ヤメの有人島生活 その二
ヤメの有人島生活 その二
あーしの名はヤメ。
島の管理人。
金貨の価値が、あーしの知っているころより、かなり上がっててびっくり。
これが時の流れかぁ。
現在、あーしらは島に日帰りでやってきた村長と一緒に、 筏 ( イカダ ) を作っている。
伐採したばかりの木は水分を含んでいるから、筏の材料には向かない。
重いから。
べたべたするし。
だけど、村長が伐採した木は……なぜか乾燥している。
べたべたもしない。
これも魔法だろうか?
細かいことを気にしていては、生きていけない。
伐採したばかりでも使えるのだから、よしとする。
ハイエルフやリザードマンたちがいるので、筏はあっというまにできた。
大きさは大人が五人ぐらい乗れるぐらい。
帆はない。
浮かぶだけ。
とりあえず、筏を砂浜に運び、村長とリザードマン三人が乗り込んだ。
それぞれが手にオールを持っている。
そして、出航。
……
筏は波に押し返され、砂浜に戻った。
三回、挑戦したが駄目だった。
波は強い。
村長は考えた。
波は浜に向かうだけじゃない。
浜から沖に向かう流れの場所がある。
それが 離岸流 ( りがんりゅう ) だと村長は言った。
海辺にいるときは要注意の場所らしい。
あーしらは海辺のあちこちに浮きを設置し……沖に向かう浮きを探した。
発見。
思ったよりも速い勢いで、浮きが沖に向かっている。
なるほど危険だ。
ここに筏を置けば出航できる。
筏を運んだ。
村長たちが乗り込む前に、筏は沖に流された。
そして波によって筏は転覆、筏はバラバラになった。
………………
海の種族たちが、バラバラになった筏や、設置した浮きを回収してくれた。
えーっと、村長。
筏に関しては独学でやるより、海の種族に聞いたほうが安全じゃないかな。
ほら、海の種族たちもアドバイスしたがってるし。
よかった。
素直に聞いてくれて。
川を流れる筏と、海に 漕 ( こ ) ぎだす筏はまったくの別物。
海に漕ぎだす筏は、波への対策をしないとさっきみたいにすぐ分解しちゃう。
波への対策としては、筏を板みたいに作るんじゃなくて、丸太の形にしたほうがいいと。
人数を乗せたいなら、丸太の形にした筏を並べて、その上に板を置く形がいいと。
なるほど。
つまり、まずは木をまとめて丸太の形に……
あれ?
それだと、太い木をそのまま丸太にすればいいんじゃ?
村長も気づいた。
次に島に来るとき、大きい丸太を持ってくるそうだ。
島には太い木はあまりないからね。
海の種族に細かく聞くと、海に漕ぎだすなら筏は不向き。
不可能じゃないけど、お勧めはできないと。
そうなんだ。
板のように木を並べた筏で、なんとかなると思ったのに。
小さい板で一人で乗るならなんとかなるけど、複数人が乗って重心が変化する状態だと、かなりの強度がいると。
勉強になる。
海の種族たちからの話を伝えたら、丸太を持ってきた村長は筏を諦め、丸太を削ったボートを作った。
そのボートを二つ、連結させて双胴船……双胴ボートに。
二人乗りだけど、双胴ボートだから、乗る場所は二ヵ所に別れる。
漕ぎ手が横に並ぶ形。
その片方に村長が乗ると……オールを漕ぐ力の調節がむずかしく、まっすぐ進まなかった。
なので村長は乗るのを諦め、息が合ってるリザードマンが二人乗って出航。
おおっ、ちゃんと進んでる。
すいすいと沖にまで到達。
砂浜で見守っているあーしらに、手を振る余裕もある。
あーしも手を振り返した。
双胴ボートはかなり安定している。
波に乗っても耐えてる。
すごいっ。
そう思った瞬間、ちょっと大きい波がやってきて連結部が壊れ、双胴ボートが転覆した。
波のうねりに耐えられなかったようだ。
乗っていたリザードマン二人は、海の種族たちによって救助。
怪我はなし。
よかった。
そして、海に出るには、まだまだ技術が足りないと自覚する村長とあーしたちだった。
あ、村長。
迎えの始祖さんが来たよ。
そろそろ帰る時間。
でも、波に濡れたから、帰る前に着替えたほうがいーよ。
村は大雪が積もってるんでしょ?
