぐらいだが」

そうだな。

内政は統一王国の文官がやる。

税の徴収もだ。

領王は、領地の治安維持と……困りごと相談だな。

「いやいや、軍の維持も大事でしょう。

統一王に呼ばれたら、すぐに参じなければ」

別の領王が言う。

領王は、領地の大きさ……厳密に言えば、収入によって兵を率いることを要請される。

まあ、当面は周辺国に舐められない程度の戦力で十分だ。

わざわざ対外戦争をしかける必要もない。

ティゼル嬢の指針通り、しばらくは内政充実。

今までは争ってばかりだったが、これからはともにやっていく仲間だ。

俺が統一王として上に立つが、みんなの意見を聞くつもりだ。

よろしく頼む。

ん?

次の統一王決定戦はいつだと?

ティゼル嬢から、五年は間隔をあけるようにと言われている。

毎年やりたいが、王がころころ代わっては周辺国がいい顔をしないからな。

ははは。

「では、改めて統一王に乾杯を」

かんぱーい。

おお、また馬鹿話をするか。

いいねー。

新作がないのが残念だが、天使族への愚痴は尽きない。

一体感を覚える。

幸せだ。

ティゼル嬢、ティゼル嬢。

天使族への愚痴を聞くかね?

着任の宴の翌日。

ティゼル嬢によって、広い会議室に全員が集められた。

なにか発表があるらしい。

なんだろう?

統一王国の今後に関してかな?

違う?

「えー、私たちがこの地に来たのは、ゴズラン王国の第三王女に出会ったからです」

そうだったな。

「第三王女に、この地域のことを聞きました。

そのとき、驚いたのは天使族の評判の悪さです。

昨日も、詳しくその話が聞けました」

それはよかったが……

みんなを集めて言うことか?

「では、まず。

天使族がみなさん……いえ、みなさまにご迷惑をおかけし、申し訳ありません」

ん?

ティゼル嬢が謝る必要はないぞ。

「いえいえ、無関係ではありませんから」

ティゼル嬢はそう言って、背中から翼を生やした。

「私は天使族ですから」

っ!!

集まった者たちが、防御姿勢をとった。

「怯える必要はありません。

私は天使族の評判を回復しようと、この地に来たのです」

つ、つまり?

「謝るべきところは、ちゃんと謝ります」

しかし、同じ種族だからとティゼル嬢が謝る必要はないだろう。

謝るべきは、迷惑をかけた天使族だ。

俺の言葉に、周囲からも似たようなことが言われる。

「では、本人を呼んで来て、謝ってもらいましょう」

できるわけがない。

天使族がわざわざやってきて、謝ったりする?

お 伽噺 ( とぎばなし ) だ!

「大丈夫です。

殲滅天使ティアは、私の母です」

…………………………………………!

「母の性格を考えれば、たしかにここまで来て謝ったりはしないでしょう」

だ、だよな。

「ですがご安心を。

母がいるということは、父がいます。

父に頼めば、母はここに来て過去の行いを謝ってくれるはずです」

た、たしかに、そ、それなら、可能……か?

い、いや……その程度で殲滅天使が……

「父は畑を愛する人です。

畑に被害が出たなら、母を叱るでしょう。

たとえ父と出会う前のことであっても」

で、できた父だ。

「同様に、皆殺し天使の三人も呼べます」

え?

「一緒に暮らしていますので」

つまり、その三人も来ると?

「スアルロウさんや、ラズマリアさんも呼べます」

…………

「大丈夫です。

自信があります。

ここでみなさまに謝ってもらいましょう。

あ、なんだったら天使族の長も呼んじゃいましょうかね。

種族の長として責任がありますから」

…………………………待った。

「なにを待つのです?」

いや、そのまま少し待ってくれ。

ちょっと話し合う。

俺がそう言うと、俺の周囲に領王や護衛、文官が即座に集まった。

どうする?

