まったり
まったり
冬になった。
村はまったり空気。
と言ってもダラけて寝ているワケではない。
室内での作業が多くなるだけだ。
動ける天気の時は、なるべく外に出る。
出るのだが……
屋敷外の倉庫などに貯蓄している食料を移動させるぐらいしかやることがない。
だから温泉調査隊で出かけた時に持ち帰った保温石で温室っぽい小屋を作ったら……
ザブトンの子供たちに占領された。
目的は保温石の有効利用なので構わない。
俺は本命のコタツにチャレンジ。
保温石を利用したコタツ。
火鉢ではないので安全に暖かい。
……
俺よりもクロとユキが潜り込んでいる時間が長い気がする。
頭を出してまったりしている姿は、野生を感じさせない。
離れて順番待ちをしている子供たちがいるが、クロたちは動く気がなさそうだ。
悲しそうな顔で俺を見ないでほしい。
クロの子供たち全員分のコタツとなると、置き場所も困るが保温石も布団も足りない。
二つぐらいで勘弁してもらう。
交代で使うように。
創造神様の像の神殿造りは、まだ行なっていない。
始祖さんが所用で別の場所に移動しているからだ。
まあ、なんだかんだで偉い人なので忙しいのだろう。
「村長。
今年も餅を作ります?」
鬼人族メイドの一人が聞いてきた。
手には餅米の入った袋があるから、 搗 ( つ ) く気満々だな。
「ああ。
そのつもりだ。
さっそくやるか?」
「はい」
鬼人族メイドが嬉しそうに返事すると、どこに居たのか後ろの方からドタドタとハイエルフやドワーフ、リザードマンたちが来て準備を始めた。
前回好評だった砂糖醤油、砂糖黄粉はすでに完成しており、小豆を茹でて善哉の準備も始めている。
餅搗きは、やはりパワーなのだろうか。
ミノタウロスの駐在員が搗いたのが一番美味い気がする。
比べて俺が搗いたのは……駄目だな。
消費者が多いので残らないのが救いだ。
「小さくして食べなさい。
詰まらせますよ」
「はーい」
ハクレンとウルザが仲良くしている。
ウルザが村に来た時、予定では俺の屋敷の鬼人族メイドのいる場所に部屋を用意するつもりだった。
しかし、本人の希望でハクレンの隣に部屋が用意された。
最近は何かと一緒にいることが多いみたいだ。
良い傾向だろう。
そして、ウルザの世話をするようになったからか、ハクレンが色々と家事をするようになっていた。
家事の腕はまだまだだが、悪いことじゃない。
頑張ってほしい。
冬、村で一番のんびりしているのはフラウと文官娘衆かもしれない。
ゴロゴロしている。
だが、誰も文句を言わない。
秋の収穫時期にかなり忙しく働いていたからだ。
主に収穫量の記録、消費計画の作成、そしてその実行。
消費計画は、販売、加工、贈答に関しての振り分けだ。
何をどれだけ、どうするかという事を考えてもらった。
そして、それを実行する。
酒関連でドノバンと、加工関連で獣人族のセナと、販売関連でマイケルさんと激しくやりあったようだ。
ご苦労様です。
なのでゴロゴロが許されている。
まあ、少しすればゴロゴロするのにも飽きて色々と動き出すとの信頼もあるからだ。
「暖かい部屋で食べるアイスクリームは格別ですね」
「ミカン、美味しい」
「……二……三……四っと。
くっ、財政危機で資金半減。
我が人生、苦難続き。
次は貴女の番ですよ」
「お風呂、面倒……着替えるの面倒……もう寝る……」
「ご飯もここに運んでくれないかなー」
……
早く動き出してほしいものだ。
ラスティはドースに呼ばれて不在。
前にドライムが来ていたのはドースが呼んでいることをラスティとハクレンに伝えるためだったらしい。
ちなみに、ハクレンはウルザの世話を理由に拒否。
大丈夫かと心配したが、問題ないらしい。
「大事な案件なら、弟をメッセンジャーにはしないわよー」
じゃあ、大事なら誰が来るのだろう?