そのまま帰ったら、風邪ひくよー。
村に帰る村長と始祖さんを見送ったあと。
あーしは宿の広間を見る。
そこには、多くの物資が積み上げられていた。
村長が島にやってくるたびに持ってきた島への贈り物だ。
……この新作の盾はあーしへのかな。
ありがたく飾らせてもらおう。
でもって、物資は……いろんなところに持っていかないとねー。
食料とか冷やさないと駄目な物は、持ってきたときにしまってあるから、急がなくていいんだけど。
五村の魔道具とかは、どこに設置しようかな。
追尾荷車は外……だと、強い風が来たときに飛ばされちゃうか。
それぞれの家にも倉庫を併設してもらったほうが、安全かもね。
おおっと、この物を冷やす大型の箱は調理場だね。
うん、便利そう。
……
あーし一人じゃ無理だから、誰か手伝ってー。
島の見回りから帰ってきたインフェルノウルフが異常なしと報告。
よしよし。
足を洗ったら、コタツに入っていいよー。
ほら、 角 ( ツノ ) カバー。
ん?
ああ、それは村長が持ってきた風を送る魔道具。
村長が扇風機と言ってたかな。
これはコタツと合わない?
あー、コタツは温める物で、扇風機は冷やす物。
合わないか。
でも、コタツは保温石を外しているから、温かくないんだけど。
使っているインフェルノウルフが言うなら、従おう。
素直にコタツを回収……
インフェルノウルフが、すごく呆れた顔をした。
回収するのは扇風機でしょと。
あーしとしては、扇風機のほうが役立つ気がするんだけどなぁ。
とりあえず、コタツはそのまま。
扇風機の風がコタツに向かないように、位置を調整しておいた。
夕食は村長が持ってきてくれたお肉。
ただ、食べる場所は室内でなく野外。
それも砂浜で。
焚火の上に網を乗せられるようにし、そこで 串 ( くし ) に刺したお肉や野菜を焼く。
バーベキュースタイルと村長は言ってた。
ハイエルフたちが焚火の火力や、網の高さの調節を担当。
リザードマンたちは、お肉や野菜などの食材のカットを担当。
あーしは、そのカットされたお肉や野菜を串に刺していく。
バーベキュースタイルは串に刺さなくてもいいらしいけど、焚火での調理だから串に刺してあるほうが便利。
この串も村長からもらったやつだけど、なんでも串の手元は熱に強いけど、串のなかほどから先にかけては普通に熱を伝える。
魔道具かなと思ったけど、ただの鍛冶技術だって村長は言ってた。
うーん、便利。
前に渡した貝殻を使って、この串を作ったのかな?
そうだといいな。
貝殻に価値が出たら、海の種族たちの収入になるから。
そんなことを考えていたら、十人ぐらいの海の種族たちがやってきた。
手には海産物。
いいね。
一緒に食べよう。
ハイエルフたちが、焚火を分けて、新しい網を用意した。
リザードマンたちの食材をカットする速さが上昇。
……
あーし一人で串に刺すのは無理だから、海の種族も手伝って。
見よう見まねでいいから。
貝は串に刺さず、殻ごと網の上に。
海老は……頭と尻尾を取って、 殻 ( から ) を 剥 ( む ) いちゃおう。
魚は……リザードマンたちに。
適当にぶつ切りでいいから。
焼くのに向かない魚は、鍋に放り込んでスープに。
あー、ハイエルフから二人、お皿が足りなさそうだから宿に取りに行って。
ついでにお酒も。
足りないでしょ。
砂浜でのバーベキューは賑やかで、美味しかった。
村長 「島は冬でも暖かいなぁ」
ヤメ 「大雪のところと比べたらね。でも風が強いと島も寒くなるよ」
解説 「台風が来るので、島の位置は赤道直下ではありません」
ヤメ 「ハイエルフから二人! お皿とお酒取ってきて!」
ハイエルフ 「了解!」
ヤメ 「全員で行くんじゃないっ!」
リザードマン 「切るだけならなんとでも」
ヤメ 「魚も?」
リザードマン 「ぶつ切りなら…… 捌 ( さば ) くのは無理です」
ヤメ 「……鬼人族のメイド、一人、こっちに回してくれないかなー」
リザードマン 「ですねー」
鳥と鶏 「(おすそ分けを待ってる)」
スライム 「(おこぼれを待ってる)」
インフェルノウルフ「(コタツでまったりしつつ、ヤメが肉を持ってきてくれると確信)」