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春の仕事と新しい住人

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春の仕事と新しい住人

パレードが終わったあと、王都に帰る魔王たち一行に同行してリグネが帰った。

獣人族の男の子三人組も一緒だ。

もう少しゆっくりしていってもと思うが、授業が始まっているらしい。

リグネに三人のことを、三人にリグネのことをよろしくと頼んでおいた。

マルビットとルィンシァも帰った。

二人共、帰ろうとする気配がなかったから、キアービットが強制的に連れ帰ったが正しい。

本気で抵抗すればキアービット一人で二人を相手にするのは無理とのことだから、二人も帰らないとまずいとは思っていたのだろう。

お土産をたくさん渡しておいた。

ドースたちや始祖さんたちも、少しずつ帰っていく。

寂しくなる。

その寂しさを解消すべく、俺は仕事に打ち込んだ。

畑を耕す。

大樹の村の畑は大きくしないが、 一村 ( いちのむら ) 、 二村 ( にのむら ) 、 三村 ( さんのむら ) の畑は大きくした。

四村 ( よんのむら ) はスペースに限りがあるからどうしようもない。

五村 ( ごのむら ) は自力で頑張るらしい。

畑作業が終われば、次は新しいため池の建設。

南に建設した万能船のドックにため池を兼ねさせる予定だったが、水を貯めないドックにしたからな。

南側にため池を作る。

大きさはどうすべきか。

……

うん、大きくしよう。

百メートル四方。

中央部の深さ十メートル。

本気を出す。

せいやっ!

一日じゃ無理だった。

のんびりやっていこう。

仕事ばかりではよろしくない。

心に余裕は必要だ。

なので工作をする。

ふふふ。

木の皿、木のボウルを次々に作っていく。

デザインはシンプルに。

華美な装飾はなし。

ツルリとした丸みを求める。

うん、いい出来だ。

【万能農具】のお陰なのは十分過ぎるほど理解しているが、俺の技術向上も少しは影響しているだろう。

していて欲しい。

それぞれ二十枚ほど作り、気分転換終了。

あー、クロの子供たちよ。

期待して待っているところ悪いが、これは新しいフライングディスクじゃないぞ。

わかっている。

遊ぶのはちょっとだけだからな。

ボールとフライングディスクをとってこよう。

南のため池は完成したが、なかなか水が貯まらない。

最初に作ったため池から水を引いているが、距離があるからな。

まあ、のんびり待とう。

西にあるエビの養殖池を拡張する。

これは養殖池を管理しているリザードマンたちからの要望。

エビの養殖が順調なようでなにより。

ここの警備をしているクロの子供たちにも挨拶。

ご苦労さま。

問題ではないが、小さな出来事。

村の西にある最初のため池に、見知らぬ生物が住み着いていた。

南のため池に水を送ったので水量が一時的に減り、その生物の存在が確認できた。

「ポンドタートルね」

ルーが生物の正体を特定した。

「危ないのか?」

「池の守護神って言われるほど温厚な魔物」

変わった魔物もいるものだ。

「どうする?

排除するなら手伝うわよ」

「害はないのだろ?」

「害はないけど……スライム、食べないかしら?」

「……スライムの数は?」

「貴方以上に把握している人はいないと思うけど」

「俺だって数えているわけじゃないぞ。

まあ、スライムの数は増えてる」

ん?

ため池の 辺 ( ほとり ) にポンドタートルが顔を出している。

大きいな。

甲羅は、丸い山型で……直径二メートルぐらいの大きさ。

高さは……こっちも二メートルぐらい。

……

綺麗な目だ。

そして、このまま住んで良いですかと訴えている。

よかろう。

ここに住むことを許可しよう。

「問題はエサだな。

スライムは食べないな?」

頷いている。

知能は高いみたいだ。

「主食は魚か?」

首を横に振っている。

「え?

じゃあ肉?」

違うようだ。

何を食べるんだ?

ルーに聞いても、知らないらしい。

困った。

とりあえず試そう。

結論。

草食。

森に生えている草を食べた。

キャベツとダイコンは、特に喜んで食べた。

身体のサイズに対して、小食のようだ。

遠慮しているわけじゃないよな?

よろしい。

では。

ため池の周囲にポンドタートル用の草畑を作っておこう。

足りなくなったら言うのは……無理だな。

どうやって連絡をしてもらおうか。

ポンドタートルからの提案。

ため池の東側、俺の屋敷の近くに上陸するそうだ。

なるほど。

ここなら誰かが気付く。

では、それでいこう。

問題があったら改善していく方向で。

おっと、池に戻るのはちょっと待ってくれ。

先に村の住人に紹介しないとな。

違う?

ポンドタートルに待っていてほしいと言われたので、少し待機。

ポンドタートルは何かを咥えてもどってきた。

「なんだこれ?」

俺よりもルーの反応が早かった。

「ポンドタートルの甲羅の皮!」

大興奮だった。

いや、興奮するより先に説明。

甲羅の皮ってなんだ?

「タートル種の甲羅は、ずっと同じじゃなくて定期的に皮が剥がれて成長するのよ。

ほら、今の甲羅の模様に合わせても少し小さいでしょ」

確かに。

「そして、ポンドタートルの甲羅の皮は、幻と言われるほど貴重なの!」

「薬の材料になるのか?」

「それだけじゃなく、魔法の材料にもなるし、魔道具にも使えるわよ」

へー。

「反応が薄いっ!」

「すまないが……見れば、ポンドタートルは何枚も甲羅の皮を持って来てくれているのだが」

二十枚ぐらいある。

これで幻?

「ポンドタートルの甲羅の皮を手に入れるには、ポンドタートルのいる池にいかないといけないでしょ」

「そうだな」

「甲羅の皮はポンドタートルの縄張りにあるから、ポンドタートルと戦うことになるわ」

「温厚な魔物じゃないのか?」

「どんな温厚な魔物だって、縄張りに入ると怒るわよ」

まあ、確かに。

「で、ポンドタートルは自分の甲羅の皮を食べて回復するの」

「だから幻か」

「そう。

甲羅の皮がなくなると、ポンドタートルは逃げるしね」

なるほど。

ひょっとして、この甲羅の皮を俺に差し出すことで敵意がないことを示しているのかな?

そのようだ。

ははは。

気にするな。

他の住人とは仲良くやってくれたら、それでいい。

甲羅の皮は大事なものなんだろう。

持ち帰って……ルー?

「五枚、いや三枚は確保させてっ!」

妻の見事な土下座はみたくなかった。

村に新しい住人が増えた。

ポンドタートルは年に一回、甲羅の皮を剥がし、数枚を村に献上してくれるようになった。

コミカライズ版も更新されています。

詳しくは活動報告を見てください。

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