試練突破
試練突破
俺、レギンレイヴ、始祖さんの三人一組で階段を登った。
ハイエルフたちの言っていた通り、大きい部屋だ。
予想通り、子供たちはいなかった。
代わりにいたのは、ザブトンの子供が三匹。
一番最初に階段を登った組だな。
ほかの者は先に行ったのに、お前たちは俺が言った通りにここで待っていたのか。
よしよし。
あとで、ご褒美をやろう。
蒸 ( ふ ) かしたジャガイモ?
いいぞ、好きなだけ食べていいからな。
ははは。
おっと、いけない。
子供たちを追わなければ。
お前たちはどうする?
俺の後ろを警戒しながらついてくる?
わかった。
後ろは頼んだぞ。
進む方向はわかりやすい。
川に 沿 ( そ ) って行くだけだ。
少し進むと、川に細い橋が 架 ( か ) かっていた。
これが“正道の試練”か。
細い橋と言っても、幅は十五センチはある。
簡単簡単。
俺が先頭で橋を渡っていると、後ろで大きな水音がした。
え?
振り返ると、レギンレイヴと始祖さんがいなかった。
……
え?
二人とも、川に落ちてる。
しかも、溺れてる?
ま、まずい!
俺は川に飛び込……むのは危険だったな。
溺れている者に抱き着かれ、俺も溺れてしまう。
そう 躊躇 ( ちゅうちょ ) したが、俺の足元の細い橋が消え、俺も川に落とされてしまった。
そういえば、連帯責任だった。
仕方がない。
服で浮き輪を作るか。
そう俺が考えたところで、川の上流から浮き輪らしきものが流れてきた。
偶然?
いや、滝に落ちてきた者たちから、浮き輪の話は聞いていない。
溺れている二人を見て、ダンジョンが出してくれたのか?
親切だな。
俺は泳いで浮き輪を確保。
溺れているレギンレイヴと始祖さんに、浮き輪を届けた。
そして、俺たち三人は川に流され、そのまま下流に。
後ろにいたザブトンの子供たちが糸を伸ばして俺を助けようとしてくれたが、糸がなにかに弾かれて俺には届かなかった。
ありがとう。
俺たちのことは気にせず、先に進んで……
ザブトンの子供たちは、川に飛び込んで俺を追いかけてきた。
嬉しいけど、この先に滝があるんだぞ。
うん、滝から落とされるのはなかなか怖い。
始祖さんの魔法で体と服を乾かしてもらいながら、どうして落ちたのかを聞いた。
「あそこには強力な結界が張られていて、私は飛ぶことができませんでした」
レギンレイヴの言葉に、始祖さんも頷く。
なるほど、飛べなかったのか。
……
いや、普通に歩けば落ちないと思うんだが?
「すみません」
「すまない」
レギンレイヴと始祖さんは素直に謝罪。
二人とも、細い橋は苦手なようだ。
えーっと……
とりあえず、足元を見ない。
姿勢はまっすぐ。
視線もまっすぐ。
あの幅だったら、それで渡れるから。
頑張ろう。
渋るレギンレイヴと始祖さんを連れ、俺は再挑戦に向かった。
俺たちの後ろに、最初に階段を登ったザブトンの子供たちがついてくる。
次からは、俺たちが川に落ちても追いかけてくる必要はないからな。
危ないことはしないように。
“正道の試練”に再挑戦。
うん、頑張った。
姿勢はまっすぐと教えたのに、二人とも見事なへっぴり腰だった。
いいんだ。
もう一回ぐらい、滝につき合おう。
なんとか“正道の試練”を乗り越えた俺たちを待っていたのは“ 清廉 ( せいれん ) の試練”。
五十センチ四方のタイルが敷き詰められた場所の先に扉がある。
あの扉まで行けばいいのだろう。
ただ、壁際にずらりと並んだ悪魔の像が、泥団子を握っている。
先に進んだ者たちが残してくれたメッセージで、特定のタイルを踏むと泥団子を投げつけられるらしい。
投げられただけでは失格にならず、泥団子がぶつけられると失格。
床のタイルが消えて、川に落下する仕組みのようだ。
ここは頑張った。
四回しか落ちなかったんだからな。
「吸血鬼の始祖ともあろう者が、ああも勘が悪くてやっていけるのか?」
「天使族のお嬢さんは足跡が残っているタイルは安全と言っていたが、違ったようだね」
二人とも、喧嘩しない。
扉だらけの小部屋が続く“六角の試練”。
個別行動が可能と聞いていたが、一人が通ると扉が消えるのか。
強制的に個別行動をさせられるようだ。
しかし、挑戦する前に少し高台から小部屋群を見渡せるので方向感覚さえちゃんとしていれば、それほど難しくはないだろう。
二回しか落ちなかった。
「最初に確認しましたよね。
右側三つ目の部屋には床がないって」
「そっちこそ、変な仕掛けを作動させただろう。
ゴーレムに追われるなんて、貴重な経験だったよ」
二人とも、喧嘩しない。
次の試練は……
先行していた組が、それなりにいた。
ハイエルフ、山エルフ、リザードマン、クロの子供、ザブトンの子供。
ルーたちや子供たちはいない。
先に進んだようだな。
ここにいる者たちは……休憩しているわけではなく、試練に挑戦中のようだ。
どんな試練なのかな?
