王都での生活 ウルザ編 暗殺者 15日目~25日目
王都での生活 ウルザ編 暗殺者 15日目~25日目
私の名はウルザ。
ハクレンお母さんとヒラクお父さんの子、ウルザ。
それ以上でも、それ以下でもない。
私はいま、魔王国の王都で生活をしている。
一緒にいるのは弟のアルフレート、妹のティゼル、アサ、メットーラ、それと私の専属執事であるアース。
最初はティゼルの代わりにナートが一緒に来る予定だったのだけど、私の工作でティゼルになった。
ナートには謝っておいたけど、ナートも交代には同じ意見で協力者。
私とナートでは、アルフレートを抑えるのは厳しいからね。
ナートはアルフレートに、この交代は私を抑えるためと説明してお父さんの説得をさせているのだけど……
アルフレートはともかく、お父さんがそれで納得するのは少し 釈然 ( しゃくぜん ) としない。
でも、まあ結果は良好。
私とティゼルでアルフレートを抑えるからね。
そう思っていたのに、ティゼルは連日のように王城に行って不在。
ティゼルにはちゃんと役割を伝えたはずなのに、ひょっとして忘れているのかしら?
ありえる。
アサとアースも不在だから、戦力はかなり不足。
メットーラは強いけど、制圧向きじゃないしね。
こうなったら仕方がない。
アルフレートが暴走しないように、私が注意するわ。
だから、暗殺者にも気付いた。
五人組かな?
実力的には弱い。
だけど、毒を使うかもしれない。
油断は禁物。
メットーラに退治してもらった。
この五人組、ダルフォン商会に雇われた暗殺者と言ってる。
暗殺者の言葉など信用できないけど、ティゼルに任せよう。
これで一安心。
そう言いたいのだけど、暗殺者はまだいる。
でも、どこにいるかわからない。
ただ、殺気だけがある。
暗殺者なのは間違いない。
五人組とは実力が段違いのようね。
狙いは私……だけでなく、アルフレートにも向けられている。
絶対に許さない。
三日ほど頑張ったけど、駄目だった。
どこにいるかわからない。
イライラする。
でも、暴れたりはしない。
私は成長したのだ。
グラッツのおじさんに応援を要請。
対暗殺者部隊を派遣してもらった。
「捕縛した。
二人組だったよ」
グラッツのおじさんの報告。
よかった。
殺気も消えた。
でも、どうして私たちを狙ったのかしら?
「あー、言いにくいのだがルールーシーさんの関係者だとバレたようだ」
「ルーお母さんの?」
「少し前に、とある国の王族の治療に尽力してもらってな。
その敵対組織からの報復だったようだ」
「報復で私たちを狙うの?」
「ルールーシーさんを狙うのは、現実的ではないからだろ?」
「子供なら、現実的と?」
「子供を狙えば、失敗してもダメージがあるからな」
「そうなの?」
「そうなんだ。
お前たちが狙われたと知れば、ルールーシーさんは心配するだろ?」
「激怒して、相手の国に突撃しそうね」
「それが予想できるのに、村に報告しなければいけない俺の気持ち。
わかる?」
「黙っていたらいいんじゃない?
そしたら、余計な心配をかけないですむし」
「本気で言ってるなら、一番悪い手だな」
「わかってるわよ。
それじゃあ、私たちは暗殺者に気付かなかったってことにするのはどう?」
「俺たちが暗殺者を排除したと?」
「実際、そうでしょ?
これなら、ルーお母さんも大袈裟にはしないと思うの」
「そうかもしれないが……うーん」
「私たちは平穏に生活を続けたいけど、たくさんの護衛に守られて生活したいわけじゃないわ」
お父さん、お母さんに一人前として認めてもらえるようにならないと。
でないと、村を出てここに来た意味がない。
「お願い、グラッツのおじさん。
今回みたいに手に負えないときは、ちゃんと相談するから」
「……わかった。
しかし、虚偽の報告はできない。
暗殺者の件は、ウルザが気付いたと報告する。
同時に、ウルザの気持ちもしっかりと伝える。
大袈裟にしないように言っておくよ」
「お父さんには?」
「あー、そっちはルールーシーさん次第だな」
「心配させたくないのに~」
グラッツのおじさんの報告の成果か、ハイエルフのリグネさんが護衛に加わった。
リグネさんは、リアお母さんのお母さん。
なのでリグネお婆さんなのだが、そんなことは言えない。
リグネさんは、護衛に加わったけど表には出ない。
陰 ( かげ ) から守る感じ。
でも、時々、一緒に食事をする。
リグネさんが家にいると、ゴー兄たちがよく来る。
弓の扱いや、冒険者としての心得などを習っているから。
私も習っている。
アルフレートも一緒になって聞いているけど、アルフレートは冒険者とかに興味があるのかしら?
