ユーリの就職と冬
ユーリの就職と冬
そろそろ冬という頃。
ザブトンやザブトンの子供たちが冬眠に入る。
しばしの別れだ。
ただ、今年もザブトンの子供たちの一部が屋敷やダンジョンで過ごし、冬眠はしないそうだ。
寂しくなくていい。
ダンジョンを拠点にしているアラクネのアラコは、特に冬眠の必要はないといつも通りだ。
ガルフとダガともしばしの別れ。
今年の冬は五村周辺で修行するらしい。
今年の武闘会での成績がイマイチだったのを気にしているようだ。
確かに二人とも瞬殺だったからな。
力を出し切れずに負けたから悔しいのだろう。
五村のピリカや、ピリカの弟子、エルフたちも一緒に修行するらしく、色々と盛り上がっている。
盛り上がっているが……修行というのは家の近くでは駄目なのだろうか?
……
水を 差 ( さ ) すのもなんだし、駄目ということにしておこう。
五村 ( ごのむら ) で小さな変化。
魔王の娘であるユーリが五村に赴任してきた。
立場は魔王国管理員。
代官を置かない地域の視察員みたいな役職らしい。
当初、五村としては魔王国管理員は受け入れても、魔王の娘である 王姫 ( おうき ) は受け入れにくいと考えた。
「王姫様って我侭だと噂で聞いたことが……」
この村議員の言葉に代表されるイメージが原因だった。
これに対し、ユーリは村議員一人一人に挨拶回りをしてイメージの払拭を狙った。
狙ったのだが……
「王姫が一軒一軒回って挨拶って、どんな嫌がらせだ!」
先代四天王の二人に怒られてた。
それによって問題なく受け入れとなったのだから、怪我の功名というやつだろうか。
「うう、フラウに挨拶回りは大事って言われたからやっただけなのに……」
ユーリは五村の転移門の存在を知っている。
なので、ユーリは五村に赴任してから毎日のように大樹の村に来ていたりする。
フラウの生んだフラシアに「ゆーりねーたん」と呼ばれてご満悦だ。
ちなみに祖父になるビーゼルは「じーじ」なのだが、祖母のシルキーネは「ねーたん」と呼ばれている。
見た目からそう思うのも仕方がない。
代わりというわけではないだろうが、ホリーが「ばーば」と呼ばれて申し訳なさそうにしているが 満更 ( まんざら ) でもなさそうだ。
ユーリの宿泊場所として、屋敷の新築が計画されたのだが実行は春まで延期となった。
この辺りなら冬でも建設作業は可能なのだが、家畜小屋の建設が詰まっているらしい。
ユーリも、それらの建設を中断させてまで自分の屋敷を優先させたりはしなかった。
代わりに、ユーリは屋敷が出来るまではヨウコ屋敷に宿泊することに。
二十人ぐらいのお付が一緒だったけど、ヨウコ屋敷は広いのでなんの問題もなかった。
広いは正義だな。
ただ、転移門の存在を知っているのも、使用許可が出ているのもユーリだけだ。
それに抗議しているのがユーリではなく、文官娘衆。
「王姫様のお付できた二十人の中に、私の同期が何人かいます。
是非、文官娘衆への勧誘を。
大丈夫、鍛えますから」
「ゴン子爵令嬢がいます。
彼女は計算が得意で、実家の帳簿付けもやっていたはずです」
「南の大陸で有名な代官の娘がいますね。
きっと、代官の仕事にも詳しいはずです」
「ボロイ男爵の娘って……フーリュリン様!
嫁いだって聞いたのに、出戻ってたの?
財務関連で働いてた経験もあるはずよね?
絶対に確保!」
えっと、彼女らの仕事はユーリのお付であって、文官娘衆への就職ではないのだが……
文官娘衆一同がユーリに直訴。
ユーリが生活に困らないように二人を残し、十八人が文官娘衆に転職した。
「無理を言ったようで悪かったな」
一応、ユーリに謝っておく。
「半分、こうなるのではないかと思っていましたから、お気になさらずに使ってやってください。
彼女たちの実家には私の方から連絡しておきますので」
「よろしく頼む」
文官娘衆に入ったのであるなら、大樹の村に招待したいと考えたが、いきなりは残酷だと止められた。
なぜ残酷なのだろうか?
よくわからなかったが、当面は五村で研修的なことをすることになった。
その最中に裏取り……大樹の村に対して害意がない事を確かめてから、転移門のことを話す予定。
先の話だが、数人はビッグルーフ・シャシャートに送りたいらしい。
それには俺も賛成。
頑張って欲しい。
冬。
やることをしているので、授かる時は授かる。
そこに問題はない。
問題は、一気にきたことだ。
ルー、ティアが、それぞれ二人目を妊娠。
ハイエルフ二人、山エルフ三人が妊娠をした。
計七人。
めでたいことだ。
この集団妊娠は、原因がある。
少し長いが聞いて欲しい。
実は一年ぐらい前からアルフレートが一人で寝られるようになった。
その成長は喜ばしい。
だが、時々、寂しいのか夜に俺かルーの部屋に行く。
ルーの部屋に行って、ルーがいる場合は問題ない。
ルーがいない場合、少し問題になる。
そして、俺の部屋に来てルーがいれば問題はないのだが、ルー以外の女性がいると問題になる。
さすがにそういった教育はまだ早いと俺は考えた。
だが、寂しいからと部屋に来たアルフレートを追い返すような真似はできない。
結果、俺はアルフレートが来ても大丈夫なように一人で寝ていることが多かった。
平和な日々だった。
だが、秋に妖精女王が来た。
妖精女王は子供を夜に連れ出したりするが、寝かしつけるのも上手だった。
また、アルフレートの男のプライドをくすぐって一人で寝かせる方向にも誘導していた。
それによって、俺の平和な夜は去った。
そして、激しい夜が復活した。
武闘会の時、ポーラの出産でテンションが上がったのもあるだろう。
頑張るしかなかった。
これが集団妊娠の原因。
俺の希望は、ティゼルが寂しいと夜に訪ねて来ること。
「ティゼル様は寝つきが良いですから、ご安心ください」
……
ヒイチロウの成長を期待したい。
集団妊娠が発覚して、獣人族の女の子たちが攻勢を強めてきた。
頑張るしかない。
山エルフの代表であるヤーが少し悩みがち。
代表をさしおいて、他の山エルフが妊娠したからだろう。
だが、妊娠は神様の贈り物だから。
そう悩まず、気長にな。
それと、その……変な服は着なくていいぞ。
それは色っぽいとは逆方向だ。
ザブトンが起きたら相談しような。