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春がそろそろ終わりそう

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春がそろそろ終わりそう

朝。

クロの子供たちを連れて村の見回りに行く。

こういうのでいいんですよと、高いところが苦手なクロの子供たちが嬉しそうに尻尾を振っていた。

微笑ましい。

しかし、今日の予定では、また四村に行くのだけど……

どうしよう。

伝えるべきか?

悩む。

四村の浮遊庭園の開発が進んでいる。

万能船で大量の建築資材が運び込まれ、ハイエルフたちが家を建て始め、本島の城の修復作業が少しずつ行われている。

城は建て直すことも考えられたが、修復の意見が強かった。

「長年住んでいますので」

ゴウが代表してまとめた。

なるほど、愛着があるのだろう。

そう思ったのだが、城の改築、増築の計画もあった。

「長年住んでいるからこそ、不満点もありまして……」

そういうものか。

「そういうものです」

城内の畑は、いくつか潰して庭になる。

城としての機能を回復させるためだ。

ゴウとしては、正門から 謁見 ( えっけん ) の間までの道が確保できればと考えていたようだが、俺としては城の中の畑はしっかりと場所を決めて畑にしておきたい。

城に 篭 ( こも ) っていた結果とはいえ、畑が城内のあっちこっちにあるのは、いろいろと面倒だ。

そう俺が言ったら、ゴウが喜んで残す畑と潰す畑を選び始めた。

もちろん、ゴウの独断と偏見で選ぶわけではなく、ベルやクズデンと相談してだ。

こういったところは、しっかりしている。

見習いたい。

水槽になっている浮遊庭園では、リザードマンたちが潜って作業をしている。

リザードマンたちが泳いだ感想としては、外周に近づくと水が粘るような感じになってさらに横に流されるので外に飛び出す心配はないが、もっとわかりやすい壁のほうがありがたいとのこと。

水中だと、どこが外周部分かわかりにくいらしい。

なるほど。

しかし、水槽を壁で囲うと見た目が悪くなるなー。

貯水目的だから、見た目は気にする必要はないのかもしれないけど。

マジックミラーみたいに片方からは見えて、もう片方からは見えない感じにできればいいのだけどな。

まあ、このあたりは 追々 ( おいおい ) 考えればいいだろう。

プールとして使うわけではないのだから。

畑にする浮遊庭園では土を敷き詰める作業が行われているのだが、その横でニュニュダフネが光量のチェックをしていた。

四村本島は、自身を包む 力場 ( フィールド ) で光や風、気圧などの対策をしている。

浮遊庭園もその力場内に留まるので光量に問題はないはずだが、万が一を考えてチェックしてもらっている。

ニュニュダフネの判定は……

「問題なし」

よかった。

「ただ、土のほうは……」

不満があるらしい。

まだ【万能農具】で耕していないからな。

光量をチェックしてくれたニュニュダフネのために、少しだけ耕してみた。

「おおっ!

このふかふかさ!

なのに湿った具合!

栄養もあり、カビはない!

まるで私たちのためにあるかのような完璧な土ぃぃぃぃっ!!!」

まあ、ニュニュダフネ用の土と思って耕したからな。

「いやいや、前にエルダートレントが来たときに作っていただいた畑とは格が違いますよ!

なんですかこれ!

村長、いつのまにパワーアップしたのですか!」

そ、そうか?

「離れがたい!

許されるなら、この地に根を張りたい!」

あー、四村には連絡員としてのニュニュダフネが一人か二人は移住してもらいたいが……

「立候補します!」

その場合、できれば本島のほうがありがたい。

「ええぇぇっ、ここから離れたくないのにぃ」

本島も、ここと同じように耕すぞ。

しかも、少し広めに。

「この私めにお任せください」

ははは、ありがとう。

だけど移住は、ニュニュダフネの代表であるイグに許可をもらってからな。

「ええっ!

絶対に争奪戦になりますよー。

村長からの推薦ということで、なにとぞー」

地上も、同じように耕せばいいだけでは?

「さすが村長!

グッドアイデア!

あ、でもそうなると、ここに移住する必要が減ってしまう……」

……そうなるな。

すまない。

耕すのは四村だけにしよう。

「そんなー」

などとニュニュダフネと談笑しながら、今日の作業を終えた。

夜。

身重のアンとラムリアス、セナと一緒に食事をとる。

セナはまだ先だが、アンとラムリアスは出産が近い。

三人の健康状態に問題はなさそうだ。

食事のときの話題は、四村の浮遊庭園のことが中心。

トラインの話はしてはいけない。

なぜなら、アンとラムリアスが心配そうにするから。

そして、ウルザやティゼルの話もしてはいけない。

なぜなら、三人が胃を押さえるから。

身重の三人に、負担をかけてはいけない。

できるだけ明るく、心配する必要のない話をしたい。

だからミヨ。

食事が終わるまで待って。

ヨウコも。

すまない。

食後、ミヨとヨウコの話を聞いた。

ミヨからは、人材の推薦リストを渡された。

ティゼルの国作りに活用できる人材らしい。

要求されたわけじゃないのにリストを作ったのは、引き抜かれては困る人材を守るためだそうだ。

わかった。

急ぎ、ティゼルに渡るようにしよう。

ちなみに、ここに王の候補がいたりは……

「さすがにいません」

そんな人材がいたら、手放さないそうだ。

なるほど。

ヨウコからは、四村だけ拡張するのはずるい。

五村の畑も拡張をお願いしたいという話。

畑にしたい場所の確保は、現在進行中。

冒険者たちを雇って、魔獣や魔物を追い払っているそうだ。

土地が確保されたら、改めて五村に畑を作りに行こう。

神社の様子も見たいしな。

「よろしく頼む」

ただ、五村の前に、一村や二村、三村で畑を作らないといけない。

要望されている。

「ほう。

各村も四村が羨ましいか?」

いや、四村の拡張計画の前からある話だ。

定期的に俺が行って畑を増やしていたのだが、自力で増やさないとと頑張っていたらしい。

ただ、このあたりの森では最初に【万能農具】で耕さないとまともな畑にならない。

いろいろと試行錯誤した結果、こっちを頼ってくれた。

「ふむ。

我もクワを振るったほうがよいか?」

え?

畑を作ったことがあるのか?

「いや、やったことはない」

ははは、なら無理しなくていいよ。

それに、ヨウコにはいろいろと仕事で助けられている。

得意な分野で頑張ってほしい。

ああ、ミヨもな。

助かっているよ。

わかっている。

ティゼルにはしっかり言っておく。

ルーにも。

シャシャートの街には、もらったリストの人材以外には手を出さない。

……

ヨウコも駄目だぞ。

「むうっ、気づかれたか」

このあと、三人で飲んだ。

幼女姿のミヨが酒を飲む姿には違和感があるが、ミヨの年齢は俺より上だ。

「街では飲まないようにしていますよ」

いろいろと言われるか?

「いえ。

飲めるとわかれば、酒の席のお誘いが増えるので。

酔った客は面倒です」

ミヨが困った顔で言うと、ヨウコがわかるーと同意してた。

ヨウコなら一緒に楽しく飲みそうだと思うが?

「いやいや、酔った者は面倒だ。

客でも部下でも。

ああ、酔った部下のほうが面倒だな。

日頃の不満をぶちまけてくる」

ヨウコが苦々しい顔をして言うと、ミヨがわかるーと頷いていた。

二人とも、苦労しているようだ。

今度、二人を労うためになにか考えよう。

誤字脱字の指摘、ありがとうございます。

助かっています。