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豚と新たな生活と爵位

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豚と新たな生活と爵位

「私も参加したかったぁ」

マイケルさんが、収穫祭に参加できなかった悔しさを晴らすように、フォークを振るっていた。

「新作料理も出たんですよね」

ははは。

たぶん、ブラッディバイパーの卵関係だろう。

好評で、あっと言う間に巨人族が持ってきてくれた百個は無くなってしまった。

「今度、仕入れたら送るよ」

「お願いします。

これはこれで絶品ですけどね」

マイケルさんが食べているのはカツ丼っぽいもの。

最近のマイケルさんのお気に入りだ。

個人的には丼物は箸で食べてほしいが、無理は言わない。

マイケルさんは食事を終えると、文官娘衆たちと今年の買い付けの話し合いを行う。

調味料が人気なので、もう少し欲しいそうだ。

その他、大量の買い付けをしてくれる。

ありがたい。

トリュフに凄い値段を提示しているが、大丈夫かな?

俺はマイケルさんと共に来た子豚たちをみる。

全部で二十頭。

村の新たな仲間だ。

マイケルさんに前々からお願いしていたのが、今回届いた。

ただし、これは牛や馬や鶏と違って、基本的に食用。

豚の美味しさは知っているが、飼育すると情が移って食用にできない俺への試練。

……

話し合いの結果、 一村 ( いちのむら ) で飼育してもらうことになった。

試練から逃げたんじゃない。

逃げたんじゃないぞ。

大樹の村は、クロ達やハイエルフたちの狩りによって肉は十分に確保できる。

それはクロたちが警備する他の村でも同じ。

だが、思うがままに狩っていて大丈夫なのだろうか?

森林資源と同じで、たくさん狩れるから大丈夫ではなく、ちゃんと将来のことも考えないといけない。

という考えで豚を頼んだのだ。

そして、最初の飼育は狩りによる肉の供給が厳しい一村が相応しいだろうとの結論。

一村でも、やれることを増やしたいと考えていたので丁度良かった。

クロの子供たちやザブトンの子供たちに、新しい仲間と紹介。

子豚たちのキラキラした目が、全てを悟った目になったけど……

飼育場所を柵で囲うことと、豚小屋の建設をハイエルフたちに頼む。

まずは頭数を増やすことを中心に。

増えたら、 二村 ( にのむら ) 、 三村 ( さんのむら ) でも飼育してもらおう。

新しい移住者のガルフ一家は、大樹の村の居住エリアに家を建てた。

ガットの家の傍なので、ハウリン村での揉め事がガットの奥さんに何かあるかと思ったが……

仲良くやっているようだ。

良かった。

ガルフの息子は、心に決めた相手をハウリン村に残しているが、いずれはここに呼びたいとのこと。

それは嬉しい。

いずれここを出てハウリン村に帰る手もあるからな。

しかし、向こうの両親の説得が難航しているようだが……

結婚は歓迎されている?

大樹の村で住むことも問題じゃない?

どういうことだ?

……

向こうの両親も、大樹の村に住みたいけど村長が許可を出してない。

あ、お父さんが採掘現場のリーダーの一人というか、総責任者みたいな人なのね。

引き止められていると。

なるほど。

それで、娘が一人だけ先に行くのは抵抗があると……

家事全般を担当しているから、娘だけ抜けると両親が生活できないと。

奥さんは?

ガットが村を出たから鍛冶現場の総責任者っぽい立場になってしまったと……

……

手伝えることは少ないが、何かあったら協力するから。

さて、ガルフ一家だが、獣人族なのでセナの下に入ることになる。

これも揉めるかなと思ったけど、ガルフがリーダーは無理だからと拒絶。

セナが継続することになった。

ガルフの娘は、セナよりも少し年下。

顔見知りでもあるし、こちらも揉めることなく受け入れられている。

彼女の方も、ここでの生活に馴染もうと前向きだ。

問題があったら早々に相談してほしい。

新しい移住者であるキアービット、スアルリウ、スアルコウの三人は、俺の屋敷の空いている部屋に住むことになった。

従者もいない一人暮らしは無理とのこと。

家事が駄目なのかと思ったけど、キアービットは料理できるしなんでも器用にこなすイメージ。

実際、屋敷に住んでも掃除洗濯も手伝っている。

家を遠慮したのかな?

いや、遠慮するなら居候ポジにはいないよな。

俺の屋敷での食事が目当てなのかな?

うん、そうみたいだ。

食事時には遅れずキッチリ揃っている。

スアルリウ、スアルコウの二人もだ。

美味しい美味しいと目を輝かせている。

双子でも好みの料理は違うんだな。

まあ、姿が似てるだけで別人格だし当然か。

いかんなぁ。

双子に変な幻想を持ってしまう。

なんにせよ、ここでの生活には馴染むのが早そうだ。

現状、スアルリウ、スアルコウの二人はグランマリア、クーデル、コローネの三人に加わり、ハーピー族を従えて上空警戒を主にしてもらっている。

グランマリアたちが少しでも楽になれば嬉しい。

……スアルリウ、スアルコウがボロボロなんだけど?

ルー、フローラ、治療治療。

低く飛び過ぎて飛び上がる魔獣に襲われたらしい。

大丈夫だったのかと思うと、クロの子供たちに助けられたとのこと。

クロの子供たちが数頭、僕達が助けましたと誇らしげな顔をしている。

俺はよくやったとクロの子供たちを撫でた。

マイケルさんの買い付けが終わった後ぐらいに、ビーゼルがやってくる。

今回は来るのが少し遅かったが、何かあったのだろうか?

