冬の恋愛事情
冬の恋愛事情
子猫たちも大きくなったし、どこかから 雄 ( オス ) 猫を連れてこないといけないだろうか?
などと考えながら、俺は大樹のダンジョンでクワを振る。
冬場でも地下は関係無く、育つ作物は育つとわかったから。
これまでもダンジョン内に畑はあったけど、それを本格化。
正式にダンジョン畑と名付け、モヤシをメインに、ホワイトアスパラガス、キノコ類を育てている。
ただ、地上の畑と違って、ダンジョン内で生活するものは自由に食べて 良 ( よ ) しというルール。
モヤシは収穫サイクルが速く、また日持ちの問題もあるから食べられる人が食べた方がいいから。
幸いなことに、地竜がモヤシを好んで食べてくれる。
収穫が遅れ、育ち過ぎたり腐らせたりすることはない。
見た目や体格的には完全に肉食なのに、モヤシが好みって良いのか?
いや、喜んで食べてくれているなら構わないんだ。
もうちょっとダンジョン内のモヤシ畑を広くしておこうかな。
異変というか変事があった。
牧場エリアの古参、馬には奥さんがいて子供がいる。
子供もそこそこの年齢だ。
それに、毎年ではないが、それなりに生んでいる。
最年長の子供……すでに体格は大人なのだが、その子馬に見知らぬ別の馬が寄り添っていた。
牧場を管理している獣人族の娘が報告してきた。
「真っ白で綺麗な馬だな」
「そうですね」
「性別は?
雌 ( メス ) か?」
確か、馬の最年長の子供は 雄 ( オス ) だったはず。
「 雌 ( メス ) です。
なので素直に 番 ( つがい ) になったと考えるべきなのでしょうけど」
「何か問題が?」
「どこの馬かなと?」
「野生の馬なんじゃないのか?」
それはありませんとキッパリ言われた。
迷子札でも持っていたのだろうか?
いや、持っていたらどこの馬かわかるか。
その後、村の住人に聞いて回ったが誰も関わっていなかった。
獣人族の娘の本命だった、五村から誰かが連れて来た説は、ヨウコ、聖女の否定で崩れた。
アラクネのアラコや転移門の管理者であるアサ、フタが、馬は通っていないと言っているので、勝手に通ってきたこともないらしい。
俺の本命だったのはドースやドライム、もしくは始祖さんが連れて来て勝手に放った説だったのだが……それも本人たちに否定された。
しかし、馬の正体は判明した。
真っ白な馬を見たドライムが一言。
「あれは、ユニコーンだな」
「ユニコーンというと……角のある?」
雄 ( オス ) は角があるけど、 雌 ( メス ) は角がないから普通の馬と見分けが難しいらしい。
ドライムが見分けているのは、真っ白な馬の持つ魔力の形でだそうだ。
そうか、ユニコーンか。
俺が最初に言った、野生の馬というのが正解だったようだ。
獣人族の娘が謝っている。
ははは。
気にしないように。
正確に言えば、野生のユニコーンだからな。
しかし、ユニコーンって 雄 ( オス ) だけの種族じゃなかったのだろうか?
「それでどうやって子を生むんだ?」
ごもっとも。
ユニコーンには 雄 ( オス ) 雌 ( メス ) がちゃんといるし、ユニコーンの 雄 ( オス ) が穢れない乙女にだけ触れるというのは迷信らしい。
「ユニコーンの 雄 ( オス ) が、好色なのは事実だがな」
「そうなのか?」
「うむ。
ほれ、あそこに……」
角のある真っ白な馬が、うちの子馬を追い掛け回していた。
追い掛け回されている子馬は、馬の二頭目の子供……たしか、 雌 ( メス ) 。
つまり……
うおおいっ!
俺が飛び出そうとする前に、父親である馬がユニコーンにタックルした。
さすが!
その後、睨み合って……ユニコーンはチラチラと子馬を見ているな。
集中力がない。
そんな様子では馬に勝てまい。
ほら、余所見をしているユニコーンの顔面に、馬の後ろ足がめり込んだ。
……
大丈夫か?
死んでないか?
まあ、娘を追い回したのだから仕方がないといえる。
俺だって、ティゼルやフラシア、セッテ、ラナノーンを追い掛け回す男がいたら蹴る。
いや、耕すかもしれない。
俺は興奮している馬の背を撫で、なだめる。
そして……このダウンしているユニコーンはどうしよう?