似合う似合わないで言うなら、似合わないと思うけど……言葉にはしない。
些細な一言が、心を大きく傷付けるとお父さんから注意されているから。
油断していたわけじゃない。
相手のほうが、一枚も二枚も上手だったのだ。
数時間前、北の森に見慣れない魔獣が出たと、冒険者ギルドからリグネさんとゴー兄たちが呼ばれた。
リグネさんは私の護衛があるからと断ろうとしたが、私とアルフレートが見慣れない魔獣に興味があった。
ならばと私、アルフレート、リグネさん、ゴー兄、シー兄、ブロ兄の六人で学園を出て、北の森に向かって草原を移動していたのだが……
そこを狙われた。
三十人ぐらいのチンピラによる襲撃。
でも、リグネさんの敵じゃない。
蹴散らした。
このチンピラを放置するのはよろしくないけど、殺すわけにはいかない。
チンピラを送るため、ゴー兄、シー兄、ブロ兄の三人で王都に戻った。
そして、私たちはどうしようかと思っているところに追加が来た。
同じく三十人ぐらいのチンピラ。
リグネさんの敵じゃない。
だけど、私とアルフレートの護衛が薄くなってしまった。
そこを狙ってきた。
ひょろっとしたのっぽの男性。
商人っぽい格好。
チンピラっぽくないから、巻き込まれたのかなと思ったタイミングで私たちにナイフを投げてきた。
六本。
私に三本、アルフレートに三本。
私は避けられる。
しかし、アルフレートは無理だ。
だから私に向かってくる三本のナイフを掴み、投げてアルフレートに向かった三本のナイフを迎撃した。
成功。
同時に、私の脇腹に鈍い痛みが走った。
七本目のナイフ?
それが私の脇腹に刺さっている。
アルフレートが悲鳴をあげる。
大丈夫。
これぐらい、なんともない。
「アルフレートは逃げて!」
「わかった!」
アルフレートは駆け出した。
私もアルフレートも、こういった場面でまごまごするような教育は受けていない。
現場に残って心配そうな悲鳴をあげる役が必要なのは、舞台の物語だけ。
実際にいたら邪魔でしかない。
それに、この相手は強い。
チンピラとは段違い。
しかし、倒そうと思わなければなんとかなる。
リグネさんがチンピラを蹴散らし、戻ってくるまでなら確実に……
聞きたくない悲鳴が聞こえた。
私が悲鳴の方向をみると、逃げたアルフレートを待ち構えていた一団がいた。
そして、その一団から放たれた無数の矢に、アルフレートが貫かれた。
……
油断していたわけじゃない。
相手のほうが、一枚も二枚も上手だったのだ。
失敗。
でも、反省はあと。
私は目の前の商人っぽい男を無視し、チンピラを相手にしているリグネさんに声をかけ、全力で逃げる。
少しでもこの場から離れなければ。
アルフレートが暴れる。
アルフレートは矢が刺さって死んだ?
アルフレートがあの程度でやられるわけないでしょ。
ほら、アルフレートの体が薄くなっている。
霧化よ。
ああなると、どんな物理攻撃も効かないの。
ずるいと思う。
ただ、あの状態で攻撃はできない。
でも、アルフレートが攻撃できないだけで、手はいくらでもあるのよね。
アルフレートの影が、不自然に大きく広がっていく。
そこから生み出される影の兵。
あれ、無差別攻撃をするの。
昔、村で呼び出して、アルフレートはめちゃくちゃお父さんに叱られてた。
以後、封印していたのだけど、今の状態では関係ない。
「どうなっている?」
私はリグネさんの疑問に答える。
「アルフレートは攻撃を受けると霧化しちゃうんだけど……
まだ、霧化状態を上手く操れないというか、霧化すると暴走するの」
アルフレートの影から生み出された影の兵が、アルフレートを待ち構えていた一団に襲いかかった。
影の兵はそれほど強くないけど、執拗だから……このままじゃいけない。
襲ってきた相手のことなど正直どうでもいいが、あとでアルフレートが気にするかもしれない。
しかし、下手に近付くと私たちも攻撃対象にされる。
どうしよう。
こういった場合のために、ティゼルに同行してもらったのにこの場にいない。
悔やまれる。
あ、リグネさん、影の兵に矢は通じないから。
矢のダメージはあるみたいだけど、殴ったほうが効果的。
影の兵が、のっぽの商人っぽい男に襲いかかった。
商人っぽい男は影の兵を倒しているが、影の兵は次々に生み出されている。
すぐに影の兵の波に飲まれた。
私の脇腹分は痛めつけてほしいけど、このままじゃ……
リグネさんが相手していたチンピラたちも、影の兵にやられている。
私たちが対応に困っていると、アルフレートの影がさらに動いた。
影の兵を生み出すのを止め、なにやら魔法陣を影で作り出している。
「アルフレートは、なにをする気だ?」
心配するリグネさんに私が説明する。
「えーっと、事前に契約した相手を呼び出してる」
「召喚魔法か?
なにを呼び出すのだ?」
「わからないけど……話が通じる相手だったらいいなぁ」
暴走状態のアルフレートは、召喚する相手の名を呼んだ。
影の魔法陣から姿を 現 ( あらわ ) す。
私も呼んだ。
「クロイチ!」
めっちゃ襲われる回。
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