LNCrawler

考えるゴール

異世界のんびり農家 — ncode.syosetu.com · All chapters

考えるゴール

僕の名はゴール。

無理難題を出されても、笑顔で応える男。

に、なりたいと思っている今日この頃。

現実は、なかなか厳しいようだ。

苦笑いで応えてしまった。

慌ててはいけない。

冷静に思考を進める。

……

猿はいつからこのあたりに?

「数年前から森で見かけてはいました。

ただ、畑に手を出されたのは今年になってからです」

なるほど。

今年の収穫が駄目になったと言っていたけど、村は大丈夫なのか?

「狩りと森での採取でなんとか食べていけるぐらいには」

狩りと森での採取……

その狩りと森での採取で、猿の生活が圧迫された可能性は?

「それはないと思います。

村の近くでも、それなりに採取できる場所は残っていますし、ワシらが狩りで狙う獲物は猿にとっては敵でしょうから……」

逆に、猿の生活に余裕ができた可能性のほうが高い。

生活に余裕が出て、子供をたくさん産んだから食料が足りなくなって畑に手を出した?

いや、それだと村の近くで採取できる場所が残っているのが変だ。

畑に手を出される前に、こちら側から猿に対してなにかやったとか?

「畑や村に近づけば 威嚇 ( いかく ) ぐらいはしていましたが、こちらから手を出すようなことはしていません」

だよね。

うーん。

とにかく、猿の様子を見てみようか。

かなり賢いみたいだし、こちらが敵意を見せなかったら、攻撃してこないだろう。

僕はそう判断し、エンデリとキリサーナを村に残して森に入った。

猿による 密集陣形 ( ファランクス ) で出迎えられた。

……

撤退。

猿が武装してた!

「領主さまの兵たちから奪ったものかと」

だろうね!

そして、そういった情報は先にくれないかな!

「す、すみません」

次からちゃんとしてね!

……ふう。

冷静に。

えーっと。

猿たちの鎧はサイズが合っておらず、盾と槍は数が足りなかったけど、しっかりとした密集陣形だった。

ギマ男爵の兵たちから学んだのだろうか?