「お父様が直接来て、話をするわ」
なるほど。
ブルガ、スティファノもラスティに同行。
冬場は実家で過ごすとのことだ。
実家はドースの巣の近く。
お土産をたくさん持たせた。
代わりではないだろうが、入れ替わるように村にやってきたのは魔王軍四天王のビーゼルとグラッツ。
ビーゼルはフラウと少し話をした後、一人でまったり。
魔王国の仕事が忙しかったのだろう。
解放された顔をしている。
グラッツはロナーナと初々しい感じ。
迷惑が掛からないので問題無し。
新居が必要になるのも秒読みだろうか。
焦らずに見守りたい。
俺は餅を食べ終えると、作業場に移動。
木を削って食器を作っていく。
まずは今年生まれた子供たち用。
次に成長したアルフレートやティゼル用。
そしてウルザ用。
……
来客用も作っていく。
無駄にデザインを凝ってしまった。
不器用ではないが器用でもない俺がここまで加工できるのは【万能農具】のお陰だ。
改めて感謝。
……
始祖さんとの神殿造りの前に、大樹の木の下にある社を新しくしてみようか。
いや、死の森の木は耐久性に優れているのか傷んでいるようには見えない。
逆に風格が出てきて良い感じになっている。
新しくするのは違うな。
それよりも……
創造神様の像が光り出し、夜に眩しかったので設置した遮光カーテンをしっかりした扉にするのはどうだろう。
そういえば、いつまで光っているのかな。
ありがたい感じはするが、横の農業神様が光ってないから目立つ。
どうせなら農業神様も光ってくれたら……いやいや、明るさ二倍は困るか。
……
農業神様を木ではなく、鉄とかで作ってみるのはどうだろうと考えたが、思い留まった。
素朴な方が、農業神様っぽくていいか。
とりあえず、思いついた扉を作ろう。
社の扉と言えば、観音開き。
仏壇でよく見る折り畳み式にはしないので、そう難しくはない。
完成。
……
社に持っていき、仮に設置。
問題なし。
ただ、扉が機能一点張りなのが気になる。
解りやすく言えば、のっぺらぼう。
……取り外し、作業場に持ち帰る。
扉の飾り……仏具などでは飾り鋲だな。
しかし、鉄は貴重。
無駄ではないが無駄遣いは避けたい。
となると……シンプルに彫るか。
デザインはどうしよう。
クロ、ザブトン、ドラゴン、始祖さんなどを考えたが……
やはり大樹だろう。
左右に分かれる扉の中央に大樹を描く。
うん、悪くない。
こうなると、裏側にも何か……扉を開けた時に見せる面になるし……
素直に花にしよう。
創造神様、農業神様に似合う花はなんだろう?
……
困った時は【万能農具】に任せる。
花のイメージで……
桜だった。
これは俺のイメージが強過ぎたかな。
だが、悪くはないだろう。
扉完成。
改めて社に持って行き、しっかりと設置。
開閉を試す。
問題なし。
社周辺を掃除し……綺麗だ。
鬼人族メイドたちの働きに感謝し、改めて社の神様に手を合わせる。
……
暖かくなっても光ったままなら、この像の前で宴会をするのも悪くないかもしれない。
花見宴会。
神様の前でも宴会をするのが日本人。
……宴会前に始祖さんに相談した方が良いかな?
「そんちょー」
ウルザが俺の所にやってきた。
「どうした?」
「ハクレンが怒るー。
たすけてー」
「ははは。
薄着で外に出たからだ。
風邪をひく前に戻るぞ」
「うん」
ウルザが俺に抱っこを求めてきたので、抱えてやる。
なかなか重い。
ウルザを追い掛けて毛布を持ってきたハクレンと共に、三人で屋敷に戻った。