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白鳥のため池

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白鳥のため池

夜。

ライトアップされたため池の水面で、巨大な白鳥が優雅に泳いでいた。

そして、いつのまにか始まった巨大な白鳥のダンス。

正直、俺はダンスとかよくわからないが、それでも見続けてしまう力がある。

翼によってすくい上げられた水すら計算された動きなのだろう。

見事なものだ。

そう感心したが、それは早かった。

白鳥のダンスに、黒鳥が参加。

二羽による競演は、さきほどまでのダンスよりもすごかった。

なにがどうすごいかわからないが、ただすごい。

時間を忘れるぐらい、見続けてしまう。

少し前まで、人の姿で喧嘩していたとは思えない息の合い具合。

これができるのに、どうしてあれだけ喧嘩をしていたのか。

そう思わずにはいられない。

二羽のダンスが終わると、ゆっくりとため池の中心で俺たちに挨拶。

それを見ていた住人たちは大きな拍手で応えた。

そして、丸々としたラグビーのボールのような形のパンが投げ込まれる。

これは白鳥からの要望だ。

ダンスが見事だったら、パンを投げ込んでほしいと。

そう言われたお昼ごろから鬼人族メイドたちはパンを焼いていたので、パンが投げ込まれるのは確定だったようだ。

投げ込まれたパンの塊を、巨大な白鳥と黒鳥が 啄 ( ついば ) んでいる。

流れで許可したが、食べ残しがため池を汚すかもしれないから次回からはやめよう。

ん?

沈んだパンはポンドタートルたちが食べてくれる?

それは助かる。

あー、子供たち。

パンは近くに投げるのであって、ぶつけるのは間違いだぞー。

ウルザ、スナップを利かして投げるんじゃない。

弾丸みたいになってるから。

それと、巨大な孔雀たち。

どうする?

このあと出番だったが?

あのダンスのあとにやれるか?

……

わかった。

日を改めよう。

大丈夫だ。

残りの時間は魔王が頑張る。

パレードで目立てなかったからと、いろいろと仕込んでいるみたいだから。

翌朝。

うん、魔王は頑張ったと思う。

だから、それに関しては語らないでおこう。

早く忘れてあげるのが魔王のためだ。

俺は屋敷内を見回り、朝食をとる。

そのあと、俺は畑の見回りに。

いつもの日常……ため池では、巨大な白鳥と黒鳥が寝ていた。

昨晩の主役だったから、疲れているのかな?

寝姿は同じで仲のよさを感じるが……

やはり大きい。

普通の白鳥のサイズになれないものだろうか?

畑の見回りから戻ると、屋敷の屋根に普通のサイズの孔雀たちが止まっているのをみつけた。

こっちは普通のサイズになれるんだな。

できれば、今後もそのサイズでいてほしい。

ところで、その場所はアイギスがよくいる場所なんだが……

アイギスはどうしたと思ったら、孔雀のあいだにいた。

鳥見知りはかなり解消したようだ。

だからとは言わないが、 鷲 ( わし ) が俺の部屋で 拗 ( す ) ねてた。

拗ねるのはかまわないが、なぜ俺の部屋なのだろうか?

まあ、昼間は使わないからかまわない。

そして魔王。

ふて寝するなら、客間ではなくどこか空き部屋で。

客間じゃないと猫たちが来ない?

たしかにそうだな。

気がすむまで寝ててくれ。

昼食。

巨大な白鳥と黒鳥が人の姿になってやってきた。

白鳥が濡れているが、どうしたんだ?

そうか、 村の男性 ( ガルフ ) に色目をつかって、 保護者 ( 奥さん ) から投げっ放し式のジャーマン・スープレックスをくらってため池に叩き込まれたんだな。

三回も水面でバウンドしたのか。

見たかっ……失礼。

風呂に入ってこい。

あと、自重を覚えるように。

これで本当に神の使いなのだろうか?

昨日、一通りの説教が終わったあと、巨大な白鳥は自分が神の使いだと主張した。

ただ、証明できる物はない。

言葉だけ。

だが、巨大な黒鳥がしぶしぶ認めていたから、本当なのだろうと俺は信じた。

信じたと言ったのに白鳥は証明すると、神が認めたダンスを披露することになったのが昨日の流れなのだが……

たぶん、見せびらかしたかったのもあるのだろう。

その流れに巨大な孔雀たちも乗っかった。

孔雀たちは霊獣なのだそうだ。

よくわからないが、聖獣みたいなものかな?

聖獣は神域に近づいた獣のことだと教えられたが……全然違う?

ああ、獣の進化ではなく、神によって直接生み出された存在と。

なるほど。

となると巨大なカラスも神の使いか霊獣なのだろうかと見たら、太陽神の化身なのだそうだ。

なかなか大きくでたものだ。

だが、疑う気はおきない。

そうなのだろうとなぜか納得できた。

しかし、その太陽神の化身を捕まえたザブトンや、叱った鷲はなんなんだろう?

そして、太陽神の化身は捕まえられたり叱られたりしていいのか?

太陽神の化身もいろいろあると。

そうだろうけど。

カラスは白鳥たちのダンスの流れに乗らず、ドワーフたちが出す酒を楽しむことにしたようだ。

その酒の影響か、昼を過ぎてもまだ寝ているらしい。

かまわないけどな。

今日の午後は、ウルザ、アルフレート、ティゼルが学園に戻る。

また寂しくなるな。

ウルザは新しい弟と妹であるヒカルとヒミコとは離れたくなさそうだが、行かないという判断はしないようだ。

まあ、短距離転移門を使えば、いつでも会えるしな。

あまり心配しすぎても、子供たちの機嫌を損ねるかもしれない。

送別会っぽいのは昨日の晩にやっているので、見送るだけ。

ん?

まだ酒が残っているのか 千鳥足 ( ちどりあし ) の巨大なカラスがやってきて、ウルザたちの進路を示した。

西。

……

たしかに魔王国の王都は西にあるけど、転移門を使うからこれから行くのは南にある大樹のダンジョンなんだ。

あ、うん、ごめん。

子供たちは少しだけ西に進んだあと、大樹のダンジョンに向かった。

すまない、気を使わせた。

異世界のんびり農家、書籍八巻、コミカライズコミックス六巻、ともに2020年8月7日発売予定です。

よろしくお願いします。

更新が遅くなってすみません。