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村の外のパレード シャシャートの街 休憩

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村の外のパレード シャシャートの街 休憩

村長視点です。

●人物

ミヨ   四村住人。シャシャートの街に派遣されている優秀な文官。

イフルス シャシャートの街の代官。魔族。

パレードが王都に向けて進むのは延期になったが、パレードが中断されたわけじゃない。

王都に進まないだけで、シャシャートの街の中や外はパレードが続いているような状態だ。

そこで一番人気というか、一番盛り上がっているのは……

たぶん、山エルフたちが行っている馬車の合体変形実験。

合体変形が成功しても、失敗しても盛り上がっている。

急に成功率が上がったなと不思議に思ったけど、なんでもイフルス学園の教師たちが協力しているらしい。

イフルス学園はルーが監督しているはずだから、問題はないと思いたいが……

ミヨからは「あそこは上から下まで要注意人物が多いです」と聞いているのでちょっと不安だ。

山エルフたちが変な方向にいかないように願いたい。

次に人が多いのがクロたちの待機場所。

予行演習はシャシャートの街でも行われたので、シャシャートの街の住人はクロたちのことを知っている。

ただ、予行演習のときはしっかり見れなかったらしく、クロたちを一目見ようと観客が集まった。

クロたちも観客が集まることに悪い気はしないようで、数頭が希望する子供たちを背に乗せて歩いていたりする。

身体が大きいままだから大人が乗っても大丈夫なのだけど、大人で乗りたいと希望する人はいないようだ。

ちなみにだが、子供たちだけで乗せるようなことはせず、ちゃんとハイエルフたちが補佐として一緒に乗っている。

あ、大人たちはハイエルフたちに補佐されるのが恥ずかしいから希望しないのかな?

あと、人が多いというわけじゃないが天使族たちの待機場所。

残念なことに、五村やシャシャートの街でのパレードで、天使族に対して攻撃がされたらしい。

その攻撃をした者たちが三十人ほど集まり、謝罪……

「生きてたか、クソ天使!

今度こそぶっ殺してやる!」

「そちらこそ、まだご存命とは……魔族もなかなかしぶといですね」

謝罪ではなく、改めて勝負を挑んだ。

剣や魔法で勝負するのかなと思ったら、腕相撲や酒をどれだけ飲めるかでの勝負だった。

それでいいのだろうか?

いや、剣や魔法で勝負しろってことじゃないぞ。

「一応、今回は味方ということですので……

あ、いや、槍を投げたのは反射的にというか、あいつが飛んでいるのを放置すると、ろくでもないことが起きるので」

「ただの偵察ですよ。

変なことはしていません。

まあ、私のもたらす情報が正確すぎて、敵にとってはろくでもないことかもしれませんが……

今回は味方なので問題ありませんね」

まあ、険悪な雰囲気を出さずに勝負しているので、俺としては止めない。

こういったのは中途半端に止めたほうが、 遺恨 ( いこん ) が続く。

遠慮しろとか、手加減しろとか言わないから、全力でやるように。

ただ、酒は明日に残さないように。

……

明日に残らないように飲み 干 ( ほ ) せって意味じゃないからな。

ザブトンの子供たちは、着ぐるみの中に入ったまま展示されている。

展示の最中は外に出ていても大丈夫じゃないかと聞いたのだが、ザブトンの指示を守るらしい。

着ぐるみの中の居住性を改善したので、長時間の滞在も問題ないそうだ。

ただ、シャシャートの街の服飾系職人が、けっこうじっくり見ているから……

大丈夫かな?

ザブトンの子供たちの存在がバレると、ザブトンに叱られる。

職人たちには触らないように、改めて注意しておこう。

え?

あ、いや、たしかに俺が持ち主みたいなものですが……

売れません。

非売品です。

足のつけ根が見たい?

俺が持ち上げるの?

わ、わかった。

これでいいか?

いや、ひっくり返せはちょっと。

裏が見たいと言われても……

待って、圧が、圧がすごい……

誰か、誰か助けてー!

酷い目にあった。

熱中した職人というのは、周囲が見えなくなるものなんだな。

ゴロウン商会の従業員が助けてくれなかったら、危ないところだった。

取り押さえられて冷静になった職人たちは謝っていたけど、それでもザブトンの着ぐるみの裏が見たいという欲求は隠しきれていなかった。

職人の 鑑 ( かがみ ) と褒めるべきなのだろうか?

