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夏の暑い日

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夏の暑い日

リアが五村に出張している。

理由は、友好関係を結んだエルフの集落から、人質を自称する若い男女のエルフが集まってきたからだ。

大体、二百人を少し超えるぐらい。

俺は人質なんか要らないだろうと思ったが、ヨウコは必要と判断した。

受け入れない選択肢なんてないと言われた。

彼らは各村から提供された労働力。

五村としては、彼らを受け入れ、丁重に扱うことで各集落を大事にしている姿勢をみせる必要があるらしい。

……

統治者って大変だな。

「いや、村長も似たような事をやっているだろう」

え?

……

ああ、ミノタウロス族とケンタウロス族の駐在員。

なるほど、あれと一緒かと納得。

二百人を超えるエルフたちは、樹王と弓王の指揮下で行動することになった。

本来なら、五村の武官代表であるヒーの指揮下になるべきなのだろうけど、直臣扱いはちょっとと待ったが掛かった。

待ったを掛けたのは樹王と弓王。

エルフの各集落も、大小の差があり、上下がある。

それらを無視して全てを同列に扱うのは問題とのことだ。

それに、エルフの性格上、他の種族の者と一緒に行動させるのは厳しい。

少数のエルフ同士で組ませた独立活動が望ましい。

樹王と弓王の二人が、自分たちの配下としてまとめさせて欲しいと提案してきた。

これに反発したのが、人質としてやってきた二百人を超えるエルフたち。

「お主らが私たちの上に立ちたいだけじゃないのか」

各集落を代表して来ているだけあって、なかなか血気盛ん。

「舐めるなっ!

すでに上に立っている!」

樹王と弓王も負けていない。

揉めた。

揉めに揉めた。

殴り合いにはならなかったが、醜い罵倒が飛び交った。

運悪く、その場に俺がいた。

エルフたちを出迎えて欲しいと要請があったからな。

護衛にリアを含めたハイエルフが数人いた。

リアたちは、その、なんだ。

真っ直ぐだ。

丁寧に一人ずつ、殴って黙らせた。

樹王と弓王も殴られ、黙らされた。

「村長。

ご指示を」

え?

あ、ああ……えっと、当面は同じ種族同士でまとまっていた方がやりやすいだろう。

という事で、樹王と弓王の提案を採用。

二百人を超えるエルフたちは、樹王と弓王の指揮下に入った。

「先ほどの舐めた態度は許せません。

村長の為、五村の為に笑顔で死ねるように鍛えてあげましょう」

そして、リアを教官とした訓練が開始されること。

急にどうしたと思ったが、リアがこっそりと俺に教えてくれた。

同じ訓練をさせる事で、連帯感を生み、協調性を高めると。

なるほど。

樹王、弓王の二人も参加するようだ。

リアが五村に出張に行って今日で五日目。

報告では問題なしとなっている。

本当に問題はないのだろうか?

リアの教育の様子を見たピリカの弟子たちが、自分たちの鍛え方が甘かったと反省しているようだが?

助けてとエルフ文字で書かれたメッセージを各所で見かけたとの報告も受けているのだが……

……

好んで藪を 突 ( つつ ) く趣味はない。

リアを信じよう。

暑くなってきたので、プールが大人気だ。

しかし、なんだかんだとプールに入るのは時間に余裕がないと厳しい。

いくつかの仕事を抱えていた俺は、プールではなく屋敷で書類仕事だった。

涼しい風を出す装置があるので快適なのだが……

何かちょっと違う。

俺は涼しい風を出す装置を停止し、窓を開放。

机の下に大きな木製タライを置いて、水を注ぐ。

そして靴を脱いで裾をまくり、自分の足をつっこむ。

うん、ほどよい感じ。

キンキンに冷えた水ではないが、これでも十分涼しい。

そしてこっちの方が風情がある。

……

酒スライムよ。

飛び込むのはよくない。

床が濡れると、アンが怒るんだ。

あと、俺のズボンも濡れたぞ。

狭いタライの中で泳がない。

ああ、もう。

書類には水を掛けるなよ。

三十分後、床はちゃんと拭いたのにアンに怒られた。

部屋中に水を張ったタライを置き、酒スライムやザブトンの子供と遊んでいたからだろうか。

素直にプールに行きなさいと言われてしまった。

猫というのは、構おうとすると逃げる。

なのに、こっちが忙しい時に構えとやってくる。

俺の偏見だろうか?

逆に犬……というかクロの子供たちは、構おうとすると全力で迎えてくれる。

だから中途半端に期待させるような態度をしてはいけない。

ガッカリする様子は、こっちの心が痛くなるから。

相手をする時は、しっかりと相手をする。

途中で浮気はよろしくない。

わかっている。

わかっているのだが……

クロの子供たちと遊んでいる時に限って、邪魔をしてくる子猫たち。

どうしたものか。

「室内で遊ぶからそうなるのです。

外で遊べば子猫たちはそれほど絡んできませんよ」

アンの回答。

うん、それが正解だと思う。

ただ、俺はまだ書類仕事中なんだ。

気分転換でクロの子供たちと遊んでいてだな……

「お仕事が 捗 ( はかど ) らないなら、私が見張りましょうか?」

ははは。

遠慮します。

とりあえず、アンは子猫たちを連れ出して……

言わなくても、子猫たちはアンにベッタリだな。

ちょっと嫉妬。

と、クロの子供たちが俺の前に。

ああ、俺にはお前たちがいるよな。

わかっている。

クロの子供たちを横にして腹をわしゃわしゃ。

クロの子供たちは足をパタパタ。

これ、止め時が難しいんだよな。