猿真似にしても、凄い。

そして、交渉の 余地 ( よち ) がなさそうにみえたというか、ない。

僕が森に入っただけであの出迎えだからね。

猿相手に交渉ってなんだと思われるかもしれないけど、村長はどんな動物が相手でも丁寧に接して従えている。

知能が高い猿なら、交渉できるかもと思ったのだけど……うーむ。

「ゴールさま、そろそろ日が沈みます。

宿泊の準備をしませんと」

「村で寝る場所を用意してくださるそうです」

エンデリとキリサーナの提案に、僕は 頷 ( うなず ) く。

村での情報収集をするとしよう。

代表さんが嘘を言っているとは思わないけど、視点を変えると意見が変わるかもしれない。

ああ、その前に。

「代表さん、村の中に猿が入ることは?」

「何度か入ろうとしてきましたが、まだ入られたことはありません」

それはよかった。

寝るのを邪魔されることはなさそうだ。

夜。

「ゴールさま、どうでした?」

「なにか新しい情報はありましたか?」

僕たちのために用意された小屋の中で、エンデリとキリサーナが聞いてくる。

「新しい情報はなかったよ。

やっぱり明日も森に入って猿たちの観察かな」

「観察ですか?」

「うん。

躾 ( しつ ) けと言われているけど、まずは 猿 ( ターゲット ) の生態を知らないと」

「たしかにそうですね」

畑に手を出した理由も調べないと、今回の猿の群れをなんとかしても、ほかの猿の群れがやってきて畑に手を出すかもしれない。

「なんにせよ、簡単には終わりそうにないですね」

「となると、注意しないといけないのは私たちの食料ですね」

援助を求めてきた村に、食料を出してとは言いにくいので持参しているが、三人で五日分ほどしかない。

まあ、ビーゼルのおじさんが三日後に様子を見にくることになっているから、大丈夫だろうけど……

ビーゼルのおじさんが遅れることも考えておかないといけない。

僕は猿の観察に専念して、エンデリとキリサーナには森での採取を頼もうかな。

二人は僕と一緒に行動するにあたって、いつものお嬢様な恰好ではなく、ズボン姿の冒険者だ。

二人とも、髪型はいつもの金髪クルクルだけど。

「とりあえずゴールさま。

数日はお任せしますが、あまりに 進捗 ( しんちょく ) がない場合はさらに援軍を頼むことも視野に入れてくださいね」

僕はエンデリの言葉に頷く。

自分だけでなんとかできるのがベストだけど、無理はしない。

わかっている。

ただ、誰に援軍を求めるかが問題だ。

猿が相手だからなぁ。

真っ先に思いつくのは村長。

だけど、いまは秋の収穫と武闘会で忙しいはず。

お願いできない。

シールとブロンは、村長からまわってきた密偵情報の裏取りと交渉で忙しい。

こっちに来られるなら、一緒に来ているだろうしね。

アルフレートさま、ティゼルさまは……適任ではないように思える。

ウルザなら、なんとかしそうだけど、王都でアルフレートさま、ティゼルさまを見張ってもらわないと。

そうなると、魔王のおじさん?

魔王のおじさんが来られるなら、僕がここに派遣されたりはしないだろう。

村からクロの子供を一頭、借りられれば……駄目だな。

余計に騒動を酷くしそうだ。

ライメイレンさんの巣が近くにあることから、ライメイレンさんに頼むことも考えられるけど、これも駄目だ。

あの人、なんだかんだ言ってもハクレン先生のお母さん。

面倒なことは踏みつぶす性格。

なので、猿だけでなくゴブリンの村ごと滅ぼす可能性がある。

ヒイチロウさまに頼んでもらえれば大丈夫だろうけど、ヒイチロウさまを利用したことに対してライメイレンさんは怒る。

悪手中の悪手。

ハクレン先生に頼んでもらうのもありだろうけど、ハクレン先生は生まれた子供の世話で忙しいだろうからなぁ。

面倒をかけたくはない。

ハクレン先生に来てもらうのも、もちろん駄目。

となると……あとは誰がいる?

ラスティさんも子供を生んだばかり。

ドライムさんも、その子供に夢中と報告を受けている。

駄目だ。

ヨウコさんは 五村 ( ごのむら ) から動けないだろうし……大樹の村関係ではなく、王都かシャシャートの街で考えるべきかな?

「あの、ゴールさま?」

キリサーナが、心配そうな顔でこっちを見ていた。

ああ、すまない、援軍を誰に頼むか考えていた。

「そうでしたか。

急に黙るので、心配しました」

「すまない」

「いえ。

援軍なら、 南方大陸 ( こちら ) の貴族に頼めばなんとかなるのではないですか?

それなりの権限を持たされているわけですから」

ここに転移する前に、たしかにそれなりの権限を持たされた。

しかし、使いどころを間違えないようにとも言われている。

とくに、南方大陸では大物のギリッジ侯爵とは揉めた過去があるしな。

「逆に、ここで頼ることで、ギリッジ侯爵とのあいだの 蟠 ( わだかま ) りを一掃できるかもしれませんよ」

エンデリがそう言いながら、食事の用意をしてくれた。

ありがとう。

食事をして、明日に備えるか。

「はい」

深夜。

村の中に猿が侵入したことはないと言っていたけど、一応の用心で二交代制で見張りをすることにした。

と言っても、外を見張るわけではなく、室内で起きているだけだけど。

まずは僕が寝て、エンデリとキリサーナに起きててもらう。

別に僕に気を使って、黙っていてとは言わない。

ただ夜も遅いので、小声で。

こういった見張りのためだけでも、冒険者を雇えばよかったかなと反省しつつ、僕は寝た。

そして起こされた。

キリサーナの声で。

「エンデリが猿たちに連れ去られました!」

……

は?