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ゴーレム

異世界のんびり農家 — ncode.syosetu.com · All chapters

ゴーレム

自分の屋敷で、俺は考える。

村の住人たちから、俺は考えなしで暴走すると思われていないだろうか?

そんなことはない?

ほんとうに?

ただ、今回の件は俺を 煩 ( わずら ) わせる前に終わらせたかっただけ?

それはそれでありがたいが、相談はしてほしかったと思う。

あの映像を見てすかっとした気持ちは確かにあったが、あとあと考えると城に住んでいた人は大丈夫かなとか、鉱山もったいないなとか色々と考えてしまう。

とくに山脈を 融 ( と ) かしたのは、大丈夫なのか?

気候とか変わってしまうのではないか?

そんな心配をしてしまう。

ただ、俺に相談したとしても報復は絶対に必要という、村の住人の意見は変わらない。

ここできっちりと報復をしておかないと、また子供が狙われてしまう。

その点は、俺も納得しているからハクレン、ザブトンに文句を言ったりはしない。

気をつかわせて、逆に悪かったと謝っておく。

そして、普段と態度が変わらなかったのは見事だ。

しっかり見てるつもりだったのだけどなぁ。

クロイチ。

お前はわかりやすかった。

色々と遠慮していたもんな。

撫 ( な ) でられるときも、順番は後ろのほうだったし。

俺からも距離を取っていたな。

ああ、内容はわからなかったが、なにか隠し事をしていることには気付いていたぞ。

ちょっと心配していたが、アルフレートたちのことだったか。

すまなかった。

アルフレートやウルザが黙っていてほしいと言ったんだろう。

よしよし、念入りに撫でてやろう。

脇腹がいいのか?

ここか?

ここがいいのか?

ははは。

クロイチのパートナー、アリスもほっとしている。

アリスにも、心配をかけたな。

撫でるのは順番だぞ。

クロイチのあとでだ。

いまはクロイチを甘やかす。

翌日。

アルフレートたちの家の中に飾る、創造神と農業神の像。

それと、アルフレートたちを守るようにクロイチをモデルにした像を作った。

小型なので三つまとめて持ち運べるだろう。

次にビーゼルが来たら、運ぶのをお願いしよう。

気分転換。

ゴーレムとは、魔力で動く土や石などで作られた物のことを指す。

人型が主流だが、そうでないゴーレムも存在する。

そんなゴーレムには、大きく二つの種類がある。

瞬間的に作り出すタイプと、事前に組み立てるタイプ。

瞬間的に作り出すタイプのゴーレムのメリットは、運用と収納に優れていること。

必要な場所で役目に応じて形を変えて作り出し、役目を終えたら消せばいいのだから、たしかに便利だ。

そして、術者の技量があればあるだけ、複雑な命令も実行可能となる。

デメリットは魔法の技術的にかなり難しいことと、大量の魔力を必要とすること。

なので、あまり使い手がいない。

ティアは希少な存在だったようだ。

事前に組み立てるタイプのゴーレムのメリットは、魔力消費がかなり抑えられること。

デメリットは、必要な場所にまで運ばなければならないのでとても面倒。

ゴーレムは総じて重いので、なおさらだ。

それに、事前に用途を想定して組み立てているので、想定外には弱い。

あと、複雑な行動をさせにくい。

シンプルなことをさせるのが限界だ。

穴を掘るとか、岩を砕くなど。

荷物を運べというのは、ぎりぎりらしい。

それなりに弱点が多いけど、世の中に存在するゴーレムの大半は事前に組み立てるタイプだそうだ。

主な使われ方としては、防衛戦力。

指定の空間に侵入してきた者を排除する装置として、ゴーレムはよく使われているらしい。

さて、そんな組み立てるタイプのゴーレムが、俺の目の前にあった。

人型ではない。

何型と例えるのがむずかしい形。

箱に棒がついた感じだろうか?

