LNCrawler

顔を覚えてもらう

異世界のんびり農家 — ncode.syosetu.com · All chapters

顔を覚えてもらう

俺が 五村 ( ごのむら ) で不審者扱いされたのは、思ったより重く扱われた。

俺としては、鍋をつつきながらの夕食時の軽いトークのつもりだったのだが……

いやいや、顔見せパレードとかする気はないぞ。

銅像とかも必要ないからな。

変なことを考えず、鍋を食べよう。

海鮮鍋、美味しいなぁ。

……わかった。

もう少し、五村の行事に積極的に参加するから。

それで良いだろ?

頼むから本気トーンで話し合わないでくれ。

あと、俺を不審者扱いした門番は悪くないぞ。

職務に忠実だっただけで……あ、うん、そうだよな。

家の 主 ( あるじ ) に吠えかかる番犬は不要だよな。

クロたちはそんなこと、しないもんな。

……

昔、寝ぼけたクロの子供に吠えられたことがあるけど、黙っていよう。

ややこしくなるから。

とりあえず、五村に行って顔を見せることとなった。

少なくとも、ヨウコ屋敷で働く者には面通しをするようにと。

はい、サボッていた俺が悪いんです。

できるだけ、接触しないようにしていた態度も改めます。

だからって、この服装は必要ないんじゃないかな?

ザブトンに作ってもらった中で、一番派手なヤツだよな?

どこの王侯貴族だってぐらい、ビラビラとか刺繍がいっぱいあるやつ。

これを着て、村長ですって挨拶するの?

おかしくない?

え?

派手さが足りない?

……

わかった。

これで諦めるから。

旗指物とかは勘弁して。

ザブトンが寝ていてよかった。

起きていたら、喜んで派手な服を作っただろう。

なぜかザブトンは俺に派手な服を着せたがるからな。

十日間、五村で昼食を食べた。

一日目、二日目はヨウコ屋敷で、そこで働く者たちと。

ヨウコは参加する必要ないよな?

朝晩、顔を合わせているだろ?

聖女のセレスも参加と。

別に構わないけどな。

三日目は村議会場で。

マーキュリー種の三人と昼食をとって帰るつもりだったのだけど、なぜか会議に参加することになった。

うん、あの席に座らされた。

でもって会議の内容が、明日以降の俺の食事場所の話し合い。

大人が何人も顔をつき合わせてする話だろうか?

四日目、村議会場の一室で、名前の長い先代四天王の一人と、同じく先代四天王のパルアネンと昼食。

いや、二人は俺の顔、知ってるだろ?

よくわからないけど、秩序があるのね。

わかった。

で、二人の顔が腫れているのは?

どちらの家で昼食にするか決める為、二人で殴り合った結果と。

……

なにをやっているのか。

村議会場で食べている現状を考えるに、引き分けだったのだろうなぁ。

五日目以降は、五村の冒険者詰め所、 麓 ( ふもと ) の交易所、宿屋などの施設を見学しつつ、食堂などで食事。

一人なら気楽だったのだけど、俺の他にヨウコ、セレス、マーキュリー種の三人、先代四天王の二人が同行。

他に護衛として大樹の村から一緒に来たガルフ、ダガ。

五村からはピリカと、ピリカの弟子が十人ほど。

……

それなりの集団になっていて、大変だった。

俺の顔見せが目的なので、立場を明確にする為と同行した者は俺を最上位として扱ってくれる。

ありがたいのだが、恥ずかしい。

あと、目の前にいるのに他の人を通して話をする意味ってあるのかな?

ああ、そんなにガチガチにならないで。

えーっと、五村の南エリア代表者だったよな。

雰囲気に呑まれるタイプなのだろうか。

自己紹介の時、噛み噛みだったから名前がよく聞こえなかった。

この後、一緒に昼食だけど、それまでにもう少し仲良くなれたらなと思う。

なんだかんだで忙しい十日間の昼だった。

毎回、終わった後に大樹の村に帰れてよかった。

ホッとする。

思い起こせば、教会の神官を五村に連れて行く前に、始祖さんとフーシュは俺の前に連れてきて挨拶させていた。

丁寧だなと思ったけど、あれは必要なことだったんだな。

おかげで、今回の日程に教会での昼食を入れずにすんだ。

……

立場だなんだがあるんだな。

わかった。

十一日目、教会で食事となった。

疲れた。

ちなみにだが、今回の五村の昼食で一番ニコニコしていたのは先代四天王の二人。

かなり張り切って、いろいろと手配してくれた。

お礼に、何かプレゼントでもした方が良いのだろうか?

お金は駄目だよな。

……

褒賞メダルでいいかな?

とりあえず、二人に三枚ずつ。

他にヨウコに三十枚預けて、今回の件で協力してくれた人に配ってもらう事にした。

褒賞メダルなら、色々と交換できるチケットみたいなものだ。

好きな物と交換してもらおう。

うん、交換リストは大樹の村と同じで。

え?

それは駄目?

五村専用の交換リストを用意していると、五村に来ていた文官娘衆の一人が指摘。

リストを見せてもらったが、大半は一緒だけど一部が削除されている。

「五村の規模で、村長の手作り品を求められても困るでしょう」

……確かに。

「それと、五村の住人全てに褒賞メダルを配るのは現実的ではありません。

五村では通貨が流通していますしね」

なるほど。

褒賞メダルは、通貨の代用品。

通貨が流通している場所では不要か。

その辺りは、次の会議で話し合う予定だったと文官娘衆の言葉。

確かに大事な問題だな。

えーっと、五村の者に褒賞メダルを渡すのは良いのか?

大丈夫?

よかった。

じゃあ、そんな感じで。

褒賞メダルを受け取った先代四天王二人が、思いっきり感謝を表してくれた。

えっと、……失礼だけど二人の忠誠心の向く先は魔王だよな?

その態度、大丈夫か?

俺、魔王から恨まれたくないぞ。

余談だが、門番から不審者扱いはされなくなった。

ただ、普段の服だと一瞬、止められそうになる。

うーん。

服装って大事だな。