ミケルとアルフレート
ミケルとアルフレート
ミケルです。
えー、前々から気づいていたのですが、アルフレートくんは変なこだわりを持っている。
たとえば、トイレやベッド、お風呂など。
なぜそんなに……と、こちらが困惑するほどのこだわりを持っている。
だけど、まあ、僕に害はないので困らない。
逆に利益ばかり。
トイレが綺麗になって嬉しいし、ふんわりとしたベッドは快適。
お風呂に入る習慣はなかったけど、最近は毎日入らないと落ち着かなくなってきた。
清潔な体って素晴らしい。
しかし……
僕に害があるこだわりもあったりします。
たとえば、船。
いろいろあってアルフレートくんが管理することになった無人島。
そこに行くには船が必要なのだけど、アルフレートくんはなぜか自作の船にこだわる。
まあ、それを手伝うぐらいは僕もする。
最初の船は、細い木を集めて作った。
浮かんだけど、所詮は素人の仕事。
島に向かう途中、高波で壊れた。
ふふ。
あのときは死ぬかと思った。
なぜなら、僕は泳げない。
泣き叫ばなかった自分を褒めたい。
近くの漁船のお兄さん、助けてくれてありがとう。
次の船は、最初の船の反省を踏まえ、太い木を集めて作った。
壊れないように、しっかりと太い縄で縛って。
これは高波で壊れることはなかったけど、重くてまともに 漕 ( こ ) げず、進めなかった。
進めたのは、浜から歩ける距離ぐらいだったかな。
海の種族が、変な顔をしてそんな僕たちを見ていた。
その次は、木を集めることを諦め、大きな丸太を削って船を作った。
見た目は立派だったけど、数えきれないほど転覆してアルフレートくんは諦めた。
これが僕に害のあるアルフレートくんのこだわり。
いや、泳げるようになったから益はあるのかな。
うん、泳げるようになったんだ。
短い距離だけどね。
死にたくないから。
ちなみにだけど。
アルフレートくんは毎回、なにかしら失敗したあと、ちゃんと船を借りて島まで行く。
島で畑仕事をしているからね。
行かないという選択はないのだけど、それはどうなのかな?
いや、借りてくれて助かるよ。
ちゃんとした船ってすごいなって思うし。
でも、最初から借りたら、自作する時間も労力も節約できるんじゃないかな?
服も濡れないし。
……
まあ、言わないけどね。
こだわりは大事。
えーっと、次は帆を船につける?
悪くないね。
僕が泳いで島まで到達できるようになる前に、自作の船で到着できるといいなぁ。
アルフレートくんは、意外と繊細な部分がある。
アルフレートくんが、とある街の住民と揉めた。
いや、正確には揉めていない。
ちょっとした会話……いや、コミュニケーション?
えーっと、アルフレートくんと僕が船の資材を買うために街を歩いているときに、屈強な男性三人に絡まれたんだ。
「金、貸してくんね。
困ってんだよね」
屈強な男性三人は僕を無視して、アルフレートくんに言った。
まあ、僕よりアルフレートくんのほうが、お金を持っていそうだからね。
僕を無視するのはわかる。
でも、アルフレートくんの腰にある剣が見えないのかな?
それともアルフレートくんを弱いと見た?
