十三年目の春
十三年目の春
春が来た。
目を覚ましたザブトンと挨拶。
変わりがないようでなにより。
おや?
その手に持っている、派手な服はなにかな?
明らかに、自重してない派手さだよな?
王様とかが重要な儀式で着るみたいな服だぞ。
キラキラと宝石みたいなのも一杯ついてるし。
これは……ああ、ザブトンの子供たちが集めたのか。
凄いなぁ。
ははは。
……
これはあれか。
ザブトンが寝ている間に、派手な服を着て 五村 ( ごのむら ) に行った件の埋め合わせをして欲しいと。
しかしだ、別に他の人の作った服を着たわけじゃないぞ。
ちゃんとザブトンの作った服を着て行ったんだからな。
……
わかった。
着よう。
今日一日だけだぞ。
だから、そんな目でみないでくれ。
俺の気持ちとは真逆に、村の住人たちからの評判は良かった。
なぜだ。
これが普通なのか?
え?
なにこれ?
短い杖?
持てと?
持つけど……なぜ歓声があがる。
これってドースが持ってきた杖だよな。
なんの効果もない普通の杖だって聞いているが?
……マントもつけろと。
もう好きにしてくれ。
だけど、今日だけだからな。
わかった。
村中を自分で歩くから。
神輿みたいなので担ぐのは止めて。
アルフレートも俺と似た様な格好をさせられていた。
俺と違って、誇らしげだ。
横にいるウルザやナートに褒められたからかな?
ははは。
似合っているぞ。
まるでどこかの王子様みたいじゃないか。
並んで歩けばいいんだな。
わかったわかった。
しかし、村の住人全員で、村のあちこちを移動する意味ってあるのかな?
春になったとはいえ、まだ寒さも残っているのだから注意するように。
一村 ( いちのむら ) 、 二村 ( にのむら ) 、 三村 ( さんのむら ) から住人が急いで集まってきた。
なんだ?
そんなに俺のこの格好が見たかったのか?
四村 ( よんのむら ) からも。
遅れたことを謝る必要はないぞ。
場所が場所だからな。
大樹のダンジョンからも、アラクネのアラコや地竜、ラミア族や巨人族が出てきた。
わざわざ出て来なくても……
なぜかそのまま宴会になり、一日が潰れた。
なんだったのだろう。
みんなが楽しそうなので良かったが……
習慣化しないことを祈りたい。
しかし、見そびれたと悶えている面々がいるからどうなるか。
始祖さんやドースは無視するとしても、クロの子供たちで各村を警備していて参加できなかった者たちにはなんとかしてあげたい。
してあげたいが、あの服をもう一回着るのは……まだ心の整理が終わってない。
コスプレと思えばいいのだろうけど、俺とアルフレートだけコスプレというのは恥ずかしい。
わかった。
来年な。
でもって、その時は全員で着飾ろう。
うん、それなら俺の恥ずかしさも減る。
ティゼルやウルザも着たそうだったしな。
……
来年の話だからな。
文官娘衆がゴロウン商会に生地を大量発注する準備をしているので、少し焦る。
まさか、一年掛けて準備するのか?
予算は村から出すけど……
わかった。
頑張ってくれ。
一年の最初から疲れたが、やる事はやらないといけない。
ちょうど各村の代表も来ていることだし、そのまま集まってもらう。
メインは、村の方針と褒賞メダルの分配。
なのだが、メインはクレームだった。
「今回のようなことをする際は、事前に連絡をお願いします」
すみません。
「連絡が遅ければ、我々は参加できないところでした」
ごめんなさい。
「料理をするにも準備が必要なのですが」
本当に申し訳ない。
「温泉地の死霊騎士とライオンさんの一家からクレームの手紙を頂いております。
読み上げます」
はい、拝聴します。
どうしてこうなったのだろう?
俺が一日だけと言ったからかな?
