春の村の住人
春の村の住人
天使族のティア。
普段は村長補佐として俺の仕事を手伝ってくれているが、春先の彼女の仕事はゴーレムを使った土木作業。
畑の掘り返しや、伸びた木の根の削除など。
ただ、大樹の村では俺の【万能農具】があるので、最近は二村、三村に出張が多かった。
しかし、今年は 多目的人型機動重機 ( アーティ・ホース ) がある。
ティアの仕事が奪われてしまった。
なので、ティアは五村に出張し、ゴーレムを使って仕事をしている。
とても真面目にやっているとのことで、評判は悪くない。
おっと、意外と言っては失礼だ。
ティアはなんだかんだと言いつつも、やることはしっかりとやる。
グランマリアたちも。
天使族が変だと思い始めたのは……
キアービットか?
いや、キアービットもティアがからまなければ真面目でまとも。
スアル姉妹も、あまりふざけたりはしない。
となると……
マルビットとかルィンシァとかラズマリアとかスアルロウとかレギンレイヴ?
それとも、彼女たちが連れてきた一般の天使族か?
……
深く考えないでおこう。
吸血鬼のルー。
春先でも、彼女の仕事は変わらない。
薬草畑の管理と薬の作成。
薬の作成は、ルーの趣味の側面もあるが実利も大きい。
五村やシャシャートの街から、ヨウコやミヨのルートで個人依頼がある。
ヨウコやミヨが断りにくい相手だ。
つまり、権力者とか協力を頼みたい相手。
結果的に、ルーの薬は五村やシャシャートの街に利益をもたらす。
俺としては、病気の相手にと思わなくもなかったのだけど……
薬が、水虫治療薬、精力増強薬、育毛剤などだったので、なにも言ってない。
あと、個人ではなく五村やシャシャートの街から、伝染病の治療薬とか、性病治療薬、皮膚病治療薬、化膿止め、打ち身薬なども依頼されている。
こちらは、薬そのものは少数で、大半は薬の作り方を提供する形にしている。
数が必要とされる薬だからだ。
その薬の量産は、五村やシャシャートの街にいる、薬草の扱いに長けた者たちに任すことで必要量を確保する。
ただ、長期に保存が利く薬や薬の材料は少なく、大半の薬は保存が利かない。
なので、必要なときに必要な量を作れるように、五村の薬草畑は大事に保護管理がされている。
吸血鬼のフローラ。
冬場に発酵食品の仕込みをしているので、春先はのんびりモード。
でも、なんだかんだと研究を続けているので、遊んでいたりはしない。
のんびり研究モードという感じかな。
出かけるとしても、五村の発酵食品関連の場所だ。
もう少し休んでもと思うが……
村の行事には参加してくれるし、本人から楽しくやっているから気にしないでくださいと言われている。
なにか言うとしたら、臭いとかで周囲に迷惑がかかったときかな。
時々、アルフレートから手紙が届いているみたいだけど、内容は教えてもらえていない。
ちょっと寂しい。
ハイエルフ。
普段は森のなかでの狩猟。
村では大工仕事などを中心にしてくれている。
そんな彼女たちの春先は、冬の寒さや雪で建物が傷んでいないかのチェックに忙しい。
あと、建物に施した冬対策の解除、解体とか。
それと同時進行で、春のパレードの準備もしている。
俺としては春のパレードは数年に一度とか、頻度を減らしてもとは思うのだけど、なんだかんだ娯楽が少ないからな。
パレードで村の住人に気晴らししてもらうのは、悪いことではないだろう。
ん?
夏のプール、秋の武闘会、冬のスキーやソリ。
通年だとボウリングやチェス、将棋、最近ならバスケと娯楽はある?