山エルフの一人が説明してくれる。

「ゴーレムを構成する要素は、大きく四つ。

動力、命令受信装置、可動部、頭脳です」

動力は、そのまま動力。

ゴーレムが動く力の源で、魔力や魔石がそれにあたる。

組み立てるタイプの場合は、魔石が使われることが多い。

命令受信装置は、ゴーレムに命令を与えるための部位。

簡単に言えばスイッチ。

これは色々な種類があって、そのままスイッチもあれば、視覚で認識するものや、音声で認識するものなどがあったりする。

可動部は、ゴーレムが動く部分。

人型なら、手足など。

ゴーレムの目的が詰まっている。

最後の頭脳は、ゴーレムの行動を覚えさせる場所。

スイッチが入ったら、可動部を動かす。

もう一回、スイッチが入ったら、可動部を止める。

などだ。

たくさん覚えさせればさせただけゴーレムは 応 ( こた ) えてくれるが、この頭脳部分にも魔石が使われ、多く覚えさせるには大きな魔石が必要なのでコストが上がる。

動力と頭脳の魔石は共用される場合が多く、組み立てるタイプがシンプルな動きしかしないのは、それが原因らしい。

俺の目の前にある、箱に棒がついたゴーレムも小さい魔石が使われており、シンプルな動きしかしない。

山エルフの一人が、箱の前に硬貨を置いた。

小銅貨。

ゴーレムは無反応。

山エルフは小銅貨を取り、代わりに中銅貨を置く。

それでも、ゴーレムは無反応。

山エルフは中銅貨を取り、代わりに大銅貨を置く。

ゴーレムの棒が動いた。

山エルフは大銅貨を取り、代わりに銀貨を置く。

ゴーレムの棒が動き、元の位置に戻った。

「ご理解いただけましたか?」

山エルフの問いに、俺は頷く。

大銅貨だけに反応して、棒を上げるゴーレムらしい。

それがどうしたんだ?

そんなことを言ったりはしない。

俺はこのゴーレムの可能性を感じていた。

山エルフたちもだ。

三日後。

スライダー式の硬貨計算機が完成した。

スライダーに硬貨を流せば、小銅貨、中銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、それぞれに反応するゴーレムがカウントする。

同時に、硬貨の仕分けも行う優れ物だ。

硬貨以外の物は戻す仕組みなので、ゴミをお金と数えることもない。

現在、二百回ほど実験をしているが、計算違いは一度も起きていない。

さらに三日後。

自動販売機ができた。

いや、自動販売機ゴーレムができた。

スライダー式硬貨計算機で投入した硬貨を数え、押されたスイッチに応じた商品とお釣りを出す。

とてもいいものだ。

「村長。

商品の展示スペースが必要ですね」

そうだな。

自動販売機ゴーレムは改良をさらに加えられた。

そうして完成した自信作の自動販売機ゴーレムだが……

ティアたちに見せると、技術の無駄使いと言われた。

人を一人雇えば済む話だと言われると……困る。

確かに、ゴーレムは比較的安価に作れているが、それでも人を雇うよりは高くついている。

小さい魔石でも、それなりに高いのだ。

だがしかし!

忘れてはいないだろうか?

ゴーレムは休まない!

一日中、販売してくれるのだ!

「夜は買う人も寝てます」

……

自動販売機ゴーレムは、不用品と評された。

だが、それはある程度、想定していた。

大樹の村では、硬貨が流通していない。

自動販売機ゴーレムが必要とされるのは、硬貨が流通している場所。

つまり、 五村 ( ごのむら ) だ。

俺と山エルフたちは、自動販売機ゴーレムを五村に設置してみた。

「村長、設置したのはいいですが、なにを販売します?」

自動販売機と言えばジュースだが……飲み物の販売はまだ難しい。

食べ物も同じ。

保温に難がある。

素直に、野菜の販売にしてみるか。

「それだと野菜を販売しているお店に迷惑がかかりませんか?」

確かにそうだな。

では……なにがいい?

薬草とか薬は、自動販売機ゴーレムで売るのは少し抵抗がある。

ルーも、相手を見て売りたいと言っていたしな。

武器や防具も、相手に合わせた調整が必要だから自動販売機ゴーレムでの販売には向かない。

となれば……宝石とか?

売ってみた。

三日間、誰も買わなかった。

前を通るけど、通り過ぎるだけ。

値段、高すぎたか?

ゴロウン商会から仕入れた額、そのままなのだが……

三日目の晩、二十人ぐらいの集団が自動販売機ゴーレムを奪おうとしたので捕まえた。

馬鹿め。

見張っているとは思わなかったのか。

だが、自動販売機ゴーレムを価値あるものとして見たことには……

違う?

展示してある宝石狙い?

……

警備隊、連れて行け。

自動販売機ゴーレムが評価されるには、まだ研究を重ねる必要がありそうだ。

俺と山エルフたちは、 挫 ( くじ ) けずに研究を続けようと誓った。

……

あ、そろそろ収穫なのでそっちを優先で。

本業を忘れてはいけない。

研究は収穫が終わって、次の畑を作ったあとでだ。

今週の頭、ちょっと風邪でダウンしてました。

季節の変わり目というか、気温の上下にやられたのでしょう。

みなさまもお気をつけて。