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三村の悩み

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三村の悩み

北のダンジョンの訪問は、南のダンジョンと同じように進行する。

ただ、俺から巨人族に渡す大樹の村の作物は多めになった。

できるだけ同じとは言われているが、食べ物に関しては種族差を考慮しないと困るだろう。

ラミア族と巨人族では、食べる量が違い過ぎる。

その分、ほかの物で調整となってしまったが……問題らしい問題はおきていない。

歓迎の宴に招かれ、一泊。

そして出発まで同じような流れ。

山エルフのヤーがなにかお願いしているのも同じ。

ちょっと笑ってしまった。

さて、次は東のダンジョンに向けてと思うのだが、出発までまだ少し時間があるのでグルーワルドの相談に乗った。

実は今回、俺からの贈り物に続いて各村の産物が贈られている。

各村の代表も同行しているからな。

一村 ( いちのむら ) からは紙と竹細工。

二村 ( にのむら ) からは 絹 ( きぬ ) と豚肉。

三村 ( さんのむら ) からは 鶏卵 ( たまご ) 。

四村 ( よんのむら ) からは香辛料。

五村 ( ごのむら ) からは工芸品。

出発前に贈り物が被らないように調整する時間を取ったのだが、そこで問題が発覚した。

三村に特徴的な産物がないことだ。

三村にある物は、すべて大樹の村にもある。

なので、大樹の村から贈る鶏卵を控え、三村が鶏卵を担当したのだが……

「三村のために、大樹の村に遠慮させるなんて……恥ずかしい。

大樹の村産の鶏卵を受け取れないラミア族や巨人族に申し訳ない」

グルーワルドをはじめ、ケンタウロス族が大きく落ち込んでしまった。

まあ、ケンタウロス族は移住当初、男女比が極端に 偏 ( かたよ ) っており、あまり変わったことはさせられなかった。

生活に慣れてもらうことと、子育てが優先だったからな。

フカ男爵一行が移住してきたことで男女比は改善されたが、今度は先にいる者と後から来た者の差を埋めることに苦心していた。

三村の独自色を出すことが疎かになっていたな。

……

ケンタウロス族の村ってだけで、独自色だとは思うが……

定時連絡で頑張ってくれているし。

俺は焦ることはないと言っているのだが、グルーワルドは時間があれば考え込んでいる。

うーん。

三村で作る産物か……

理想は三村だけが作れることだけど、そこに 拘 ( こだわ ) りすぎるのもよくない。

四村にカレー用の香辛料作りを任せているように、三村に任せるなにかがあればいいのだが……

なにがあるだろうか?

俺とグルーワルドが悩んでいると、ユーリがやってきた。

「ほかの村に比べて格が落ちる五村としては、グルーワルドさんの悩みは贅沢だと思いますよ」

「ユーリさま」

「ユーリ さん ( ・・ ) でしょ。

私は村長代理の代理。

貴女は村長代理なのですから。

呼び捨てでもいいぐらいよ」

「そ、そういうわけには……」

ユーリがグルーワルドをいじめるが……これはグルーワルドを考え込ませないためだな。

「鶏卵の件は、大樹の村に遠慮させたのではなく、大樹の村の鶏卵と等しい評価を得たと考えればいいのです。

ですよね、村長」

え?

あ、ああ、そうだぞ。

三村の鶏卵が、大樹の村の鶏卵に劣るとは俺は考えていない。

うん、よかった。

グルーワルドが少し笑顔になった。

グルーワルドはこのままユーリに任せよう。

しかし、鶏卵か。

深く考えず、三村の特産はそれでよかったのかな?