そうなんだけどな。
村の住人は基本、働きっぱなしなんだ。
目に見えて休んでいるのって、秋の書類仕事が終わったころの文官娘衆と、天使族ぐらいだ。
それ以外は、冬でもなにかしらの仕事を探して働いている。
ただ、闇雲に働くわけではなく、ちゃんと仕事の効率化もしてくれている。
たとえば、ハイエルフだと……
春のパレードでは車輪付きの大きな 櫓 ( やぐら ) を組むことが多いのだけど、そのパーツを冬のあいだに作って用意し、春になってから組み立てる方式で時間を短縮している。
なので、櫓を作っているんだなぁと思ったら、あっというまに何台も出来上がっていて驚かされる。
獣人族。
獣人族の女の子たちは、セナを中心に馬や牛などの家畜の世話を中心に行なっているので、季節に合わせて出産、子育て、搾乳、繁殖と頑張ってくれている。
春先は……家畜の子育てが多いかな。
大人の家畜たちも、獣人族の女の子たちの飼育に慣れ、子どもに近づいても気にしない。
むしろ、見せに来るぐらいだそうだ。
獣人族の男の子……ゴールたちは王都で元気にやっている。
時々、仕事でシャシャートの街に来ているそうで、村への手紙をミヨに預けたりしている。
獣人族の鍛冶師たちは、冬が作業の中心。
春から夏にかけては、まったりと素材集めや素材の加工が中心作業となる。
まあ、急ぎの鍛冶仕事があれば優先してくれるけど。
ハウリン村からやってきた鍛冶師たちは、帰りたくないオーラを全開で出しながらも万能船でハウリン村に戻った。
また、今年の冬前にやってくるだろう。
リザードマン。
基本は、力仕事。
ハイエルフや山エルフ、獣人族の手伝いをしてくれている。
もともとは天使族のところで働いていたので、天使族の世話も継続中。
あと、リザードマンたち特有の仕事として、エビの養殖がある。
村で食べるエビの半分ぐらいは、リザードマンたちが養殖したエビだ。
春先での彼らの仕事は……建物に施した冬対策の解除、解体で発生した資材の回収と整理かな。
一回限りではもったいないので、ちゃんと保管して次の冬に備える。
ドワーフ。
いつも通り、酒を造ってる。
季節ごときで、彼らの行動を変えられない。
ただ、季節に合わせて酒の 肴 ( さかな ) が変化するだけだ。
文官娘衆。
作物の生産量計算は冬のあいだに終わっているので、それを俺に伝えたあとは春のパレードのために動いている。
大きい作業はハイエルフ、細かい作業は山エルフたちが頑張るので、演出やパレードの順番を決めたりが中心かな。
五村の文官との情報交換も忘れない。
村にいると、魔王国関連の情報は五村に頼りっきりになるからな。
あ、文官娘衆の一部は、多目的人型機動重機に乗って働くユーリに同行して二村や三村にいる。
護衛ではなく、ユーリを単独で二村や三村に派遣するわけにはいかないからだ。
ユーリはなんだかんだで、魔王の娘。
なにかあったら困る。
護衛は、リザードマンに頼んでいる。
二村や三村は護衛が必要な場所じゃないんだけどな。
道中は油断してはいけない。
クロの子供たちも数頭、お供している。
山エルフ。
春の彼女たちは……
まず、魔獣や魔物対策として村の周囲に新作の罠を仕掛ける。
そして、それをクロの子供たちや、ザブトンの子供たちに周知。
間違って、ひっかかっちゃ危ないからな。
次に、春のパレードの準備。
普通の準備をしている者の横で、一部の者が新しい仕掛けを突っ込もうとする。
春のパレードを、発表会かなにかと勘違いしているのだろう。
その勘違いを止める文官娘衆の奮闘を見ると、春だなぁと思える。
ドラゴン。
……
ハクレン、ラスティ、グーロンデは、教師として村の子供たちの勉強を見てくれている。
そのほかの者は……まだ、冬が続いているのだろう。
飽きるまでは、冬のまったりモード。
ああ、ドライムはダイコンを育てている。
そして、ライメイレンはヒイチロウとグラルを連れて、散歩ならぬ春の飛行を楽しんでいたりする。
鬼人族メイド。
屋敷内での料理、洗濯、掃除が中心なので、春になったからと仕事に変化は少ない。
でも、冬のあいだに溜まった汚れ物を喜々として洗濯する姿や、ザブトンの子供たちと協力して洗濯物を干している姿は春を感じさせる。
あ、そうそう。
食卓に、冬の備えとして蓄えた保存食を使った料理が並ぶのも、春っぽい。
保存食、駄目になる前に食べないといけないからな。
天使族 「え? 私たちの活躍は? ティアさまだけ?」
作者 「前の話で書いたから」
ハーピー族 「私たちは?」
ミノタウロス族「駐在してますよー」
ケンタウロス族「こっちもー」
巨人族 「もっと活躍しないと」
ラミア族 「頑張ろう」