いや、周囲に迷惑をかけてはいけない。

注意するように……誰に言えばいいんだ?

イフルス代官か?

いや、職人ギルドとかあるなら、そっちかな?

ミヨに聞いておこう。

シャシャートの街には、ドースたちの姿はない。

ドースたちは、ドライムの巣で待機となった。

実のところ、ドースたちはシャシャートの街でのパレードをしたあと、王都までにある街や村は飛ばして王都で合流する予定だった。

これはドースたちが転移門を使わずに飛行で移動するから、時間調整が厳しいからだ。

ドースたちが早くても遅くても困る。

調整はほぼ無理。

だったら、飛ばしてしまおうとなった。

まあ、王都までの街や村は、パレード本隊も駆け抜ける感じになるから、仕方がない。

これで魔王が言ってた 囮 ( おとり ) は成立するのだろうかと心配になるけど。

ともかく、ドースたちは明日もほぼ出番がない。

なのでドライムの巣でゆっくりしてもらうことになった。

……

けっして、これ以上のトラブルを避けたわけじゃない。

ワイバーンたちもドースたちと同じく、明日はほぼ出番がない。

なのでドースたちと一緒にドライムの巣で待機するのはどうだと提案したのだけど、あのあたりは危険だと嫌がった。

結果、一足先に王都に向かい、王都での待機場所で待機することになった。

魔王国の文官が転移門を使って連絡に行ったので、ワイバーンの群れが襲撃してきたと勘違いされることはないだろう。

昼過ぎ。

俺はビッグルーフ・シャシャートにあるマルーラの 衝立 ( ついたて ) で区切られた個室に案内された。

その個室の真ん中に置かれた大きな丸テーブルと、それを囲むように配置された椅子。

俺が座った椅子の向かいにある椅子に、イフルス代官が座った。

ミヨによって約束された席だ。

予想通り、パレードが延期になったのでとすぐに予定を押さえられた。

ミヨ、できる幼女だ。

ただ、俺としては偉い人との会食なので、 上座 ( かみざ ) 下座 ( しもざ ) や挨拶などのビジネスマナー、食事の際のテーブルマナーなどを再確認をする時間が欲しかったのだけどなぁ。

「なんとかなります」

で押し切られてしまった。

まあ、丸テーブルなので上座下座は気にしなくてよかったのは幸運だな。

……

いや、マルーラで使っているテーブルは四角だから、この会食のために丸テーブルを用意したのだろう。

ミヨの手配か?

改めて……

ミヨ、できる幼女だ。

イフルス代官との会食は、イフルス代官の謝罪から始まった。

ドースたちが勝負を仕掛けてきたのを軽率にも受けてしまい、パレードの進行を 滞 ( とどこお ) らせたことを謝罪したいと。

俺としては、イフルス代官が謝ることじゃないと思うし、なんだったらドースたちが仕掛けなければ問題なかったわけだし、こっちが謝るべきじゃないかと思う。

また、謝るにしてもそれは俺にじゃないと考える。

だが、イフルス代官がそういった内容を間違えるとは思えないし、俺に謝るのも理由があるのだろう。

どんな理由があるんだと考えて気づいた。

外部から見て、俺はパレードの進行に関わっている文官娘衆の上司らしき立場だ。

実際は文官娘衆の上司はフラウで、俺ではないのだが……外部からはわかるはずもない。

パレードの進行を遅らせたことを重視するなら、文官娘衆の上司らしき立場の俺に対して謝るのはわかる。

なるほど。

それに、たぶんではあるが、魔王や魔王国の文官たち、文官娘衆など謝るべき相手にはちゃんと謝っているのだろう。

さすがイフルス代官ということか。

理由がわかれば、俺としてはイフルス代官の謝罪を否定しない。

素直に謝罪を受け取り、改めてパレード成功に向けて頑張りましょうと答えた。

うん、俺の対応は間違っていなかったようだ。

イフルス代官があからさまに安堵した顔をしていた。

よかった。

用件はこれで終わりだが、会食は始まったばかり。

イフルス代官とともにマルーラのカレーを楽しむ。

野菜多めのスパイスカレーか。

美味い。

っと、食事に夢中になってはいけない。

ちゃんと会話しなければ。

えーっと、そう言えばドースたちは怖くなかったのですか?

