いつもの武闘会
いつもの武闘会
大樹の村で武闘会が行われる。
今年も文官娘衆が主導でやってくれるので、俺はかなり楽をさせてもらっている。
その代わりではないが、今年も食事関係に多大に協力した。
「今年は甘味が多いな」
ドライムが生クリームとフルーツを乗せたパンケーキの皿を手に取りながら俺に言う。
子供たちが喜ぶからな。
あと、妖精女王が。
「妖精の女王か……
この甘味を味わったら、しばらく帰らんのではないか?」
しばらくどころか、花畑に自分の家を作って居ついている。
でっかい花のような家で、ファンシーだった。
まあ、常にそこで寝ているわけではなく、村に居たり居なかったりする。
ちなみに二軒目。
一軒目は子供たちが面白がって 弄 ( いじ ) り、枯らしてしまった。
勝手に建てられた建物だが、さすがに枯らすのは可哀想だと俺は叱ったが、妖精女王は大笑いして許していた。
心の広さで負けた気分。
いや、 躾 ( しつけ ) はしっかりしないといけない。
甘やかさないようにと妖精女王に言ったら、子供のやったことは親の責任と矛先が俺に向いた。
色々と納得できなかったが、大人な俺は黙って叱られた。
子供たちが、叱られている俺の姿を見て行動を反省してくれたらいいな。
そう思ったが、子供たちは楽しく遊んでいた。
……
父さんが、君たちの所業で叱られているのに何も思わないのかな?
そうか、妖精を追いかけるのが楽しいか。
ん?
全然、俺と視線が合わない。
まるで俺が見えていないような……
あ、何か魔法で俺を隠しているな!
「当然であろう。
子供たちに心苦しい思いをさせてどうする」
どこまでも子供中心。
しかし、子供たちのことを考えるなら、今はちゃんと反省すべきところ!
子供の教育に関して、俺と妖精女王は熱く語りあった。
まあ、どこまでも平行線だったけど。
その妖精女王は、会場の裏の食事スペースで 主 ( ヌシ ) のごとく注文をしている。
「次は四枚、いや五枚重ねで頼む!
白いヤツもフルーツもタップリだぞ!
ソースは……イチゴで」
周囲には子供たち。
普段の行いから、妖精女王は子供たちに人気がある。
「女王、ジュースもらってきたよ」
「女王、こっちも甘いよー」
……
子供たちよ。
妖精女王をあまり甘やかさないように。
休憩時間も終わりそうなので、ドライムと一緒に指定された席に向かう。
ドース、ライメイレン、グラッファルーン、ギラル、始祖さん、魔王、ユーリ、ビーゼル、ランダン、グラッツ、ホウ。
今年はマイケルさん、五村にいる先代四天王の二人も見物にきている。
やはり転移門は便利だ。
俺の席は武闘会の舞台の正面。
俺の席は少し装飾が派手で恥ずかしい。
一般の部、戦士の部は終了し、それぞれ白熱した戦いを見せてくれた。
これから始まるのは騎士の部。
前回、五村関連で不在だったルーとティアが復帰するので、盛り上がりそうだ。
騎士の部一回戦の見所は、二年連続優勝者のキアービットと、ティアの戦いだろう。
決勝戦でもおかしくないカード。
勝敗はどうなるか。
そう思っていたが、ティアの圧勝だった。
ヨウコの解説によると、キアービットとティアは特性から戦法までほぼ一緒で、ティアが全てにおいて一枚上なのでこの結果は当然だそうだ。
「番狂わせが起きにくい。
キアービットは独自の技を見つけないと厳しいな」
本当に厳しそうだ。
だが、キアービットは妙に晴れ晴れとした顔をしていた。
なぜだろう?
「キアービットは……ある意味、ティア様のファンですから」
グランマリアがそう教えてくれた。
なるほど。
試合が進む。
毎年やっているからか、強者に対する策がみられて楽しい。
番狂わせはなかなか起きないが、戦い方を工夫しているのは素人の俺が見てもわかる。
みんな、頑張っているなぁと感心。
決勝は、ルーとリアの戦い。
キアービットに勝利したティアは準決勝でルーに敗北していた。
その直前に、ザブトンの子供との戦いがあったのが大きかったらしい。
ルーは相手がグランマリア、クーデルと天使族が続いた運の良さがあった。
だが、その運の良さも準決勝まで。
ティアとの戦いでかなり疲労しているルーに比べ、リアは元気というか万全。
これまでの戦いを、一方的な弓で勝ち抜いてきた。
これはリアの方が有利かな……
そう思ったのだけど、違った。
リアの放った矢を避けて接近戦に持ち込んだルーが、そのまま殴り勝った。
おめでとう。
リアは大丈夫か?
気絶してるだけ?
それって大丈夫なのかな?
フローラに治療を頼む。
そして自分が戦闘に向かないことを実感。
予想、全然当たらない。
騎士の部が終わった後は、フリーバトル。
戦いたい者が舞台に上がり、ファイトする。
ドースとギラルが先陣を切った。
激しい戦いだが、人間の姿なので少し安心。
いつもの祭りだ。
たぶん、フリーバトルは夜通し行われるだろう。
怪我のないように。
ヨウコ、俺は戦わないぞ。
ん?
魔王はどうしてそんな格好を?
髪型まで変えて、変装か?
変装じゃない、気分転換?
いや、別にかまわないが……
魔王の後ろに妖精女王が現れたと思ったら、魔王の姿が消えた。
え?
魔王は舞台の上にいた。
正確には、舞台の上で戦っているドースとギラルの間に。
そして戦いに巻き込まれた。
大丈夫か?
いや、大丈夫だ。
ドースとギラルの攻撃を避けている。
凄い。
さすが、魔王だ。
大笑いする妖精女王を捕まえつつ感心していたら、ドースとギラルが本気になったのか同時にドラゴンの姿になった。
おいおい、こんな狭い場所で……って、みんな慣れてるな。
手に食事や飲み物を持って避難している。
避難できていないのは魔王だけ。
顔が引き攣っているな。
大丈夫か?
……無理っぽい。
逃げ出した。
頑張れ。
俺は避難しつつ、妖精女王を叱っておく。
「人を勝手に移動させないように」
「はーい」
素直に謝るので、許してやった。
「いや、待って。
私が死にかけたのだから、もう少し厳しく」
逃げ切った魔王が不満そうだったので、もう少しだけ厳しく注意しておいた。