雨天の対策
雨天の対策
「我々は雨になど負けない!
なので雨であっても、そのままレースを開催していただきたい!」
白鳥がそう言った。
正確には、白鳥の意見をオディールが通訳した。
その様子を見ていたオデットが、なにか言いたそうだったので聞いてみた。
「なぜ私が通訳に選ばれなかったのかが気になるのですが…?」
気にするな。
話を続けるぞ。
レースをする白鳥たちが雨を気にしなくても、レースを見にきた客は困る。
雨対策……どうしたものか。
「素直に、観客席に屋根をつければいいのでは?」
屋根か。
日除けにもなるから、屋根はありか?
「木製のしっかりした屋根でなくとも、布の屋根で十分だと思いますけど?」
「それだと雨を 弾 ( はじ ) けないでしょ?」
「水を弾く布を使えばいいのよ」
「そういった布は希少じゃない。
いまの観客席を覆うなんて、どう考えても不可能よ」
天使族が話しているが、ヨウコが大丈夫と言い切った。
そうなのか?
「ザブトンどのたちの糸は、水を弾くぞ」
え?
俺が自分が着ている服をみる。
水を弾く?
汗をほどよく吸収してくれるが?
「服にするときは、水を吸う糸にしておるのだろう」
そ、そうだったのか。
ありがとうザブトン。
ありがとうザブトンの子供たち。
「なので、水を弾く布のあてはある。
あとはその報酬だな」
さすがのヨウコも、ザブトンたちに無償で布を提供してほしいとは言えない。
「村長が頼めば、作ってはくれるであろうが……」
作ってくれるだろうからこそ、頼めない。
この白鳥レースはオデットとオディールが始めたが、俺が公平さを求めて口と手と金を出しまくった。
ほぼ五村の事業と言っていいだろう。
つまり、白鳥レースはザブトンたちの生活に関係がない。
なので、報酬を提示して依頼する形にしないと。
「そう言われたら、我はこれ以上は口を出せんな」
すまない。
ヨウコはそう言って引き下がったが、天使族の一人が続ける。
「ちなみに、報酬はどれぐらいになりますか?」
少なくともジャガイモパーティーを開催するぐらいはしないといけないんじゃないか?
「高いのか安いのか……わかりません」
「高いのよ。
あのジャガイモ、ひと箱いくらで取引されていると思っているの」
開催で儲けた額を考えると、高いのだろう。
高級食材だ。
まあ、とりあえずザブトンたちに頼むのは最終手段だ。
こちらでやれることをやろう。
屋根をどうにかする手段はあるか?
「さきほど言ってた、木製のしっかりした屋根を作るのはどうです?」
そうだな。
無難な案だ。
ただ、まだ一回しか開催していないレース。
観客席すべてに屋根をつけるには、資金が足りない。
俺が出してもいいのだが、それならザブトンに素直に頼む。
「あの、村長。
ルーさんが作っていた浮遊庭園はどうです?
あれの大きいのを作ってもらって、屋根の代わりにするとか」
あー。
悪いアイデアではない。
だが、小さい浮遊庭園は見逃してもらっているが、五村に屋根になるぐらいの大きい浮遊庭園をとなると、ドラゴンたちがなにか言ってくるかもしれん。
「それだと駄目ですね。
やめておきましょう」
そうか?
ドースを説得できれば、なんとかなるかもしれないが?
「やめておきましょう」
意見を言った天使族がそう言うので、やめておいた。
浮遊庭園も、正式な代金を支払うとなるとすごい額になるしな。
「村長、村長。
屋根にこだわらず、魔法で天候を操作するのはどうです?」
「待ちなさい。
天候操作系の魔法は、大魔法よ。
誰が使えるのよ」
「マルビットさまとかルィンシァさまならできるでしょ?」
「使えるかもしれないけど……
あの魔法って、使っても少しの時間しか効果がないし、そのあとが大変なことになるから」
そんな魔法、役に立つのか?
「戦場でもない限り、使わない魔法です」
「魔力の消費量を考えたら、使 え ( ・ ) ない魔法よ。
天候を操るより、攻撃魔法を放ったほうが効果的だし」
「たしかに」
天使族が話し合う横で、オデットが一言。
「雨が嫌なら、晴れるまで延期すればいいんじゃないの?」
そうなんだが、どの程度の雨で延期するかを決めるのが難しくてな。
雨と言っても、ドシャ降りもあれば、ぱらぱらと降る雨もある。
誰がどう見ても雨なら客も延期であることに納得するだろうけど、僅かにしか降っていない場合は?
