のんびりした冬の一日
のんびりした冬の一日
冬。
寒くなった。
寒くなったから冬なのかな?
どっちでもかまわないか。
とりあえず、冬だ。
鷲 ( わし ) が時々、遠くに移動している。
どこに行っているのかと思ったら、巨人族のいる北のダンジョンだった。
北のダンジョンの周辺をエサ場にしているらしい。
収穫祭の少し前に巨人族と話をしていたのは、エサ場情報を鷲に伝えていたようだ。
てっきり、収穫祭での出し物の相談だと思っていたのに。
まあ、収穫祭では鷲はフェニックスの雛のアイギスと、巨人族はラミア族と組んで頑張っていたからな。
収穫祭の相談じゃないことには気づいていたぞ。
っと、頻繁に北のダンジョンに行くなら巨人族に手紙を運んでもらえるか?
巨人族が読むから板に書いてあってちょっと重いけど。
問題なく持てるな。
すまないが頼む。
報酬は……ダイコンでいいのか?
わかった。
先払いだ。
俺はダイコンを輪切りにして、数個ずつ空中に放り投げた。
鷲はそれを器用に空中でキャッチし、食べる。
上手だな。
ん?
いつの間にかやってきたアイギスが、自分にも投げるように言ってきた。
悪いが、これは手紙を運んでもらう報酬なんだ。
手紙を運ぶのを手伝うから、投げろ?
鷲、アイギスが手伝うとか言っているが構わないか?
迷惑をかけるぞ。
そうか。
……
アイギス、最終確認だ。
結果が見えているが、投げていいのか?
構わないとアイギスは目で返事した。
では、いくぞ。
俺は輪切りにしたダイコンを一つ、空中に放り投げた。
できるだけアイギスに近い場所に。
甘いなぁと思ったが、アイギスは予想通りにダイコンをキャッチできなかった。
ダイコンをキャッチしたのは、俺の傍にいたクロの子供の一頭。
そのままダイコンを食べて、俺のもとにやってきた。
尻尾を振りながら、どうですかの表情。
これは褒めるしかない。
俺は落ち込んでいるアイギスを見ないようにしながら、クロの子供の頭を撫でた。
アイギスは鷲が慰めていた。
手紙を掴み、背中にアイギスを乗せた鷲を見送ったあと、俺は屋敷の自室でのんびりする。
本当は木工作業をしようと思っていたのだが、最近はちょっと働き過ぎだと鬼人族メイドのアンに注意されてしまった。
俺としてはそんなつもりはないのだが、魔王を見習えとまで言われるとさすがに考える。
見習うのは、魔王が定期的に村に来て子猫たちと 戯 ( たわむ ) れていることだろう。
あんな感じに、適度に息抜きをしろと。
息抜きはしているつもりなのだが、周囲にはそう見えていなかったということか。
反省して、今日はわかりやすくのんびりする。
まず、大きめのソファーに身を沈める。
ふふふ。
このソファーは、自作。
冬の準備の合間に頑張った。
この柔らかさにするには苦労した。
……
だから働き過ぎとか思われるんだろうなぁ。
改めて反省。
ソファーの柔らかさを満喫する。
まだ日が高いのに、なんたる贅沢。
ん?
ミエルか。
俺の腹の上に……おうっ、お、お前も大きくなったな。
魔王がそろそろパートナーを探すのはどうだと言ってたが、どうする?
まだ不要か?
ははは。
ミエルに続き、ラエル、ウエル、ガエル、アリエル、ハニエル、ゼルエル、サマエルと姉猫、子猫たちが次々と俺の腹の上に……
重い。
そして、俺の腹の上で喧嘩しない。
爪が痛いから。
あれ?
え?
俺は猫たちによって、ソファーから追い出された。
そして、猫たちはソファーの上で仲良く場所を決めてくつろぐ。
……
ひょっとして、そのソファーを猫たちの物だと思っているのかな?
俺は自室のソファーを諦め、客間に向かった。
自室でのんびりしても、周囲にアピールできないと思ったからだ。
決して、猫たちに負けたわけじゃない。
客間では……目立つのがコタツで完全武装のマルビット。
昼間っから酒スライムと一緒に酒を飲んでいる。
魔王を見習えとは言われたが、マルビットを見習えとは言われなかったな。
だが、のんびりする達人だろう。
「違います。
あれはただの怠け者です」
コタツに近寄ろうとした俺を、ルィンシァが止めた。
そして、マルビットをコタツから引きずり出し、投げ飛ばした。
「キアービットたちの訓練をするので、外に集合ですと伝えたはずです」
「遠慮しますって返事したもん」
「強制参加です」
二人の格闘というかルィンシァの一方的な攻撃が始まった。
コタツの上に残っていたお酒は酒スライムが飲み干し。
その酒スライムは、聖女セレスに回収された。
……
さてと。
どうしたものか。
マルビットのいなくなったコタツに入るべきか。
ルィンシァにヘッドロックされながら連行されていたマルビットの姿を思い出すと、抵抗を感じるな。
あとにしよう。
客間の別の一角をみると、そこには白い布のスクリーンに映し出されたヒイチロウの勇姿。
収穫祭の時の映像だな。
ドラゴンの姿で武装し、ポーズを決めている。
俺の息子とは思えないほど強そうだ。
人の姿だけど、グラル、ラナノーンも映っている。
五分ほどの映像だが、それを何度も繰り返して見ているライメイレンとドース、ギラル、グラッファルーン。
映像を管理しているイレが困った顔で俺に助けを求めるので、何回目だと聞いた。
「数え切れません。
朝からずっとです」
そうか。
諦めろとは言えないので、対策を考える。
ヒイチロウやグラル、ラナノーンを連れてくるのが一番か。
映像よりも本物だろう。
「ヒイチロウさま、グラルさまはお勉強中。
ラナノーンさまはお昼寝中です」
近くにいた鬼人族メイドが、そう教えてくれた。
……
「ヒイチロウたちの勉強が終わるまでだ。
頑張れ」
俺はイレのすがるような視線を振り払い、客間を離れた。
子供たちは勉強中か。
静かだと思った。
では、子供たちの勉強が終わるまでなにをしよう。
……
クロの子供たちが期待した目で俺をみている。
ザブトンの子供たちも。
ふっ。
いいだろう。
クロの子供たち、ザブトンの子供たちと遊ぶことにした。
夜。
俺は疲れた身体で食事をとる。
「お休みくださいと申し上げたつもりでしたが?」
アンの視線が痛い。
明日はきっちり休むから、今日は許してほしい。
のんびりした冬の一日だった。
ヒイチロウ ドース、ライメイレンの孫。
グラル ギラルの娘。
ラナノーン グラッファルーンの孫。
書籍三巻、コミック二巻、七月五日に発売予定。
よろしくお願いします。
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