「ええ。

以前、プギャル伯爵の捜索のときにお会いしておりますからな」

そういえば、そうか。

「それにかのドラゴンからは、孫のために頑張るオーラを感じまして……

つい、それに応えようと 逸 ( はや ) ってしまいました」

たしかにドースは孫をかわいがっているが……

あれ?

では、イフルス代官にもお孫さんが?

イフルス代官の息子のギルスパークと、パン屋の娘さんが結ばれたとは聞いているが、子供ができたとは知らなかった。

「ははは、残念ながらまだです。

ですが、いつ孫が生まれてもいいように準備をしているのですよ」

ここからは、イフルス代官による孫を求める会話が続いた。

そんなイフルス代官の背後に、ヒイチロウをかわいがるドースやライメイレン、ラナノーンやククルカンをかわいがるドライムやグラッファルーン、フラシアをかわいがるビーゼルの姿が見えた。

孫とは、そんなにもかわいいものか。

アルフレートやティゼル、ウルザもいつか……

いや、気が早いか。

イフルス代官の話を聞きながら食事を終えると、イフルス代官は真面目な顔をしてこっちを見た。

なんだろう?

あいづちでなにか間違えたかな?

「村長。

実はお伝えしたいことがありまして……」

伝えたいこと?

こういった席じゃないと駄目なことか?

俺は身構えてしまったが、内容はそんなに難しい話じゃなかった。

「魔王は世襲制ではないことをご存じですか?」

もちろん、知っている。

だから、いまの魔王が倒れても魔王の娘のユーリが跡を継ぐとかはないはずだ。

「はい。

その魔王の地位なのですが、現在の魔王に新しい魔王が挑んで倒したときは譲位が簡単なのですが……

例えば戦争で魔王が倒されたときなどは、新たな魔王が決まるまでは不在の期間ができます」

あー、まあ、そうだな。

「その不在の期間、魔王国を指導し、新しい魔王を決める者たちがおります。

名を選出議会」

まあ、そういった者たちも必要か。

「選出議会に所属する者は 我欲 ( がよく ) に 溺 ( おぼ ) れず、 粛々 ( しゅくしゅく ) と次の魔王を決めることを目的としています」

厳格そうだな。

「はい、厳格です。

ただ、それは魔王が不在のときのみ。

そうでないときは、普通の貴族……いや、気楽な貴族です」

たしかに、仕事がないときまで気を張ってはいられないか。

それで、勉強にはなったが、その話がわざわざ席を用意した理由なのか?

「本題はここからです。

現体制に不満がある者たちが、選出議会のトップを動かしました」

動かした?

魔王が健在なのに?

ひょっとして、選出議会って魔王を解任できたりするの?

「いえ、選出議会に魔王の解任権はありません。

一度決まった魔王は、倒されるか自ら引くまでは魔王です」

なら、選出議会のトップが動いてもなにもできないんじゃないのか?

「その選出議会のトップは、いまの魔王様の母方の祖父になります」

つまり……魔王の親族?

「はい。

いまの魔王様でも気を遣われる者です。

そして、その方を数日前……正確には三日前にこの街で見かけました」

……パレードを見にきたのかな?

「そうだとよいのですが……

とりあえず、この情報をお伝えしておこうと思いまして」

わかった、ありがとう。

この話、もちろん魔王にもしているよな?

「はい。

警戒しておりました。

村長もお気をつけください」

こうしてイフルス代官との会食は終わった。

……

えっと、選出議会のトップがいるからって、なぜ俺が気をつけなきゃいけないのだろう?

あとでミヨに確認しておくか。

……ん?

あれ?

待てよ。

この程度の情報なら、ミヨから俺に伝えればいい話だよな?

会食のついでで伝えてくれただけかな?

それとも、イフルス代官から俺に伝えることに意味があるのかな?

……

よくわからない。

これもミヨに確認しよう。

村長「シャシャートの街でのことは、ミヨに聞くのが一番」

文章量が多くなったので、イフルス代官の話を次話にするかで悩んでしまった。