真・妖精女王
真・妖精女王
自分の子供は労働力。
遠慮なく使い倒せる。
子供への教育は欠片も考えない。
そんな時代に、一つの噂が流れた。
「子供を働かせると妖精が畑を荒らす」
実際に、子供に重労働させている畑は、不思議な方法で荒らされた。
畑に見張りを立てても無駄だから、当時の人々はかなり 恐 ( おそ ) れた。
だからなのか、今では子供の労働環境はかなり改善されている。
それでも時々、酷い扱いをする者がでる。
そんな者のところに現れては、いたずらを繰り返すのが妖精。
そう、始祖さんが俺に教えてくれた。
……
「俺、別に子供に重労働させていないが?」
「なんでもないところに現れて、イタズラする。
それも妖精の一面だ」
迷惑な存在だ。
しかし、始祖さんがそんな話をするのは、俺が妖精女王に畑へのイタズラを止めるように言ったからだろう。
あれはあれで意味があると。
なるほど。
「わかった。
俺の畑に手を出さないなら構わないと言っておくよ」
「すまないね。
ああ、言い方には細心の注意を頼むよ。
変な言い方をすると、君のところ以外の畑なら、何やっても良いとか思うから」
ははは。
妖精女王とは短い付き合いだが、俺もそう思う。
言い方には注意しよう。
俺は牧場エリアで、山羊たちと遊ぶ妖精女王をみる。
口にはサトウキビをくわえているな。
悪い顔だ。
んー……いつの間にか、山羊を統率している。
何気に凄いな。
あの山羊たち、俺の命令どころかお願いすら聞かないのに。
でもって、山羊に乗って……牛たちのいるエリアに突撃?
おいおい。
普段はのんびりしている牛だが、怒ると怖いんだぞ。
あ、牛たちの目の前で山羊たちが離反。
牛の前に妖精女王を突き出した。
そうだよな。
山羊たちはそうじゃなきゃ。
でもって妖精女王……逃げてる逃げてる。
牧場エリアに設置したアスレチックの上にまで逃げたな。
かなりビビッたようだ。
そこで牛たちを挑発している。
だが、牛はそこまで登るぞ。
あ、ほら、追い込まれた。
うん、俺に助けをもとめられても困る。
他の妖精たちは、おとなしいものだ。
花畑でまったりしている。
ある意味、幻想的な風景。
ただ、人の姿をした小さい妖精にお願いしたい。
花弁 ( はなびら ) の上で寝るならもう少しお淑やかな寝姿で。
子供たちが真似するから。
武闘会が近いので、村に来客が増えた。
ドース、ライメイレン、ギラル。
全員、妖精女王を見たあと、沈痛な表情をしてから見なかったことにした。
「知り合いなのか?」
「知らぬ仲ではないが、あやつとは話が噛み合わぬ」
ドースの苦労を感じさせる言葉。
昔、イタズラでもされたのだろうか?
されたらされたで放置はしないだろうな。
それでも生き残っている妖精女王ということだろうか?
考えてみると凄いな。
「妖精の女王は、子供の味方。
子供の相手をさせておけば一緒になって遊ぶのですが……夜中でも連れ出したりするので注意が必要ですよ」
ライメイレンが、ヒイチロウには近づけないようにと俺に注意する。
俺に注意されても困るな。
あと、夜中でも連れ出すのは確認している。
昼間でも眠そうにしているウルザをみてピンときたハクレンが、現場を押さえた。
妖精女王には、二日ほど熱湯のお風呂に入ってもらった。
「あれはなんだかんだで強いからな。
頭もいい。
俺も二度ほど酷い目に遭わされた」
ギラルの言葉が、誰を示しているのかわからなかった。
それが妖精女王と理解して、驚く。
妖精女王が強い?
頭がいい?
……
ひょっとして、今までの態度は擬態なのか?
「いや、あれはあれで妖精の女王の姿だ。
どう言えばいいのかな」
ギラルが困っていると、ライメイレンが助けを出した。
「実際に見てみるのが早いと」
ライメイレンが妖精女王に頼んだ。
妖精女王は地面から大きな 蔓 ( つる ) を何本も召喚し、それに包まれた。
そして何本もの蔓で球を作り、開かれる。
中は……寝室?
いや、玉座かな?
そこに妖精女王が座っていた。
姿は少し成長したか?
雰囲気は明確に違う。
「人よ。
私に聞きたいことでもあるのか?」
……
誰だこれ?
妖精女王?
いや、確かに女王っぽいけど……二重人格?
「どうした?
呆 ( ほう ) けておっては、なにも答えられんぞ」
「えっと、じゃあ……どうして牛に突撃を?」
「その方が面白そうだったから。
なのにあの山羊どもめ。
私に忠誠を誓っておきながら、あそこで裏切るとは。
許さん」
……
うん、同一人物だ。
なっとく。
で、これがギラルがいう強い状態の妖精女王?
「どうして普段からこの姿でいないんだ?」
「この姿は子供受けが悪い。
動物たちも嫌うからな。
そうだ、思い出したぞ村長。
前に作ってくれたパンケーキとやらをもう一度、食べたい」
妖精女王は俺が返事をする前に蔓の玉座から出てきた。
あ、縮んだ。
雰囲気も元通り。
蔓の玉座の中でだけ強いのか?
俺の疑問にはギラルが答えてくれた。
「あれは蔓を伸ばし自分の縄張りを作る。
そこでなら常にあの姿だ。
こちらのブレスでも消滅しない面倒な存在だぞ。
前に一度、やりあったが、もうやりたくない」
ギラルにそんなことを言わせるとは。
やるな妖精女王。
「こちらの攻撃を全て受け流しながら、延々と甘味の良さを訴えてくるのだ。
頭がおかしくなる」
……
うん、妖精女王だな。
「村長、パンケーキ」
俺にねだるのも妖精女王。
……
これは作るまで言い続けるな。
まあ、いいだろう。
「わかった。
今日のオヤツはパンケーキにしよう」
妖精女王はやったと喜びながら、子供たちの元に走っていった。
ウルザやアルフレートに伝え、俺が前言を撤回しないようにする為だろう。
なるほど、賢い。
ところでだ。
この妖精女王の召喚した蔓はどうしたものか?
結構な大きさで残っているが……
ルー、ティア、フローラが喜んで切り刻み、持ち帰った。
貴重な魔法の薬になるらしい。
妖精女王、歩く薬草に思えるな。
遅くなって申し訳ない。
あと、日曜(月曜0時)の更新はお休みになります。
すみません。