ヤメは村で過ごす
ヤメは村で過ごす
サブタイトルが重複してました。
すみません。
修正します。2026/08/22
あーしの名はヤメ。
貧弱で貧相な悪魔族の女の子。
……
女の子はいくつになっても女の子!
大樹の村でお世話になって十日ほど。
あーしは、猫をモフることで精神を安定させていた。
この猫をモフると妙にすっきりする。
逃げないし。
ほかの猫じゃ駄目。
モフってもいまいち。
そして、逃げる。
まあ、この逃げない猫さえいればあーしは十分。
よしよし。
ここか、ここがいいのか?
ははは。
現実を見よう。
ラナノーン。
寝る前のあーしが追い払った竜がいるんだけど、その妻の竜がラナノーン。
あのときは、まだ妻じゃなかったかな?
うん、違った。
まだ妻じゃなかったはず。
なのに、あーしが将来の夫となる竜を追い払ったのが気に入らず、あーしを執拗に狙ってきた。
あー、いまさら考えると、狙ってる男の敵討ちだったか。
あーしは、ラナノーンに何度も殺された。
ラナノーンの名前を聞くのも大変だった。
憎き相手。
覚えている。
それが目の前にいる。
…………
に、二千年ぐらい経ってるらしいし、あーしのことなんて忘れていてほしいなぁと思うけど……
駄目だ。
あの目は覚えている。
竜は賢いうえに、記憶力もいい。
ぐぬうっ。
仕方がない。
こうなれば、ラナノーンが夫となる竜をどうやって落としたかを言いふらすと脅す。
あ、駄目だ。
向こうはあーしの恥ずかしい過去を知ってる。
暴露合戦になると、あーしのほうが不利。
い、いや、ラナノーンの夫婦喧嘩の話で揉めた話なら対抗できるか?
判断に悩む。
ラナノーンも悩んでいる。
…………………………………………………………
あーしとラナノーンは和解した。
過去は忘れ、いまを生きよう。
うん、それがいい。
よかった。
え?
いまは同じ名の子孫がいるから、ラナさんと呼べ?
まあ、いいけど。
ラナさんの家に誘われ、そこで飲みながら昔の話……あーしの感覚からすればちょっと前だけど、それで盛り上がった。
大樹の村には世界樹があった。
青々と育っている。
この樹の葉を一枚、あーしに使えば弱体化したあーしが完全復活。
などと都合のいい話はない。
あーしたち悪魔族には、世界樹の葉の効果が薄い。
ないとは言わないけど、かなり薄くなる。
あーしに使った場合に関しては、まったく効果がない。
実際、使ったから覚えてる。
三回に一回ぐらいは毒になるんだった。
あーし、世界樹になにか恨まれることをしたかな?
まあ、とりあえず、そういう理由なので。
出された世界樹の葉は、そのままウルザに返した。
ルマニ=ブラン=トランシルヴァー。
知ってる。
有名なガーゴイル職人だ。
いろんなところに作って置いてた。
そのガーゴイルに攻撃されたことが何度もあるから覚えた。
ルマニのガーゴイルは危険と。
そのルマニが目の前にいる。
へー。
吸血鬼の始祖だから、村長から始祖さんって呼ばれてるんだー。
……吸血鬼の始祖なの?
知らなかった。
あー、もっとも古い吸血鬼ってことね。
まあ、敵じゃないならよろしくねー。
あと、ガーゴイルは勝手に設置しないように。
あーしの村じゃないけど。
ヴェルサ。
あー、なんかそんな古い悪魔族がいるって聞いた気はする。
よく知らない。
魔神が封印されたときにいたって話だから、あーしより遥かに古い悪魔だし。
あーしとは関わりがない。
どこかに引きこもってるって話だったけど……
この村に引きこもってたのかな?
違う?
いまは五村?
あーしが、飛行船で降りたところかー。
いい街……じゃなくて、いい村だもんねー。
ヴェルサのメイドのエルメ。
知ってる。
だから殴りかかってきた。
ええい、あーしが弱ってるのはわかるでしょ!
いま、あんたの攻撃をくらうと死んじゃうの。
危ないことをするんじゃない。
で、なんでここに?
プラーダにでも、あーしのことを聞いた?
違う?
え、いまはヴェルサの付き人やってるの?
へー。
ヴェルサが書く本を広める事業もやってると。
どんな本か知らないけど、応援するよ。
本が広まるといいね。
今度、読ませて……今度、今度でいいから。
いっぱい薦めてくるんじゃない。
エルメの出した本は、なぜか村長が没収してた。
この村では禁書扱いなんだって。
いや、あーしは興味があるわけじゃないから。
うん、そのまま没収で。
それで、あー、島に行くの?
うん、行く行く。
案内するよ。
村長はあと?
調査隊が先に行くと。
了解。
出発は明日?
急だね。
いいけど。
うん、準備しておくねー。
また、五村から飛行船かな。
鳥たちとイバンにお土産を持っていきたいな。
移動はラナさんの転移魔法だった。
ただ、一回行ったところじゃないと転移できないので、飛行船で一回停泊した場所……ウルザが仕事の書類を受け取った街に移動し、そこからラナさんに乗って移動。
飛行船に乗っていた天使族が島への進路を示していたけど、ずれがあるらしく少し時間がかかってしまった。
でも、あーしの想像よりも早く島に到着。
うーん、見慣れた景色。
落ち着く。
とりあえず、拠点の洞穴に移動。
鳥たちやイバンも元気そうだ。
よかったよかった。
歓迎してくれるのは嬉しいけど、あーしに群がってつつくのは止めて。
ほら、一緒に来た調査隊の人たちがどうしたものかと困ってる。
調査隊の人たちと言っても、調査隊はあーしとラナさんを除くと、天使族が二人だけなんだけどね。
あーしらは調査隊の先行隊。
ラナさんが転移魔法で大樹の村に戻り、調査隊の本隊を連れてくる手筈。
すぐ戻れるんだから、村長も来たらいいのにと思うけど……
安全を確保してからに越したことはないか。