ヤメはウルザと出会う
ヤメはウルザと出会う
あーしはヤメ。
島での暮らしにも慣れた。
それなりにエンジョイしていると思う。
一人なのは寂しいけど、人形のイバンや鳥がいるから大丈夫。
平気、へっちゃら。
何度か船を見逃した。
二回ほどタイミングよく煙を出すことができたけど、船の動きが変わったことはない。
煙が見にくかったのかなと、色をつけたりもしたんだけどね。
まあ、島から煙が上がったからって、助けを求めてるって思わないか。
海の種族が近くまで来てくれたらいいんだけどね。
自分で船を作って、島から脱出するというのは考えない。
泳げないから。
そして、島を出てどこに向かえばいいかわからない。
漂流したら悲惨だ。
あーしは、死なないから。
苦しむだけ。
そんなの、想像しただけで耐えられない。
もう島から出なくてもいいかと思うぐらい時間が経った。
鳥はパートナーをみつけ、子を産み、さらにその孫、 曾孫 ( ひまご ) までいる。
大家族だ。
羨 ( うらや ) ましくなんかないやい。
人形のイバンがいるもん。
そのイバンも、すでに四代目。
木製のイバンは耐久性に難がある。
あーしの扱いかたが乱暴なわけじゃない。
たぶん。
島の環境が悪いとあーしは思っている。
変化は突然だった。
海の種族の一団が、島の周囲に現れた。
装備や数からしてはぐれ者じゃない。
立派な海の種族の軍だ。
もちろん、あーしは隠れた。
助けを求めようとも思ったけど、いっぱいいたから。
相手の目的がわからなかったし。
極秘行動で、それを見たあーしを殺しにくるかもしれなかったし。
幸い、海の種族は島に上陸はしてこなかったけど、かなり近いところまで来てた。
ちょっと怖かった。
その怖さがまだ残っているころに、今度は飛行船が来た。
見たこともない形式の飛行船だ。
どこの飛行船だろ?
いざとなると、相手がわからないと助けを求めにくい。
言ってはなんだけど、あーしは悪魔族。
敵が多い。
弱ってなければ気にしないのだけど、いまは弱ってるから。
人間とか魔族ならなんとかなると思うけど。
あーしは隠れて観察に徹した。
飛行船から降りてきたのは、神人族だった。
最悪の部類だ。
あれは駄目。
会話にならない。
いきなり槍投げてくるのとか、考えてから槍投げてくるのとか、すでに槍を投げてるのとか、変なのばっかり。
何回も殺された。
これは逃げるしかない。
でも、慌てて動くと見つかる。
神人族は変なところで勘がいい。
さらには降りてきた神人族は、偵察だ。
気を張ってる。
いま、動くのは駄目。
隠れたまま、相手が気を抜くまで待とう。
そう思いながら観察を続ける。
敵のことを知らないと、逃げるのもむずかしいから。
飛行船から降りてきた神人族は四人。
微妙な数だけど、敵対したくはない。
飛行船のなかに、まだいるかもしれないし。
ただ、降りてきた四人は一人の人間の女……少女を守るように動いている。
神人族は上空に配置するのが最適なのに少女の近くに控えている。
つまり、あの少女はどこかの国の王女かなにかかな?
神人族を雇えるとは、なかなかお金持ちの国なのかもしれない。
最低でも、飛行船を使えるぐらいには。
ん?
氷の魔物か?
離れているのに、なかなかの力を感じる。
神人族よりも警戒すべきか?
いやいや、神人族から目を離すなんてありえない。
しかし、少女の目的はなんだ?
周囲を見ているけど、なにかを探しているようには見えない。
神人族や氷の魔物も、同じようだ。
飛行船を停泊させた海岸から、あまり離れないし。
待っていたら、帰ってくれるかな?
帰ってくれないかな?
帰ってほしい。
あ、でも、島から出してもらえる可能性も……
ないか。
神人族がいるもんね。
正直、あまり近寄りたくない。
あ、まずい。
このままだと、あーしが作った焚火が見つかる。
どうしよう。
しばらく使ってないから、大丈夫かな?
先回りして焚火を隠す……無理。
そんなことをしてたら、あーしのほうが先に見つかる。
神人族とは関わりたくない。
って、鳥の曾孫!
そんなところでなにをやってる!
怪しいのが来たら逃げろって言ってるでしょ!
ああ、神人族に近づいちゃ駄目だって!
え、ええいっ!
あーしは少女たちの前に立ちはだかった。
こうなったら、無理を通す!
そこの者!
あーしの領地になにようだ!
「…………」
あの、なにか言ってくれないと困るんだけど?
あーしの前で、ひそひそと話をするのはよくないと思う。
あ、鳥の曾孫、あーしに寄ってくるんじゃない。
さっさと逃げるの。
ん?
少女が一歩前に出た。
ひそひそ話で方針が決まったようだ。
撤収する?
お邪魔しました?
……
待って。
待って待って待って。
あーしは少女を引き止める。
少女はすごく常識人っぽい。
これはあーしを、島から連れ出してもらえる可能性があるんじゃないかな?
神人族だって、さすがに雇い主を無視して攻撃して……してくるかぁ。
神人族だもん。
でも、少女と後ろに控えている氷の魔物は常識人っぽい。
ちゃんと会話が成立している。
これは、島から出るチャンス?
あ、慌ててはいけない。
慎重に。
慎重に会話を繋いで、情報を得る。
えーっと、帰る前に、ここにどんな目的で来たかだけ教えてもらえないかな?
無人島を探していた?
ここにはあーしがいるから、無人島じゃないので候補から外れると。
………………
無人島にどのようなご用件が?
あー、父親にプレゼントと。
なかなか親思い。
スケールが大きいけど。
やっぱり王女さまだ。
でも、無人島をプレゼントされても困るんじゃないかな?
そんなことない?
父なら絶対に無人島を発展させる?
そこらの街に負けないぐらいに。
そうすると船も来るだろうし、商店だってできるかもしれない。
へ、へー。
でも、ここにはあーしがいたから、別の場所に行くと。
…………
諦めるなぁっ!
粘れぇぇっ!
あーしは思わず叫んでしまった。
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