ヤメと発展する島
ヤメと発展する島
あーしの名はヤメ。
村長が島に来るらしいから、調査隊の面々がいろいろと準備している。
んー……?
なんの準備?
普通にようこそーってやるだけじゃ駄目なの?
あーしは、お茶を用意してるけど。
……
用意したお茶を飲んでみたら、すごい味だった。
おかしい。
同じ材料で、同じ作り方なのに。
これは、あーしの舌が大樹の村や五村の食事に慣れたから?
ウルザたちが吹き出したのを理解できた。
これは出せない。
試しに飲んでみて、よかった。
べつのを考えよう。
村長、来島。
……
なぜ 帆船 ( ふね ) で?
転移魔法は?
始祖さんが今朝、あーしや調査隊を送ってくれたよね?
ひょっとして村長が転移魔法での移動を苦手とか?
それなら飛行船を使えばいいのに。
もしくは、ラナさんに乗ってくるとか。
うーん、帆船を使った理由がわからない。
大樹の村にあった、万能船と呼ばれる空飛ぶ船とは違う形だし。
港の機能チェックは……港がまだ完成していないから違うよね。
とりあえず、村長は帆船から降ろされた小舟に乗って、島に上陸。
村長は長い 銛 ( もり ) を持っていた。
木製だから、村長の手作りかもしれない。
村長と一緒に、インフェルノウルフ多数、デーモンスパイダー多数も小舟に乗って島に上陸。
周囲を警戒しているけど、たぶん力を発揮する相手はいないと思うよ。
ウルザと氷の魔物もいた。
あと、ハイエルフ多数、山エルフ多数、リザードマン多数、エルダードワーフは数人、獣人族も数人、鬼人族のメイドも数人。
続々、上陸してくる。
この数は……どう考えても拠点の宿に入りきらないけど、大丈夫なのかな?
あ、さらに天使族もやってきた。
三十人ほど。
帆船の上空警戒をしていたんだろう。
雲に隠れてたから、わからなかった。
それに加え、海から海の種族がずらっと数百人。
島が人で溢れてる。
村長は大半が上陸したあと、砂浜に銛を突き立てた。
銛はゆっくりと倒れた。
……
上手く刺さってなかったのかな?
砂浜だもんね。
村長は銛を持ち直し、改めて砂浜に銛を突き立たせた。
また倒れないように、今度はデーモンスパイダーたちが複数の糸で支えている。
インフェルノウルフが数頭、銛の根本に腰を下ろして銛を支えている。
賢い。
村長は銛が倒れないことを確認してから、上陸宣言。
いや、もう十分に上陸してたけど。
儀式みたいだから気にしない。
少しして、見張り台に旗が掲げられた。
大樹の村の旗だそうだ。
なるほど。
あ、でも、あの見張り台って壊れる前提じゃなかったっけ?
大丈夫?
あとでしっかりした場所に掲げ直すのね。
うん、それがいいね。
村長は拠点の宿とその周辺を確認したあと、獣人族のガルフの案内で島の中心に向かった。
ハイエルフと天使族が同行してるから、迷うことはないか。
インフェルノウルフやデーモンスパイダーたちも一緒に行ってるし。
村長に同行しない者は、拠点の宿の近く……ではなく、海岸で宴会の準備。
海の種族のことを考えてかな。
あー、このあたりまで波が来るから、火はもう少し陸側のほうがいいよー。
あと、海の種族が持ってきてくれた魚介類は、日陰におかないとすぐ駄目になっちゃうから……
氷の魔物が、氷を出して積み重ね、海産物を覆っていた。
氷の魔物、やっぱり便利。
日が落ちそうなころに、村長たちが戻ってきた。
いろいろと見れて、村長は満足そうな顔をしている。
がっかりされなくて、よかった。
そして、宴会。
持ち込まれたお酒が配られ、乾杯の大合唱。
あーしはお酒はあんまり得意じゃないから。
ジュースで割ったやつで。
酒精はちょっと感じる程度でいいの。
大量に持ち込まれた食材が、次々と豪華な料理になっていく。
料理人の中心となっている鬼人族のメイドたちの働きは、人数以上に感じる。
すごい。
あーしは……調査隊で一緒だったハイエルフや天使族、リザードマンたちがいるテーブルで食べる。
とても美味しい。
いくつかの料理は鳥たちも食べられるだろうから、食べさせてあげたい。
余ったら、言ってみよう。
余らなかった。
そりゃ、インフェルノウルフ、デーモンスパイダーがいるし、海の種族も多くいたから仕方がない。
ごめんと謝りつつ、鳥たちには硬い実を割って渡しておいた。
鳥たちの小屋のなかの巣に、卵があった。
また鳥が増えそうだ。
そして夜。
宿泊はどうするのかなーって思ったけど、村長を含めた大樹の村の住人は大樹の村に、海の種族は海に戻った。
それはいいんだけど、大樹の村への戻り方は転移魔法。
?