“ 静寂 ( せいじゃく ) の試練”
川の横に池がある。
そこで各組、魚をなにか一匹、釣り上げるだけ。
ほほう。
釣りなら、任せてほしい。
これでも、時間を見つけては釣りに行くぐらいには趣味にしている。
腕前?
……
まあ、細かいことは横に置いておいて。
釣り具、 餌 ( えさ ) はちゃんと用意されている。
時間制限はないので、釣れるまで粘ればいい。
よし、頑張ろう。
……
レギンレイヴが五秒ほどで二十センチの魚を釣り上げた。
…………
釣り上げた魚はリリース。
ほかの人が進めなくなるからな。
先を急ぐ?
いや、待ってくれ。
俺はもう少しここで釣りを……
レギンレイヴと始祖さんに、無理やり先に進まされた。
あとで戻ってこよう。
この先も試練が待ちかまえていた。
しかし、俺、レギンレイヴ、始祖さんは 果敢 ( かかん ) に挑戦した。
喧嘩もした。
仲直りもした。
どんな厳しい試練も、三人いればなんとかなる。
そう思いながら、俺たちは先を進む。
ちなみに、さきほど俺たちの横を流れる川に、ルーの組とティアの組が流されていった。
いま、不貞腐れた顔のウルザとアルフレート、ティゼルが流されていた。
着衣のままだが、浮き輪を持っているので溺れる心配はなさそうだ。
滝は思ったよりも高いから気をつけるんだぞー。
ガルフの組が流されたのを見てから、二つの試練をクリアした。
そろそろゴールであってほしいとの俺の希望を叶えるように、大きな看板があった。
“最後の試練”。
ふふふ。
長かった。
だが、それもここまでだ。
俺、レギンレイヴ、始祖さんはゆっくりと進んだ。
……
明るい場所。
外……浜に出たようだ。
俺たちが入った場所からはかなり離れるのか?
見覚えのない場所だ。
そして、俺たちを待ち受ける一団。
誰だ?
……
…………
浜には見覚えがなかったが、待ち受けていた一団の先頭にいる者には見覚えがあった。
以前、シャシャートの街で海の種族と揉めたときに知り合った、海の種族の代表者。
老齢の男の人魚。
彼は俺たちをみて、ゆっくりと口を開いた。
「優れた挑戦者たちよ!
よくぞここまでやってきた!
だが、ここが最後の試練!
果たして突破できるかな!」
そして俺たちの前に差し出される海産料理。
タコの足だな。
うん、美味い。
海岸のダンジョンは、海の種族が管理しているダンジョンだそうだ。
ああ、浮き輪を流してくれたのは海の種族だったのか。
ありがとう。
しかし、それなら最初に入り口を発見した海の種族はなんだったんだ?
案内してくれた海の種族も?
まさか、俺たちをおびき寄せる罠か?
「いえ、あそこがこのダンジョンの入り口だとは知らなかっただけでしょう。
海の種族でも、ダンジョンのことはここにいる極一部しか知らないことですから」
そうなのか?
種族の 長 ( おさ ) だけがダンジョンのことを知らされ、継承していると。
それなら知らなくても変じゃないか。
しかし、何千年もダンジョンに挑戦する者がおらず、最後の試練だけが外部に流出。
揉め事を解決する方法になったと。
なるほど。
……
つまり、このダンジョンはなんなんだ?
「それは私たちにもわかりません。
私たちは言い伝えに従って管理しているだけですから」
ということは……
「“最後の試練”を乗り越えた者は、先に進むことができます。
あちらへ」
老齢の男の人魚が指し示す場所……浅瀬に光の扉が現れていた。
転移門みたいだなと思ったら、本当に転移門だった。
この先になにが待つのか……
……
………………
ルーたちが再挑戦してくるだろうから、ここで待っててもいいかな?
いや、レギンレイヴと始祖さんだけだと頼りないとかじゃなくて。
人数が多いほうが心強いだけだから。
ちなみに、次にやってきたのは最初に階段を登ったザブトンの子供たちだった。
お前たち、すごいぞ。
次回、ダンジョンの謎解明?
た●し城を知っている人が多すぎてビックリした。
三十年以上前の番組ですよ。
“静寂の試練”で、クロの子供たちだけの組は、竿を咥えて持つ係、アタリをチェックする係、餌つけ係と分担して頑張っていました。
餌をどうやってつけたかは、苦労していたとだけw