「どうするもなにも、駄目でしょ」

「天使族ですよ」

「ティゼル殿は信用できても、ほかの天使族は……」

「天使族だ」

「謝ってもらったところで、恨まれるだけです」

「きっと根に持ちますよ」

「ティゼルさんを止めましょう」

「どうやって?」

「あの大きいゴーレムが出てきますよ」

「あのゴーレムには勝てないよなぁ」

「あれ、強いもん」

「大丈夫だぁっ!」

力強く言ったのは、前に巨大なゴーレムにやられた護衛。

その護衛はティゼル嬢に言った。

「中庭に移動だ!」

ティゼル嬢は首を傾げつつ、また俺たちも中庭に移動した。

「あのゴーレムを出せっ!」

ティゼル嬢は護衛の指示に素直に従い、巨大なゴーレムを召喚。

「俺はこのゴーレムにやられてから、研究した」

ティゼル嬢は、統一王を決める戦いのルールを無視する者などに、遠慮なく巨大なゴーレムを使っていた。

対策を練ることはできる……か?

「このゴーレムは動きが素早いように思えるが……決まった動きしかできん!

それ以外は、とってもとってもスロー!」

そうなのか!

「決まった動きはたったの十二種類!

俺の指示通りに動いてくれたら、なんとでもなる!

あのゴーレムは、複数人を相手にするには向いていない!」

おおっ!

「さらに、巨大ゆえに足技はない!

ジャンプもしない!

そして、体の大きさに比べて腕は短い!

最悪、地面に伏せれば攻撃をかわせる!」

いや、待て。

倒れたお前に追撃しようとしてたぞ。

「倒れている者への攻撃の動きは、 肘 ( ひじ ) 打ちだ。

それをすると立ち上がるのに時間がかかる!

恐れる必要はない!」

おおおおおっ!

「ということで、勝負だ!

俺たちが勝ったら、天使族からの謝罪はなしだ!」

護衛が叫ぶ。

できたらそれ、俺が言いたかったなぁ。

あ、ティゼル嬢。

こっちにいるのが全員でかかっても大丈夫かな?

領王に護衛に……あと戦える文官が何人か。

問題なし?

武器も?

よし、武器を持て!

いくぞっ!

俺たちの未来のために!

俺たちと巨大なゴーレムの戦いが始まった。

たしかに、決まった動きしかできないようだ。

あの護衛の指示に従えば、攻撃を避けられる。

攻撃を避けられるのであれば、負けることはない!

……

待て。

ティゼル嬢が、新しいゴーレムを召喚……いや、あれはゴーレムじゃない。

巨大な剣だ。

巨大なゴーレム用の武器だ。

腕の短さの弱点、なくなったぞ!

「慌てるな!

想定内だ!」

護衛が叫ぶ。

「上からの振り下ろしなら、拳を振り回されるより避けやすい!」

そうだろうけど、巨大なゴーレムは剣を腰の横にかまえたぞ?

つまり、 横薙 ( よこな ) ぎだ。

水平に剣を振るってくる!

しかも、かなり地面すれすれで!

「俺の後ろに一列になれ!

そして、俺の言うタイミングで飛べっ!

大丈夫だ!

動きはスローだ!」

護衛の指示に従い、巨大なゴーレムの横薙ぎの剣を避ける。

よし、避けられた!

が、巨大なゴーレムはそのままさらに体を回転させ、二回目。

「慌てずに……いまだ!

飛べっ!」

俺たちは、巨大なゴーレムの剣をまた飛んで避けた。

「いけるっ!

いけるぞ!」

「避けられる避けられる!」

すごい一体感!

三回目も避ける。

はははっ!

天使族の謝罪など受けるものかっ!

「でも、このままじゃ反撃できないんじゃ?」

「考えるな!」

「避けることに集中しないとやられるぞ!」

「わ、わし、体力がそろそろ……」

「しかたねぇ。

爺さん、俺の背に乗れ!」

「大丈夫かよ?」

「やばくなったら、次は任せる」

「ちっ、しかたねぇな」

俺たちは、ぐるぐる回る巨大なゴーレムの剣を飛んで避け続けた。

それは、このあたりを縄張りにするドラゴンが挨拶にやってくるまで続いた。

ティゼル  「謝る話をしてたら、なぜか勝負になった」

エカテリーゼ「(ティゼルさんに、恥をかかせたくないということですね)」

イースリー 「(見守りましょう)」

ドラゴン  「えーっと、なにやら楽しそうですね」

統一王たち 「必死なんです!」

冷静な文官 「会議室で戦えば、ティゼルさんはゴーレムを出せなかったのでは?」

護衛    「馬鹿者! そのような卑劣な真似ができるかぁっ!」

統一王たち 「そうだそうだ!」