やっぱり、来るのも転移魔法でよかったんじゃないかな?
村長が乗ってきた帆船は、いつのまにか出航してたし。
翌日。
あらためて村長が来島。
転移魔法で。
んん?
昨日の帆船はなんだったのだろう?
さすがに気になったから聞くと、村長の意向だそうだ。
だったら仕方がない。
飲みこもう。
これ以上、追求はしない。
来島したのは、村長のほか、インフェルノウルフ、デーモンスパイダー、ハイエルフ、山エルフ、リザードマン、天使族。
昨日の半分ぐらいの数かな。
今回は、ウルザや氷の魔物は来てないみたい。
村長は島の中心付近に、家を建てる。
場所は……先行した調査隊がすでに選出済み。
あーしも相談されたけど、悪い場所じゃないと思う。
ただ、そこに行くまでの道に少し難がある。
それはいいのかな?
……
大丈夫そうだ。
なぜか、昨日までなかった道ができてる。
いつのまに?
誰が作ったの?
拠点の宿の近くにも、村長の家を建てるそうだ。
中心付近の家は私用で、拠点近くの家は公用と使い分けるようだ。
何人かのハイエルフが、縄を張って建築の目印を作ってる。
ああ、拠点の宿を建てる段階で、広場とか大通りをどうするかも考えてたんだ。
このあたりが商店?
でもって、こっちに個人の家が並ぶのね。
そう考えると拠点の宿は、将来的に本格的な宿になりそう。
あれ?
あーし、宿から追い出されるかな?
大丈夫?
あーしの家も用意してくれるの?
わーい。
港近くの海底の掘削は順調に進行中。
海の種族の協力が大きいらしい。
水 中用多目的人型機動重 ( アーティ・ホース・アクア ) 機を操るユーリが、海の種族の指示が的確で助かると言ってた。
港の重要施設、倉庫はすでに何棟も建っている。
拠点の宿と同じように風対策で倉庫の高さは低いので、収納量が少ない。
そこで倉庫の床を掘って、半地下にすることも検討されたんだけど、それだと波が来たときに水没するとあーしが却下した。
なので、港から少し離れた場所にある崖に洞窟を掘って、第二の倉庫にすることに。
洞窟を掘るのは大変だぞーって思っていたのに、いつのまにか綺麗な洞窟が並んでいた。
ほんとうにいつのまに?
ハイエルフたちが、その洞窟の入口を塞ぐ扉を作っていた。
鉄道。
村長が妙に張り切って、拠点の宿と港を繋ぐ鉄道を敷く計画を出した。
鉄道はよくわからなかったけど、ミニチュア版を見せてもらって理解。
物の運搬がとても楽になる。
でも、鉄道のレールと呼ばれる部分、海の近くだと 錆 ( サビ ) ないかな?
獣人族の鍛冶師が錆にくい鉄を研究中?
その試作品でやる?
村長がいいならいいけど。
あーしが拠点にしていた洞穴の拠点。
そこに創造神と農業神の像を設置することになった。
たしかにあーしが、長く使うほどに安全な場所。
拒否したりはしない。
ただ、洞穴の拠点には鳥たちがいたから 糞 ( フン ) の跡がある。
止まり木の位置を調整して、ある程度は決まった場所にしてくれてたけど、掃除しきれるものじゃない。
神の像を置くのだから、そのままじゃまずいよね。
徹底的に清掃しないと。
あーしが頑張るかと思ったのだけど、ハイエルフや山エルフ、リザードマン、それに天使族たちが手伝ってくれた。
数は力だ。
あっというまに終わった。
ありがとう。
神の像が安置された。
村長が、あーしのお茶を所望した。
あーしのお茶って、あーしがウルザに振るまったお茶?
ウルザから聞いたの?
味、酷いよ。
最近、あーしも理解したから。
そりゃ、材料はあるから出せるのは出せるけど……
飲まないほうがいいと思うんだけどなぁ。
飲んだ村長は吹き出すのをこらえていた。
だから言ったのに。
でも、ちょっと嬉しそうな顔をしていたのはなぜだろう?
次回は村長視点に戻ると思います。