雨に濡れるのが嫌な人は「雨だ」と言うかもしれないし、雨に濡れても気にしない人なら「この程度は雨じゃない」と言うかもしれない。
また、レース開始の直前までは降っていなかったが、レース開始直前でドシャ降りになった場合は?
どういった基準で順延にするかを細かく決めておかないと、混乱のもとだし 揉 ( も ) めることになる。
あと、個人的に順延は天候どうこうではなく、レースをする白鳥や客が危ないときの避難として行うようにしたい。
たとえば、台風が来てるとか魔物が出たとか。
なので、俺としては雨での順延はあまり賛成できない。
白鳥も、雨でもレースを開催してほしいと言っていたしな。
「とりあえず、今ある資金で可能なだけ屋根をつけるのはどうです?
いきなり全ての席を屋根付きにする必要もないと思いますが」
銀狐族のコンの意見が採用となった。
レースを実際に行った白鳥たちの意見。
「コースがいろいろあるのは楽しいです」
開催するレースが全て同じでは客が退屈するかなと思って、レースごとに距離やコースレイアウトを変更していた。
コースレイアウトは池に浮かべる大きいブイと、大きいブイを繋ぐコースフロートを修正するだけなので、時間はかからなかった。
「お客さまからは、距離はなんとなくわかってもコースの詳細が直前まではわからないのは困るとの意見がありました」
なるほど。
図にして表示するなどしたほうがよかったか。
次回から、そうしよう。
ん?
白鳥、まだなにかあるのか?
「はい。
その、各レースの勝者が最後の第十レースで決戦を行いましたが、それぞれのレースの距離が違うので、疲労度に差がありました。
あと、第一レースと第九レースの勝者でも」
そうだな。
そのあたりも考えないといけないか。
とりあえずのお試しとして、第十レースを決勝のようにやってみたが、同じ日にするのは公平なのかな。
実際、第十レースの勝者であるこの白鳥は、第三レースの短いコースの勝者でもある。
まあ、だからと言って楽に勝てたわけではないだろうけど。
「ほかの白鳥たちに文句を言わせないためにも、なにか手をお願いします」
なるほど。
これに関しては……
第十レースの決勝は続けるが、今後は別の日に開催したレースの勝者を集めてやるようにする。
また、距離別に決勝をするのもありだろう。
レースの内容は事前にオデットとオディールがコンたちと話し合って決めている。
白鳥たちのやる気を損ねず、見ているほうが飽きないコースや距離を決めるのは大変だろうが、いろいろなレースを開催することで整理され、最適なレースが行われることを期待したい。
そうそう、オデット、オディール。
イレの撮影隊から、レースの実況と解説がすごくよかったと褒めていたぞ。
「ふふふ。
そうですか」
「次も頑張ります」
実況に関しては、やってみたいという五村の住人がいた。
オデットたちが常にやれるわけじゃないだろうから、ほどよく鍛えてやってくれ。
「わかったわ。
あと、白鳥たちのお世話係をやりたいという人がいたのだけど」
そっちも聞いている。
これに関してはコンに任せる。
雇うなら、ちゃんと指導してやってくれ。
「承知しました」
このあとも細々としたことが問題提起され、話しあった。
有意義な反省会だった。
翌日。
観客席にテントが張られていた。
俺がちらりとテントを見ると、ザブトンの子供たちがいた。
……
昨日の反省会を、どこかで聞いていたようだ。
礼は不要と言っているが……
観客席を覆うようにテントを張るのは数匹では無理だろう。
大樹の村のザブトンたちが協力したに違いない。
いや、何本か支柱が立っているから、ハイエルフたちも協力したようだな。
あ、テントを畳む機構がある。
山エルフも手伝っているな。
ふむ。
礼は不要とのことなので、ありがたく受け取ろう。
そして、明日にでも大樹の村でジャガイモパーティーを開催しよう。
礼じゃない。
俺がやりたいだけだ。
だから気にせず、パーティーを楽しんでくれ。
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
助かっております。
歯医者に行くようになって、更新のリズムが狂ってしまっている。
なんとかしなければ。