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まだ冬

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まだ冬

冬に食べたくなる食べ物と言えば、餅だ。

餅。

餅米を蒸し、キネで 搗 《 つ 》 いて捏ねる。

餅。

食べたいと思うと食べたくなる餅。

餅、餅、餅。

餅米を少量だけど作っているとなれば、餅を作るのが人情ってものではないだろうか!

一回目、蒸すのに失敗。

くっ。

二回目、なんとかできた!

しかし、求めていた食感と違う気がする。

搗き方が悪かったのか?

リズム?

それとも、俺ではパワーが足りない?

三回目、ミノタウロスの駐在員に搗いてもらい、ケンタウロスの駐在員に返してもらった。

美味かった。

砂糖醤油は絶品。

砂糖黄粉も悪くない。

来年はもう少し、餅米の畑を増やそう。

保存食にも良いし。

冬に食べたくなる食べ物と言えば、善哉!

小豆を茹で、砂糖を加える。

そして塩少々。

なかなか味のバランスが難しい。

七回目ぐらいで納得の味になった。

これにさらに餅を投入!

パーフェクト善哉!

「お、お餅を入れるとは……その発想は無かった」

「お餅と一緒だなんて、美味しいに決まってる」

あっと言う間に完食された。

冬に食べたくなる食べ物と言えば……なんだろう?

恵方巻き?

ノリは……マイケルさんに頼んで作ってもらった。

米もある。

酢もある。

具材は……野菜中心だけど、ある。

後は卵焼きを作って……

こんなものか?

「新しいお料理ですか?」

「ああ」

本来は切らずにかぶり付くのだが、切ってみんなに食べてもらう。

「不思議な味です」

「オニギリとは違うのですね?」

「中の具を変えることで……無限の可能性を感じます」

好評だった。

恵方巻きついでに節分を思い出した。

節分。

……

食料に不安があるのに豆を撒くのは、ちょっと無理だな。

あとは……バレンタイン?

チョコレートか。

チョコレートってカカオから作るんだよな。

【万能農具】でカカオは育てることはできるだろうけど……

カカオからチョコレートの作り方は知らない。

あー……でも、チョコを食べてみたくもある。

春になったらカカオを育ててみよう。

食べ物関連はこんな感じ。

俺の家で作ったので食べられなかった者が出たため、後で何度か作ることになった。

餅が人気だった。

「喉、詰まらせるなよー」

冬の間の実験。

天気の良い日、俺はラスティに頼み、できるだけ高くからとある物を投下してもらった。

投下してもらった物は、そのまま落下。

途中でスルスルと布が広がり、パッと開く。

パラシュートだ。

パラシュートを開いた投下物は、落下速度を低下させながらユラユラと地面に落ちた。

そして、パラシュートには木箱を重りとして付けており、箱の中に入れておいたガラス瓶を確認するが、割れてない。

俺の実験に付き合っていたグランマリアが驚く。

「村長?

今のは?」

「パラシュートだ。

ラスティやハクレンに乗って落ちた時のことを考えてみたんだが……良い具合だな」

「落ちた時……あれで降りるのですか?」

「緊急時な。

まあ、人だけじゃなくて今みたいに荷物につけたりもしたい」

「荷物はいいですけど、人は危なくないですか?」

「完全に安全ってわけじゃないだろうけど、ないよりは良いだろう」

「落下を制御する魔法があります」

「……俺は使えない」

「失礼しました」

「まあ、いきなり人で試したりしないさ。

実験に実験を重ねた後、飛べる者で試してみる」

「それなら安心です」

飛んでいたラスティが戻ってきたので、上空から見た感想を聞く。

「大量にバラ撒いたら気持ち良さそう」

「……」

ともかく、パラシュートの改善だが……

ザブトンが冬眠中なのでこれ以上はできない。

春を待とう。

「ん?」

妙に期待した雰囲気をまとった酒スライムが寄ってきた。

……

いいのか?

