事後報告
事後報告
シャシャートの街で、ミヨが解決した事件に関わっていた魔物はセイレーン。
上半身が人間で、下半身が魚の魔物……人魚の一種らしく、亜人扱いされている。
特徴は歌声で、聞いた人を惑わせる。
街中で歌われたら大混乱だったろう。
いや、実際に歌われたそうだ。
しかし、被害はなかった。
なんでもセイレーンは船の中に捕らわれており、実行犯たちが決行するタイミングを待たされていた。
そこで虐待などされず、万全の体調で歌わせるために、実行犯たちはしっかりと世話をしたらしい。
結果、セイレーンは太ってしまった。
これでもかと。
「人魚って、生活が常に全身運動だから閉じ込めたらすぐに太るのよねー」
俺の横で報告書を 覗 ( のぞ ) いていたルーの意見。
なるほど。
そして、その歌声は効果を失った。
いや、効果は失っていない。
歌えなくなっただけだ。
ワンフレーズを歌うだけで息切れするセイレーンって、どうなんだろうなぁ。
なんにせよ、ぶっつけ本番だったのが幸いだった。
まあ、試しに歌わせたらバレるからな。
現在、セイレーンは海で集中ダイエット中。
ダイエットが終了すれば、港で船の誘導員として頑張るらしい。
元の場所に戻る気は……
捕らわれている最中に揚げ物の 虜 ( とりこ ) になったのか。
……
リバウンドしないように、注意するようにと返しておこう。
シャシャートの街で混乱を起こそうとした実行犯は八人。
船をアジトに、諜報活動もしていたらしい。
その船をシャシャートの街が没収し、多くの証拠を確保した。
実行犯は……代官に引き渡されたのか。
魔王国の問題だから当然だな。
五村で捕らえられた五人も、シャシャートの街の代官のところに送っておいた。
さすがにテロを起こそうとした者を五村で受け入れることはできないし、解放するのも問題があるので無難な対応だろう。
五村で確保したオルトロスの子は大樹の村で育てることになった。
オルトロスの子が捕らえられた場所に戻すことも考えたが、捕らえられた場所が人間の国なので断念した。
こちらは戻すだけでも、オルトロスの子を放り込んできたと人間の国が騒ぐ可能性があるからだ。
五村での飼育も考えたが、人の手が足りないそうだ。
なんでもオルトロスは短気で暴れん坊。
それは子でも一緒。
なので誰かがずっとそばにいないとトラブルを起こすからと言われたら、大樹の村で引き受けるしかなかった。
ただ、引き受けるのはかまわないが、放し飼いになるだけだぞ?
まあ、クロの子供の誰かが面倒をみてくれるかもしれないが。
そうそう、あのオルトロスの子は俺に懐かなかった。
吠えてきた。
ちょっとショック。
ヨウコも駄目だった。
ザブトンの子供たちに縛られたことで警戒心が強くなっているのかもしれない。
しかし、そのザブトンの子供たちには従うみたいなので、なんとか転移門を通って大樹の村に連れて来た。
そこでクロとユキを前にしたオルトロスの子は、死んだ振りをした。
完璧だった。
心配になった俺が体を揺さぶっても微動だにしなかった。
本当に死んだかと思った。
だが、いきなり死んだ振りをしても、それに騙されるクロとユキではなかった。
いや、オルトロスの子のことはどうでもよかったが、俺が心配そうにしているのが気に入らなかったみたいだ。
クロが軽く吠えたら、オルトロスの子はすごい勢いで起きた。
勢いがつきすぎて、二本足で立ったみたいになってた。
ちょっと笑ってしまった。
まあ、仲良くやってほしい。
魔王のほうでも、何組かの不審者集団を捕まえていた。
俺が連絡をするまえに、すでに動いていたらしい。
逮捕はティゼルが指揮してた?
どういうことかな?
現場には出ていない。
王城から指揮をしていた?
いや、そうだとしてもだな、あまり娘にハードなことを……本人が志願してやってる?
集められた情報から、的確に相手の隠れ家を推測し、事前に逮捕している。
俺の娘とは思えない活躍だ。
誇らしい。
違った。
感心している場合じゃなかった。
確かに安全なのだろうけど……あれ?
逮捕の実行部隊にゴールたちが参加しているのはどういうことだ?
指揮官?
まだ子供だぞ。
魔王国では実力主義なのかもしれないけど、あまり無茶なことをさせないでくれ。
いや、確かにもう結婚しているから一人前といえば一人前だが。
うーん……ゴールたちに関しては、ゴールたちの自主性に任せよう。
無茶振りはしないでやってくれよ。
そうそう、忙しいと野球のピッチャーもやってくれなくなるからな。
それで、犯人というか黒幕はゴールゼン王国なのか?
クーデターが起きて、政権と国名が変わったと思ったが……
そうだけど違う?
ゴールゼン王国が黒幕だけど、すでに壊滅。
各地に送り込まれた実行部隊が取り残され、個別に活動をしていると。
撤退しないのか?
撤退したくても戻る国がないのね。
だったら降伏すればとも思うが、混乱を起こそうとしていた者たちだからどう扱われるかわからないから、それもできないと。
うーん。
気持ちはわかるが、だからといってもらった命令を実直に行わなくても。
誰も褒めてくれないぞ。
まあ、捕まった者たちの処分は魔王国に任せているので口は出さない。
だからというわけではないが、五村にザブトンの子供たちを連れて行った件は忘れてくれると嬉しい。
緊急事態だったから、連絡が追いつかなかったんだ。
転移魔法が使える始祖さん、酒を飲みすぎて潰れてたし。
小型ワイバーン通信で連絡はしたが、届くのが事後になってしまうのはわかっていた。
すまない。
……
謝っておいてなんだが、そんなに簡単に許していいのか?
助かるけど。
ん?
助けたオルトロスの子が見たい?
魔王国でも珍しい魔獣なのか。
かまわないぞ。
えっと、オルトロスの子供はどこにいるかなぁ。
オルトロスの子は、グーロンデの背後にぴったりと隠れるようにいた。
グーロンデに懐いたようだ。
頭が複数ある同士で、仲間意識ができたのかな?
違うな。
グーロンデはドラゴンの姿になっていない。
オルトロスの子は、グーロンデが頭が複数あるドラゴンとは知らないはず。
つまり……
ただ一番強い者を探しだし、従っているだけのようだ。
グーロンデの迷惑にはなっていないようだな。
グーロンデもオルトロスの子をかわいがっている。
なら、オルトロスの子はグーロンデに任せよう。
あまり甘やかすと、ギラルが嫉妬するから注意だぞと言ったら笑われた。
魔王、オルトロスの子はグーロンデの後ろにいたぞ。
俺が伝えた魔王は姉猫、子猫たちに絡まれていた。
オルトロスの子を気にする魔王に、姉猫、子猫たちが嫉妬したようだ。
仲がいいなぁ。
俺にも嫉妬してほしい。
そう思ったら、ルーやティア、アン、リアたちにわき腹を 突 ( つつ ) かれた。
祝! コミック四巻、重版出来!
書籍も頑張らねば。