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ゴドレイク伯爵からの招待

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ゴドレイク伯爵からの招待

●登場人物紹介

フォカ嬢 資料館の罠に気づき、逃げたけど追われて捕まった有能令嬢。

僕の名はミケル。

レイワイト王国に住む、コーリン教の大司祭であるフーシュの息子。

いまはアルフレートくんの案内役をやっている。

見張り?

違いますよ。

アルフレートくんは友人。

友人を見張ったりはしません。

護衛?

無理無理。

アルフレートくんのほうが僕より圧倒的に強いからね。

強いて言うなら、倒した者をどこに送るかを決める係かな。

ああ、期待しているなら申し訳ないのだけど、僕にアルフレートくんを止める力はない。

欠片もない。

無茶を言わないでほしい。

さて、僕はアルフレートくんを止める力はないけど、止める力のある者がやってきた。

アルフレートくんが、自分の村から連れてきた黒服の男性。

名はフウマ=カトウ。

アルフレートくんの護衛だそうだ。

無口で、簡単な単語でしか喋らないけど、危険なことをしようとしたアルフレートくんを止めていた。

アルフレートくんも、カトウさんには強く逆らわない。

そして、普段はアルフレートくんの後ろに控え、余計なことはしない。

言わない。

アルフレートくんを止める必要があるときだけ、動く。

その判断が、一般的。

すごく常識人。

室内でも馬よりも速く走る変な乗り物に乗っている欠点を無視できるぐらい、常識人。

……

大丈夫、無視できる。

乗り物に乗っているからって、誰かに迷惑をかけたわけじゃない。

礼儀?

ちゃんと頭を下げて王たちに挨拶してたよ。

乗り物からは降りなかったけど。

王たちは、笑って許してたから大丈夫。

……

たしかに、カトウさんの後ろに僕の母が立っていた。

でも、あれは王たちを威圧していたのではなく「カトウさんと揉めたらコーリン教の母の派閥は全面的にカトウさん側につくから、絶対に揉めないように。 本気 ( ガチ ) ですよ」という意味の微笑み。

怖くない。

うん、怖くない。

覚悟を決めているだけ。

なのに怯えて、王の護衛という任務を忘れて逃げた兵たちは問題だと思うけど、それは王たちが話すことで僕はなにか言う立場にない。

あ、逃げた兵を解雇するなら、コーリン教で雇いたいので教えてもらえると助かります。

いえいえ、ただの再就職の 斡旋 ( あっせん ) です。

戦力はいくらあってもいいので。

カトウさんはいつも変な乗り物に乗っている。

バイクって言うらしい。

壁とか天井に張りついて移動できる。

すごい。

そして、そのバイクから食事や飲み物とか出てくる。

便利。

でもって、バイクから降りることもできるのね。

当然だね。

バイクから降りたカトウさんは、アルフレートくんに無茶な要求をした貴族の顔面に飛び 膝 ( ひざ ) 蹴りをかました。

……

かましたは、ちょっと言葉が悪いかな。

顔面に飛び膝蹴りを差し上げたと言っておこう。

うん。

そして、倒れた貴族を守ろうとした護衛たちを、目に見えない速さの打撃で叩きのめしていた。

そんなカトウさんに、アルフレートくんは手加減が上手にできたなと褒めていた。

………………

なるほど。

手加減を失敗したらどうなるかは聞かないでおこう。

うん。

あ、バイクで倒れている護衛や貴族を 轢 ( ひ ) くのはちょっと……

縛って引きずるぐらいにしてもらえると助かります。

アルフレートくんに無茶を言った貴族は母に任せ、僕はいつも通りにアルフレートくんの案内。

カトウさんが意見を出すことはない。

だけど、アルフレートくんが行動を決める前に、カトウさんに確認を取っている。

その確認の仕方が自然だったので、村ではカトウさんのほうが立場が上なのだろうか?

でも、アルフレートくんは村長の子。

カトウさんはそうじゃないと聞いているんだけど?

先生と生徒の関係なのかな?

今日のアルフレートくんの行先は、ゴドレイク伯爵家のお茶会。

ゴドレイク伯爵は、レイワイト王国の重鎮。

そして、資料館で王子たちと一緒に活動しているフォカ嬢の父親。

その父親から、突然の招待があった。

顔見知りでもなんでもないのに。

貴族の常識的には、べつのところで顔見せをし、友誼を深めてから誘う。

それが手順で礼儀。

そういった手順を踏まないのは、圧倒的格上の場合か、こっちを平民扱いしている場合。

つまり「話があるから来い」と言っているわけだ。

これは無礼。

あきらかに無礼。

アルフレートくんはたしかに平民。

だけど、コーリン教のお客。

ただのお客じゃない。

重要な相手から預かったお客。

そして、それを国王たちは認めている。

つまり、アルフレートくんは 国賓 ( こくひん ) ということ。

なのに、こういった扱いをするのは駄目だろう。

無理を言ってきた貴族と同じ。

僕はコーリン教の戦力を集めて殴り込もう……失礼、話し合いに行こうとした。

その直前で、フォカ嬢から無礼な誘いの謝罪があった。

同時に、こういった誘いをしないといけない緊急の相談がアルフレートくんにあるとも言われた。

さらにフォカ嬢が言うには、手順を踏むためにアルフレートくんが出席するパーティーにゴドレイク伯爵がお邪魔して、顔を繋いでから誘うつもりだったけど、最近のアルフレートくんはパーティーに出てこないからと。

たしかに出ていない。

出てもすぐに帰っている。

手順を守ることも厳しいかと納得。

しかし、だからと言ってこういった無礼な誘いをしていい理由にはならない。

たとえば、アルフレートくんのことを知っている貴族に頼んで、招待の仲介をしてもらえれば……駄目か。

招待の仲介ができるほど親しい貴族がいない。

なにせ招待の仲介は、仲介して終わりじゃない。

招待の場でなにかトラブルがあったときに、責任を持つ必要がある。

双方をそれなりに知っていないと、仲介なんてできない。

アルフレートくんのことを知っている仲介できそうな人となると、コーリン教関係者や王子たち。

ただ、どちらに頼んでも、どういった事情で会いたいのか詳しく聞く。

ゴドレイク伯爵の相談がおおっぴらにしていい内容なら、招待せずに手紙で伝えればいいわけだから……

ある程度、内密の相談。

そう考えると、招待の仲介を頼むのはむずかしい。

残るは、アルフレートくんを知っているフォカ嬢を含めた貴族令嬢だけど。

彼女たちから誘うのは、もっと無理。

お見合いになるから。

アルフレートくんは、お見合いを完全に拒否している。

結婚相手がいるからね。

相手に期待を持たせるような真似はしない。

誘われても、アルフレートくんは行かないだろう。

それで、ゴドレイク伯爵が無礼にも直接のお誘いか。

うーん。

僕が話し合いに行くのは中断したけど、誘いを受けるか受けないかの判断はアルフレートくんがすべきと任せた。

アルフレートくんは相談があるならと、お茶会の誘いを受けた。

もちろん、僕も同行させてもらう。

カトウさんも。

しかし、なぜお茶会なんだろう?

ゴドレイク伯爵本人からの招待で、男性のアルフレートくんを誘うなら、狩猟とかそういった方向で誘うべきじゃないのかな?

相談があるから、落ち着いて話せるお茶会のほうがよかったのだろうか。

わからない。

腰の心配、ありがとうございます。