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聖獣サンゲツ

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聖獣サンゲツ

新入りの虎が屋敷の中を移動していると、グーロンデと一緒にいるオルトロスのオルと出会った。

オルトロスのオルは虎を見て少し固まったあと、虎に向かって吠えながら走り出した。

勝てると思ったのだろう。

吠える声が嬉しそうにも聞こえる。

そして、あと少しで虎に飛びかかれるという距離で、虎の背中からミエルが顔を出した。

オルの声がうるさかったのだろう。

ミエルに続いてラエル、ウエル、ガエルも顔を出した。

四匹の姉猫たちは、虎の背中に乗って寝ていたようだ。

それをみたオルは吠えるのをやめ、虎の目の前で奇麗なUターン。

グーロンデのところまで戻り、あれはずるいとジタバタしている。

グーロンデが苦笑しながら、オルの頭を 撫 ( な ) でて 慰 ( なぐさ ) めた。

甘やかしすぎだと思うぞ。

そして虎、驚かせて悪かったな。

大丈夫か?

ミエルが俺に文句を言うのは違うよな。

まあ、虎と仲良くしているようでなによりだが……虎はミエルたちが守るのか。

そうか、頼んだぞ。

ああ、わかっている。

コタツ禁止を解除する件は、アンにやんわりと伝えておこう。

虎がオルとグーロンデの次に遭遇したのは、ヨウコ。

ヨウコは珍しいものをみたと虎を観察したあと、ちょっと考えてからドースを呼んできた。

なぜドース?

そして、ひそひそと話をするのをやめてくれないかな。

不安になるから。

なんでもない?

ほんとうに?

この虎、普通の虎だよな?

二人そろって 頷 ( うなづ ) いたから、信じるけど……

いや、それならどうしてヨウコがドースを呼んだんだ?

虎をなにかイベントに使うのか?

……違うな。

この虎になにか秘密があるんだな?

隠さずに申告するように。

虎は聖獣の子孫だそうだ。

……

聖獣ってなんだ?

「神域に近づいた獣のことで、昔は多くいたが今は猿のセイテン、象のガネシュイ、虎のサンゲツの三匹だけのはず」

昔は熊や牛、馬など多くの聖獣がいたと、ヨウコが説明してくれる。

そういえば、狐の聖獣はいないのか?

「狐の聖獣は神に認められ、神の使いになった」

なるほど。

神の使いといえば、ニーズが頭に浮かぶな。

蛇の神の使いだったはず。

ニーズも元聖獣だったのかな?

俺がそんなことを考えていると、ドースが俺の肩を叩いた。

「狐の聖獣が神の使いになったあと、神の直臣になったが 出奔 ( しゅっぽん ) 。

現在、 五村 ( ごのむら ) の村長代行をしているぞ」

……

それってつまり……

「古い話をせんでくれ」

ヨウコがドースを睨む。

つまり、ヨウコは元聖獣ってこと?

へー。

知らなかった。

神の使いと直臣の違いや、どうして出奔したのか色々と聞きたいけど、話を本題に戻す。

それで、聖獣の子孫ってのは?

ヒトエみたいな感じでいいのかな?

違う?

虎の聖獣は人間の国で 崇 ( あが ) められていたが、七百年ほど前に虎の聖獣の子供が人間の勇者によって誘拐された?

崇められていたんだろ?

どうして勇者が子供を誘拐するんだ……ああ、偽物勇者か。

なるほど。

それで、その誘拐された子供は行方不明。

ここにいる虎は、その子孫の可能性が強いと。

証拠は?

目の色が特徴?

うーん、奇麗な目だとは思うが、ほかの虎の目を知らないからよくわからない。

それで、肝心なのは……この虎が聖獣の子孫だとして、なにか問題があるのか?

問題はない?

そうか、よかった。

さっきからミエルたちが心配そうに俺を 睨 ( にら ) んでいたからな。

虎はこのまま、ここに住んでいいぞ。

翌日。

でっかい白虎が、俺の前にいた。

三階建てぐらいの高さはあると思う。

虎の聖獣のサンゲツだろう。

問題ないって言ったのに……

ん?

あ、これはこれはご丁寧に。

三メートルぐらいの銀色の毛皮の熊をもらった。

肉や骨も付いているから、食べろってことかな?

そのようだ。

それでご用件は……うちにいる虎の件だよな。

わかってる。

それより、怪我は大丈夫か?

サンゲツは見た感じ、満身創痍だった。

なんでも数か月前に神からの啓示を受け、五村に向かっていたらしい。

五村に向かう理由は聞かされていなかったそうで、五村でヨウコから子孫の話を聞き興奮。

居ても立っても居られない状態のまま転移門を使って移動。

ヨウコの警告を聞かずに大樹のダンジョン内を疾走し、アラクネのアラコに止められた。

怪我はそのときのもの。

ヨウコが止めなければ、危なかったらしい。

とりあえずフローラの治癒魔法を受けつつ、サンゲツは虎と対面した。

……

サンゲツはハイテンションで喜んでいるが、虎のほうはわけがわからず 呆然 ( ぼうぜん ) としている感じだな。

虎の背中にいるミエルたちのほうが反応している。

だけど、 威嚇 ( いかく ) するのはやめなさい。

別に虎を奪いに来たわけじゃないんだから。

そうだよな?

え?

連れ帰りたい?

えーっと……

それは虎の気持ち次第だな。

虎が行きたいなら止めないが、ここで暮らしたいと虎が言うなら全力で守る。

あ、サンゲツも無理やり連れ帰るつもりはないと。

よかった。

そういうことだから、ミエルたちは攻撃魔法を撃たないように。

サンゲツは無抵抗……ダウンしてるー!

フローラ、治癒魔法を急いで!

サンゲツの名前の元ネタは山月記からですが、元人間だったりはしません。

虎の神様って、意外といない。(虎そのものが崇められる感じですね)

一応、名前候補として「バース」と「ランディ」があったのですが、あまりにもあまりだったのでやめました。

今年ラストの更新になります。

来年もよろしくお願いします。

年始は実家(ネット環境なし)に戻りますので、次回の更新は帰ってくるであろう四日以降になります。

ご容赦ください。