楽しい春
楽しい春
春が来た!
忙しくなる春だ!
活動を始めたザブトンに挨拶しつつ、春の到来を喜ぶ。
まず、食料のチェック。
フラウを筆頭に文官娘衆のチェックが行われ、計算される。
「大樹の村、問題なし!」
「二村、食料の消費に偏りがありますが、量的には問題ありません」
「偏り?」
「果実類の消費が早いみたいです。
逆に穀物類の消費が抑えられています」
「味の好みでしょうか?」
「あー、いえ、その。
多分ですが……保存できる食料を後回しにしただけかと」
「不足したら補充すると伝えたでしょう?
二村は私たちを信用していないのですか?」
「そうではなく、習慣的な物ではないでしょうか?
ここに来るまでに苦労されたようですし」
「……なるほど。
次」
「三村、冬の間の消費が多かったようです。
近日中の補充が必要です」
「大樹の村から回せる?」
「大丈夫です。
現在の消費量なら、次の収穫まで 保 ( も ) ちます。
手配します」
「よろしく。
消費が多かった理由は?」
「子供の食べる量を見誤ったとのことです」
「子供とはいえ、ケンタウロス。
かなり食べるみたいですね」
「なるほど。
一村は……問題なしというか、ほとんど消費がありませんね。
送った分の大半が保管されています」
「食べなくても大丈夫とはいえ、食べてもらえないのは少々……」
「消費を抑えてくれたことに感謝しましょう」
現状、大樹の村の収穫まで食料に問題は無いとのこと。
つまり……
俺の【万能農具】の働きに期待されている。
頑張らねば。
冬の間の汚れを清掃。
思った以上に汚れがある。
日干しも兼ねての大掃除。
溜まったゴミ類を【万能農具】で耕し、土にする。
さて、次に畑!
と頑張りたいが、その前に種族の代表を集めた会議を行う。
一村のニュニュダフネのイグ、二村のミノタウロスのゴードン、三村のケンタウロスのグルーワルドたちも参加する。
主な議題は今年の活動方針と、褒賞メダルの受け渡し。
会議と言っても事前に相談は済んでおり、ほとんど俺からの通達になる。
「まず、今年は二村、三村の発展に尽力したい」
最終的な理想は、二村、三村だけでの自給自足。
だが、急ぎはしない。
急いだところで、そう簡単にはいかないだろう。
まずは、今の生活に慣れてもらい、安心して暮らしてほしい。
冬の間の手仕事で、内装関連はそれなりに揃ったと報告を受けている。
水路作りは、天候の影響でまだ完成には到っていない。
それに関しては無理はしないように言っているので、問題は無い。
だが、畑には水が必要。
なので、優先は水路とため池の建設。
後は冬の間に発覚した問題点の解消。
主に野外のトイレの位置の変更や、渡り廊下的な物の建築だ。
それが終われば畑だが……これは【万能農具】を持つ俺一人の作業なので各村に問題は無い。
問題があるとすれば、俺の作業時間がハードスケジュールなことだ。
後は、これまではハイエルフたちが建築のメインで、ミノタウロスやケンタウロスたちはお手伝いだったが、ある程度はできるようになってもらいたい。
現状、各村は越冬を優先したので家しかない。
集会ができる大きな場所や、風呂などを建築しながら学んでほしい。
などなどを伝えていく。
褒賞メダルに関しては、冬の間に色々と話し合った。
結果。
「ニュニュダフネ、各村の駐在員を除き、大樹の村に住み働ける者には一人三枚。
種族代表者にはさらに十枚を渡す」
大樹の村に関しては、去年と基本は同じだ。
アルフレートやティゼル、生まれたばかりのリザードマンの子供のようにまだ労働力にならない者には渡さない。
逆に小さくてもちゃんと働いている獣人族の男の子には渡す。
また、クロ、ザブトンたちには集団としてさらに追加で渡した。
いつもありがとう。
そして、これからもよろしく。
「一村、二村、三村に住む者には、今年は渡さない。
ただし、各村に三十枚ずつを渡す。
管理は各村の代表がするように」
新しく来た者たちには、明確な差がつけられた。
俺は平等に扱おうとしたが、イグ、ゴードン、グルーワルドは断った。
曰く、まだ役に立っていないと。
また、大人も子供も同じ扱いだと困ると言われた。
確かに。
なので、その後に色々と話し合い、村に三十枚を渡すという形になった。
褒賞メダルの交換リストは、去年と大きく変わらない。
俺が作ることになる家具類に関して、時間が掛かるとの但し書きを追加されたぐらいだ。
そして、冬の間の食料に関して貢献のあったラスティとハクレンに褒賞メダルを追加で二枚ずつとなった。
この枚数も揉めた。
不要というラスティ、ハクレンに対し、渡したい俺。
結果、二枚ずつという中途半端な枚数に。
功績表とか作った方が良いのだろうか?