アルフレートくんは、オブライエンさまともやりあえる実力がある。
相手のほうが数が多いけど、アルフレートくんなら武器を使わなくても勝てるだろう。
先制攻撃がいいんじゃないかなと僕は心のなかで思った。
だけど、アルフレートくんはいきなり殴りかからなかった。
アルフレートくんは余裕を持った笑みを浮かべ……
小銭入れから硬貨を一掴みして、地面に撒いた。
「欲しければ拾え」
なるほど、挑発してから戦うという流れにしたいのね。
僕は邪魔にならないように、一歩だけ後ろに下がる。
屈強な男性三人が怒って、僕を狙ってきたらアルフレートくんが困るから。
すぐに逃げられるように。
そう準備したのに、屈強な男性三人はアルフレートくんの期待を裏切った。
アルフレートくんの前で、泣きながら硬貨を拾う屈強な男性三人。
「あざっす、あざっすっ!」
「こ、これで飯が買える」
「弟や妹に飯を食わしてやれる……」
屈強な男性三人は本当にお金に困っていたようだ。
「本当にあざっす。
助かります」
「なにかあったら手伝いますんで、言ってください」
「俺たち、港の南側の桟橋付近にいますんで」
そのような相手に対し、アルフレートくんの硬貨を撒く行ないは……褒められたものではないだろう。
でも、仕方がないと思う。
だってあの三人。
どう見ても悪い感じだったもん。
お金を寄越せって言っているようにしか聞こえなかったもん。
でも、アルフレートくんは小さいアルフレートくんの姿に戻り、わかりやすく落ち込んで、部屋に篭った。
失敗は、からっと忘れるかなと思ったけど、そうじゃなかった。
アルフレートくんは意外と繊細と思ったエピソードだ。
アルフレートくんは、その反省を活かしてその後の行動が少し慎重になった。
あと、実家に戻る必要があったとはいえ、 精神 ( メンタル ) を回復する手段を持っているのはいいことだ。
ちなみに、アルフレートくんの精神が回復するまで……僕もアルフレートくんの料理が食べられず、苦しんだ。
辛かった。
アルフレートくんが実家に戻るとき、同行することも考えたぐらいだ。
美味しいって怖い。
アルフレートくんは料理が上手い。
そして、丸顔狐族との取引でいろいろな食材が入手可能となり、アルフレートくんの料理のレパートリーが増えた。
お陰で、王子たちがアルフレートくんから離れない。
気持ちはわかるので許すけど、王子たちが普通の食事を拒否するようになって、王城の料理人たちが頭を抱えているとの苦情が僕に届くのは納得いかない。
僕としては、アルフレートくんの料理より美味しい料理を出す街に旅立った、料理人のリビックが戻って来るのを待てとしか言えない。
そう返事をしたら、王たちもアルフレートくんの料理を食べたがっているということが遠回しに書かれた手紙が届いた。
なぜ僕に届く?
あと、王たちが食べたがるって……王子たちが自慢したな。
数に限りがあるというのに。
なんにせよ、そういった要望はアルフレートくんに直接……は、駄目だな。
母を通してほしい。
そう返しておいた。
これで諦めるだろう。
あと、王子たちを注意しておこう。
自慢したくなる気持ちはわかるけどね。
アルフレートくん自身は、料理を求められたら惜しまず提供してくれる。
高級な調味料をふんだんに使って。
さすがにいくらか支払わなければならないなと思って、母さんに相談というか調味料の相場を聞いてびっくりした。
アルフレートくんが一度の料理に使っている量で、それなりの家が買える。
母さんが大袈裟に言ったのかとも思ったけど、希少性、保存期間、輸入の手間を考えると大きくずれた値段ではない。
つまり、丸顔狐族との取引は注意しないといけない。
油断しないようにしよう。
そして、毎食毎食、アルフレートくんの料理を求める王子たちや、資料館の面々。
……
まあ、そのぶん、働いてもらうからいいか。
ただ、王子たちのトイレ事業には莫大な資金がかかる。
まだ計画段階だが、王家だけでは支えられない額になるだろう。
コーリン教からもいくらか出してもらえるように、母さんに伝えておこう。
母さんの審査は厳しいだろうから、資料館の面々には隙のない計画書を作ってもらいたい。
そろそろ昼か。
レイワイト王国やその周辺国では、日が昇ったぐらいにがっつり食べる。
日が沈んだころの夕食で少し食べる。
夕食でもがっつり食べるのは王族や貴族ぐらい。
そんな一日二食が基本だった。
しかし、アルフレートくんの食事は……
朝食はほどよく、昼食もほどよく、夕食もほどよくの一日三食バランス型。
あとは個人の好みに合わせて、朝食を多めにしたり、夕食を少なくしたりと調整していく。
アルフレートくんの食事を楽しんでいると、自然と一日三食が基本となってしまう。
僕がそうだ。
しかし、街で食事を提供してくれる場所はそうじゃない。
具体的に言えば、昼食を提供してくれる場所がない。
王族や貴族なら、専属の料理人に頼めばいいんだろうけど……僕は専属の料理人なんて持っていない。
母さんもだ。
つまり、昼食は自分で作るかアルフレートくんのところに行くしかない。
アルフレートくん。
たしか、彼は今日も資料館で昼食を作るはず。
王子のリクエストでラーメンを作ると言っていた。
ラーメン。
たしか、遠くの大国の王がラーメンという料理を流行らせようとしていると、なにかの資料で読んだ記憶がある。
そのラーメンか。
これは……資料館の厨房にお邪魔させてもらうしかないな。
うん。
本日(2026/2/28)
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よろしくお願いします。
次回から、村長視点に戻ります。