話し合いもキッチリする。
村の方針に関しては、冬の間に会議を何回かやっているので問題ない。
「各村の収穫量を安定させる事と、備蓄の増加。
それと火の用心」
収穫量に関しては、各村共に大きな問題はない。
現状維持か、上を目指して欲しいところだ。
備蓄の増加に関しては、万が一を考えて各村だけである程度の生活できるようにすること。
食料だけでなく、燃料や衣服なども。
これは、次の火の用心が絡んでいる。
冬の間に、三村で小火騒ぎがあった。
子供が火を不用意に扱ったことが原因。
幸いなことに怪我人はなく、家も燃えなかったが、室内に置かれていた藁や衣類がいくつか燃えた。
すぐに鎮火できたが、ヒヤリとする出来事だ。
用心して欲しい。
ああ、グルーワルド。
そう何度も謝らなくても。
鎮火後、グルーワルドは俺にだけでなく各村を回って報告と謝罪をしていた。
責任感が強いのはわかるが、思いつめなくていいからな。
子供も火遊びをしたワケではないし、事故のようなものだ。
叱るのは大事だが、罰を与えすぎないように。
ケンタウロス族の世話役のラッシャーシも、気にし過ぎないように。
お前がその場にいたわけでもないのだから、どうしようもないだろう。
それよりも、火事に関しては最低限の対策しかしていないと再認識できたと喜ぼう。
燃えにくいらしいけど木製の家。
用心は大事。
なので、火を扱う場所の近くに防火用の水を入れた水槽や樽を設置。
わかってる。
魔法で水は出せると言いたいのだろう。
だが、子供だけで火を出した時のことを考えよう。
今回がそうだったろ?
水は腐るから定期的に交換しなければならないから仕事が増えるが、よろしくお願いする。
それに関連して先ほどの備蓄の話。
家が一軒、丸々燃えたと想定して、その一家が生活できる備蓄を村単位でしようと決めた。
現状、そうなったとしても大樹の村の備蓄でなんとかなるだろうけど、各村の心の余裕と自立心を考えてだ。
備蓄をする為に生活がカツカツになるのは望むところではないので、各村で加減するように。
努力目標であって、達成できなかったからと罰することはないぞ。
やりすぎないようにな。
次に褒賞メダル。
各自や各村に配るのだが、今回は五村の扱いをどうするかで悩んだ。
結論としては、五村の村長代行であるヨウコ、聖女のセレス、転移門管理者のフタ、マーキュリー種の三人、それと五村の統治に尽力してくれている先代四天王の二人に褒賞メダルを渡すことにした。
その他、五村の村長代行分として別に五十枚、ヨウコに渡す。
他の村より多いが、これは人口を考慮してのこと。
一村、二村、三村、四村の者たちには、五村の状況を説明して納得してもらった。
それと、温泉地の代表者としてアサが就任。
死霊騎士でも良かったのだが、コミュニケーション能力の問題。
判りやすいジェスチャーをしてくれるが、それでは色々と不便なのだろう。
当人たちも納得しているので問題なし。
その他、色々と話し合って……最後に。
ヨウコから。
「五村の収入、どうする?」
……
実は去年の税収だけで、それなりの額が納められている。
様々な経費を差し引いても、大幅な黒字だ。
「搾り取ってないよな?」
「詳しくは知らぬ。
ロクは魔王国の平均より安いと言っていたぞ」
人の数は力ということか。
「むう……そうだ。
フラウ。
その金って魔王領に納めなくていいのか?」
「納めなくていいそうです」
即答だ。
その辺りは五村建設時に話し合ったからな。
間違いないだろう。
それなら……
「五村の税なのだから、五村の為に使ってしまえ」
税とは、本来その為に集められるものだ。
ある程度はヨウコに任せる。
それに大幅な黒字とはいえ、大樹の村がゴロウン商会に預けている金額と比べると、微々たるものだ。
五村の議会で税の使用用途の報告と相談を忘れなければ、大きな問題にはならないだろう。
その辺り、ヨウコは意外とキッチリやっているので信用できる。
「承知した」
ヨウコの返事で、話し合いは終わった。
そのまま宴会に突入。
二日続けての宴会になってしまった。
まあ、いいか。
後日。
俺が着飾った宴会の話を聞いた南のダンジョンのラミア族と、北のダンジョンの巨人族から嘆きの使者が到着した。
「なぜ、誘ってくださらなかったのか……」
「見たかった」
来年の実行時には、必ず呼ぶことになった。