ユニコーンの 雄 ( オス ) と 雌 ( メス ) がいるのだから、そっちでくっつけばいいのにと思ってしまうのだが……
兄妹かもしれない。
態度から、姉弟かな?
ユニコーンの 雌 ( メス ) と、長男子馬の方は、完全に合意。
……合意だよな?
ん?
長男子馬から告白してOKをもらったと。
よくやった。
ニンジンを食べるか?
キャベツの方が良い?
わかった。
キャベツをやろう。
仲良く食べるように。
問題はユニコーンの 雄 ( オス ) と、長女子馬の方だな。
長女子馬の方は完全に拒絶というか興味なし。
諦めろ。
え?
長女子馬が駄目なら、次女子馬でも構わない?
あー、同じ男として忠告しておくが、その態度はよろしくないぞ。
俺が父親馬の立場なら、その角を折ってる。
うん、えっとだな、俺が注意している最中だろ。
母親馬に目がいっているのはどういうことかな?
結論。
このユニコーン、駄目だ。
種の保存本能が強過ぎる。
個性か?
いや、ドライムはユニコーンの 雄 ( オス ) は好色と言っていた。
つまり、種としてこうなのだろう。
どうしたものか?
いや、他のユニコーンの 雄 ( オス ) はどうしているんだ?
「詳しくは知らないが、聞いた話では馬の牧場に潜り込んで勝手に種付けをして逃げているそうだ」
……
害獣かな?
「いやいや、ユニコーンに種付けされた馬の子は馬として生まれるのだが、丈夫な馬になるので牧場主は歓迎しているそうだ」
となると、馬の迷惑というか、馬の 雄 ( オス ) の敵だな。
あ、ひょっとして逃げてるのじゃなくて、馬の 雄 ( オス ) たちから追い出されるのかな?
ありえそうだが……
ともかくだ。
シャシャートの街の近くに牧場があったから、そこに案内するのが一番か?
それで良いか?
ん?
長女子馬、次女子馬よ、どうした?
牧場に行ったら、イケメンの 雄 ( オス ) 馬を連れて帰ってこいと。
わかった、努力しよう。
ということで、ユニコーンの 雌 ( メス ) は、このまま牧場エリアで滞在。
ユニコーンの 雄 ( オス ) はシャシャートの街の近くにある牧場に送ることになった。
俺としては春になってからでと思ったけど、ユニコーンの 雄 ( オス ) がここにいてもトラブルになるだけなので、冬だけど急いで輸送することに。
輸送隊を編成。
俺、ガルフ、獣人族の娘数人。
ユニコーンを輸送して、イケメンの 雄 ( オス ) 馬を連れ帰るだけなので少数で問題なし。
……わかった。
ハイエルフが五人追加された。
転移門のお陰でかなり楽だけど、往復に数日掛かるなぁと思っていたら、ユニコーンの足はメチャクチャ速かった。
五村からシャシャートの街まで、一時間?
なんだこりゃ?
って、俺だけ先行するのは駄目だって。
戻って戻って。
無事、ガルフたちと合流。
ガルフたちは俺とはぐれたと青ざめていた。
心配させてすまない。
シャシャートの街で、マルコスやポーラに挨拶。
マイケルさんに連絡をいれ、牧場に移動。
マイケルさんが直接案内してくれるそうだ。
ありがとう。
マイケルさん、ユニコーンに乗って大はしゃぎ。
……
順番待ちしているのはマイケルさんの長男、マーロン。
ユニコーンが牧場にいけば、いつでも乗れるだろ?
乗れる時に乗らないと、逃げる?
ああ、その対策なんだけど 雌 ( メス ) 馬だけのエリアを作ってだな……
なんだかんだで、ちょっとした小旅行だった。
マルコス、ポーラも元気そうで良かった。
ビッグルーフ・シャシャートは……あー、うん、凄かった。
凄くなっていた。
長女子馬、次女子馬のお相手は連れてきたけど……まだ様子見。
お互い、警戒して遠距離からチラチラみてる感じ。
そうだよな。
これが出来ないから、ユニコーンの 雄 ( オス ) は……
いや、俺も偉そうなことは言えないか。
屋敷に戻って思い出す。
子猫たちの相手を探すのを忘れていた。
……
まあ、また今度で良いか。
まだ子供のままでいて欲しいと思う俺は身勝手だろうか。
頭の上や膝の上に乗る子猫たちを撫でながら、そんなことを考えた。
雄と雌の字がどっちがどっちだ状態になったので、今回だけルビ付きです。
読みにくかったらすみません。