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圧迫

異世界のんびり農家 — ncode.syosetu.com · All chapters

圧迫

現在、屋敷の一室にて、文官娘衆の一人とヴェルサがザブトンの説教を受けていた。

いや、ザブトンはなにも言っていないから説教ではないな。

とくに動いているわけでもない。

ただ、見ている。

じーっと見ている。

それに対し、文官娘衆の一人とヴェルサはただ 平伏 ( へいふく ) しているだけ。

いや、ヴェルサがなんとか動こうとしているが、動くとザブトンが足で床を叩き、ヴェルサは平伏の姿勢に戻る。

なんだこれ?

うーん。

…… 圧迫 ( あっぱく ) かな?

その圧迫が長時間続いているので、周囲に影響を与えている。

どのような影響かというと、まずは猫たち。

父猫、母猫、姉猫、妹猫、虎のソウゲツは大樹のダンジョンに避難した。

ソウゲツはともかく、猫たちは猫とは思えない統率のとれた団体行動だった。

つぎに中庭の 鶏 ( にわとり ) たち。

普段の鶏たちは自由に動き、それなりに 賑 ( にぎ ) やかなのだが、今日は小屋に 篭 ( こも ) って身動きしない。

死んだふり作戦のようだ。

フェニックスの 雛 ( ひな ) のアイギスと鷲は、早朝に森に狩りに出かけた。

出かけたのはザブトンが圧迫する前だったから、野生の勘だろう。

残っていたのか、野生の勘。

まあ、鷲にだろうけど。

牧場エリアに、牛、馬、山羊、羊たちの姿はない。

全て温泉地に避難した。

最近やってきたペガサスたちだけが取り残されて、慌てている。

連れて行く余裕はなかったのかな?

温泉地では山羊たちがライオン一家に囲まれ、とても大人しくしていると報告を受けている。

今度、牧場エリアにライオン一家を招待してみようか?

そうすれば、山羊たちも大人しくなるかもしれない。

居住エリアの世界樹に住む巨大な蚕たちは、世界樹を盾にして屋敷から隠れ、防御姿勢で一か所に固まっている。

同じく、果樹エリアの蜂たちも、一か所に集まっての防御姿勢。

花畑の妖精たちは……いない。

どこかに隠れているのかな?

ため池のポンドタートルたちは……池の底から上がってこない。

それどころか、魔法でため池を凍らせて壁を作ろうとしている。

それは勘弁してくれ。

この時期にため池の水が使えなくなるのは、いろいろと困る。

こんな感じの影響。

ちなみに、子供たちは座学の時間なのだが、急遽予定を変更して村の南にあるレース場で魔法の実技練習をしている。

担当教師であるグーロンデの防御魔法で守られながら。

ザブトンが圧迫している原因はわかっている。

文官娘衆の一人が、ヴェルサの書いた本を子供の手が届く場所に置いたからだ。

まあ、あれだ。

男性同士の。

危険物。

子供が手にする前に発見されて回収されたが、だからといって許されることではない。

ザブトンがそれを知って怒り、本を置いた文官娘の捕縛命令が出された。

捕まえたのは 五村 ( ごのむら ) でこっそり活動しているザブトンの子供。

文官娘は魔王になにか交渉事があったようで、 五村 ( ごのむら ) の酒肉ニーズにいた。

さすがにそこでザブトンの子供たちが捕まえるとトラブルになるので、俺が呼ばれ、俺の命令で捕まえることになった。

酒肉ニーズで楽しんでいた魔王たちには、騒がせて申し訳なかった。

まあ、その席で商隊の人たちと話ができたのは有益だったけど。

本を置いた文官娘は頑張って 粘 ( ねば ) ったが、翌日の朝には大樹の村に戻され、ザブトンの前に。

ヴェルサは騒動を知り、その文官娘の減刑を求めて、一緒に圧迫を受けている。

趣味はあれだが、同志を見捨てない姿勢には、感心する。

そして、朝から続いている圧迫は昼を過ぎている。

ドースたちから、そろそろ止めたらどうだと言われるが、俺は悩んでいる。

本の内容が内容だからな。

読むことも書くことも規制する気はないが、子供が手にするのは早い内容だと思う。

子供の手が届くところに危険物を置いたことは、十分反省してもらいたい。

結局。

夕食のときに、俺がザブトンに頼んで終わらせた。

圧迫が終わっただけで、ザブトンの怒りは 鎮 ( しず ) まっていなかった。

大樹の村にあるヴェルサの趣味関係の本が、全て集められた。

所有者はいろいろと偽装して保管していたが、ザブトンの子供たちが次々と見破って回収していった。

けっこうあるな。

ヴェルサは約束を守って大樹の村では趣味に関わる行動をしていないが、知らないうちに 浸透 ( しんとう ) しているということか?

違う?

成人男性が女性に興味を持つように、成人女性は男性同士の関係に興味を持つ?

ヴェルサがいなくても、自然とそうなっていたと?

そんな馬鹿な。

……

そんな馬鹿なと信じたい。

ザブトンはこの大量の本を全て燃やすつもりだったが、 焚書 ( ふんしょ ) はよくない。

文化の破壊だ。

守るべき価値があるのかと聞かれると返事に困るが、それを判断するのは俺ではない。

なので、俺は止めた。

ヴェルサ、俺はお前の趣味の保護者になる気はないから、持ち上げないように。

焚書をまぬがれた本は厳重な箱に詰められ、海岸のダンジョンの先にあるヴェルサの屋敷に運び込まれることになった。

あそこなら、多少増えたところで影響はないだろう。

海にコップの水を捨てるようなものだからな。

ヴェルサの屋敷までの輸送は始祖さんに頼むとして、それまでは厳重にザブトンの子供たちに見張られ、屋敷の一室に。

これでこの件は終わり。

ザブトンの圧迫がなくなり、村は普段の様子を取り戻しつつあった。

……

太っていた女王蜂、少し 痩 ( や ) せた?

痩せたんじゃなくて、やつれた?

なるほど。

いや、俺に文句を言われても……

わかったわかった、

えーっと、ザブトンに言うのは違うな。

ザブトンが怒らないように、注意しておくよ。

でもって、兵隊蜂よ。

ダイエットのためにザブトンを連れて来てくれと頼まれても困る。

第一、お前たちも怖がっていただろ?

ちがう?

あれは相手を油断させるための死んだふり?

わかった、そういうことにしておこう。

オルトロスのオルは、グーロンデと一緒です。

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