褒賞メダルの評価が俺に一任されるのが問題点だと思う。
その後、会議で話し合われたのが大樹の村の方針。
俺の家の改築。
畑の拡張をやってみて、上手くいった時の作物内容。
果実エリアの拡張と蜂の世話が話し合われた。
後、大きな話としては子供たちの教育に関して。
二村ではミノタウロスの子供が二十三人に対し、大人が四十九人。
三村ではケンタウロスの子供が六十四人に対し、大人が四十人。
本来なら手の空いている大人が教えればいいのだろうが、子供の数に対して大人の数が少な過ぎた。
そのうえ、大人は新しい生活に適応するのに忙しかった。
現状、見張り的な大人が数人付いているだけで、子供の教育は放置されている。
「将来を考えれば、読み書き計算はできた方が良いだろう」
「そうですけど、大人でもできない者がいる現状では……」
詳しく聞くと、ミノタウロスたちの中に読み書き計算を誰かに教えるレベルでできる者は不在。
ケンタウロスたちも、同じようなものだった。
さらに詳しく聞くと、計算ができると言った者も、足し算と引き算だけで、掛け算や割り算はできないらしい。
「教育レベルってそんなものなのか?」
「えーっと……」
大樹の村の住人では、ハイエルフ、山エルフの何名かの計算が怪しかったが、ハクレンが教え込んだので大丈夫。
現在は小さな子供とスライムと蜂以外は読み書き計算ができると胸を張られた。
クロの子供たちやザブトンの子供たちもできるのだろうか?
できるみたいだ。
教育差を感じる。
そして、このまま放置はできない。
「子供たちを移動させるのは負担が大きいな。
各村で教育するのが一番。
しばらくは大樹の村から教師役を派遣する形でなんとかしよう」
教師役はハクレンを中心に、文官娘衆から何人かといった感じだろうか。
まあ、教育は大切だが慌ててもいけない。
無理に教えて、勉強嫌いになられても困る。
焦らずにやっていこう。
そして最後に。
一村への移住者を探すことの確認。
移住者を求めたのは、元々が俺の不安の解消だ。
俺の不安は二つ。
一つは【万能農具】を使う俺に何かあった場合、村が困るのではないかということ。
死ぬ気は無いが、人間だから年は取る。
いつかは死ぬのだ。
アルフレートやティゼルに【万能農具】を継承できれば良いのだが、それは都合の良い考え方だろう。
また、俺が死ななくても何かの拍子で【万能農具】が使えなくなった時のことを考え、普通の農業をする者たちが欲しかった。
もう一つは、男女比の問題。
現状、俺以外の男が少な過ぎる。
不健全。
いや、不健全でも手を出した以上は面倒を見る。
その覚悟はしている。
正直、色々と諦めた。
だが、問題は未来。
アルフレートの世代が全て兄弟姉妹。
どう考えても健全な状態じゃないだろう。
……
村のことを考えても、俺以外の男が必要だ。
なのに、今回の移住者たちは……ミノタウロスは大きさの問題があり、ケンタウロスたちとは交配不可。
ニュニュダフネたちは、女性のみの種族。
農業をする人手にはなっても、男女比問題の解決にはなっていない。
だから、続行。
移住者を求める。
そのことを確認し、会議は終わった。
会議が終われば、次は畑仕事!
全力で大樹の村の畑を耕した。
以前にこの辺りが限界かなと思った広さだが、なんだかんだで広げることに成功。
現在、畑の大きさは、三十二×二十四面を、三十二×三十二面に。
ただし、畑の北東部分にあった薬草畑は拡張して残した。
薬草畑の大きさは八×八面なので、広がった畑は実質八×二十四面。
新しい住人やクロの子たちが増えたことだし、良かった。
この畑拡張作業中、例年のザブトンの子供たちの旅立ちがあった。
ビシッと片足を上げて敬礼すると、次々と糸を出して飛んでいく。
遠くに行っても元気でいてほしい。
そして残ってくれる子たちに感謝。
ありがとう。
畑の拡張が終わると、次は果実エリアの拡張。
十二×八面だったのを、十二×十二面に。
ヤシ、ザクロ、ライム、キウイ、ライチ、マンゴスチンなどのちょっと変わった系と、カカオの木を育てることにする。
果実エリアに住む蜂は、順調に新しい巣ができており、今年も蜂蜜に期待できそうだ。
果実エリア。
名前的には果樹園とかの方が相応しくなってきた気がする。
今度、会議で提案してみよう。
そして牧場エリア。
うん、順調に子牛と子山羊が増え、育っている。
家の北側の鶏たちも、賑やかになってきた。
……
かわいい。
うん、かわいい。
将来的にはお肉にする予定だったが……
今のところ、できていない。
お肉は森で狩れるんだから、無理に食べなくても。
偽善とわかっていても、できない自分の弱さ。
牛乳、山羊乳、卵をお願いします。
大樹の村での作業が一段落した俺は、クロの子供たちを護衛に二村に向かった。