昼の酒を飲む
昼の酒を飲む
フェニックスの雛のアイギスが、 鷲 ( わし ) の背中に乗って飛んでいる。
……
アイギスは自分で飛ぶことを諦めたのかな?
まあ、仲良くやっているようなので構わないか。
ため池で、ポンドタートルたちがそろそろ冬眠すると今年最後の挨拶。
収穫祭での水芸は見事だったぞ。
春にまた会おう。
屋敷に戻ると、玄関前でレッドアーマーとホワイトアーマーが挨拶してくれた。
お前たちは冬眠しないんだな。
ははは。
門番、よろしく頼むぞ。
だが、無理はしちゃ駄目だからな。
寒かったら室内に入るように。
俺は自室には戻らず、客間のコタツに潜り込む。
客間のコタツは大きいからな。
それに、自室にいると子供たちが近寄ってくれない。
俺の部屋には入りにくいらしいのだが、なぜだろう?
そんなことを考えていると、クロとユキがやってきた。
クロは俺の右側、ユキは俺の左側に潜り込む。
クロとユキの背中を撫でていると、鬼人族メイドがお茶を持ってきてくれた。
緑茶だ。
醤油で味付けられた焼きモチが二つ、添えられている。
今年のモチだ。
ギラルが頑張って 搗 ( つ ) いたやつだ。
しかし、ギラルは結構な頻度でこっちに来るようになっているが大丈夫なのだろうか?
……
いまさらか。
ライメイレンとかグラッファルーンも、よく来るようになっているし。
うん、モチが美味い。
クロが欲しがったが、このモチは渡せない。
粘りがあって柔らかいからな、 喉 ( のど ) に詰めると危ない。
モチを食べたいなら、あれにしなさい。
鬼人族メイドに頼み、新しくモチを用意してもらう。
俺の前にあるモチと違い、小さく切って乾燥させたモチ。
それに醤油を 塗 ( ぬ ) りながら、 炙 ( あぶ ) ってもらった。
おかきだ。
保存食の一つとして常備するつもりだったが、炙りたてが美味しくてすぐに食べつくされてしまった。
主にドース。
まあ、俺も食べたけど。
そのおかきを、お盆に盛ってもらう。
一つ食べ、味を確認してからクロとユキに渡した。
……
お盆に置くのではなく、手で口に運んで欲しいと?
甘えてるなぁ。
子供たちが見たら、呆れるんじゃないか?
そう思いながらも、おかきを一つずつクロとユキの口に運んでやる。
ははは。
小さいけど、ちゃんと噛んでから食べるように。
飲み込むんじゃないぞ。
俺は焼きモチを食べ、クロとユキはおかきを味わった。
そんなふうにまったりしていると、マルビットがやってきてコタツに入った。
「……天使族の別荘は完成したと思うが?」
ちゃんと完成させたはずだぞ。
なのに、わざわざ屋敷に来たのか?
「別荘に、なぜか仕事部屋があったのです」
「……」
へ、部屋をどう使うかは天使族で話し合って欲しい。
まあ、仕事から逃げて屋敷に来たのだろう。
「私にもおかき」
「はいはい」
このお盆はクロとユキの分。
鬼人族メイドに頼んで、新しくおかきを炙ってもらう。
マルビットがやんわりと鬼人族メイドにお酒をねだったので、おかきと一緒にお酒も出てきた。
「お米の酒ね」
ワインよりは合うからな。
俺の前にもコップが置かれたので、マルビットに 注 ( つ ) いでもらう。
半分ぐらいでと言ったのに、溢れそうなぐらい注がれた。
零 ( こぼ ) したらもったいないだろ。
俺は慌てて一口飲んだ。
一口飲むと、いつの間にか酒スライムがコタツの上に控えているのに気づいた。
飲むチャンスを逃さないのはさすがだ。
ちゃんとコップも持ってきている。
「マルビット、酒スライムにもお酒を」
「はーい」
鬼人族メイドがお酒の供を持ってきてくれたので、昼間から出来上がってしまった。
うう、飲み過ぎた。
反省。
しかし、結構な時間が経つが子供たちの姿が見えないな。
子供たちが来たら遊ぼうと思っていたのだが?
「子供たちなら、妖精女王と一緒に何か作ってたわよ」
むう。
妖精女王はなんだかんだと子供たちに人気がある。
ちょっと嫉妬。
いかん、本当に酔っているな。
冷静に考えれば、酒臭いこの場には子供は近寄らないか。
バタバタと誰かがやってきた。
「村長。
ミエルを見ませんでしたか?」
鬼人族メイドのアンだ。
「姉猫のミエルか?
何かやったのか?」
「ええ。
夕食用の魚を盗み食いしました。
しかも、お腹の良い所ばかり三匹ほど」
……
俺はいつの間にか膝の上にいたミエルを、アンに差し出した。
ミエルが、裏切られたと凄い顔で俺を見ている。
いやいや、悪いことをしたら叱られなさい。
アンがくいっとアゴでミエルについて来なさいと指示。
ミエルは情けない声で鳴きながらアンについていった。
今晩、ミエルは飯抜きだろうな。
この屋敷でアンを怒らせるのが一番怖いことを、そろそろ学んだほうがいいぞ。
アンの次はルーな。
研究している魔道具や薬草を弄ると、烈火のごとく怒る。
でもって、フローラ。
許可無く発酵小屋に入る者には容赦がない。
明日には許してもらえるように口添えしてやろう。
反省した態度をみせるように。
さて。
酔い覚ましを兼ねて、俺はおかきを新しく炙る。
「さすがにこれ以上食べると、夕食が困るわよ」
マルビットの意見に同意。
これは俺たちのおかきじゃない。
門番をしているレッドアーマーとホワイトアーマーに持っていってやるんだ。
寒い中、頑張っているからな。
ああ、もちろん村の警備をしているクロの子供たちの分も炙ってやらないとな。
俺がおかきを炙っていると、ルィンシァがやってきた。
マルビットがコタツの中に潜り込んで隠れたが、クロとユキによって押し出された。
ははは。
ルィンシァ。
悪いがマルビットはこれからおかきを炙る仕事に従事する。
そっちの仕事は後回しだ。
月曜は仕事が……
そして歯医者がね。
予約を入れたのに、長々と待たされるという……
いや、歯医者さんは頑張ってたよ。