勝負という名のお祭り
勝負という名のお祭り
五村 ( ごのむら ) にあるヨウコ屋敷の正面にある大きなグラウンド。
そこに大勢の人が集まっていた。
賑やかで、活気がある。
笑顔もあった。
俺はそのグラウンドの片隅に設置された椅子に座っていた。
日差しを遮る屋根もあり快適なのだが……
この椅子の高さはなんだろう?
監視員かな?
遠くがよく見える。
その俺の横で、ヨウコが大々的に宣言した。
「皆の者。
待たせたな。
これより、鍛冶勝負を始める!
参加チームは前に出よ!」
ヨウコの宣言により、グラウンドの中央を空けるように人が移動する。
そして、そこに出てくる参加者たち。
勝負はチーム戦。
一人で鍛冶作業をするのは現実的じゃないらしい。
まず、最初に姿を見せたのがガットと弟子二人、そして見慣れない獣人族が二人の獣人族チーム。
見慣れない獣人族二人は、ガットがハウリン村から呼んだお手伝い。
五人で勝負に挑むらしい。
次にヨウコに斧を渡した、このイベントのきっかけを作ったドワーフの一団。
人数は……六人。
勝手に、斧ドワーフチームと俺が名付けた。
そして、さらに続くドワーフだけのチームが三つ。
牢屋に入っていたドワーフが三つに分かれ、参加するようだ。
こっちは、牢屋ドワーフA、牢屋ドワーフB、牢屋ドワーフCチーム。
続く組もドワーフが多いが、魔族や人の姿も混じっている。
これは五村にいたドワーフを中心としたチームらしい。
これは五村チーム。
以上、六チームで行われる。
ヨウコはたっぷりと時間をとって見渡したあと、重々しくうなずく。
「では各チーム、望みを宣言せよ」
この鍛冶勝負。
優勝チームには望みが一つ、かなえられる。
もちろん、その望みは実現可能な範囲でだ。
優勝した後で無理や無茶を言われても困るので、最初に宣言してもらってチェックする。
ガットの獣人族チームが宣言する。
「望みはない。
ただ、そっちのドワーフ。
俺達が勝ったら、腕が足りないとは言わせないぞ」
ガットは斧ドワーフチームを睨む。
対して、斧ドワーフチーム。
「ワシらのチームの望みは、魔鉄粉を安価で譲ってもらいたい。
そこの獣人族の鍛冶師より、優れた武器にしてやろう」
睨み合う、獣人族チームと、斧ドワーフチーム。
それを無視して牢屋ドワーフA、B、C。
「「「恩赦を!」」」
五村チーム。
「村議会の食堂、無料食べ放題」
ヨウコは頷き、問題ないと確認。
同時に、横にいたロクが紙に記録する。
「よろしい。
では……」
ヨウコが俺にふってきた。
事前に言う事は指示されているが、緊張はする。
「今回、作ってもらうのは 剣鉈 ( けんなた ) 。
刃渡りは自由。
では、勝負開始!」
大きな歓声が上がった。
そして、各チームが五村の 麓 ( ふもと ) の鍛冶場に向かう。
この勝負の為に、建設された鍛冶場だ。
各チームに一箇所、全六ヶ所。
全てが同じ作り。
そして、素材置き場には大量の素材を用意している。
目利きは自分でやらないといけないということだ。
頑張って欲しい。
さて。
俺は椅子に座ったまま、各チームが去った後のグラウンドをみる。
周囲には観客。
その視線が俺に集まっている。
わかっている。
「では、これより 五村 ( ごのむら ) 祭 ( さい ) を始める」
俺の宣言で、先ほどよりも大きな歓声が上がった。
五村祭。
ヨウコと聖女のセレスが前々から計画していた五村でのお祭り。
ガットとドワーフたちの勝負をする場を用意するついでにと、実行された。
五村住人の興味は、鍛冶勝負よりもお祭りの方が強いみたいだ。
グラウンド周辺や、大通りに設置されたお店から流れてくる様々な食べ物の匂い。
鍛冶勝負の準備に十日かかったが、同時にお祭りの準備をしていた。
十日あれば、近隣の街や村からも人が来る。
お客だけでなく、商売人も。
特にゴロウン商会のマイケルさんが熱心だった。
何店も出店している。
大樹の村からも、鬼人族メイド数人で参加している。
普段と違い、代金を取るので会計で少し手間取っているが人気は凄い。
持ち込んだキャンピング馬車が目立っているのかな?
食事だけでなく見世物、音楽、簡単な競技など、賑やかだ。
このお祭りは一週間、続く。
長いと思うが、鍛冶勝負が一週間に渡って行われる長丁場だからだ。
それに合わせたとヨウコは言っているが、元からそれぐらいの期間を想定していたっぽい。
俺の公式の参加は最初と最後だけなので、気は楽だが……
まあ、五村のことはヨウコに任せている。
俺は椅子から降りて、お祭りを……あ、護衛は付くのね?
お祭りを楽しんだ。
三日後。
斧ドワーフの一人が、ヨウコに面会を求めた。
「村長代行殿。
勝負の場を整えてくれたことには感謝するのだが……その」
「なにか問題でも?」
「あまりにも、ワシらの勝負がないがしろではないか?」
「十分に興味を持っているが?
食事や酒だって、ちゃんと差し入れているだろ?」
「それには感謝しているが……その、注目が足りん」
「そう言われても困る。
鍛冶場に見物客を入れてもいいのか?」
「危ない、駄目だ」
「一時間で一本とか打てるか?」
「やろうと思えばできるが、早仕事は 碌 ( ろく ) な結果にならん」
「であろう。
鍛冶勝負は客を呼べるようなものではないのだ。
そう怒るな」
「しかしだな」
「望みはなんだ?」
「ん?」
「我に何か頼みたい事があるのだろ?」
「……勝負の結果に関わらず、あの変形する馬車の仕組みが知りたい。
あれは見事だ」
「それだけか?」
「あと、あそこで提供されている料理と酒を。
列が長すぎて、並んでられん。
こっちは鍛冶勝負の最中なのだぞ」
「わかったわかった。
手配しておこう。
ちなみに、この酒がそこの酒だが……飲んでいくか?」
「すまぬ。
頂こう」