しかし、養鶏は各村でやっているしな。

特産と言うなら、三村での養鶏規模を大きくして……

駄目だな。

鶏卵の数は十分に足りている。

いや、余っているぐらいだ。

これ以上の生産は消費できないだろう。

外部に売ろうにも鶏卵は鮮度の問題があるし、消費を期待できる五村は五村で養鶏をしている。

養鶏の消費先として、クロトユキのような店を新しく開く手もあるが……

それをやって、三村の特産が鶏卵と言えるのだろうか。

……

やめておこう。

「村長、出先で考えても良いアイディアが出るとは限りませんよ。

現場を見なければ」

いつのまにかやってきたティアが俺にそう言ってくれる。

そしてティアはグルーワルドを呼び、続きは三村に行ったときにと告げた。

グルーワルドから、悩ませてすみませんと謝られてしまった。

いや、こちらこそすぐにアイディアが出せずに申し訳ない。

うん、とりあえず三村の特産を考えるのはここまで。

続きは三村を訪れたときにしよう。

どうせ、大樹の村に戻ったあと、各村から訪問要請があるだろうから。

万能船が飛び立ち、東のダンジョンに向かう。

東のダンジョンは初めて向かう場所だが、南のダンジョンから北のダンジョンに移動する際におおよその位置は確認したので、迷うことはない。

わざわざ反時計回りで移動したのは、そのためもあった。

しかし、厳密に東のダンジョンの入り口を確認できたわけではない。

東のダンジョンの入り口は地割れのように大きく裂けた場所の底にあり、遠方からでは裂けた部分しか確認できなかった。

まあ、裂けた部分の真ん中だと聞いているから迷うことはないだろう。

問題はどこから降りるかは聞いていなかったことだな。

見た感じ、ロープが必要な崖下りをしなければいけないかもしれない。

あ、万能船でそのまま地割れの中に突入するのね。

なるほど。

って!

「上昇!!!!!!」

俺の叫ぶ声と同じぐらいに、万能船は上空に逃げた。

そして、それを追いかけるように追尾してくる巨大なブラッディバイパー。

かなりの大物だ。

しかも複数。

びっくりした。

俺は【万能農具】の槍を構えるが……

ブラッディバイパーは、すぐさま裂けた部分にもぐってしまった。

逃げるとはらしくない。

「冬眠でもしていたのでしょうか」

リアが弓を構えながらそう言う。

ああ、なるほど。

逃げたのではなく、俺たちを追い払っただけか。

しかし、どうしよう。

【万能農具】の槍で地面ごと攻撃することはできるが、それをすると東のダンジョンに影響があるかもしれない。

北のダンジョンで討伐したときは、ハクレンやラスティが活躍してくれたが……

いまは妊娠中だからな。

一度、大樹の村に戻ってドースかギラルに手伝ってもらう……のは駄目だな。

槍を投げるのと同じだ。

ライメイレンやグーロンデでも同じだろう。

ヘルゼは……ハクレンから離れないだろうし、マークなら常識人っぽいから大丈夫かもしれないが……来てくれるかな?

「村長、さすがにこれでは東のダンジョンに近づけません。

どうします?

春まで待ちますか?」

リアの言葉に、俺が首を傾げる。

「これまで、東のダンジョンにブラッディバイパーがいるとの報告は聞いていません。

つまり、ここにいるのは冬眠でたまたまやってきただけと考えます。

春になれば、各地に移動するでしょう」

そうか。

しかし、数がいた。

ここに居つく可能性もある。

「その時はその時で、ハクレンさまにお願いすればいいのでは?

春なら、出産も終わっているでしょうし」

あー、動けなかった分、喜んで行きそうだな。

となると、あとの心配は東のダンジョンに住むゴロック族だが……

「ダンジョンから出ないのであればゴロック族は大丈夫です」

リアがそう断言する。

ゴロック族は岩に擬態して身を隠すのだったな。

……

わかった。

残念だが、東のダンジョンは春まで持ち越しだ。

マーク  ドラゴン。スイレン(ドースの娘)の旦那。

ヘルゼ  ドラゴン。マークとスイレンの娘。ハクレンのお腹の中の子に運命を感じている。

ハイエルフ「出る出る詐欺ですか?」

ゴロック族「失敬な。姿を見せないことで存在感を示す高度な芸です」(本編ではこんな喋り方ではありません)