ヤメの無人島生活 その三
ヤメの無人島生活 その三
あーしはヤメ。
洞穴の拠点ができたことで、ようやく死ななくなってきた。
よかった。
洞穴のなかに置いた棚というか板の上には、食器として使っている貝殻や岩が並んでいる。
徐々に充実してきた。
今日はお気に入りの貝殻にお茶を入れ、まったりする。
集めた草を刻んで乾燥させ、 煮 ( に ) だしたお茶だから、おいしくはない。
香りも悪い。
でも、健康にはいいと思う。
たぶん。
よくわかんないけど。
……
あ、今日のお茶は駄目だ。
飲めない。
喉 ( のど ) が拒否する。
吐き気も……
見慣れない草に挑戦したのが駄目だったかなぁ。
食べ物を安定して確保できるようになった。
主食は草だけど、そこに川の魚が入ったから。
川の魚は海の魚と違って、毒がない。
毒がある川の魚がいるかもしれないけど、まだ死んだことはない。
だから大丈夫。
川の魚は、手づかみで獲るのは無理。
あいつら、すばやい。
だから、あーしは罠を設置した。
海は広いけど、川は狭いからね。
あーしは賢いのだ。
と言っても、最初から罠がうまくいったわけじゃない。
まったく役に立たなかったり、流されたり、壊れたりと大変だった。
でも、罠で最初に獲れた川の魚の味は、感動だった。
次は食べる前に塩を振ろうとも思ったけど。
塩。
海水を汲んで、天日で海水を蒸発させたら確保できる。
簡単。
量が必要なら大変だけど、あーしが食べるだけなら少量で済む。
朝、大きな貝殻に海水を汲んで日当たりのいい場所に放置し、日が沈む前に回収するのが日課になった。
雨が降ると台無しだけど、天気に一喜一憂しても仕方がないので気にしない。
鳥と和解した。
遠くで鳥が妙に鳴くなぁと気になって探したら、そこには鳥が壊せない硬い実があった。
あーしが石で叩き割ったら、中身を半分だけ持っていった。
残り半分は、あーしの取り分ということだろう。
中身の味は美味しかった。
それ以降、鳥が硬い実の場所をあーしに教え、あーしが割っている。
甘い物。
島での生活が続くと甘い物がほしくなる。
無性に。
いや、ほかにもいろいろほしくなるけど。
甘い物はべつ。
だけど、そう簡単に甘い物があったりはしない。
木の実は基本、すっぱいか渋い。
花の蜜を狙いたいけど……花を食べて何度か死んでるから怖い。
うーんと悩みながら、口寂しくてそこらのツタを噛んだら、甘かった。
ツタ、甘い!
いや、全部が全部甘いわけじゃないけど。
目の前のツタは甘かった。
ちょっと泣いてしまった。
量を確保できなかったのは残念だけど、甘いツタは覚えておこう。
島で暮らしていると、話し相手がほしくなる。
鳥。
あれは駄目だ。
あーしを馬鹿にしてくる。
話しかけたところで、冷たい目でみてくる。
つぶらな瞳のくせに。
なので、話し相手として木で人形を作ってみた。
なかなかイケてる。
名はイバン。
会話がはずむ。
イバンは無口だけど。
ああ、あーしに本来の力があれば、イバンを動かすことができるのに。
……
そうだ。
あーしは生き延びるだけじゃいけない。
力。
失った力を取り戻す!
可能であれば、本来以上の力を!
あーしはイバンに誓った。
そんなあーしを、鳥が冷めた目で見てた。
つぶらな瞳なのに。
力を取り戻さなきゃと言っても、なにをどうすればいいか、さっぱりわからない。
なぜ力を失ったかもわからない。
うーん。
あーしは生まれたときから、悪魔族。
魔力はつねにあったしなぁ。
魔力や体を鍛えたこともない。
とりあえず、しゅっしゅっと殴る真似をしてみる。
これか?
これを繰り返せばいいのかな?
十回ぐらいやって、飽きた。
雨の日。
視界が悪いし、無理に外に出ても足を滑らせるので拠点でじっとしている。
鳥が避難しにやってくると、長雨になる。
二日は雨が続く。
長いときは五日だったかな。
ちょっと憂鬱。
食べ物が少なくなって、困った覚えがある。
あと、トイレに行くのが面倒。
さすがに洞穴の拠点内にトイレは作れない。
外に作った。
だから、雨の日は雨に濡れながらトイレに行かないといけない。
気が滅入る。
ほどよい枝を見つけたので、なにかに使えないかと弄りまわした。
木の剣ができた。
ただの木の枝とか言わない。
ちゃんと持ちやすく削ったし、重さのバランスも考えてある。
あーしの立派な武器だ。
振り回しているときに岩を叩いてしまい、半分に折れちゃったけど。
木の剣だけでは物足りない。
なにかあったときのために、木の盾を作った。
木の枝を甘くないツタで縛ってまとめた木の盾。
すごくしっくりくる。
盾に守られる安心感。
この盾は大事にしよう。
ときどき、海岸には海の魚が落ちているけど、手は出さない。
痛い目にあったから。
あーしは学ぶ悪魔。
同じ失敗は二回……三回……いや、四回?
安全に五回にしておこう。
同じ失敗は五回ぐらいしかしない。
そんなあーしが海岸を歩くのは、船が通らないかと見張るのと、流木を集めるため。
実は一回、遠くに船を見かけたことがある。
でも、そのときはあーしが島にいると船に伝える手段がなかった。
魔法を使ってみたけど、小さく光るだけだった。
そして船は去った。
とても悔しい。
なので、次はちゃんと船にあーしがここにいるって伝えるために、焚火を用意している。
もちろん、焚火は煙がでやすいように 生木 ( なまき ) を中心に組んである。
ぬかりはない。
定期的に、生木の交換もしているし。
着火に関しては魔法でやるから、心配はない。
だけど、船はあれから見ない。
ま、まあ、落ち込む必要はない。
船が動いていたんだから、あーし以外に生きてる者がいるってこと。
死なないあーしは、持久戦は得意。
気長に待とう。
船を見逃したぁぁぁっ!
ぬぁぁぁぁっ!
気づいたときには、離れて行ってた。
焚火で煙を出したけど、見てもらえなかっただろうし。
ぐぬぬぬぬぬぬぬぬっ!
ひ、昼まで寝てたのがよくなかった。
普段通り、朝に起きていれば船を見逃すことなど、なかったのに。
うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!
自分への罰として、保管していたキノコを食べた。
美味しかった。
そして、死ななかった。
調子に乗って大量にキノコを食べたら、死んだ。
やっぱりキノコは駄目だ。
次回、ウルザと遭遇。