東のダンジョン調査隊の帰還
東のダンジョン調査隊の帰還
魔王やユーリ、ランダン、グラッツ、ホウからフラシアの生誕祝いが届けられた。
生誕祝いは、余程近くて親しい関係でない限り、本人が持っていかないのが魔王国の風習。
出産後でバタバタしている時の来客は迷惑を掛けるからだ。
良い風習なのだろう。
ビーゼルとしては孫娘を見せびらかしたかったようだが……
もう少し、落ち着いてからにしたい。
フラシアの育児は、ホリーを中心に鬼人族メイドが担当。
ハイエルフと文官娘衆の何人かが育児の見習いとして手伝ってくれている。
俺も何かしたいけど、育児よりは他にする事があるでしょうとの圧力に抗えない。
時々、抱っこさせてもらえる。
それで満足しよう。
中断していた仕事を再開。
まず、聖女からの要請の祭壇製作。
順番がおかしい?
おかしくない。
早く終わりそうなものから終わらせているだけです。
山エルフ達と協力して三日で完成。
持ち運びしやすい長方形の箱が展開する事で祭壇になる。
基礎部分は一日で終わったけど、祭壇っぽい細工に二日掛けた。
なかなかの出来。
聖女はその祭壇に猫の像を置き、祈り始めた。
おおっ、なんか神々しい雰囲気。
その雰囲気に負けず、お供えのお酒を盗み飲みしている酒スライムに 和 ( なご ) む。
中断していたダンジョン造りを再開。
再開しておやっと思ったのはダンジョン内の気温。
前は少し寒かったが、今は程よい気温。
ドライムが設置した魔道具のお陰だそうだ。
あれはエアコンだったのか。
とりあえず、気温が一定なのはありがたい。
ダンジョンの一階層を広げ、モヤシ畑とアスパラ畑を作ってみた。
【万能農具】でモヤシを育てると、数日で収穫できる。
シャキシャキしてて美味しい。
もっと早く作れば良かった。
アスパラは暗所で育てると、白いアスパラに。
白いアスパラは子供達に評判。
大人達は緑の方が良いみたいだ。
俺はどっちも美味しくいただく。
ただ、アスパラを使った料理をそれほど知らない。
アスパラのベーコン巻きぐらいか?
後はサラダに入れるぐらいだな。
まあ、それでも十分か。
ダンジョンの一階層がほぼ完成、二階層に掛かった辺りで東のダンジョンに向かっていた調査隊が戻って来た。
「ご苦労様」
当初はハーピー族により日報を届けてもらう予定だった。
しかし、ハーピー族の速度では村まで数日掛かり、その間、飲まず食わずで飛びっぱなしなのを知って中止にした。
ハーピー族は数日の絶食は大丈夫らしいが、苦労して届けられた日報の中身が「問題なし」だと、さすがに可哀想になる。
なので、ハーピー族の連絡は緊急事態の時だけになった。
今日まで来ていないのだから、怪我人等はいないのだろう。
一安心だ。
ちなみに、ハーピー族は向こうでダンジョンの入り口周辺の警戒を担当してくれていた。
クロの子供達と共に、それなりの数の魔物を退治している。
とりあえず、外は寒い。
調査隊の荷物を回収し、室内に。
汚れを風呂で落としてもらう。
風呂上り後、調査隊の報告会を兼ねた宴会が始まる。
「無事の帰還を祝って」
俺は冒頭の挨拶だけ。
代表のキアービットの話では、東のダンジョンに会話できる種族がいたらしい。
ゴロック族。
全身が岩で出来た種族で、場所によってはストーンマンなどと呼ばれたりする。
岩の身体は硬く、また、砕かれても時間と共に再生するらしい。
それゆえ、防御力は高いが攻撃力はほぼゼロ。
それがダンジョンでどうやって暮らしているのかと思ったら、岩に擬態して身を隠し、コケなどを食べて生活しているそうだ。
失礼だが、知能が低そう……とか思ってしまったが、違うらしい。
彼らは高い知能を有し、主に詩の才能があるらしい。
……
「詩?」
「詩です」
「……えっと、岩とかに書いているのか?」
「いえ、全部覚えているそうです」
「そ、そうか……」
種族的趣味なのかな?
「ゴロック族とは友好関係を結べたと思います」
「連れて来なかったのか?」
「えーっと……」
「正直に」
「全員、ボロボロで……移動に耐えられる者がいなく……」
「ボロボロになった原因は?」
「私達です。
岩に擬態して近付く敵だと思いまして……」
「正直でよろしい。
後で彼らに謝罪の品を……彼らが喜びそうな物ってなんだ?」
「このまま静かに暮らさせて欲しいと言っていました」
「わかった。
東のダンジョンにめぼしい物はなかったんだな?」
「それが……」
あったらしい。
キアービットが合図をすると、調査隊に参加していたダガが一抱えの岩を持って来た。
白っぽい岩だな。
「村長、この岩をどうにかできますか?」
「ん?
どうにかって……砕いたりか?」
「はい」
「じゃあ……」
【万能農具】のクワで……それだと肥料にしてしまうな。
ノミで削ってやろう。
削り削り。
うん、ノってきた。
今回は宝石猫を彫ってやろう。
……
完成。
うん、即興で作ったにしてはなかなか。
「で、これがどうしたんだ?」
「……それ、 虹白銀 ( にじはくぎん ) の塊だったんですけど」
「虹白銀?」
「武器や防具に使いますけど……えーっと……いえ、なんでもないです。
さすが、村長」
キアービットはうな垂れた。
なんでも、俺がそれをどうにかできるかで賭けていたらしい。
「そんなに凄い岩なのか?」
「すごく硬い事で有名で、熟練の腕がないと加工できないと言われている貴重な鉱物です。
鍛冶師を目指した者なら一度は夢見ます」
俺の後ろにいたのは、村の鍛冶師であるガット。
えーっと……つまり……
「削りカスで構いません。
是非、私に」
「いや、別に彫った宝石猫ごと……」
あ、駄目だ。
本物の宝石猫が、像の前で鉄壁の構えをしている。
うん、わかった。
彫った宝石猫は大事にしよう。
「削りカスを渡すのは構わないが……
ダガ、虹白銀はこれだけなのか?」
「まだいくつか持って帰ってきてます。
東のダンジョンの奥に鉱脈があるみたいでした」
「だそうだ」
ガットが小躍りしていた。
加工に熟練の腕がいるんだろ?
そっちは大丈夫なのかな?
大丈夫だろう。
あ、ルーが来た。
虹白銀も魔道具の材料になるのかな。
わかった。
どうぞ。
虹白銀の宝石猫の像は、屋敷の広間の梁の上に設置しようと思ったが、落下したら危ないからと床の上に変更。
よく見ないとわからない場所になったが、お洒落かもしれない。
時々、通り掛かった猫がその像を見てビクッとしていたりする。
……
猫が可哀想だから、普段は布をかけておくか。
「ところで村長。
質問、いいですか?」
「ガルフか、どうした?」
「ダンジョン探索に行って帰ってきたら、村にダンジョンがあるんですけど?」
「あれはまだ製作中だぞ」
「考えていたダンジョンの仕掛けがあります。
聞いてもらえますか?」
「……聞かせてもらおう」
男の子はダンジョンが好きだ。
虹白銀=ミスリルっぽい物と思ってください。