酒スライムの気配が、大丈夫だと答えた。

「健闘を祈る」

俺は木箱の蓋を取りスライムに敬礼すると、酒スライムは木箱の中に入った。

蓋は……無い方が周囲を見れていいか。

パラシュートが開かないと怖いので、畳まずに伸ばしたままにする。

「ラスティ。

このまま、持って飛んでもらえるか?」

「わかった」

「グランマリア。

低空で待機。

万が一の時は、酒スライムを助けてやってくれ」

「わかりました」

そして、先程と同じぐらいの高さから投下。

畳んでいないパラシュートはすぐに開き、落下速度が減速する。

……見た感じ、気球みたいだな。

酒スライムは数分の空の散歩を楽しんだ後、無事に地面に着地。

衝撃も小さく、特に問題はなかったようだ。

酒スライムはかなり嬉しそうにハネていた。

「……なんだか楽しそうね」

「ですね」

ラスティとグランマリアがこっちを見ている。

……

万が一の時は飛べるから大丈夫と、二人は楽しんだ。

「なかなか良いわね」

「ふわふわと落下する感じが新鮮で楽しいですね」

「でも、パラシュートの装着が肩だけじゃなくて、太股にも固定するのが少し恥ずかしい」

「そうですね。

他に装着方法は無いのでしょうか?」

ズボン姿に着替えた二人がなんだかんだと改善点を言ってくれるが、その辺りはザブトンが起きてからな。

あと、次は酒スライムの番。

順番は守ろう。

雪が積もってもケンタウロスたちの移動に支障は無い。

「さすがに吹雪の時は、無理に移動するなよ」

「承知しています。

今ぐらいでしたら問題は……ああ、橋に雪が積もると少し怖いですね。

もう少し広くなると助かるのですが」

「んー……確かにそうか。

だけど、あれ以上に広くすると魔物や魔獣が渡ってしまうと心配されてな」

「魔物や魔獣……言われるとそうですね。

無理を言いました」

「いや、毎日移動してもらっているんだ。

不便な所は直していきたい。

幅は広くできないが、 手摺 ( てすり ) があればどうだ?」

「手摺?

確かに、それがあれば助かります。

現状、雪に足を取られて落ちるのが怖いのですから」

「なら、それでいこう。

天気の良い日に運んでもらえるか」

「承知しました」

そして橋の所にケンタウロスに乗せてもらって移動する。

同行者に定時連絡に来ていたケンタウロスが三名と、駐在員としているケンタウロスが二名。

そして、護衛としてクロとクロの子たちが十頭。

半分は今年生まれた子供だ。

「定時連絡は三人一組になったのか?

最初の頃は二人とか五人だったが……」

「はい。

色々と試した結果、三人組がベストと判断しました」

「なるほど。

でも、あまり拘り過ぎるなよ」

「はい」

橋の所に到着。

天気は良いが橋の上には雪が積もっており、ケンタウロスたちが来る時に残した跡がわかる。

「木の橋ですので、火の魔法で雪を融かすのも怖いですから」

「ははは。

さすがにそれは止めてほしいな」

橋は丸太を置いて上部を削った形。

これに手摺をつけようと思うと……釘が必要だな。

釘は持ってきているが、手順を考えると手摺を作り、橋を一度回収した後、手摺を固定、橋を戻す。

……

俺は森の中に入り、大きな木を探した。

直径三メートルぐらい。

川幅の長さも十分。

伐採、加工。

一本の丸太を削り、Uの字の形の橋を作った。

手摺ではなく、側壁。

「これでどうだ?」

「悪くないですが、通っている時の視界が制限されますね。

高さもこれほどなくても……」

「なるほど」

側壁の高さを半分にし、さらに穴を開ける。

ああ、雨や雪が降ると水が溜まるな。

床に緩い傾斜をつけ、排水用の穴も側壁に幾つか開けておく。

「これでどうだ?」

「良い感じですね。

ありがとうございます」

「ははは。

よし、連絡員はこのまま各村に移動。

橋が新しくなった事を他の者に連絡してくれ」

「了解しました」

連絡員のケンタウロス三人ができたばかりの橋を渡り、駆け出していく。

「それなりに時間を使いました。

そろそろ帰りましょう」

駐在員のケンタウロスに促されて、俺は帰ろうとしたが……

「クロたちが獲物を追い立ててるみたいだな」

今年生まれた子供たちが、頑張っている。

しかし、追い立てている獲物は見ない獲物だった。

鹿?

角が凄く凶暴そうだが……

ああ、行動も凶暴そうだな。

角を振り回して反撃したが、クロの子供たちは避ける。

そのまま、俺の方に向かってきた。

駐在員のケンタウロスたちが慌てた。

が、すでに俺の手には【万能農具】のクワがあった。

首を耕し、凶暴な鹿を仕留めた。

クロがお見事と吠えて褒めてくれた。

「ははは。

よし、血抜きして持ち帰ろうか」

思わぬ食料確保に、ホクホクの俺だった。

「パニックカリブーですね。

これ」

「うん」

鬼人族メイドと文官娘衆が、深刻な顔をしていた。

「狩っちゃまずかったか?」

「いえ……その、かなり珍しいですが、魔獣なので狩るのは構わないのですが……価値の大半が角にありまして……」

【万能農具】のクワで耕したので、角は頭部ごと土になった。

「すまない。

だが、安全第一だ」

下手に狙って怪我でもしたら大変だ。

「それはわかりますが……角は凄く美味しいらしいんです」

……角、食べるの?

「私は食べたことありませんが、食べたことのある者は絶賛します」

「珍しくて変わった味だから、評価が高くなってしまった系じゃないのか?」

いわゆる珍味系。

「そうだと思うことにします」

パニックカリブーの肉は、普通に美味かった。

気になったので、天気の良い日はパニックカリブーを狩りに森に。

グランマリアたちやクロたちを多数動員し、運良く七日目にして一頭を狩れた。

角、確保。

砕いて粉にし、煮てスープにするのが定番らしい。

作って食べてみた。

感動するほど美味かった。

肉も美味かったが、それ以上だ。

驚いた。

しかし、それ以降はどれだけ森に入ってもパニックカリブーとは遭遇しなかった。

くっ。

美食の記憶だけ残された。

やるな、パニックカリブー。