エビ養殖
エビ養殖
五村 ( ごのむら ) の応援にいっていたダガたちが戻ってきた。
行ってから二十日ぐらいか?
十五日ぐらいで連絡があり、ハクレンが迎えに行ったのだが……
ガルフの姿が見えない。
ガルフはどうした?
シャシャートの街に連れて行かれた?
武闘会の特別審査員として?
断れなかったんだろうな。
ん?
ああ、怒ったりしないさ。
逆に頑張って欲しい。
どうも、この村は一般常識が薄いみたいだからな。
俺は自覚あるけど、他の面々がどうも怪しい。
本来なら外との接触は控えるべきなのだろうけど、ガルフに関しては推奨したい。
頑張って、村の一般常識担当に。
……
あれ?
ガルフって、シャシャートの街で武神とか言われてたっけ?
ダガたちはお土産を持っていた。
「川で獲れたエビです。
向こうで行動を一緒にしていた冒険者たちが譲ってくれました」
そう言って見せてくれたのが、小さな 甕 ( かめ ) の中に水と共に入っているエビ。
川エビにしてはでかい。
三十センチクラスだ。
元気に動いているが一匹だけ?
あ、他にも似たような甕があるな。
全部、そうなのか?
そして、美味いのか?
「かなり美味いです。
ただ、すぐ食べるのではなく、数を増やしてからのほうが……」
「数を増やすって……養殖か?」
「はい。
比較的簡単に育てられると。
川でなくても池でも大丈夫だそうです。
ただ、ある程度綺麗でないと駄目だと」
エサはなんでも良いらしい。
問題は、場所だな。
池でもいいのか。
まあ、村の近くの川には凶暴な魚がいるからな。
そこに放しても、すぐに食べられてしまいそうだ。
となると……
ため池で育ててみるか?
いや、ため池は大事な水源。
第一、あそこは広いし深いから養殖で増やしたエビを捕まえるのも大変だ。
エビの養殖用に専用の浅い池を作ったほうがいいか。
どこに作ろうか?
おっと、焦らない。
まずは疲れを癒してくれ。
あと、エビを……ずっと 甕 ( かめ ) の中だと弱るだろ。
とりあえず、簡易な池をぱっと掘るから。
あー……共食いの心配は?
その心配があるから、わざわざ一匹ずつ 甕 ( かめ ) に入れているんだろ?
あ、エサさえちゃんと与えていれば大丈夫なのね。
了解。
俺は居住エリアの北側、ため池近くに五メートル四方の池を掘った。
深さは三十センチぐらいだから、すぐに完成。
もちろん【万能農具】のおかげ。
水をため池から引きつつ……知らない人が入らないように、丸太を横にして柵を作る。
うん、良い感じ。
そこにエビを放流し……結構な数がいるな。
冒険者たちが頑張ってくれたのか。
それは嬉しいが……ちゃんと雄と雌がいるよな?
片方だけってことはないよな?
雄雌の区別が付かないんだが……
祈ろう。
本格的な養殖池は、村の西側に作ることになった。
村や道から少し離れた場所で、森を少し伐採することになる。
水はため池から。
スライムによる浄化で、水質に問題はないらしい。
問題はエサ。
なんでも食べるのだが、適量を与えないと残してしまい、それが水を汚す。
特にエサにしようと考えているのが、魔物や魔獣の内臓や肉の硬い部分。
水の中に長時間放置すれば、水が汚れるのは当然といえる。
……
スライムを一緒にいれたら、どうだろう?
スライムが食べられてしまう?
そうか。
なんでも食べるんだもんな。
馬鹿なことを考えた。
まあ、居住エリアに作った仮の池でエサの量を見ながら、本格的に養殖を始めていこう。
仮の池のほとりで、子猫が興奮していた。
あれは……ミエルか。
ミエルの正面にはエビが一匹。
ハサミを持ち上げ、威嚇している。
ああしているのをみると、エビというかザリガニっぽいな。
……
両者にらみ合い……体のサイズは、エビの方が大きい。
なのに、ミエルが果敢に飛び掛った。
だが、ミエルの爪がヒットする前に、エビが高速バック。
エビのいた場所にミエルが着水。
ミエルは慌てて池から脱出しようとするが、そこに襲い掛かるエビ。
バシャバシャと水しぶきをあげながらの戦いは……
はい、ストップ。
俺がミエルを池からすくい上げた。
獲物を失ったエビが俺にハサミを向けて威嚇する。
そう怒るな。
それとミエル。
無茶をするな。
ミエルが池に入ったから走ってきたが、俺がいなかったら危なかったぞ。
なに、負けてない?
勝ってた?
濡れて細くなった身体で言われてもな。
ほれ、ちゃんと拭いて。
夏だからって油断するなよ。
翌日。
仮の池のほとりに集結する子猫四匹。
その正面に、エビの群れ。
……
ミエルは懲りなかったか……
だが、さすがにあの数を相手だと、ミエルたちも撤退するだろ……え?
ミエルが魔法を使った。
火の魔法だ。
結構、大きい。
うおいっ!
他の三匹も同じように。
ちょ、駄目!
大事な養殖用のエビだから!
慌てる俺を無視して、エビも水弾みたいなのを撃って反撃し始めた。
ミエルたちの放った火の魔法を打ち消していく。
え、凄い。
だが待て。
それも魔法だよな?
そんなことができるのか?
危ないエビなんじゃないのか?
っていうか、このエビを養殖していいのか?
いや、そうじゃない。
まずは、そこで魔法対決などするんじゃない!
ここは居住エリアだぞ!
「あそこからなら大丈夫です」
「初級の魔法ですから、あの程度なら」
「元気ねー」
心配しているのは俺だけで、居住エリアに住んでいる獣人族、リザードマン、ハイエルフたちは特に気にした様子はなかった。
……
えーっと……
子猫たちが魔法を使うって知ってた人。
あー……
知らなかったのは俺だけね。
なるほど。
あと、リザードマン。
あれの養殖が本格的になったら任せる予定だけど……大丈夫か?
水の魔法を使うぞ?
俺はビックリしたけど……あ、知ってる?
大丈夫?
あれぐらい、平気。
そっか。
養殖用の池の柵を、頑丈にしよう。
そう心に決める俺だった。
あと、子猫たち。
エビに近付かないように!