「貴族のお付き合いというヤツです。

そういったのを免除される立場なのですが、全てを断るのは無理がありまして」

「大変だな」

「ええ。

それで、お付き合いの中、いくつか頼まれ物がありまして……少々、量が多いですが構いませんか?」

ははは。

俺は明言を避け、文官娘衆にパスした。

調味料が人気だな。

あと、酒……今回は指定が細かいと思ったら、同じ四天王のホウからの頼まれ物らしい。

他に魔王やユーリ、ランダン、グラッツからの頼まれ物。

あ、グラッツからロナーナに手紙ね。

届けておこう。

一部、予定量よりは少なかったが満足する程度には購入できたビーゼルと、新たなケンタウロスたちの移住に関して話をする。

現在、四十一名がこちらに移住を希望している。

前に聞いた数より、かなり多くなっている。

とりあえず、三村のグルーワルドと世話役のラッシャーシを呼んで話を聞く。

ビーゼルに聞くと、知り合いが居るという理由以外に、どうも冬に向けての口減らしの意味があるらしい。

戦場からの避難でケンタウロス族は他の街や村に移動しているが……

身体のサイズが普通より大きいから家も流用できないし、同種以外とは子作りもできない。

それでも忙しい夏や秋はなんとかなっても、消費が増える冬になると避難先からすれば、申し訳ないがお荷物ということだ。

これまで労働力として使っていて、勝手なとは思うが……身一つで来たケンタウロスたちを受け入れただけでも凄いとのこと。

そんなものか。

とりあえず、移住希望者たちも立場は理解しているので、こちらの条件に基本的には従う姿勢を見せている。

こちらの条件とは、村のルールに従うことと、種族の代表はグルーワルドということ。

ただ、問題が一点。

一人、爵位持ちがいるのだ。

男爵らしいが、魔王国のしっかりとした貴族。

グルーワルドは子爵家筆頭従士の縁者。

簡単に言えば庶民。

男爵本人は従うと言っていても、将来的にどうなるのか。

なら貴族であることを辞めるのはどうかという話は、却下された。

色々と言われたが、ラッシャーシが簡単にまとめてくれると……

戦場になっている場所を取り戻す大義名分的な爵位なので今は無理。

面倒なことだ。

ちなみに、その爵位持ちは十歳の女の子。

その子だけ受け入れないとか無理だな。

となるとー……

翌日。

「子爵で良いのか?」

「男爵の上なら」

「うむ。

では……ごほん。

グルーワルド=ラビー=コール。

貴殿はこれより魔王国の子爵だ。

励むように」

魔王が普段は見せない威厳を見せ、グルーワルドを貴族にした。

「こっちで提案しておいてなんだが、こんなに簡単に貴族になれるのか?」

「普通は無理です」

俺の疑問に、ラッシャーシが答えてくれる。

「あと、貴族になると義務が発生しますが……全て免除とかありえません」

その代わり、貴族の権利の大半も放棄している。

知らなかったけど、貴族って国からお給料みたいなのが出てるらしい。

それは遠慮した。

必要なのは男爵を抑える立場。

「わざわざ来てもらって悪かった」

俺は仕事を終えたとくつろぐ魔王とビーゼルに、お茶を運ぶ。

さっきの叙爵は、俺の屋敷のホールで行われてたりする。

「ははは。

まあ、村長からの頼みだ。

気にするな」

俺としては書類上の立場で良かったのだが、そういうワケにはいかないらしい。

「改めて言っておくが、こちらとしてはコール子爵を使って何かをすることはない。

本当に名前だけだ」

「わかっている」

ややこしいのはこちらも遠慮したい。

「その辺り、面倒そうなのにもちゃんと説明しておくように」

「面倒そう?」

俺の疑問に魔王が指を差した方をみる。

そこにはドースと始祖さんがいた。

説明しておいた。

ところで……

ホールでいまだに固まっているグルーワルドは大丈夫か?

なんかブツブツ言ってるけど……

「推察するに……子爵になってしまったことで、自分の中の価値観が崩壊しそうになっているのを食い止めている感じでしょうか」

ラッシャーシに任せた。

「私もそれなりにヒビが入っているのですけど。価値観に」

新しいケンタウロスの移住は、もう少し後。

現在、手の空いたハイエルフたちが三村で新しい家を建てている。

ドースは俺に会いに来たとの建前で、ハクレンの様子見に。

ライメイレンに怒られるぞと思ったら、ライメイレンもここに向かっているらしい。

簡単に言えば、そろそろ出産の時期だからだ。

近々にドライムが悪魔族を何人か連れて出産の準備をするらしい。

よろしくお願いします。

始祖さんは、素直に温泉に入りに来ただけ。

温泉地に宿泊施設が無いので、泊まりは俺の屋敷。

転移魔法は便利だが、それなら家に帰ったら良いのではと思うが……

邪険にはしない。

あ、孫が見たいオーラを隠さないドースも温泉に連れていって。

出産前に変なプレッシャーは与えない。

魔王も同行する?

ビーゼルも?

じゃあ、俺も行こうかな……

温泉地で驚いた。

死霊騎士が三体に増えてる。

どうしたんだ?

普通に集まってきたから、管理を手伝わせている?

まあ、敵意が無いなら問題無いけど。

……

温泉地だからか、鎧の傷みが酷いな。

お前たちにも木製鎧を作ってやろう。

剣は相変わらずピカピカだな。

特殊加工か?

まあ、温泉の管理には役立たない……魔物退治に大活躍してるみたいだな。

山積みになった魔物の死骸を前に……そういえば、前にここでパニックカリブーを見つけた覚えが。

二匹目のドジョウはいなかった。

俺、ドース、始祖さん、魔王、そしてビーゼルと温泉に入り、のんびりする。

話題でブラッディバイパーの卵の話をしたら求められた。

マイケルさんからも言われているし、北のダンジョンの巨人族に追加を頼もう。